ケモミミ貴族令嬢にTS転生したら、ふたなりたちに玩具にされた 作:ぐらんぐらん
マフィ・モフテイル……主人公、下半身太め狐族、弱い
ドミルア……褐色メイド犬族、チャラい、チンポがデカい
マレット……お姉さんメイド犬族、おっとり、チンポが太い
ローラ・モフテイル……拳骨お母さん虎族、厳しい
リアリス・モフテイル……次期当主、シスコン狐族、チンポがでっかい
アンニャ……リアリス付きメイド猫族、元バリタチ嬢、ニャ
アヤ・ホウジョウ……マフィの婚約者、和風ロリ狐族、かわいい
実は下半期に、実家から親や近しい者が授業参観の名目で島を訪れる日があった。
しかしマフィはその日、折悪くいつもより体の調子が悪かった。
身重の体に鞭打つわけにもいかず、休んだのだ。
リアリス・モフテイルは愛しの姉に会えないまま、キリーネヤとメロリィの面識を得るだけで島を出ることに。
「いやあぁぁぁ! お姉様! おねえぁ゛さ゛ま゛ーーーー!!」
アンニャに羽交い絞めにされながら船のへりにしがみつく様子は、周囲の者をドン引きさせたという。
ちなみに本来なら母ローラも来るはずだったのだが、家でゆっくりしている。
どうしてだろうね?
リアリスに妹がデキたせいだ。姪もデキちゃってるけど。
クラリッサとローラには娘と孫が同時に出来て、マフィには妹と娘が……もう何が何やら。
家系図に書かれるのはクラリッサが身籠った二卵性の双子だけだ。
さすがに下半期終わりの長期休みにまで帰らないわけにもいかないので、マフィは今度こそ帰省することにした。
キリーネヤとメロリィも今回は帰るようだ。
まぁ島に残ったら確実に発情期が重なってデキ婚まったなしなのでその方がいいだろう。
発情期が来ないうちに互いの家に挨拶もしに行くとか。おいおい結婚か? キッスからの入籍入籍?
実際結婚しそうだ。年が明けてまた会う時には「正式に婚約者になった」と報告されてもおかしくない。
妊婦を船旅に!? という心配は無用。
貴族令嬢を乗せる客船だ。当然ながら乗客が快適に過ごせるようにした特別製である。
例えば船酔い対策には船内の揺れを抑える神具が使われてたり。
言うなれば移動するホテルだ。お貴族様への気遣いはそのまま妊婦への気遣いにもなっていた。
港から首都カンナまでの道のりは馬車。
ケツが死ぬ? 心配ご無用。
貴族令嬢を乗せる馬車だ。当然ながら乗客が快適に以下略。
普段は各家の馬車が迎えに来たり、低位貴族なら乗合馬車を使ったりする。
しかし今回はどっかの第四王女が手を回して、いつもより上等なものが手配されている。
マフィだけ特別扱いでは変な噂が立つので、帰省する生徒全員分。太っ腹。
まぁ孕ませたんだからその辺の責任も彼女が持つのは当然だろう。
もう生徒じゃないスパダリセフレの置き土産だと思えばいい。
「(卒業……したんだよな……)」
貴族学院は2年制。
先輩であるジャスリンはもう卒業してしまった。
卒業式は2年生だけで行うので、マフィにとってはいつの間にかって感じだ。
「(ジャスリン様も、ブリュンヒルデ先輩も……もう中々会えないのかぁ)」
まぁ殿下に関しては定期的に偽装神術をかけてもらうのでちょくちょく会うことにはなるだろうけど。
それにしても、来年はマフィのためにわざわざ島に通ってくれるのだろうか。
王族にそこまで手間かけさせるなんて、普段なら同じ王族くらいにしか許されないだろう。
数日かけ、学院からカンナにカムバック。
入学前と変わらない風景が出迎えてくれる。
ヨーロッパ風ファンタジーな建物群と森が組み合わさったような街並み。
人が忙しなく行き交って、常に何かの音がする。
1年ぶりに見る景色は「こんな都会だったっけ」と思わせる。
オラオラ! お貴族様のお通りだ! 殿下手配の馬車やぞ!
──と言わんばかりにマフィを乗せた馬車が大通りの中央を進む。
やがて着いたのは、実際より長い間見ていない気がするモフテイル邸である。
「あっお嬢様ー!」
馬車が見えてからすぐ手を振り始めたのは、褐色の犬族メイド。
隣ではおっとり犬族メイドが「やめなさい、はしたないですよ」と振られる腕を掴んでいる。
ドミルアとマレット、ひっさびさの登場である。
三位官令嬢の帰省ともなればその日に先触れが来る。
ずっと門で待っていたらしい。実に出来たメイドたちだ。
まぁドミルアの方は出迎えを口実に仕事をサボっていたようだが。
「2人とも久しぶり。ただいま」
会えて嬉しい顔ぶれではあるが、発情期から続くこんな境遇を作り上げた張本人たちなので手放しで再会を喜べるか……?
そんな思いがチラついて、マフィは嬉しくも恨めしくもないフラットな感じでのただいまになった。
「おかえりなさいませお嬢様。このマレット、お嬢様のお帰りをおま、お待ち…うっ」
なんか感極まってるメイドがひとり。
「荷物お持ちしますねー、お疲れでしょ? お部屋でお休みになってください」
褐色メイドはいつも通り。
……いつも通りすぎる。1年も離れ離れになったとは思えないほど。
そんなもんなのだろうか。
マレットのようにしんみりするか、ドミルアのように軽く接するか……そんな迷いを吹っ飛ばす白狐が屋敷から門まで全力疾走してくる。
「お゛ね゛え゛え゛え゛ゑ゛ゑ゛さ゛ま゛ぁ゛ァ゛ァ゛ァ゛ーーー!!!!」
「ぐえーッ!!?」
リアリスのすてみタックル! マフィのみぞおちにダメージ!
お腹に赤ちゃんがいるんですよ!? 妹は知らなかった。
この世界の人間が頑丈でよかった……
「ほっ、ほほほんっ、ほ、ほっほのもんんっ! 本物のお姉様!!!」
「リアリス様落ち着いてください!」
「そうですよ、ここ外ですよー……力強っ!?」
三位官令嬢が揃って門前で地に尻をつくなど醜聞でしかない。
リアリスの異常さで冷静になったメイド2人がなんとか引き剥がし、マフィも立ち上がる。
「お゛……お姉様……! 匂い、感触、味……! あと神術…………神術の気配?」
「おいお前ら! どうなってんだ!」
「いやぁ前の長期休みに帰ってこないのが悪いっすわ」
「加えて授業参観の日も欠席されていたとか……折の悪さもそうですが、仕方のないことかと」
ドミルアとマレットは妹についた。ここに味方はいないのか……
確かに長期休みを過ぎ授業参観も休んだあたりから、リアリスから送られてくる手紙が禍々しいオーラを纏ってるから読まずに引き出しに入れたのはマフィだが……
「とりあえずお屋敷へどうぞ。リアリス様はアタシがなんとかするんで……力強い!」
「話しなさいドミルア!! クビにしますよ! 死刑!」
「こちらへ。マレットが案内いたします」
帰ってきて早々わちゃわちゃ収拾がつかない。
しかしこの賑やかさと馴れ馴れしさ、これこそ実家だと思い、マフィは「帰ってきたんだなぁ」としみじみ呟いた。
ひとまず屋敷に入り、使用人一同から「おかえりなさいませ」と言われ、自室(発情期の時に閉じ込められていた部屋ではない)へ。
部屋の主がいなくても手入れが欠かされていない。まるで昨日までここで過ごしていたような気分になる。
すぐにマレットが紅茶を淹れてくれて、一息つくことができた。
「なぁマレット、リアってあんなだったっけ?」
「ええ、まぁ……」
これが一昔前のアニメならクレイジーサイコレズの欄に名を刻んだだろう様子は、マフィの記憶にある妹ではない。
仲直りしてからは性的にいじめられもしたけど、それ以外はもっとこう、淑やかで清楚でモフテイル家次期当主として申し分ない人間だったはずだ。
「その説明をする前にこれまでのリアリス様の状況を理解する必要があるでしょう……少し長くなりますよ」
あんま長くなりません。
マレット曰く、長期休みにマフィが帰ってこないのを知ってからリアリスは荒れたらしい。
いくら教育された貴族令嬢といえど、彼女はまだ13歳。
いくら父親譲りの大人顔負けデカチンポを持っていても、13歳。
自分の感情を制御できなくて当たり前の歳だ。
帰ってくるはずだった姉に会えないともなれば癇癪を起しても仕方ない。
「そんな状態ですから、婚約者の方と会うこともなかなかできず……」
「え、待って、リア婚約者できたの!?」
「はい。メイヤー四位官家との縁談がまとまりまして」
メイヤー四位官家……チュラント族だ。
そこの次女、カレン・メイヤーなる者がリアリスの婚約者となったらしい。
「そうだったのか……」
「つい最近のことですので、お嬢様が知らないのも無理はありません。『動けなくなる前にまとめたかった』と奥様も仰っていましたし」
「あっ……」
動けなくなる前に、とはローラのこと。
彼女もまた懐妊している。
島にいるマフィにその報告が来たのは、奇しくも王女に孕まされた時期と同じ。
まさか母親と同時期に身籠ると思わなかった。
手紙を読んだマフィは思わず「うそやん……」と口に出したという。
「急ぎめに決まった縁談ですので……リアリス様もたいそう驚かれて……」
驚いたというレベルではない。嫌がった。
あの淑女が母親に向かって「やだ!」と言うのを、屋敷に仕えて長い使用人たちは初めて聞いた。
貴族の縁談とは家同士の取引。
家を仕切るローラが決めたことなら、それは決定事項。
そこにリアリス本人の意思はないのは、貴族の縁談ならよくあることだ。
それがまた彼女のストレスとなっていた。
普段の聡明な次期当主ならこうはならなかっただろう。
すべては姉……姉が帰ってこないから……
「あわわわ……」
なんてことだ……友達を優先したばっかりに妹が擦れてしまった……
年齢的にもグレて反抗期に突入しかねない。
「だ、大丈夫なのか?」
「…………」
「なんか言えよ!」
大丈夫じゃないらしい。
マフィは震える。
可愛い妹がグレるなんてとんでもない。
前世では窓ガラスを割って社会に反抗した曲が大ヒットしていた。世界が違えど思春期が爆弾であることに変わりはない。
「リアと話さないと!」
「先に奥様に会いに行きましょうね」
「あ、そうだった……」
屋敷の執務室、本来なら当主や家令が仕事をする場所がローラの定位置だ。
娘の帰りに手を止め、テーブルを挟んでお茶を飲む様は実に親子。
「久しいな。背が伸びたか?」
「そう、ですかね?」
「それか前より細くなったからそう感じるのかもしれんな。シュッとしてるじゃないか」
1年ぶりに見た母ローラは、いつものドンッが鳴りを潜めていた。
まるで最終決戦を終えて憑き物が落ちたライバルのようだ。
まさかもう老けた? いやいや、マフィが知らないだけで妊娠中の彼女は大人しいのだ。ホルモンバランスがどうにかなって情緒があーだこーだ。
優しい声音を不自然に感じてしまうのは、幼い頃からいたずらばかりして怒られていたからだろう。
屈服堕ち無様失神アクメ受精の余韻が尾を引いているとも言う。
今ケツを鷲掴みにされたり股に指を突っ込まれれば、すぐさま種乞い媚びメスに逆戻りする。
まぁ堕とした張本人のクラリッサが仕事で不在なのでそうはならないが。
「話に聞いたが、錬術薬を学んでいるらしいな? あの勉強嫌いだったお前が、どういう心境の変化だ?」
「興味があって……私は神力が弱いから、神術でどうこうってのはできない。でもひとつの錬術薬を作るのに神術は使っても神力の量とかって関係ないんです。だから、私でも学べば身に付くのかなって」
ペラペラペラペラ。
あらかじめ用意していた理由をペラ回す。
内容に嘘はない。ただ本当の理由を言ってないだけ。
だからローラは感心するし、褒める。
「そうか……何かに打ち込むのは良いことだ。偉いぞ、マフィ」
「へ、へへ……」
「錬術薬師の資格を取れば、嫁入りした後もなにかと役に立つかもしれないしな。なにせ薬を作れるのだから」
確かに「お客様の中に錬術薬師はいませんか!?」「私です」的な名乗りはちょっと憧れる。
そういう意味でも錬術薬師の資格は欲しいかもしれない。
まぁ生やす薬さえ出来ればそれでいいのだが。
もし本当に開発できたとして、その手柄はすべてジャスリンに譲るつもりだし。
「それより! リアのアレはなんですか!?」
「む…………会ったのか」
「帰ってきていきなり抱き着かれました」
「そうか、お前には懐いているんだな」
「え、まさか……」
ここにきて親子不仲か?
もうグレて夜更かししたり親に対して舌打ちしたり「おい」とか「お前」で呼ぶようになったり……
「いや、私たちに反抗とかそういうのは無い。次期当主の勉強もほとんど終えているし、貴族令嬢の責務だけはきちんと果たしている」
しかしリアリスの不満はやはり態度に現れているようだ。
「婚約の話は聞いたか?」
「はい、マレットから。にしてもウチってチュラント族の家と関わりあったんですね」
「あの家の奥方とは社交パーティーで知り合ってな。少し話して意気投合したんだ」
氏族全体の風潮で強者が好まれるチュラント族は、強い女も貴ばれる。
メイヤー夫人も、気が強くて堂々としたローラをすぐ気に入った……という次第であった。
「難航していた婚約者選びがようやくまとまったと思ったら、まさかリアからあんな言葉が出るとはな」
「『やだ!』でしたっけ」
「なんだ、そこまで聞いていたのか」
白虎が苦笑する。
この母は、かつては社交界で『結婚に苦労しそうだなぁ』と思われるほどに苛烈で気の強い令嬢だった。オラオラ系というやつだ。
しかし家の決め事には逆らわない、模範的な貴族令嬢だった。
故に面と向かって子供に否を突きつけられることに慣れていない。戸惑っているのだ。解決策も分からない。
親の心子知らずと言うが、子の心も親は量れない。
母親を15年やっていても、ままならないことがある。
「私……の、せい……ですよね」
「確かにあいつの姉好きは相当なものだが、お前が悪いとは思わん」
ローラは首を振って紅茶を一口。
「親としては休みくらい家に顔を出せと思わないでもない。しかし学生が学業をやって何が悪い。リアの問題はあいつ自身のものだ」
正論だった。
冷たい言い方をすれば、『リアリスが一方的にマフィに執着し勝手に機嫌を損ねている』というだけの話。
だが人の心は冷たい言い方だけではどうにもならない。
姉妹仲が修復されて喜ばしい。しかし行き過ぎもちょっと……
ちょうどいい距離感を探すのは、人間関係において尽きない命題である。
その『ちょうどいい距離感』を掴むために、マフィは決意する。
「私、リアと話します」
「そうか。お前は昔からリアに対しての責任感は強かったものな。親として情けないが、任せていいか?」
「はい!」
ローラに頼られる……初めての経験だ。
マフィは高揚感に包まれた。親に対等として見られるのは子供にとって誇らしいのだ。
「マフィ、お前には本当に手を焼かされた。いたずらはするわ、勉強を嫌がって逃げ出すわ、他家の子供に手を上げるわ……」
「ぐ……」
急にディスってくるじゃん。
浮かれすぎないよう釘を刺しているのだろうか。
「だが出来が悪いとは思わなかった。お前はお前なりに色々考えていることも分かっていたし、勉強は嫌いでも聡明だったしな」
「へ? そ、そうですか?」
下げて上げる戦法だった。
マフィの浮かれゲージが溜まる!
「それに今のお前を見ると、喜びを感じる。大きくなったな……子供の成長とはこういうことなのか」
「も、もう褒めすぎですよ~! 調子乗っちゃいそう」
「乗るな。まぁ、なんだ……お前のことは何もかも知っていると思っていたが、こうして新たな姿を見せられると……もう1年もすれば家を出て嫁に行ってしまうというのが惜しく感じてくるものだな」
……なんかしんみりしてないか?
これが最後の会話だったりしないか?
バトル系なら近いうちに死ぬタイプの空気だぞ?
「別に結婚してもお母様の娘じゃなくなるわけじゃないですって」
「そうだな……妊娠して調子が狂ってるのかもしれん。だが本心だ。クラリッサも同じ思いだろうよ」
その後も親子水入らず、まるで最終回みたいな空気でこれまでの思い出や積もる話をした。
まだ40話弱あるのに。
「もうすぐ夕飯だ。リアと話すのはその後でもいいだろう」
「ですね。お腹空いてきた……」
「フッ、相変わらずだな」
いつも母と話す時は緊張していたマフィも気を緩める。
やっぱり家族なのだ。落ち着く。
これからお互いに出産に備えなければならない。今くらいはリラックスしてもいいだろう。
まぁ「あ、そういや妊娠しました。相手は第四王女です」とは口が裂けても言えないのだけど……