※この作品はR-18です。

ケモミミ貴族令嬢にTS転生したら、ふたなりたちに玩具にされた   作:ぐらんぐらん

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54 例えばメロスが間に合わなかったセリヌン某

 マフィは思い出した。必ず、あの邪智暴虐の媚薬を除かねばならぬと決意してたんだった。

 

 マフィには錬術薬が多少わかる。マフィは、錬術薬研究会のメンバーである。薬術を学び、狼王女に遊ばれて暮らして来た。

 

 

「私は薬を作りに行く。あんたらもチン道選手だってんなら、つまんねぇ妨害なんかすんなよ」

「何も知らない小娘が偉そうに……!」

「ああ、少ししか知らないね。でも私も妹を持つ姉だ。そりゃ気に入らない時もあるし喧嘩もするよ……でも妹って、それだけじゃないだろ? 子供のころ、追いかけられたこともあるだろ、ちっちゃいなぁとか思ったことあるだろ? どれだけ大人になっても、姉は妹を守るもんだろ、応援するもんだろ、あんたらお姉ちゃんなんだろ!」

 

 兄貴がどうして先に生まれてくるか知ってるか……BLEACH理論がキマる。

 

 まるでラノベの説教主人公のようなムーブをかますマフィだが、チョーネヤもジーネヤも反論しない。

 居心地が悪そうにそっぽを向く2人を一瞥し、マフィは部屋を出た。

 

 

 

 黒猫姉妹を見事打倒したマフィはチョーネヤから薬の材料を聞き出すことに成功。

 

 アマモ葉……催淫成分を持つ葉っぱであり、その植物が発見された村は年中乱交パーティーが開催されるこの世の楽園のようだったという。

 

 相手2人を潰すセックスで媚薬の効果も少しは発散できた。

 完全に無くなっていないのは、これが本当の発情期ではないから。

 ぶり返してくる前にさっさと解毒しなければ。

 それに今は大会中。2回戦が始まるまでに持っていかなければ友が無様を晒してしまう。

 

 マフィは走った。

 

 地上に出て、階段を3段も飛ばした。ランニングを日課にしたのが良くはたらいた。箸より重いものを持たない深窓の令嬢では疲れ果てて動けなくなっていただろう。

 

 学院7階のクラブルームは誰もいない。今日は休日、部屋の主は今頃屋敷でセフレとお楽しみだろう。

 そんなことを気にしてる場合ではない。

 

「アマモ葉の対になる素材は……!」

 

 部屋にあった図鑑をめくり、めくり、めくり、見つけた。

 

「これか! サイブスの鎮静薬……」

 

 

 幸い、ここにある器具で作れるものだった。

 薬品棚を探せば各種材料も揃っている……が……

 

「…………」

 

 マフィの手が止まる。

 

 躊躇した。友を助けるためとはいえ、マフィは取り決めを破ろうとしている。

 

 錬術薬の実験をする際には、必ずジャスリンが監督しなければならない。

 これは万が一を防ぐためのもの。素人がひとりで実験をして事故が起きないようにするためのもの。破れば優しい王女様でさえ許さないだろう。

 下手をすれば研究会の追放も……

 かといって今から屋敷に走ってお楽しみの最中に割り込めるか……間に合わない。刻限は迫っている。

 

 勇者に不似合いな保身の心が首をもたげた。

 

 何のためにあの叡智暴虐の王女に股を開いてきたのか。

 

 生やす薬のためだ。

 

 すべてを無駄にする気か。

 

 

「…………ええい!!」

 

 瓶を手に取る。

 

 サイブスとは西の方に生える植物の果実を指す。

 食用ではないが、薬用としては知られている。

 

 実は5つ、保管されていた。

 

 他の材料も多分に揃っている。

 

 作り方は……なんとなく分かる。実験で頭痛薬を作った時と似ている。本を読みながらならなんとかなるだろう。

 

 材料を潰し、刻み、抽出し、混ぜる。

 

 工程は丁寧に。

 とある映画にこんな台詞がある。「ゆっくりはスムーズ、スムーズは早い」

 焦って急ぐよりも着実にこなす方が失敗もなく結果として早い、という意味だ。

 

 残念ながらマフィは前世でその映画を見たことはないのだが、ジャスリンの教えもまた同じものが通じている。

 

『錬術薬を作る時に一番大切なもの、それは安全だ。誰も早さを競ってはいない。決まった分量を、決まった通りに』

 

 今まで積み重ねてきた基礎は、マフィを裏切らなかった。

 

「よし……あとは……」

 

 混ぜ終わった鍋の中の薬を見る。これはまだ未完成だ。

 

 サイブスの鎮静薬は、ここからが勝負。

 

「『熱の毛皮よ、拒絶の衣よ、ここは家の中と知れ』」

 

 物体を冷やす神術……正確には熱を奪って空気中に放る気化熱の術。

 この薬は混ぜ終わって急速に冷やすことで効力を得られる。

 

 しかし勝負とはここではない。

 

 鍋の中身を5つの小瓶に移し替え、もうひとつの神術が必要になる。

 

「『取り巻く楔、見えない空色の手、母の代わりに撫でておくれ』…………あっ、くそっ」

 

 それは痛み止めの神術。しかも強力な。

 未完成の薬とこの術を組み合わせると、アマモ葉に対応した鎮静薬が出来上がる……のだが、そう簡単にはいかない。

 

「あと4つ……失敗できるのはあと1回だけ……!」

 

 仕上げの作業、これが曲者であった。

 

 術をかけると、元々藍色をしていた中身の色がどんどん薄くなり、水色へと変わる。

 術のかけ具合、この塩梅を間違えるとすぐ水色を通り越して白い液体になってしまう。そうなると失敗。ただの高価な痛み止めになってしまう。

 かといって術が足りなければ望む効果には届かない。

 

 初めて作る者にとって難易度の高い薬なのだ。

 

「ふーっ……ふーっ…………よし……!」

 

 媚薬の名残で体はまだ熱く、走った名残の早鐘は収まらない。

 加えてこの季節、初夏は黙っていても涼しくならない。

 

 マフィは思った以上に冷静さを欠いている自分に気付いた。

 

「『熱の毛皮よ──」

 

 自分自身に気化熱の術を使い、頭と体を冷やして臨む……

 

 

 

□□□□□

 

 

 

「…………できた、よな?」

 

 もう神力は使い切った。雑魚のマフィにとっての精一杯だった。

 

 5つある小瓶のうち、成功したと思われるのは3つ。どれも綺麗な水色。

 

 これは下水に溶かしても大丈夫なやつなので、失敗した物は流しに破棄。

 

「よし……大丈夫、大丈夫……」

 

 本当に成功したのか、手っ取り早い確認法はただひとつ。

 マフィは一気に小瓶をあおる。

 

「んくっ…………はぁ」

 

 喉を鳴らして1分ほど。マフィは確かに体の奥底で燻ぶる熱が収まっていくのを感じる。

 心臓の音も規則正しく。

 

 成功だ。

 

「や、やった……! 作れた! やった!」

 

 誰の助けも借りず、自分ひとりで薬を作り上げた。場違いな喜びと達成感。

 

 酔いしれている暇はない。今も友は苦しんでいる。

 器具を片付けている暇も……

 

「今日中には……」

 

 とりあえず放置。大会が終わってからでもいいだろう。

 この部屋はクラブメンバーしか入れない。誰かがやってくることもない。

 

 冷静になった頭が告げる。まだ時間はある!

 

 マフィは駆ける。さっきは下から上へ。今度は上から下へ。

 

 

 

□□□□□

 

 

 

 会場は学院の地下とはまたちょっとズレた場所にある。道場と繋がっているとはいえ、城下町を通った方が早かった。

 マフィはわいわいと賑わう休日の学生たちを追い越し、すり抜け、デビルバットゴースト。

 

「よし、このまますぐに──」

 

 はたと、足が止まった。

 3人で行った高級スイーツのお店から、同級生の2人組が出てくるのを見た。

 クラスメイトで、顔も名前も知っている。クラスでは有名なラブラブカップルだ。

 

 傍から見るには美少女と美少女、オタクが喜ぶ百合カップルであるが、その実はふたなりと女の子。同い年の婚約者同士によるデートである。

 

 本来なら微笑ましいだけで、生気の抜けたような顔をして眺めなくてもいい。

 

 しかしマフィは、鎮静薬で頭の靄が晴れたマフィは、微笑ましい光景にいらぬ幻想を見た。

 

 自分もあんな風に、アヤと休日にデートをするべきなのに──

 

 今やっていることといったら、王女の毒牙にまんまとかかり、友達のためと言いながら体を許し、ついさっきも会ったばかりのお姉さんたちと激しく乱れ……

 

「あ……ああ……あ…………」

 

 マフィは壁にもたれかかった。

 媚薬からの落差、エグい賢者タイムが少女を襲った。

 

 5話ぶりに再登場……もうひとりの僕、暴君マフィオニス……

 

 

 お前は何をやっているのか。

 元はと言えば他人事。ここまで体と立場を張る必要などないというのに。

 大会は今年だけではない。決して最後のチャンスなんかじゃない。来年もある。

 いま頑張らなくてもよかったのに。

 

 錬術薬研究会に入ったのは分の悪い賭けだった。

 それを承知の上で入り、王女と爛れた関係になった。

 だというのに、ひとりで薬を作る掟破りによって棒に振ろうとしている。

 

 いつかイリーゼが言った通りだったのかもしれない。

 友達は選ぶべきだった。そうすればこんな目にも、それ以前にブリュンヒルデ先輩に犯されることもなかった……

 

 なんかどうでもよくなってきた。

 もうどうなってもいいや。

 

 

 

 ああ、あ、会場から学院7階まで走り切り、難易度の高い薬を3つも作り韋駄天。ここまで頑張ったマフィよ、真の勇者マフィよ、今ここで賢者になって動けなくなるとは情無い。

 愛する友はお前を信じて薬を待っている。媚薬に苦しみ待っている。

 お前は稀代の淫乱の人間、このままではヤリ損だぞ。

 

 

 ──カラン。

 

 

「っ!」

 

 ポケットの中で小瓶同士がぶつかった。

 

 まるで友の悲鳴のようで、マフィは我に返る。

 

 何を立ち止まっているんだ。

 お前は友を見殺しにする裏切り者ではない。

 薬を作り上げた。この成果は誇っていいものだ。友のため、やり遂げたのだ。

 

 キリーネヤが好きだ。メロリィが好きだ。友をこの上なく愛しているのだ。

 

 折れる必要も迷う必要もない。何を挫ける必要があろうか。

 この行動は友がため、咄嗟のこと。人が人を思う気持ちが故。

 

 もうひとりの僕が霧と消える。

 

「ローファー履いてくるんじゃなかったな」

 

 天晴(あっぱれ)、軽口を叩く余裕が戻った。

 

 会場への道は城下町を抜け、人の来ない林に隠されている。走れ! マフィ。

 

 

 

□□□□□

 

 

 

 マフィは走った。途中妨害してくる濁流だの山賊だのはあるはずもなく、恨み節しか吐かずクソの役にも立たない不審者も現れない。無事に会場へと戻ってくることができた。

 

 ちょっと足がもつれそうになった時、マフィは疾風の如く控室に突入した。間に合っ

 

 

「メロリィっ♡♡♡ メロリィっ、また出、りゅぅっっ゛♡♡♡」

「らひてっ♡♡ 中に、びゅーって!♡♡ にんひんさせてぇっ♡♡♡♡」

 

 

 びゅぐぐっ!♡ びゅるるるっ♡♡ びゅーーーーーっ♡♡

 

 

 部屋に入ってまず目にしたのは、ベッドの上で交わる友であった。

 

 2人の周りには精液で膨らんだゴムがいくつも散乱しており、その数はさっき見た別の控室に置いてある分と同じ。

 そして今、2人を隔てるものは何もなく、どぷどぷと放たれる精は、蕩けた顔のピンク兎の胎内へと注がれている。

 

「な、あ…………ッ、あ……!」

 

 マフィにとって、とんだそら豆だった。

 ところで『とんだ、そら豆だ』の場面を初めて読んだ時「そんなにでけぇクリトリスなのか……」と思うのは誰しもが通る道である。

 

 そら豆の話はいい。今はメロリィの2つあるさくらんぼのうち片方にしゃぶりつきながら幸せそうな顔を晒している黒猫だ。

 

「キリ……! おい!」

「お゛……ま、だ、でりゅ……♡♡ メロリィ、すきぃ♡♡」

 

 ダメだ。IQが3まで下がってる。

 

「メロリィ! お前何やって……」

「んふぇ? あ、まふぃ……♡ すごいのよ、キリのチンポ♡ わたし、初めてだったけど、ぜんぜん痛くなくて、奥、きもちいい♡♡」

 

 こっちもダメだ。

 うら若き転生仲間は見たことのない恍惚とした顔で涎を垂らしている。

 

 

 2人は耐えられなかった。

 媚薬の力は強かった。

 

 マフィの名誉のためにも説明すると、これは間に合わなかったとは言い難い。そもそもが無理な話だったのだ。

 

 もしもチョーネヤが大人しく材料を教えてくれて、調薬も失敗なく完璧にやって、今の倍の速さで走っても結果は同じであった。

 というかマフィとジーネヤがヤッてる時にはもう2人の理性は終わっていた。

 

 苦しみに耐える中、目が合い、どちらともなく手を重ね、唇も重ね……

 

 ああ、もしマフィが部屋を出る時に2人を縛っていれば……たらればは後からいくらでも言える。

 

 大事なのは過ちと向き合うこと。修正すること。

 

「お前ら離れろ! 薬作ったんだ、飲め!」

「ま、まって♡ もういっかい♡♡」

「もっとぉ……♡ もっと出してぇ♡♡♡」

「だーーー! いい加減にしろ!!」

 

 2人の口は半開きのまま。これは薬を含ませたとして嚥下してくれるだろうか……

 

 マフィは半秒だけ躊躇し、小瓶をあおって薬を口に含む。

 

「んっ……!」

「ん、んんっ♡ ん……んくっ、んくっ……」

 

 まずキリーネヤ、次にメロリィ。

 繋がったままの2人の頬を掴み、口移しで飲ませた。

 

「んく、んく……♡ なぁに~? マフィも混ざりたいの~?♡♡」

 

 メロリィが首に手を回してきて舌を絡ませてきた。

 反射的に引き剥がし、勢いあまって床に尻もちをつく。全力疾走からの調薬からの全力疾走で精魂尽き果てた。

 

 行き場を失った唇たちは、自然と目の前にある顔へと向かい……

 

「めろりぃ♡ ちゅっ、ちゅるっ♡♡ ちゅ………………え……あ……」

「んっ♡ もっとぉ♡♡ キリ、キリっ♡♡ ……………………は…………?」

 

 そして時が止まる。

 

 鎮静薬がしっかり効いた2人は微動だにしなくなり、やがてわなわなと離れていく。

 

 チンポが抜け、ゴポリ♡ と兎の秘所から濃厚な猫ザーメンが溢れ、両者は口に手を当てて顔面蒼白に。

 

「あ、ああああ……! ああああああっ!!」

「き、キリ落ち着け!」

 

 当然、キリーネヤはパニックに陥る。

 媚薬のせいとはいえ友達の処女を奪い、膣内射精までしてしまった。

 黒猫の脳裏と口の中で言葉が反芻する。「とりかえしのつかないことを……」

 

「ぁ……わ、わたし、私……!」

「キリ、お前のせいじゃない! 薬のせいだ!」

「ち、ちがう、私の、私のせい……私がメロリィを……!」

 

 耳とチンポがへにょんと垂れたキリーネヤの双眸に涙が溜まり、落ちる。

 

 

 コン、コン、コン──

 

 

「っ!?」

「すみません、キリーネヤ・ロマネフさん。2回戦の準備をお願いしまーす」

 

 なんて運のない。いや、時間に運もなにもない。

 

 試合? 子供がまだ泣いてる途中でしょうが!

 ……とは言えないので、震える黒猫の代わりにマフィが「はーい!」と返事をする。

 

 だが返事をしたところでどうなる……

 

「(無理だ……こんなん出られる状態じゃない……)」

 

 マフィは己の無力さを呪った。

 薬を作って飲ませることができたまではいい。

 しかし既に何発も射精してしまったチンは下を向き、なにより選手のメンタルがズタズタ。

 

 代わってやれることも、勃ち直らせてやることも、マフィにはできない。

 

 棄権するか……マネージャーなら申し出る権利も持っているし……

 

 

「キリ!!」

 

 気の強い声が部屋に響く。

 さっきまで一緒に震えていたメロリィの声だった。

 

 同時に彼女の両手がガッ! とキリーネヤの頬を掴み、引き寄せ……触れるだけのキス。

 

「試合行きなさい!」

「め、めろ、り……」

「私にこんなことしておいて、そのうえ不戦敗になるつもり!?」

 

 動揺する黒猫の肩を何度も揺さぶり、何度もキスをする。

 

「負けたら許さないからね! 私、初めてだったんだから!」

「お、おいメロリィ」

「マフィは黙る!」

「はい」

「いい? キリ、あんたは悪くない。薬のせい。だから気にしないで、試合に集中して」

 

 ペシペシ。頬を叩かれたキリーネヤはまだ呆然としている。

 

「返事ィ!」

「う、うん……」

「ほらチン拭いて、勃たせる!」

「いやさすがにそれは……」

「マフィは黙る!」

「はい」

「あと……キリ……」

 

 ようやく背筋を伸ばしたキリーネヤの猫耳に口を近づけ、兎は声に色艶を混じらせ囁いた。

 

「私、別に、気にしてないから……」

「えっ……?」

「さっきのこと、思い出して、勃たせなさい」

「メロリィ……」

「ほら! さっさと行く!」

 

 キリーネヤは今度こそ立ち上がる。いそいそとチンをシーツで拭き、掃除神術をかけ、部屋を出た。

 

 マフィはそれを追おうとし、かといってメロリィを放っておくこともできない。

 さっきまで気丈に振舞っていたピンク兎は「はぁぁぁぁ~~……」と項垂れた。

 

「私の初体験、これかぁ……」

「メロリィ、その……」

「マフィ、キリをお願い。私はちょっと……まだ無理っぽい」

「大丈夫か? 人を……呼ぶわけにもいかないか……」

「大丈夫。それと……ありがとね。薬持ってきてくれて」

 

「……おう」──マフィは部屋を出た。

 

 

 後に残されたメロリィは自分の下腹部を見て、手は膣内射精の名残を確認する。

 

 熱い。

 愛おしい。

 

「ったく……」

 

 思い出すのはさっきまでのこと。

 互いに求め合って、達し合った記憶は消えない。

 当然、自分を貪る彼女の顔も。

 

「この世界、乙女ゲーじゃないんだぁ」

 

 兎は顔を赤らめながら、呆れたように笑った。

 

 

 

□□□□□

 

 

 

 キリーネヤはさっきの情事を思い出し、なんとか勃起を回復した。

 

 しかしメロリィとのラブラブエッチにすべてを出し尽くした黒猫は、続く2回戦、イリーゼ・ターカビーシャにウソのようにボロ負けした──

 

 幼い頃よりチントレを欠かさず行ってきたイリーゼの猛攻に、とうとう娘が萎えてしまったのである。

 

「ごめんマフィ、ダメだった」

 

 マネージャー席に戻ってきた黒猫を抱き締め、マフィ涙を堪えた。

 泣きたいのはキリーネヤの方だ。自分が泣くわけにはいかない。

 でも少しだけ涙を流した。

 

 まだ初夏だというのに、夏が終わりそうな空気だった。

 

 

 その後イリーゼは次の試合で敗退。

 順当というべきか、優勝杯を勝ち取ったのはブリュンヒルデだった。

 

 

 

□□□□□

 

 

 

 控室に戻る途中、マフィはなんとか励まそうとした。

 メロリィは本当に気にしてないから、よく頑張ったよ、などなど。

 それでもキリーネヤは生返事。仕方のないことだった。

 

 

「キリーニャ!」

 

 2人の背中を追うように走ってきたのは、初めて見る黒猫たちだった。

 彼女らはキリーネヤの両親だ。後ろにチョーネヤたちもいる。

 

「お、とうさま……お母様……」

「キリーニャ、よく頑張ったニャ」

 

 父親らしき人がキリーネヤに近付き、肩に手を置く。

 

 あんまり娘に興味ない系の父だと聞いていたマフィは驚いた。

 そう話した本人(キリ)も驚いている。

 

 続けて母が娘の頬を撫でた。

 

「まさかパナラスの鍛えた娘が出てくるとはニャ。それを倒すなんて……強くなったニャ、キリーニャ」

「お母様……」

「そこの2人に全部聞いたニャ。媚薬のことも……それでも試合に出た。母はそれが嬉しいニャ」

 

 振られた長女と次女はビクッとそっぽを向き、一瞬だけマフィを見て顔を赤らめる。

 

「まったく……妹の妨害など、それも媚薬で恥をかかせようなど言語道断ニャ。チョーニャ、お前は一から心得を叩きこむ必要がありそうニャ」

「はい……」

 

 父に冷たい声を浴びせられたチョーネヤが俯く。

 

 言及されなかったことにホッとしたジーネヤには母が睨みをきかせた。

 

「ジーニャ、あなたは今年中に結婚相手を見つけるニャ」

「なんで!?」

「思うにあなたがストッパーにならないからこういうことが起きたニャ。それにいつまでも遊び惚けて……家庭を持って落ち着けニャ!」

 

 媚薬を盛ったのが姉2人だと今初めて知ったキリーネヤは黙って歩み寄った。右手で握った拳を掲げながら。

 

 

「ところで、あなたはキリーニャのマネーニャー?」

「あ、はいマネージャーです。マフィです」

「いつもありがとうニャ。娘が色々と世話に……もしかして、好い仲ニャ?」

「え!? いいえ、私は友達で……」

「あのっ、お父様!」

 

 割って入ってきたのは姉2人をグーで殴ったキリーネヤ。

 既に敗北の悲しみを呑み込んだようで、真っ直ぐに父を、そして母を見つめる。

 

「マフィは友達。でもあとひとり紹介したい人がいるの。もうひとりのマネージャーで、私の……好きな人」

 

 黒猫は、ひどく赤面した。

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