ケモミミ貴族令嬢にTS転生したら、ふたなりたちに玩具にされた 作:ぐらんぐらん
50 堕ちとは気付かぬもので
休みも明け、島は以前のように学生で溢れる。
俺はそんな光景を見てちょっとそわそわ。
休み突入直後は人がいなくて落ち着かなかったのに、今じゃ人がいるせいで落ち着かない。
俺、変に見られてないよな?
まだアナルが閉じきってないからスカートの下はオムツだし……も、もしかしてバレてないよな?
「ごきげんよう、モフテイル三位官令嬢」
「えっ!? あ、ああごきげんよう。久しぶり」
誰かと思ったらクラスメイトだった。
名前は……うん、覚えてる。俺の記憶力は大丈夫。
この子とは挨拶も会話もできるけど特に親しいってわけじゃない間柄。
「あら……?」
な、なんだ?
なんかめっちゃ困惑した目を向けられているぞ!?
「どうかした?」
「い、いえ……あら、こんな時間! わたくし人を待たせていました! すみませんお先に」
俺知ってる。言葉に詰まって逃げる人だいたいこう言う。
「ねぇキリ、みんなに二度見されるんだけど……」
「でしょうね」
俺ら生徒は学院における各貴族家の顔。
だから社交というか、周りとは表面上でもそれなりにニコニコ接する必要がある。
俺もそう教わってたから休み明けの挨拶はとりあえずクラスメイトほぼ全員にやってるんだけど、みんな一瞬だけ不思議そうな目で見てくる。
それに加えて、席についても多方向からチラ見の視線を感じる。
「言ったでしょ、雰囲気変わったって」
雰囲気……メロリィに言われた『色っぽくなった』ってやつか。
そんなに分かりやすく変わってたのか?
まさか……いや……でもなぁ……
周囲にそう思われてる俺の所作は、だいたいジャスリン様とブリュンヒルデ先輩のせい。
だって「こうしてみて」って言われた通りにやると喜ぶし……「マフィはこうしたら可愛くて似合うよ」とか言うし……先輩も同じようにやると喜ぶし……
わざわざ言われたことに逆らう必要もないし……相手は格上だし……
そうした動きは自分でも気付かないくらいには自然になっていった。
これまたメロリィ曰く、『男ウケ狙ってる感じが透けてる』とのこと。
男ウケとはつまりふたなりウケとのことで……異性に好かれやすい感じになってるのかもしれない。
でもこれって同性に嫌われる女にならないか……? 割と痛い奴になってるのか俺……?
急に不安になってきた。
俺ってどんな人間だったっけ……
「自覚が無いのがタチ悪いわね」
「自覚はあるんだよ! でも、こう……ああぁなんて言えばいいんだ!」
「あ、今のはいつものマフィっぽい」
なんというか、分かってるんだけど直せないというか、直し方が分からないというか。
手に付いたソースを舐めとる行動だって、指摘されて初めて気付いた。
歩き方や箸の持ち方みたいなもんだ。一朝一夕で矯正できるものではない。
「ごめんなさい……やっぱり先輩のせいで……元をたどれば私の……」
「いやそれはもういいって! な?」
キリはいつものキリだ。クールで可愛くて、たまにネガティブ。いつものすぎて安心する。
みんなみたいに見てこない。一時期すっげぇ見られてたけど。
「てか、なんで今朝先に行っちゃったんだよー、一緒に登校しようと思ったのに」
「それもごめんなさい。早くに目が覚めちゃって、二度寝もできなかったからそのまま出たの」
むむ、それなら仕方ない。
今のキリはいつものキリだけど、いつものじゃないところもある。
ピリピリしている。緊張だ。
理由も分かる。チン道の大会が今週末にあるから。
キリ……キリーネヤ・ロマネフは灯台での修行でかなり成長した。
別に付き添ったわけでもない俺がこんな上から目線なのはおこがましいけど……長期休み前とは別人だ。
メロリィには迷惑かけたなと思う分、あいつが一緒にいてくれたからってのもあると思う。
本当に童貞卒業してないんだよな……?
初日だけあって授業は簡単なもの……というか下半期の説明がほとんどだった。
まぁ今日は前世みたいに午前だけだし、本格的なのはまだなんだろう。
だからちょっと退屈で、俺は隠れて錬術薬の本を読んでる。
でもそれも飽きてきて、隣にいる友達に声をかけることにした。
「キリ、最後に抜いたのはいつ?」
「ッ!? ゴホッゴホッ!」
「ロマネフ五位官令嬢、大丈夫ですか?」
わっ、大丈夫か? 急になんだ。
先生までびっくりしてるし。
「は、はい……ちょっとむせただけで……」
あ……
そんだけ緊張してるってことかもしれない。
自信をつけたとはいえ不安もいっぱいあるのかも……
ここはマネージャーとして話を聞かなきゃならない。どしたん? 話聞こか? って感じで。
でも今は授業中。仕方ない、防音神術っと。
「大丈夫?」
「あなた……! いきなりそういうこと言わないの!」
「いいじゃん誰にも聞こえてないし」
先生に隠れて授業中おしゃべりしようぜ~!
前世だとこれやって小学生の頃ハチャメチャに怒られた記憶あるけど。
記憶を思い出してから友達や親戚の名前とかどんどん忘れていってるのにこういうのばっか強く覚えてんだよな……
「ねぇ、いつ?」
「……昨日の夕方だけど」
「メロリィと?」
「うん……」
ふむふむ、ってことは間隔としてはこれまでの管理スケジュール的に……
「そっか。じゃあそろそろじゃない? 後でトイレ行こうよ」
「ね、ねぇちょっと、あなたそんな感じだったかしら?」
「そんなって?」
「雰囲気ならまだ分かるけど、そういう……なんというか、積極的な……」
「今までメロリィにマネージャーの仕事押し付けちゃってたし、灯台から出てきてまだ一度も見てないし、キリの成長」
マネージャーたるもの選手の成長くらい自分の目で見ておかなきゃだしな!
「いえ、その……多分、授業の合間じゃ短すぎるから……」
「え、でもキリは──」
ハッとした。
そうだ、キリは強くなったんだった。
塔の6階までクリアしたってことは、早漏も改善されているはず。
授業の合間の5分10分で抜けないかもしれないんだ。
それにきっと硬さとかも……
「そっか、じゃあ放課後かな。今日も練習あるよな?」
「あるけど……でも、いいの?」
「マネージャーの仕事だし!」
ますます楽しみになってきたな。早く見てみたい。
午前の授業……という名の説明会が終わり、クラブ活動はお昼を食べてからの開始となった。
俺はひとり昼食をすぐ済ませて、錬術薬研究会のクラブルームへ向かう。
さっき読んでた本に分からない記述があったからジャスリン様に質問するのだ。
こういう時スマホがあったらパパッとメッセで解決なのになぁって今でもふと思ったりする。まぁ慣れたけども。
難しい本を持って権威ある師に教えを乞うため歩いてる……そう思うとなんか頭良くなった気分になる。マサチューセッツの学生はこんな感じなのだろうか。いや分からんけど。
長期休みにほぼ毎日通った7階の道。もう目を瞑っても通れる気がする。
扉も勝手に開くし、ノックすることも忘れていた。
「ジャスリン様、いますか──」
だから部屋に先客がいて、それがジャスリン様だけじゃないことに気付かなかった。
「あ……」
うわ、めっちゃキスしてる。
片方はジャスリン様だけど、もう片方は知らない人。
一瞬だけ頭が真っ白になった。
恋人との時間を邪魔してしまった申し訳なさが来そうになって、この人に恋人なんていないことを思い出す。
闖入者に気付いた2人は、くっつけていた口を離して俺の方を見る。
「あら? ねぇ殿下、この子も~? 今日は私だけって言ったのに~」
「おや、マフィじゃないか。どうしたんだい? 今日は実験は休みのはずだけど」
「あ、えと、その……この本で訊きたいことあったんですけど……また今度でいいっす。お邪魔しましたー……」
扉をバタリ。
「ちぇっ」
なんか……大人な感じだったなぁ。
あの牛族の人もセフレか。おっぱい大きかったな。
何気にジャスリン様が他のセフレと一緒にいるのを見たのって、初めて会った時以来だったりする。あの時は羊族……別人だ。
本当に何人もいるんだな……
しかもすごく仲良さそうだったな……
「そういやここヤリ部屋だったっけ」
午後は丸々放課後なんだし、これから何回もヤるんだろうな……
なんだろう……あの人が何人も囲ってんのは知ってたし、相手が俺だけじゃないのも知ってたし。
でも暇さえあれば俺に手を出してきてたから、そういうの忘れてた。
でも、だからなんだって話。
あー俺以外にもいるんだなーって思い出しただけ。
都合が悪くて質問できなかったくらいでモヤる必要はないし、気にする必要も……
……じゃあ、なんでモヤってんだ? 俺は。
とりあえずここから離れよう。
ここで待ってても扉越しに色々と聞こえてくるだけだろうし、今はそういうの聞きたくない。
「今の子、殿下のお気に入りでしょ?」
「何のことかな?」
「またまた~他の子も言ってたのよ~? 後輩の狐族の子にご執心だって」
「ふふっ、嫉妬かい?」
「嫉妬~! 今はその子のこと考えちゃダメよ? 休みの間私だって溜まってたんだもの!」
「分かってるよ。歩いて帰れなくしてあげる」
「やんっ♡ こわ~い♡」
俺は城を散歩して頭のモヤモヤを払った。
質問はまたの機会でいい。ジャスリン様のことなんて気にしなくていい。
今はチン道の時間だ。この道場に来るのも長期休みぶりか。
「うわぁ……」
隣でメロリィがドン引きしてる。
そういや来るのは初めてなんだっけか。マネージャーになってもずっとキリの射精管理だけしてたし。
「気持ちは分かるぞ……」
「なんていうか、バカしかいない」
「それ大声で言うなよ」
チンに重りを括りつけてスクワットしたり、木人相手にチンを叩きつけたり、畳の上で柔道とか剣道よろしくスパーリングしたり……俺も久々に見たけどバカみてぇな光景だと思う。
ここじゃキリもバカの仲間入りだ。
「あっ! マフィ見て! 悪役令嬢よ! 」
「イリーゼか。指さすなよ、たまにこっち見るから因縁つけられるぞ」
「怖っ、さすが悪役令嬢ね……!」
今朝挨拶した時もピリついてたし。あいつも緊張してるんだろう。
チンを振る時の顔は真剣そのもの。並々ならぬ気迫を感じる。
「メロリィ、こっち。新入りは挨拶しとかないと」
練習中マネージャーは隅っこでだべるのが基本。
他のマネージャーの生徒もいるし、メロリィも馴染んでもらわないと。公園デビューするお母さんの気持ちってこんな感じか……
「1年のメロリィ・ハイレッツェです。キリ……キリーネヤのマネージャーです!」
「キリーネヤさんがマネージャーを2人も!?」
「よろしくねメロリィさん。ここでは家柄とか気にしないからみんな名前呼びでいいわよ」
「アタシも1年だしタメ口でもいいからね!」
「そうなの? じゃあよろしく!」
メッチャ早く馴染んだ……コイツ友達いないけど明るいからコミュ力はある方なんだよな。
表の学院じゃやっぱり七位官令嬢ってナメられるから、官位に囚われないこういう場ならありのままで受け入れられてるっぽい。
マネージャーの中には同じクラスの人もいるみたいで、こんな場所で再会したことに驚き合ったりもしてる。表でも仲良くなれるといいな。
……やっぱお母さんみたいな気分になるわ。
「マフィ、なにその生温かい目は」
「いや別に……友達たくさん作れよ!」
「私に友達いないの思ってたの!?」
「いるの?」
「あんたとキリ」
「いねぇじゃねーか」
俺らはノーカンだろ。もっと広く付き合え。
まぁ俺も人のこと言えるわけじゃ……いや、普通に挨拶も会話もできてるからみんな友達……
考えないようにしよう。
「よっ、マフィ」
「うわ」
「開口一番なんだその愛想の欠片もねぇ挨拶は」
「先輩に愛想なんていらないので」
「言うようになったなコイツめ~! おらおらっ」
「ちょっ、わしゃわしゃすんな!」
いると思ったらやっぱりいたし声をかけてきたブリュンヒルデ先輩。
メロリィがみんなと花を咲かせてる隙に、肩を組まれてちょっと離れた場所に連れていかれる。
……やっぱおっきい。色々と。
「この前の、帰るなら帰るって言ってほしかったんですけど」
「なんだ寂しかったのか~? アイツがいたろ」
「いたけど一言あってもよかったんじゃないですか」
俺はいまだにちょっと恨めし気な目で見てしまう。
先輩がいないせいで無駄にムラムラが溜まったし、自分勝手すぎるんだよこの人。
まぁそのおかげで走る習慣ついたし後ろも使えるようになったのは、一応感謝かも……いや感謝すべきか?
「悪い悪い、シェリが産気づいたって知らせが届いたから急いで帰ったんだよ」
「誰ですか」
「あれ、会ったことなかったか」
どうせ第○夫人だろう。
「双子だったんだよ! ほらこれ写真、 可愛いだろ!」
「はぁ……おめでとうございます。かわいいっすね」
「だろ~!」
写真の中の先輩は子供を抱いてめっちゃ笑顔。愛が大きいって本当なんだな。
なんか、普通に幸せそうだな。先輩もシェリって美人さんも。
いつもの先輩を見てると想像できない……ってこれ失礼か。
「これでまたヤリまくれるぞ! ソッコー孕ませてやろっと」
……この人に失礼とか思うのやめよう。
「それじゃお互いこれまでのことはなかったことに」
「ははは! やっぱ寂しそうだな! お前もいつでも抱いてやるって」
いや家族との時間大切にしろよ! 堂々と浮気すんなよ!
チュラント族って分からん……
ていうか、俺そんなに寂しそうに見えるか?
「みなさん集合してください。連絡事項があります」
しばらくして学生長の羊族……名前なんだっけ……えっと、フェネネ先輩だ。
彼女が仕切って色々と話し始めた。休みの間は練習してましたか~とか、ブランクある人は基礎練大事に~とか。
「それと、何より大事なことを。年に一度の学生チン道大会がもうすぐ開かれます。みなさん今からコンディションを整えておいてくださいね」
まぁやっぱりその話題だよな。
年に一度……つまり学院生は2回しか参加できないU-17大会。
前世でいう普通の部活なら中学高校で計6回、大学でもガチるならプラス4回くらいあるイベントを2回しかできないのは、なんかもったいないな青春。
って思ったけど卒業後も社会人リーグというか、まぁそういう大会や催しはあるらしい。後から知った。
大会の規模は大きい。
学院内だけでなく、学院の外……つまり平民からの参加もある。
参加人数は三桁にのぼるそうだ。この国バカが多い。
「平民グループの予選は既に始まっており、私たちが出るのは今週末に行われる本戦トーナメントです。外から来る相手は予選を勝ち抜いた猛者たち……気を引き締めましょう」
道場には緊張がはしる。
学院生が本戦からの出場なのは、こうしてクラブ活動として整った環境で普段から練習してるから……だそうだ。
その分強くて当たり前、予選を勝ち抜いた人間と当たっても勝てる、みたいな扱い。
官位によらない世界とはいえ、やっぱ貴族として平民に負けられないプレッシャーもあるんだろう。
「あれれ~? 予選免除されてる貴族様がこんなに弱いんですか~?」……とか言われた日にはEDになりそうだ。今だけ女で良かったって思う。
「観客や来賓の方も多数見えますので、学院の生徒として品位ある行動を心がけましょう」
下半身丸出しで品位もクソもないだろ。
てか負けたら衆目に晒されながら射精することになるのか? やば……
「会場は例年通り学院地下です。ここではありませんから当日は間違えないように」
なんとこの道場以外にも地下には空間があるらしい。
観客も入る大会用ってことはもっと広いんだろうな。どんだけチン道に支配されてんだこの学院。闇の組織かよ、怖くなってきたわ。
「…………」
「キリ?」
来賓も来るって言われたところで、隣に立ってるキリの雰囲気が変わった。
これまでは少しばかりの緊張だったのが、一気に鋭さを増している。
「大丈夫か?」
「…………」
「キリどうしたの?」
メロリィも心配してキリの手を握る。
俺もやろうかと思ったけどいきなり両手を握られるのもアレだろうしやめておこう。
「来賓には……家族も来るのよ。私の家は両親に、姉たちも……」
キリのこういう顔を見るのは、それこそ家族のを話してくれた時以来だった。