ケモミミ貴族令嬢にTS転生したら、ふたなりたちに玩具にされた 作:ぐらんぐらん
真面目なバトル描写も今回限り
えっちなのは次回
競技の性質上、兜合わせを彷彿とさせる描写が多々出ます
ふた×ふたではありませんが、苦手な方は読み飛ばしていいです
読み飛ばす用のためのまとめは後書きにありますので、一番下まで行ってください
裏切りオナニーに明け暮れた翌日、部屋に一通の手紙が届けられた。
簡素なそれに書かれた差出人は『後ろの師匠』……それ自分で考えたのか? って訊きたくなる名前だが、マフィにはそれが誰からのものか理解できるからいいのかも。
『妾じゃ!
実はお主に伝え忘れたことがあったのを思い出して、こうして筆をとっておる。
アナル洗浄スライム君についてじゃ。
アナニーグッズセットを渡しておいてコレを教えぬのは酷だったかもしれんな。すまぬ~。
これさえあればいつでも腸内洗浄を完璧にできるからぜひ覚えて使ってみてほしいのじゃ!
四小節の術は難易度が高いが、練習を重ねればできると思うぞ。
ではな! また会おうぞ!
というわけで第二王女プルミリアからのプライベートレターだった。名前を伏せたのは色々な面倒事を避けてのことだろう。
本当は王族の書くものらしい堅苦しさも感じられる文だったが、本人の口調的に意訳したらこんな感じだ。
2枚目の便箋にはアナル洗浄スライムを呼び出す言葉と、神力を操る際のコツなどが書いてある。
大天才を自称するから感覚派かと思いきや、意外と分かりやすい表現でまとまっていた。
マフィの神力は自他共に認める貧弱さだが、術を覚えること自体はできる。
プルミリアの言う通り、練習すれば一日一回でも使えるようになるかもしれない。
「いやいやいや、別にスライムなんて……」
一度は理性が働いた。
アナルなんて結局はアブノーマル。
確かにいちいち腸内洗浄をするのが面倒でつい億劫になるので、アナル洗浄スライム召喚を覚えることができたら一気に手軽になる。
しかし……
「…………」
机の引き出しを開く。
これまで貰った手紙類(中でもリアリスの分厚いのが圧倒的存在感で鎮座している)の中にプルミリアのそれを突っ込もうとし……
「…………『水の精、ぷにぷにぷよぷよ──」
マフィはアナルに正直になった。
毎日練習すればいつかは使えるさ。頑張れマフィ。
錬術薬の勉強は自習でそこそこ、それ以外はキリーネヤのサポート……なのだが、思ってたのと違った。
マネージャーの日々の仕事は、選手が練習で昂ったチンを鎮めたり管理してお世話することだ。
なのにキリーネヤは連日ニャアニャア喘ぐことになった。
原因は単純。マネージャー側が調子に乗り過ぎた。
「ほらほら、強くなったんだろ?」
「なっさけな~、そんなんで大会勝てると思ってんの?」
競うように搾っていると、2人してキリーネヤをいじめながらの甘々罵倒搾精になってしまったのだ。
先日あれだけ後悔していたメロリィも、いざ事が始まればこんな感じ。それだけキリーネヤの反応が可愛すぎるともいう。
美少女2人からの甘々S責め……人によっては羨ましいかもしれないが、やられてる本人はシャレにならない。
どれだけ懇願しても胸と口を止めてくれず、黒猫は快楽でおかしくなりそう。
ついには射精後も刺激を与えられすぎてチンから潮を噴き、キリーネヤはキレた。
「ニャ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!」
ちなみにこれは喘ぎ声ではなく、キレた彼女の怒声だ。
神術で学院を爆破しそうな勢いに、調子に乗ったメスガキ2人は戦々恐々。
正座してごめんなさいした。
「もう2人とは口きかない!!」
「ごめんって……」
「許してぇ……」
あんまり怒るものだからマフィは城下町にある高級スイーツ店のケーキを奢ることで謝罪とした。
庶民じゃ買えない値段。三位官家の財力の見せどころ。
後を引く怒り方をしていた黒猫は口を尖らせながら許した。
「女の子にはスイーツあげときゃいい」とはよろしくない言葉だが、真理でもあるのだ。
3人で食べたケーキは死ぬほど美味しかった。
メロリィは後日クッキーを焼いてきた。
乙女ゲー主人公といえばクッキーだ。
「あの店のほど高くないけど……気持ち……」
「……あ、ありがとう」
まるで友達以上恋人未満な光景を見たマフィは一言。
「俺が浅ましいみたいじゃん……」
そうしてあっという間に平日が終わり、週末がやって来た。
チン道は世間にバレてはいけない地下競技。
学外から観客や関係者や平民選手が島にやってくる。
休日といえど島は教師や学生で溢れかえっている。
さて、少なくない人数が島の者たちにバレずに学院地下にある競技場に行くにはどうすればいいか。
答えは簡単。神術と海底トンネルだ。
チン道関係者を乗せた船が島から少し離れた海域で止まり、神術で海をかき分け、海底にあるトンネルの入口を露わにする。
複数の小舟に乗り換えた者たちが、まるで坂になった部分を下って入口へ。
トンネルは学院地下の競技場まで直通。
なんともスケールが大きい仕掛けだ。
これが建国から連綿と続く裏の歴史、チン道の歴史の積み重ねの産物である。
一説には元々チン道の聖地だった島に後から学院が建ったとかそうでないとか。
とにかく大会は世間にバレることなく無事開催される。
地下競技場は、前世でいうコロッセオに代表される古代の円形闘技場を彷彿とさせる内装だった。
建国時のチュラント族の意匠である。
これ以上の描写はめんどくさいからもう『円形闘技場』で検索してくれ。あんな感じだ。
高さにして建物2~3階分はある空洞みたいな広い地下空間に、中央の舞台を囲うような観客席。
天井部分は神術で疑似的な空を再現。屋外とそう変わらない明るさである。
「うおー……」
「ひろ~……」
初めてここを訪れた者は、ここが地下であることを忘れるだろう。
おのぼりさんみたいな間抜け面をしてるマフィとメロリィもまた例に漏れず。
キリーネヤは顔にこそ出していないものの驚き、なにより緊張してる。
「キリ、リラックスだぞ」
「そうよ。肝心な時に勃たなかったら承知しないからね」
3人はすっかり仲良しトリオだ。やはりひとつの目的のために一緒に取り組むと友情が深まる。あったかい。
「あらぁ~? 誰かと思ったらキリーネヤじゃない」
「ちっちゃくて分かんなかった~!」
おっと温まってる場合じゃない。
ちなみにキリーネヤに対しての「ちっちゃい」はマフィにも流れ弾が飛ぶ。
「チョーネヤ、ジーネヤ……!」
「『姉様』を付けなさい、愚昧」
「『様』だけでもいいけど~?」
話しかけてきた2人はキリーネヤによく似ていた。
黒髪に金目の猫族……この2人こそがロマネフ家、キリーネヤの姉たちである。
チョーネヤはいかにも性格キツそう、ジーネヤはチャラいギャル。
2人とも来賓らしいフォーマルなドレス姿だ。
「あ、悪役令嬢だわ……!」
チョーネヤを見たメロリィが慄きと喜びに震える。
まだ言ってんのかお前。
「ホントに出るのね。せいぜい無様を晒さないことね」
「今日はお父さんとお母さんも見に来てるんだから~、恥かく前にいっそ棄権すれば~? キャハハッ」
キリーネヤもそうだったがロマネフ家とは美人の家系なのか。
めちゃくちゃ顔が良いだけに、傍から見れば美人姉妹3人のラグジュアリィな邂逅にしか見えない。
しかしこの2人はコッテコテないじめっ子枠である。
「てゆーか、お2人はどちらさまな人?」
ギャルに絡まれたマフィとメロリィが身構える。
どうやら2人にとってあまり相手にしたくないタイプらしい。ギャル怖い。
「マネージャーよ」
「マネ……ぷっ! ねえ聞いたお姉ちゃん? マネージャーだって!」
「あなたがマネージャーを? それも2人も? ふっ、あははは! 冗談はフニャチンだけにしなさい」
嘲る高笑いも様になるコッテコテ加減。
メロリィは内心で感動した。こんな完璧なムーブがあるのかと。
「あなたにマネージャーなんて勿体ないわ。その子たちにも恥をかかせる前に──」
小馬鹿に撫でようとしてくる長女の手を、キリーネヤは跳ねのける。
「なっ……!」
「あなた達2人は確か、せいぜい2回戦止まりだったわよね。私は優勝しに来ているの。悪いけど準備があるからこれで」
三女は毅然としていた。
馬鹿にしに来たのに馬鹿にし返された……姉2人の頭に血が上る。
「待ちなさい!」
去ろうとするキリーネヤの肩を掴もうとするチョーネヤ……その間にハチミツ色の狐少女が割り込む。
「選手の邪魔はやめてもらいたい」
「これは家族の問題よ」
「マネージャーとしてやめろと言ってるんだ」
年上相手にも頑として譲らない。まるで
マフィってそういうところあるよな。元男だからか変に勇ましい。
邪魔をしてくる生意気な小娘を見下ろす黒猫レディ。妹によく似た金色の双眸からは威圧。
「なに? 鬱陶しいわね」
ほら目を付けられた。ロクなことにならないぞ。
「あなた、名前は?」
「マフィ」
本来なら家名まで名乗るところだが……チン道の世界には家柄による貴賎が無い。
モフテイルは三位官家、ロマネフは五位官家。
2階級分の身分差というのは問答無用でチョーネヤを跪かせるだろう。
名乗るのは手っ取り早い。しかしそれは無粋であり、なんか卑怯だ。
このいじめっ子2人の相手はマフィではなくキリーネヤ。
まして家庭の問題であることも事実。
ならやはり戦うのはキリーネヤであるべき。
ならどうして首を突っ込んでるのか? そういう
本人は友達を庇うくらい当たり前だと恥ずかしげもなく言ってのけるだろう。
「おたくらがキリをどう見てるかは少しだけ知ってる。でも今のキリをおたくらは知らないだろ。黙って試合を見ろ」
「そ、そうよ! キリは本当に優勝狙えるんだから!」
メロリィもそうだそうだと言っています。
「ご立派なマネージャーさんね、なによ『キリ』って……興が削がれたわ。行くわよジーネヤ」
「えっ、待ってよお姉ちゃん~!」
去り際まで嫌味だった。徹底している。
こんな接触をしてきたくらいだ。ここだけの登場ではないだろう。
だがマフィやメロリィには確信めいたものがある。
次に会った時、彼女らは苦々しい顔をしているはずだ。
なにせキリーネヤは修行を経て強くなった。しかもこの大会が修行後初の実戦となる。
修行直後の戦いというのは勝ち確と相場が決まっている。悟空でいうところのナッパ、リクーム、後は……あれ? あんまいないな。実はセル編以降の悟空単体の戦績はしょっぱかったりする……
とにかく勝ち確なのだ。一護でさえ修行後はまともなバトルしてるんだし。
よほど相手が悪くなければ、それこそブリュンヒルデのような化け物でなければ勝ちは揺るがない。
風呂にでも入って結果を待てばよし。
選手の人数は40人。
学院のチン道クラブメンバー34人に加え、平民からの参加が6人。
前にフェネネ学生長から説明があったように平民は既に予選を終えており、ここにいる6人はそれを突破した強者。学院生は全員参加である。
トーナメント方式でふたつのブロックに分けられ、各ブロックで勝ち残った者同士が決勝戦をやるやつだ。
カードは平民を3人ずつブロック分けする以外は完全ランダム。
よって勝ち進むには運も必要で……
「よかった、ブリュンヒルデ先輩はブロックが違う」
宙に投影されたスクリーンに映る名前欄を見て、マフィは一安心。
これはアツい。決勝戦で因縁の先輩とぶつかるなんて実にスポ根漫画っぽい。
「見てマフィ! 近くに悪役令嬢の名前があるわ!」
まだ言ってんのかお前。
今メロリィが言ったのはイリーゼのことだ。
もし彼女が勝てば、2回戦でキリーネヤと当たることになる。
これまたアツい。最近放ったらかしだったイリーゼとの因縁にも何かしらの進展があるだろう。
開会式が終わり、すぐにトーナメントが始まった。
一試合だいたい5~10分、互いに遅漏なら15分くらい。意外とサクサク進む。
この大会に青春をかける若者たちは互いにチンをぶつけ合い、負けた方が果てる。
飛び出してイケどぴゅうの彼方、目の前をぶち抜くスペルマ。
控室でキリーネヤに最後の激励をして送り出したマフィとメロリィは、選手およびマネージャー用の客席へとやって来た。
「よっマフィ」
「先輩、控室じゃないんですか?」
「キリーネヤの試合くらい見てやろうと思ってよ」
大会連覇に絶対の自信を持つ褐色熊は余裕そうだ。
「ちょうどキリーネヤの試合だな。相手は……ドロシー? 平民枠か」
「先輩、警戒してます?」
「予選を勝ち抜いてきてるからな。いくらあいつが強くなったとはいえ油断できないぞ」
「その通りでございます」
マフィとブリュンヒルデの会話に割って入ってきたのは、猿族の女性だった。
明らかに生徒ではない。そろそろ本格的にアンチエイジングを試みる年頃だ。選手の誰かしらの親だろうか。
猿族の見た目はほとんど普通の人間に近いが、耳は人のよりかなり大きく、尻尾もある。
「猿族……ドロシーってやつの縁者か」
「パナラスでございます。ブリュンヒルデ様にご挨拶を」
ちょっと待ってくれ。新ネームドが多すぎる。
同じ話に2人も3人も知らない人が出てきたら疲れるんだよ。脳の容量は限られてるんだぞ。
そんな事情もお構いなしにパナラスと名乗ったおばさ……おば……女性はここに居座るようだ。
ちなみに普通なら一位官令嬢に平民が話しかけるなどありえない。家柄に囚われないチン道の世界だからこそ見られる光景である。
なんか2人が話してるし自分はちょっと避けておくか……と距離をとったところで、キリーネヤと相手選手が入場する。
「キリー! 頑張れ―!」
「勝ちなさいよねー!」
さっきは緊張を隠しきれていなかった黒猫も、姉らとのやりとりで覚悟が決まったのか雰囲気が引き締まっている。
絵面は……うん……まぁ……両腕を後ろ手に拘束されて下半身は裸、チンだけが雄々しく天に向いているのは……
お前ら笑うな! マフィたちはもう見慣れて何も思わなくなったんだぞ!
応援すると同時に、マネージャー2人は対戦相手を見て目を見開く。
「なんだありゃ……」
それくらいしか言葉が出てこない。ほぼ絶句。
「娘です。何なりとよーく見ろ」
パナラスの娘、ドロシーは一言で言えばゴリラだった。猿族なのに。
身長はブリュンヒルデすら超えている。小柄なキリーネヤと並ぶと本当に同じ人間かも疑わしいレベル。
そして筋骨隆々。ムキムキ度で言えば褐色熊族よりすごい。全体的に太って見えるが全部ゴツゴツ筋肉だ。
チンのサイズも言わずもがな。アレを受け入れられる相手は存在するのか。
化け物が立ってるのかと思った。
これには観客も騒然である。
風呂入ってる場合じゃねぇ。
「大したもんだ。だがオレ様の敵じゃねぇ」
「勘違いするな。ドロシーの潜在パワーは貴様をはるかに超えている」
不敵に笑うブリュンヒルデと、娘の勝利を疑わないパナラス。
平民のくせに急にタメ口で喧嘩腰だが咎められることはない。チン道は家柄に以下略。
「が、頑張れキリー!!」
「図体だけよー!!」
「そ、それでは1回戦第4試合を始めます! 双方、勃起はよろしいか!」
審判も動揺している。
一方、キリーネヤの表情は変わらない。いまだにクールっぷりを見せつけている。
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします……まずお前から血祭りにあげてやる」
ドロシーはめちゃくちゃ好戦的だった。
いきなり敬語外すな。親が親なら娘も娘だ。
「チン道の始祖チュラント神に恥じぬ戦いを……は、はじめ!」
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」
先手を取ったのはドロシー。
あの巨体からは想像もできないフットワークで一気に接近、腕みたいなチンでキリーネヤを正面からぶっ叩く。
そのチン圧は客席にまで衝撃が届くほどだった。
そんな攻撃を食らえば、軽いキリーネヤは吹っ飛ぶに決まっている。
彼女は無言で受け、本当に吹っ飛んだ。
「今のって、ブリュンヒルデ先輩の技!」
上半期に観察していたことを覚えていたマフィは、今ドロシーが行った動きと練習中に見たブリュンヒルデの動きが同じであることに気付く。
それは先輩本人も分かっていたようで、彼女は今日初めて真剣な表情を浮かべた。
「あの技はオレ様が親父から教わったものだ……なんで奴があの動きをしてる?」
「フフ」
「答える気は無いか……何者だ。ただの平民じゃないな」
「やっと能天気なお前でも飲み込めたようだな。すべてはお前の言う通りだ」
そこからパナラスは自分が元貴族、それも一位官であり、ブリュンヒルデの父親であるシュターナ現当主との「負けた方が貴族位を捨てる」決闘に敗れて平民に落ちたことを告げた。
その復讐として娘ドロシーを最強のチン士に育て、シュターナの次期当主を負かすという目的で大会に参加したようだ。逆恨みであった。
シュターナ現当主から見て盗んだ技も教え込まれたドロシーは、まさしくブリュンヒルデを倒すのに相応しい選手となったようだ。
ちなみに今の話は別に覚えなくていい。どうせ今回限りだし。
凄まじい攻撃にも関わらず、キリーネヤはダメージを受けたようには見えない。黒猫長チンはいまだ健在。
接触した際に衝撃を受け流したのだ。器用な真似である。
「ぬぇあぁぁぁぁぁ!!」
しかしドロシーの猛攻は続く。
乱暴にチンを振り、力任せの大振りファイト。
キリーネヤはそれを避け、受け流し、時に正面から受ける防戦一方。
その苛烈な攻めによって、趨勢は見えたかのように思われた。
客席にいるチョーネヤとジーネヤは早速妹が負けそうなことにクスクス笑っている。
パナラスは「ははははー! いいぞー!」と上機嫌。
「あ、悪魔だぁ……」
観客の誰かが呟いた。確かに悪魔的な怒涛の攻撃だ。
だ、大丈夫だろうな……? 修行の後は勝ち確なんだよな……? まさかお約束が覆るなんてそんなそんな。
「キリ……!」
「なにやってんの! あんたの力そんなんじゃないでしょ!」
しかしキリーネヤの勝ちを信じる者もいる。
女の子2人に祈られてやられっぱなしかキリーネヤ・ロマネフよ。
「はあっ!!」
ここで黒猫少女が初めて反撃に転ずる。
鋭い一撃だ。上半期の彼女とは次元が違う。
それほどのレベルアップ効果があるのだ。あの塔には。
が……
「何なんだぁ? 今のは……」
人並み外れたチンを持つドロシーにとって、長いだけの細チンなど物の数ではない。簡単に受け止められた。
「大人しく負けていれば痛い目にあわずに済んだものを……よく頑張ったがとうとう終わりの時が来たようだな」
そして巨体が動き、キリーネヤを再び吹っ飛ばす。
今度は壁に叩きつけられた。
まるでバトル漫画みたいな轟音と土煙だ。
今のはイカンだろう。射精したら負けとか関係なしに終わっただろう。
そんな空気になる中、土煙の中からキリーネヤが現れる。彼女はまだ立っているし勃っている。これまたバトル漫画みたいな演出である。
「ハァ……ハァ……まだ生きていたのか……!」
生きてなかったらダメだろ。
戦いに興奮したドロシーは失言など気にしない。
「悪いけど、今のが全力なら私の勝ちね」
「ッ!」
バトル漫画にはまだお約束があった。
激しい戦いをしている時、寡黙な方が勝つのだ。何故なら余裕を崩していないから。
対してドロシーはキリーネヤのたった一言に調子を乱される。
「ドロシー! 一体、どうしたというんだ……」
「フッ……どうしたもこうしたも、キリーネヤの言う通りってわけだ」
ブリュンヒルデもまた勝負の行方を察したようだ。
「今のは確かに重い一撃だった。射精させるのではなく折るためのもの……ルール上は萎えたり折れたりしても負けだもんな」
中々にダーティーな戦術だが、ルールでは認められているのでそこにはとやかく言わない。
「マフィ、試合が始まってから何分経った?」
「えっと……うわ、10分超えてる」
「っ、まさか……!」
「そう、そのまさかだ。ドロシーはスタミナが切れてきたんだよ」
あの巨体と巨根は確かに凶悪。
しかしエネルギー消費も激しく、持続力においては片手落ち。
キリーネヤはそこを見抜き、敢えて攻撃させ続けることで相手のガス欠を誘った……とブリュンヒルデは語る。
「だがあのレベルの攻撃を凌ぎきるとは、あいつもやるな」
「ふふん、当然よ! キリは強くなったんだから」
「メロリィ、お前さっきまでハラハラしてたろ」
「しょうがないでしょ試合に関しては素人なんだから!」
ブリュンヒルデの解説で場内は一気に逆転ムード。
身長差的なジャイアントキリングが成されそうなのだ。盛り上がるのは当然。
「くっ……だがいくら攻撃を防いだとて、このアタイを超えることはできぬぅ!」
「────シッ」
一瞬、キリーネヤの姿が消える。少なくともメロリィにはそう見えた。
「っ、塔の時と同じ!」
小柄な体躯で活かせるもの、それはスピードだ。
自身に重さが無いのなら、速度というエネルギーを使うのに帰結するのは必然とも言える。
両腕を拘束されたままの高速移動は骨が折れたが、塔での修行でキリーネヤは会得してみせた。
走りながら体を捻る。遠心力も加わり、必殺の一撃が繰り出される。
疲れたドロシーに対応できる暇などない。
軽やかに舞う猫の
ベチーーーン!! と、肉同士がぶつかり合う音がした。
まるですれ違いざまに斬ったように、キリーネヤは巨体の隙間を通り過ぎていた。
「ば、バカなぁぁぁぁぁ!!」
ドロシーが敗北の証を撒き散らしながら膝をつく。
勝敗は決し、キリーネヤは観客席を睨んだ。
キリーネヤの狙い通りとはいえ、傍から見る分には大逆転劇だった。
観客は拍手喝采。中には立ち上がる者まで。
来賓として試合を見ていたロマネフ夫妻も、娘の成長に惜しみない拍手を捧げている。
……が、そんな感動の一幕が面白くない者だっている。
「お、お姉ちゃんどうしよ、キリーネヤすっごく強くなってるんだけど……」
「くっ……あの愚昧ぃ……!」
姉2人は苦々しい表情を浮かべていた。
ここにマフィたちがいたらさぞ煽ったことだろう。
「パないよ~……ホントに優勝ありえるんじゃね?」
「絶対に許さないわそんなこと……! こうなったら、コレを使うしかないようね……」
「え、でもお姉ちゃんそれって……まずくない?」
「まずくない! あの子が控室が戻る前に行くわよジーネヤ!」
「(調子に乗っていられるのも今のうちよキリーネヤ……あなたは次の試合に出ることすら叶わないのだから)」
多少予想外だったが、まだ大丈夫。まだ巻き返せる。
妹とは一生姉の玩具でいるべきなのだ。
姉が歪んだ薄ら笑いを浮かべて通路を歩く。
コッテコテな暗躍である。
■TIPS 投影スクリーン
約20年前に開発された技術
詳しくは4話の後書き参照
■読み飛ばした人のためのまとめ
チン道大会が始まり、キリーネヤの2人の姉が登場
長女チョーネヤは性格キツそうな美人、次女ジーネヤはギャル
彼女らはキリーネヤが1回戦を突破したのが面白くないようで……
ロマネフ姉妹の関係については25話参照