ケモミミ貴族令嬢にTS転生したら、ふたなりたちに玩具にされた 作:ぐらんぐらん
サブタイトル通りにする前に、ひとつキリーネヤのことを話そう。
新学期が始まって間もなく、去年と同じくチン道の大会が開かれた。
強豪だったブリュンヒルデが卒業し、今の黒猫に敵なし……かと思いきや、そうでもなかったらしい。
新入生にも強い者はそれなりにいて、まるでスポーツ部活モノのような先輩をナメくさった天才型1年もいたとか。
外部からの参加でも同じように才能あふれるフレッシュなふたなりたちが揃い、大会は大いに盛り上がった。
当日はマフィも形だけのマネージャーとして見に行った。
メロリィとの二人三脚、チンを入れれば四脚。
婚約者となって絆も深まった選手とマネージャーとで挑む大会でキリーネヤは……
優勝した。
あっけなく優勝した。
もちろん感動がなかったわけではない。
マフィとメロリィはキリーネヤが勝ち進む度に「これマジで優勝いけるんじゃないか!?」と興奮したし、生意気だという天才後輩との試合も手に汗握る大勝負だった。
だが本編で語っていないだけで実は塔の修行を制覇していた主人公みたいな黒猫に勝てる選手など誰もいなかったのだ。
何度もバカみてぇな絵面だと言ってきた競技でも、大会で優勝するというのは青春に強く刻まれる1ページ。
決勝を制した瞬間、メロリィなんかは涙を流して駆け出し、衆目の前でハグとキスをして観客に微笑ましい拍手を貰ったりしていた。
普段はクールなキリーネヤも両手を上げ、今年も来ていた両親が初めて見る満面の笑顔を浮かべた。
両親の横でチョーネヤとジーネヤも拍手をしていたのもハイライトだろう。
チン道クラブでの打ち上げも豪勢に。
体育会系部活らしい肉中心のガッツリ料理が振舞われた。
……と、ここまでがキリーネヤの話である。
マフィはというと、去年はそれどころじゃなかったから参加していなかった打ち上げには今年こそ参加。
キリーネヤの祝勝ムードに花を添えたものの、料理に手を付けることはなかった。
ギャグ漫画でたまに食いすぎてデブになったというオチがあるだろう。
そういうキャラはだいたい次の回には何事もなかったかのように元に戻っている。
今回もそれだ。
魔法の痩せ薬なんてものは存在しないが、努力による結果は時として奇跡のような現象をもたらす。
長期休みが明けて1ヶ月強、表向きは何も無かったかのように学院生活を送るため、マフィは死ぬ気で腹を引き締めた。
大会の打ち上げ飯に手を付けなかったのもこのため。
この国の気候的にもう夏本番。
どうして長期休みに被らないのか……というのは前世で夏休みというものを知っているからだろうか。
ともかく今世では休みが終わってから夏が来るのが当たり前なのだ。
去年はちょうど懐妊したためイベントを挟む余地などなかったが、夏といえば水着イベント。
昨今はキャラの人気を爆上がりさせたければ水着かバニーと相場が決まっている。スケベなピクチャーも倍増するという。
地獄の限定SSRを6連発。ユーザーの財布をボロ切れにして食事にすら困る生活にしてやる。
課金額は月に5千円まで? バカを言っちゃあいけない……デイリーと月パスで貰える石で全員揃えられるなどというナイーブな考えは捨てろ。
天井100連まできっちり回せ。
これを引かなきゃ向こう半年は環境に置いていかれるぶっ壊れを用意してやる。
個別ストーリーもこれ無しに語ろうものならエアプ認定されるような根幹に関わる話にしよう。
今年引けなければ来年復刻だ。新たな水着キャラと共にな……
退けば老いるぞ、限定ガチャは引かなきゃ引けないぞ。
金だよ金、金を稼がなきゃ。
そのためにダルダルの腹ではいられない。
前世とはやはり色々違う体は、必ずアヤと水着でキャッキャウフフするんだという執念にコミットした。
運動に運動を重ね、食事にも気を遣い、体はみるみる妊娠前のスレンダーさを取り戻していった。
浮気出産したばかりはアヤの顔もまともに見られなかったメンタルもポジティブに傾き、今では「まいっか、切り替えていこ」となっている。やはり運動は心身共に健康になる。
それでいいのか?
そして努力は水着イベに間に合った。
「青い空、白い雲……白い砂浜に寄せては返す波……リゾートかここは」
マフィが休日にやって来たのは、島の南側にあるビーチエリア。
夏には遊泳スポットとして人が集まる。
学生の間にしか利用できない特別な場所だ。
ここにマフィとアヤ、メロキリといったいつメンに加え、アンジーとジェシカのシスター姉妹(頭痛が痛い)も遊びに来た。
海といえば水着。すべての世界に共通する法則である。
世界観が剣と魔法チックなのに19世紀くらいに誕生した水着を登場させるんですか? という指摘は波にさらわれた。
もちろん水着は前世とそう変わらないような露出度。
ブラやショーツといった下着もそうだが、こういうところがご都合である。
貴族の学院なんだし肌を見せるのはよろしくないんじゃないですか? せめて全身を包むスイムスーツみたいな水着じゃないですか? という指摘はサメに食べられた。
というわけで水着回である。
「よっし準備体操だ!」
マフィが白いシンプルなビキニタイプの水着を選んだのは、極限の努力で引き締めた腹を自慢したかったのもあるのかもしれない。
燦々照りつける陽光を一身に浴び、翌日には褐色狐になってそう。
「元気ねあんた……」
横で一緒に体操しているのはピンク色のフリルワンピを纏ったメロリィ。
布面積が広いのでそこまで露出はしていない。フリルのボリュームに紛れて胸もそこまで強調されず、いたずらにふたなりの目の毒となることもない。
「結構動かすのね……これ何の意味があるの?」
キリーネヤは恋人とお揃いのフリルワンピ。しかし色は黒。
大人びたカラーが彼女の雰囲気にマッチしており、白銀の髪とのコントラストが映えている。
「こうして体をほぐして溺れないようにするのよ」
「体をほぐすと溺れないの?」
「足が攣ったりしないように、とか」
水泳の授業で習うような準備体操はこの世界には無い。同級生いつメン3人が傍から見たら奇怪な動きをしていると、もう3人が歩いてくる。
「日差し強い~……ジェシカ死にそう……」
「いたいた、マフィちー!」
後輩組も今日は限定衣装。
赤毛姉妹はエメラルドグリーンの三角パレオビキニ。
身長も相まって背伸びしてる感。かわいいね。
そしてアヤは2人の陰に隠れるように顔を見せる。
もじもじと指を絡め、上目遣いにマフィに近付いてきた。
「ど、どうですか?」
無垢な精神を表すかのような純白のビスチェ風ビキニ。
水着というより服を着ているかのような布面積。一応上下で分かれてはいるが、細いウエストはチラ見えくらいの露出度。
肩とパレオにあしらわれたフリルがガーリーな雰囲気を演出。
髪と尻尾の桜色と水着の白、ツートーンアートにすら見える。
まるで砂浜に舞い降りた天使。
天使にマフィが抱く感想など決まっている。
「かっ、可愛い……!」
「そう……ですか? ならよかったですけど、普段こんな格好しないので恥ずかしいです……!」
パング族に肌を見せる服は少ない。夏場でも風通しのいいヒラヒラ着物だ。
慣れない露出に恥じらうアヤの後ろで「大成功ー!」と言わんばかりのリングフィールド姉妹がポーズをとった。
「アヤちーの水着はジェシカたちで選んだー」
「どうよこのコーディネートぢから!」
今回ばかりは2人にブラボーと言いたい。そう思うマフィであった。
そして、何故か水着回のほとんどが肝心の水遊びシーンをダイジェストでお送りする。
アニメなら静止画数枚で10秒くらい稼いだらいつの間にか夕暮れになっていて、ゲームならスチル一枚でわーきゃーして終わりだ。
今回もその例に則り、水着でのキャッキャウフフをほぼ省略。
二位官家の赤毛双子に七位官令嬢のメロリィがビビったり、ビーチバレーで遊んだり、キリーネヤがバカみたいに早く泳げることが判明したり、夏の魔法にかけられてちょっと大胆になったアヤとマフィが水の中でいつもより接触の多いスキンシップをしてやっぱり照れたり……
絵日記なら1ページに書ききれないほどの楽しい時間を過ごした。
太陽はてっぺんを回り、いよいよ気温も上がりきって多くの人が海に入る。
髪も尻尾も濡れるのをいとわず、みんな涼みたいのだ。
浜辺に来ている生徒は多く、午前中はできたビーチバレーなどはもうスペースがなくてできないだろう。
「人が多いですね……」
「だなー、場所とっといてよかったよ」
アヤとマフィは並んでビーチチェアに座り、買ってきたトロピカルなジュースを飲んでいる。
他の4人はまだ海で遊んでいて、人が多くてどこにいるのかも分からない。
「こんなに楽しいなら来週も来たいくらいです」
「アヤがそんなに喜ぶなんて珍しいな。なら来週も来よっか」
「ほんとですか!?」
ぱぁっと明るい顔を見せるアヤ。
よっぽど嬉しいのだろうか。来たばかりの頃に見せていた恥じらいはもう薄れているようだった。
「私、まだやりたいことあるんです! 浮き輪で漂ったり、小舟に乗って鯱族の人に引っ張ってもらったり、あと釣りもしてみたいです!」
「あははっ、いいなそれ。夏できること今年全部やっちゃおう!」
「ですね! マフィとこうして海で遊べるのなんて今年限りでしょうから……忘れられない思い出にしたいです」
こういう時だけ2年制の学院というのが恨めしい。
もし3年制だったら来年もマフィはいて、さらにリアリスも入学してもっと大勢で楽しめたのに。
そんな惜しさを言外に含ませるアヤに、マフィは明るく言う。
「卒業しても遊びに行けばいいんだよ。ビーチはここだけじゃないし、大人になってもみんなを誘ってどこかに遊びに行くとかさ。絶対楽しいよ」
「迷惑にならないでしょうか……今でこそ学院だから氏族も官位も関係なく集まれていますが、みんなきっと忙しくなるでしょうし……」
「きっと時間作ってくれるよ。だって俺たちが『みんなとまた遊びたい』って思ってるんだから、みんなも同じこと思ってくれてるって」
陽キャみたいな思考回路しやがって……
だがそんな陽キャマインドに励まされたアヤは「そう、ですよね」と希望に満ちた表情になる。
「マフィのその前向きなところも大好きです」
「っ、まぁそれだけが取り柄っていうか……いや取り柄ですらないかもしれないけど」
前向き狐はちょっと照れた。
「立派な取り柄ですよ! 他にもいいところいっぱいありますからっ」
それに──と言いかけたところでアヤが目を逸らして口を噤む。
彼女の頬はほんのり朱が差していて、両手の指を合わせて口元を隠す仕草がなんともいじらしい。
「それに?」
きっとアヤにとっては秘しておきたいものなのだろうけど、この2人の間には「思ったことは口にして言おうね」という決まりがある。
まぁ馬鹿正直にそんなこと守ってたらマフィなんか十字架に括りつけられて「浮気してごめんなさい」と6時間謝り続けなきゃいけないので例外はあるけど。
特に相手を思う気持ちを言葉にするのは大切だ。
それを守ってきたからこそ、今の関係がある。
時たま様子がおかしくなるマフィの浮気をアヤが疑わないのは、そうした関係の積み重ねから『マフィが自分以外のところに行くわけがない』という信頼があるためだ。
なのでこういう時も、マフィが尋ねればアヤは取り決め通りに思いのたけを口にする。
時には逆もまた然り。
「今日もマフィはすっごく可愛くて……目のやり場に困ってるんですけど、つい見ちゃうのが……ずるい取り柄です」
「…………ふ……ふーん……」
まるで恋愛漫画みたいなびっくり顔から口を尖らせて赤面するというコンボをキメたマフィもまた、恥ずかしくてアヤを見ていられなくなる。
そんな口から飛び出したのは、照れ隠し。
「でもそれ外見じゃん。水着なら誰でもいいとか……」
照れ隠しにメンヘラ彼女三歩手前みたいなことを言うな。
好きなところ10個挙げてとか言い出したら一気に歩数が進むやつ。
「そんなわけないです! たしかに外見も大好きですけど、それ以上にマフィはマフィだから好きなんです!」
「外見否定しないのかよ」
「そりゃ、まぁ……好きなんですから否定する必要もないですし」
互いに目が合い、どちらともなくプッと笑い始める。
わぁ……なんてほのぼのする光景だろう。
「てか何の話だったっけ?」
「私も忘れちゃいました」
2人で笑い合ったりジュースを飲んでいると、キリーネヤとメロリィが戻ってきた。
「ふー疲れた休憩ー! そのジュースどこで買ったの?」
「あっちの売店。アンジーたちは?」
「向こうでまだ遊んでるわよ」
「そっか。んじゃ俺ももうひと遊びしてこようかな。アヤは?」
「私はまだここで休んでます。キリーネヤさん、ジュース買うなら案内しますよ」
「ありがとう。メロリィは休んでて」
アヤとキリーネヤがジュースを買いに行き、メロリィはマフィと入れ替わるように座り、マフィは海へ向かう。
ファンタジー世界のビーチにはカラフルな髪色の水着美少女がたくさんいる。
そんな中で赤毛の姉妹を探すのは骨が折れそう……と思っていたら、運よく向こうから見つけてくれたようだった。
「あ、マフィちこっちこっちー!」
アンジーが浮き輪でバタバタと近寄ってくる。
こう見るとただの女児だ。
「アンジーだけ? ジェシカは──ひゃあっ!?」
元男によるなんとも可愛らしい悲鳴。まぁいきなり水中で足を掴まれればそんな声も出るか。
背後では海坊主のように頭頂部からゆっくり出てくるもうひとりの赤毛。
彼女は普段からダウナーなテンションだが陰キャではない。してやったりという表情からは楽しさが溢れ出ている。
「ふっふっふー……びっくりしたー?」
「おどかすな!!」
「マフィち声やばかったわー!」
「水の中で聞こえなかったー……もっかい出してー」
「出さんわ!」
メスガキ共がひとしきり笑い、狐がひとしきり怒ったところでアンジーがマフィの手をとる。
「ここ人多すぎだしあっち行こうよ! いいとこ見つけたんだー!」
「ゆっくりできるしカニもいるー」
「そうなの? じゃ行くか」
ザバザバ泳いで人ごみを離れ、案内されたのは砂浜から少し離れた岩場。
立ち入り禁止の看板と柵を超えて双子はその奥へと足を進める。
「お、おい看板あったろ」
「大丈夫大丈夫! さっき監視員の人に聞いたんだけどね、ここって夕方になると潮が満ちて危ないからってことで入っちゃダメなんだって」
「つまり今なら危険なしー……」
良い子のみんなは立ち入り禁止看板を無視することはしないように!
「確かに誰もいなくてゆっくりできそうだけど……泳ぐようなところじゃないよな。何すんの? カニとか貝殻探す?」
「えー決まってるじゃーん」
「鈍感ー」
正面からアンジーに、背後からジェシカに抱き着かれ、マフィは「あっ」となる。
別に鈍感なわけではない。
散々犯されシチュを体験してきたのだ。こんな人気のない場所に連れてこられた意味くらいは察している。
でも今日はさすがに無いよな……? と思ってとぼけてみたが、残念ながら無いわけがなかった。
「さっきのマフィちの声、ほんと良かったんだから。ジェシカにも聞かせてあげなきゃ」
「ちょっ、あっ……やっ」
「おおー、こんな声ー?」
「もっと高かったよ。そうだなー……」
2人分の手が露出の多いマフィの肌を這う。
くすぐったい。でもそういう場所の近くに触れると……
「んっ……だめ、こらっ」
「あ、こんな声だったかもー♡」
外もも、内もも、あばら……焦らすように嬲る手が徐々に核心に近付いていく。
「もう少しかなー?」
「っ…………っ、んぅ……だ、ダメだって……戻らないと、みんな心配するだろ……っ」
「あんだけ人がいたんだからはぐれたってことにすればいいじゃん。それにー……」
アンジーが尻を、ジェシカが胸を鷲掴みにし、両者ともにマフィの肌に息がかかる距離にまで顔を近づける。
出さないつもりだったのに、マフィの口からはさっきのような高い声が途切れ途切れに出てしまう。
「長期休みが明けたら、シていいんでしょー?」
「もう明けてずいぶん経ったー……」
「け、い、や、くー♡」
「いまここでー♡」
平和な水着回などと、その気になっていた狐の姿はお笑いだったぜ。
■TIPS パレオ
ふたなりの水着着用には「公共の場での陰茎の露出を避けるために下半身にはパレオをはじめとした布面積の多いものを着るべし」という法律がある
俗称ハミチン防止法
これによって公然猥褻を防げるほか、チン有無もパッと見で分かるのでふたなり=パレオやスカート型の水着という文化が根付いている
ほかにも下半身の布が多ければ多いほどナニがデカいというのも知る人ぞ知る暗黙の常識だったりする