※この作品はR-18です。

ケモミミ貴族令嬢にTS転生したら、ふたなりたちに玩具にされた   作:ぐらんぐらん

81 / 86
81 幕間 リアリスと婚約者

 学院を卒業し、マフィは一旦実家へと帰った。

 

 年変わりの長期休み中に結婚してホウジョウ家に嫁入りするので、実質的にこれが最後の帰省だ。

 

 首都カンナにある西洋ファンタジーチックな屋敷。

 この実家に帰ってくることも、もうあまりないのだろう。

 

「お嬢様、おかえりさない」

「おかえりなさいませお嬢さ……ま……」

 

 褐色ワル犬族のドミルアはいつも通り。

 もうちょっとなんかあるだろと思わなくもないが、変わらないというのは貴重なことでもある。

 

 栗色の清楚お姉さん犬族ことマレットは大きくなったお嬢様のお腹を見て脳が破壊されている。

 懐妊の報告はモフテイル家にも来てたから彼女も知ってはいたが、実際に見ると気絶しそうだった。

 

 1年前と同じようにドミルアが荷物を持って部屋に運ぶ。

 

「んじゃアタシ先に部屋持ってきますね。マレットあとよろ」

「え、ええ……ではお嬢様、向かいましょう」

「ん」

 

 マレットは数秒だけ石になったが三位官家のメイドとしてすぐにマフィを案内し始めた。

 

 相手が妊婦なので歩くスピードは遅めに合わせてくれている。さすが優等生。

 しかし、やはりと言うべきか口数は少ない。

 

「んー! なんかやっぱあれだな、帰ってきた感あるなー!」

「そうですか……」

「学院になんて2年しか行ってないのに懐かしさすらあるもん。マレット髪切った?」

「ええ……少し短くしました」

 

 さすがにマフィも気付く。いつもならニコニコして相槌を打ってくれるはずのメイドの調子が違うと。

 

「ど、どうしたんだ? なんかヤなことあったとか……」

「いえ……おめでたいことなら沢山ありました……ええ沢山……」

 

 おめでたいことがマレット脳に悪いものばかり。

 

 だが「マフィは結婚なんてせずアヤの子供なんかも作らず、ずっと家にいてほしい」なんて口が裂けても言えない立場。

 

 入学前、初めての発情期を迎えてから背徳と淫蕩に耽る日々は、本当に眩しい夢だった。

 その夢を知ってしまったからこそ、沈み具合もひとしお。

 

 さしもの狐もそこまで察することはできない。

 

 だが察する必要もない。

 結局はマレットの心の話。あんなこともあった、と過去にしてしまえるまでの時間が必要なだけなのだ。

 

 

 マフィがどうしたもんかとオドオドしていると、突如として聞き慣れない声を階上から浴びせられた。

 

「おい!! なんだおまえ!」

 

 エントランスから階段を上がったところ……そこには初めて見る顔がいた。

 

 毛量の多い琥珀色の髪にはところどころ黒いメッシュのような毛束も混じっていて、いかにも生意気……気高そうなツリ目。

 ドミルアのような褐色の肌であるが、褐色度合いで言ったら少し弱め。あの犬が黒ギャルならこっちは陸上部。

 どちらかというとブリュンヒルデに近い。

 

 年や背丈はマフィよりも小さい。

 アヤとか赤毛姉妹とか、あとリアリスとかその辺のカテゴライズだ。

 

 さっさと話を畳んで完結させようってのに新キャラかよ。

 

「誰?」

「おまえこそだれだ! ガルルルル!」

「マレット、マジで誰!?」

 

 闖入者の登場にマレットも浮上。気を取り直す。

 

「コホン……こちらリアリス様の婚約者であらせられる、カレン・メイヤー四位官令嬢さまです。ちょうどわが家に滞在していて」

「リアの!?」

 

 そういえば去年帰省した時にそんな話があったような*1……

 

「チュラント族の方なので、ちょっと攻撃的と言いますか……」

 

 途中からはひそひそ伝えてくれた。

 

 チュラントといえばブリュンヒルデがいい例だ。

 強いふたなりが沢山妻を娶って、弱いふたなりは見向きもされない。弱肉強食の世界。

 

 かの氏族の女性もまた強さ重視。

 アマゾネス的というかなんというか。

 

「そのとーりだ! 三位官夫人だぞ! ひれふせ!」

 

 カレンもまたそうなのだろう。

 まぁ歯をむき出しにしてこちらを威嚇してくるのは氏族関係なしに本人が「知らない奴だ! 威嚇しよう!」という気質なだけな気もするが。

 

 あとまだ三位官夫人ではない。

 

 

 今にも飛び掛かって来そうなカレンに別の意味でオドオドしていると、また違う人物が飛び掛かってくる。

 

「お姉! さま゛ああぁぁぁぁ゛ーーーーーー!!」

 

 モフテイル邸はエントランスホールから階段を上って2階……という、よくある洋館のつくりをしている。

 

 なので2階から大ジャンプで階下に飛び降りることもできて……それをやったのは言わずもがな白狐のリアリス──

 

「ッ!? 『透明な石畳、風の廊、靴底を支えよ』!」

 

 が、彼女には理性があった(?)。マフィに抱き着いて2人してスライディングでもしそうな勢いを、寸でのところで止めたのだ。

 空中を歩く神術を用い、姉にぶつかる前に空中で方向転換。

 結果、綺麗に目の前に着地した。10点。

 

「お……お姉様、お久しぶりです……」

「お、おう……久しぶりだな。背のびたか?」

「お姉様こそ大きくなられて! 大きく……ええ別の場所も大きく…………」

 

 脳破壊part2。

 長女なら耐えられたが次女には耐えられない。

 赤い目を丸くしたり伏せたり忙しい。

 

 メイドの心は分からなくても妹の心はなんとなく察せる。

 マフィはどう言っていいか分からず「え、えへへ……」と困り笑いを浮かべてみせた。

 

「はっ! わたくしとしたことが……長旅でお疲れのお姉様を引き留めてしまうなんて」

 

 だがすぐに淑女モードへ。

 彼女も今年で15歳になる。いつまでも駄々をこねていられない。

 

 長い目で見れば自分が勝つのだから一時の寝取られくらい苦渋として舐めよう……とか思ってるのかもしれない。

 

「さぁさぁお姉様、お部屋はそのままにしてありますからどうぞごゆっくり」

「おう……ところで、彼女いいの?」

「彼女? ああ、いたんですか」

 

 さっきまでメインだったのに一気に蚊帳の外だったカレンに対し、リアリスはいま気付いたとでも言わんばかりに冷たい目を向ける。

 

「ひっ……!」

 

 するとどうだ、第一印象で「乱暴そうなクソガキだなぁ」とか思わせてきた褐色ライオンは打って変わってミーミー鳴く猫のよう。

 

「何してたんですか? まさかわたくしのお姉様にギャーギャー頭の悪い絡みをしていたわけではありませんよね?」

「あ……あ……」

 

 強気の似合う琥珀の瞳はすっかり怯えの色に染まり、喉からは悟飯かクリリンのような尺稼ぎボイスを発している。

 

「来なさい」

「ぁ……っ」

「聞こえませんでしたか? 頭だけでなく耳まで悪くなったのですか?」

「ひゃ……ひゃい……」

 

 処刑台の階段は上がっていくのが相場だが、今回は降りるタイプ。

 一歩一歩、行きたくないというのがひしひし伝わってくる牛歩で。

 

「早く!」

「ひぇ!」

 

 尻尾をピンと立て、転がり落ちるんじゃないかというほどの足元の覚束なさでライオンが目の前までやってくる。

 

「(普通に可愛いな)」

 

 多分いま言うことじゃないから口には出さないが、近くに来たことで顔立ちを確認する呑気さを姉狐は見せた。

 確かにカレンは普通に可愛い。体つきや顔立ちにはいまだ幼さが残っていて、無知シチュとか似合いそう。

 

「もう紹介は済ませましたか?」

「ああ……カレン嬢はさっきしてくれたよ。こっちはまだだけど」

「そうですか、ではコレの紹介は必要ないですね」

 

 婚約者をコレ呼ばわりするリアリスの声音は冷たくて、マフィは記憶が戻る前の疎遠だった妹を思い出す。

 

 白髪赤目の美少女が冷徹な視線を向けるのは健康にいい。

 向けられてる者の胃には悪いかもしれないが。

 

「その頭にきっちり叩き込んで漏らさないようにしなさい。こちらはわたくしが敬愛するモフテイル家長女、マフィお姉様です」

「…………」

「『よろしくお願いします』は?」

「はひっ! マフィおねーさまよろしくおねがいします!」

「う、うん……よろしくね」

 

 理解らせパートが早いよ……というかもう理解らせ済みだよ。

 

「──で、どうでした? マレット」

「はい、カレン様はマフィお嬢様に何者かと威嚇するように叫んでおりました」

 

 空気が2℃くらい冷えた気がした。

 

「(な、なんか2人ともこの子に冷たいな……)」

 

 カレンは見たところリアリスと同い年くらいの子供。

 そんな子供がつい生意気をやってしまうのは仕方のないこと……とも言えるが、リアリスとマレットにとっては咎めるに値すること。

 まぁ2人ともマフィ大好き人間なので仕方ない。

 

「あ、いや……ちがくて……」

「ふーん……そうですか。『風の(かいな)、空の揺り籠、母からのほんの少しの旅立ちをいま一時(いっとき)』」

 

 ある程度の才能が必要だが、物を浮かせる神術は時として拘束にも使える。さらに拘束したまま移動もできる。

 相手がいくらジタバタしようとも、地に足がついていない状態では空中でもがくのみ。脱出は叶わない。

 

 いい? レヴィオーサよ。あなたのはレビオサー。

 卒業したのにポッター要素が付いて回るな。

 

「わたくしの部屋に行きますよ。どうやらまだ教育が足りないようですので」

「ひえっ! いやだ! もうアレはいやだ~~~!!」

「それではお姉様♡ また後で♡」

 

 風船を持って歩くように、リアリスはカレンを浮かせたまま追従させて去っていった。

 

 カレンと自分に対する態度が180度違っててマフィは妹に恐怖した。

 

「なぁマレット……いいの? 一応他家の令嬢でしょ?」

「色々ありまして。カレン様に対してはリアリス様が色々とお決めになりまして、私どももそれに従っています」

「お世辞にも仲が良いように見えないけど……イジメてない? 妹がDV夫になるの嫌なんだけど……」

「まぁ……色々あったので」

 

 色々……便利な言葉だ。

 色々あったなら仕方ない。

 

 

 

□□□□□

 

 

 

 色々パートを始める。

 

 あれは去年、マフィの帰省の後のこと。

 モフテイル三位官家とメイヤー四位官家、婚約の決まった両家の令嬢同士が初めて顔合わせをする茶会の場。

 

 官位の差からモフテイル家が相手を招くことになり、リアリスにとっては勝手知ったる(姉を犯したことのある)中庭で2組の母娘が相対する。

 

 片方はローラとリアリス。

 そしてもう片方が、メイヤー夫人とカレンだった。

 

 普通ならここで当たり障りのない挨拶とか、趣味や好みなどを交換するお見合いの場にもなるのだが……チュラント族は違う。

 

「おまえがリアリスってやつか! 弱っちそうだな!」

 

 開口一番ド失礼。しかしカレンのこの言動をメイヤー夫人が咎めることはない。

 

 チュラント族としてはこのスタンスが当たり前だからだ。

 そんなんだから他氏族から陰で蛮族呼ばわりされている……

 

 強さ至上主義のチュラント族の女にとって、他氏族への嫁入りは少々特殊になる。

 

「せっかくチュラントじゃなくて他氏族の奴らと結婚するんだから、相手は当然強くあるべき」──というものがある。

 同時に「もし強くないなら嫁ぐ価値なし」と、いつでも婚約を撤回をする準備もできている。

 

 あくまで嫁入り"してやる"という上から目線。

 

 加えてカレン自身も将来自分はチュラントの強いふたなりの嫁になると思っていたものだから、いきなり他氏族に嫁げと言われてご機嫌斜めなのだ。

 

 

 さすがのローラも眉を顰める。

 

「(家族になるからには多少の無礼も……とは言うが、チュラントとの婚姻はやはり穏やかにはいかんか……)」

 

 だが口は挟まない。この婚約を取り付けたのは他でもない彼女だ。

 メイヤー夫人から事前に「そちらにとっては失礼な振る舞いも多いかと思う」などの説明も受けて、それでもいいと合意したものだ。

 

 それに貴族間の婚姻はただのお見合いではない。

 この物語には政治や折衝などの描写は不要なので詳細は省くが、家同士……引いてはシュガーとチュラントとの間のあれこれもある。

 モフテイル家としても、この婚姻は結んでおきたいのだ。

 

 

 なので向こうから破棄してこないうちはリアリスが上手くやるしかない。

 次期当主ならじゃじゃ馬の手綱も握らにゃ。

 

 当の白狐はお茶を一口。

 カレンからの挑発めいた挨拶にも動じない。

 

 その様はまさしく次期当主として相応しい。胸を張って学院に送り届けられる貴族令嬢となっている。

 

 そんな淑女が今思っていることは「コイツ無礼だな」でも「結婚やだなぁ」でもない。

 

「(似てる……)」

 

 生意気にズカズカ言ってくるところが、幼き日の姉を彷彿とさせた。

 似てると思った対象がイリーゼを泣かせた時分のガキマフィなのは……今年には学院に入る歳なのにそれでいいのだろうか。

 

「(種族も顔立ちも違うけれど、どこか……)」

 

 品定めするような視線に気付いたのか、カレンはムッとなって婚約者を睨む。

 

「なんだ! やるか!?」

 

 椅子に座ったままシュッシュッとシャドウボクシングするのは失礼極まりないがチュラントなので以下略。

 

 リアリスはそれを無視してお茶をまた一口。

 そして母に提案する。

 

「お母様、わたくし、この方とじっくりお話してみたいです。わたくしの部屋に招いてもよろしいでしょうか?」

「あ、ああ……こちらは構わないが」

 

 メイヤー夫人も頷いたので、お茶会の席を後にした2人はリアリスの部屋へと向かう。

 

 カレンも素直に従ったが、これには理由がある。

 2人きりということは、多少おいたが過ぎてもその場で咎める者がいないということ──褐色ライオンはほくそ笑む。

 

 せっかく会ったのだ。今日ここで上下関係を決めておいた方がいいだろう。

 

 自分が上になることを疑っていないカレンは、あわよくば婚約破棄してやろうとも思っていた。

 

 

 

「ワタシは空気が読めるんだ! だからさっきは言わなかったが、ワタシはおまえとケッコンなんかするつもりはないからな!」

 

 部屋に着いて早々、カレンは威圧感を出して喧嘩を売り始める。

 官位の差なんて知ったこっちゃない。チュラントの女は誇り高いのだから、唯々諾々とするわけがない。

 

 ましてチュラントのふたなりに比べて柔っちい、本当に股にイチモツが付いているのか分からないようなガーリーな少女相手には。

 

「ええ、わたくしもです。しかし仕方ないでしょう、貴族の婚姻は家同士の契約なのですから」

「しるか! ワタシはおまえみたいな弱っちそうな奴のツガイになる気なんてないって言ってんだ!」

「そうですか。では破棄しますか?」

「おまえがワタシより弱かったらな!」

 

 カレンはニヤリと笑って手をかざす。

 

 内心を窺い知ることのできないクールな白狐だが、彼女の方からこの流れに持ってきてくれたのだ。

 ならばここで一発ワカらせてやって、中庭に戻って「あいつ弱すぎたからケッコンしない!」と言えばいい。

 

 なにより同い年の他氏族令嬢に自分の強さも誇示できる。そんなガキ大将じみた理由もまたカレンにとっては大きいものだった。ば、蛮族……

 

「『破光の礫、瞬転絡まり──」

 

 ちょっとビビらせる程度の、小さな光の球をぶつける神術。

 当たれば痛いし、打ちどころによっては怪我もするかもしれないが、さすがにカレンも直撃させるつもりはない。

 

 せいぜい顔のすぐ横に飛ばして掠めさせてやろう。

 蝶よ花よと育てられてきたお嬢様なんて、ちょっと脅かすで泣きじゃくるんだ。

 

 ──そう思っていたのだが……

 

「『叛止の叛、八つ腕の審、さもなくば霧の巨人』」

「ぐえっ!?」

 

 リアリスの方が速かった。

 

 警団*2が犯人を捕らえるのによく使う拘束神術がカレンの四肢を襲う。

 

 手足の1本ずつに、まるで大の大人がしがみついたような重さが加わり、ガキでしかないライオンはその場に倒れ伏すことに。

 受け身も取れず床に倒れたものだから、ちょっと顎を打った。舌を嚙まなかったのは幸いだろう。

 

「な──ッ!?」

 

 一瞬、カレンには何が起きたのか分からなかった。

 

 神術を使われたのは分かる。何の神術かも分かる。

 だが目の前の虫も殺せなさそうな可憐なお嬢様が、何の躊躇もなく人を床に叩きつけたこの状況を理解するのが遅れた。

 

「この婚約にあたり、わたくしもチュラント族についてそこそこ学びました。あなた方は言葉や礼節よりも、こうした絶対的な力や強さといったものを好まれるのでしょう」

 

 目の前に映るリアリスの靴。

 このまま蹴られるのかと目を閉じたカレンだったが、痛みと衝撃はやってこない。

 

 おそるおそる目を開けば、見下ろす赤い瞳と視線が絡み合う。

 

「これで結婚する気になりましたか?」

「っ……だれが、なるかっ!」

「ふふっ、そうですか。まぁそうですよね。まだ地面に引き倒しただけですし」

 

 初めて見せた婚約者の微笑みを、カレンはどうしても好意的に捉えることはできない。

 

 次第に「コイツもしかしてヤバいタイプの人間か?」と思えてきた。

 察しがいいな。だが手遅れだ。

 

「せっかくの婚約者との顔合わせの場です。わたくしも少し話をするとしましょう…………わたくしには好きな人がいました。いいえ、今でも愛してやまない人がいます」

 

 それ婚約者に話す内容か?

 

「その人はあなたのように無礼で無手法で、なにより無邪気で……あなたにほんの少しだけ似た人だったんです」

「そ、それがなんだ……」

「しかしその人は──私の愛するお姉様は、丸くなってしまわれた……礼節を学び、落ち着きを学び、女らしさを学び……変わってしまわれた……変わっても愛してることに変わりはないんですけど」

 

 それ婚約者に話す内容か?

 

「別にあなたにお姉様を重ねて愛してやろうなどと、人の心を失ったことを言うつもりはありません。ですが……」

 

 リアリスの白魚のような手がカレンの頬と顎に添えられる。

 恋愛小説ならここでズキューンとキスの一発でもかますところだ。

 

「少し、興味があるのです。お姉様がああなったように、あなたも同じように変われるのではないか、と」

「な、なにを言って……」

「だから決めました。わたくしがあなたを躾けてあげましょう」

「は……?」

 

 今日一番の笑みを浮かべるリアリスに、ライオンは体の芯が震えるのを感じた。

 

「あなたの牙をへし折り、どこに出しても恥ずかしくないモフテイル家の妻になれるよう、じっくりしっかりとね」

「っ!? っ~~~~~!♡♡ だ、誰がなるか! おまえの妻なんかに!」

 

 

 

 リアリスの中の昏い欲望。

 姉への独占欲とはまた別の、無邪気な元気っ子を一匹の淫乱メスに堕としたいというもの。

 

 本当は愛するマフィでやりたかった。でもそれはできない。

 なんかもう見るからに変わっちゃったから。

 入学前の姉と、1年経って帰省してきた姉……この両者がどうにも結びつかないくらいには変わってしまっていた。

 

 欲望は行き場をなくした。

 しかし再びそれをぶつけられる相手に恵まれた。

 

 どこか姉に似た、無邪気で生意気な小娘……

 

 そうだ、この子でやってみよう。

 

 都合のいいことに相手は婚約者。

 どうせ結婚してモフテイル家に入るのだ。

 

 相手がチュラントなのも実におあつらえ向き。

 

 明らかに敵意があって、神術での攻撃さえしてこようとする野蛮さ。躾けがいがある。

 

 ならばこちらも同じ土俵で、妻としての自覚を叩きこんでやろう。

 

 

 そう、リアリスはその言葉を知らないながらも、本能で理解していた。

 

 生意気なメスのガキを屈服させること──メスガキ理解(わか)らせは最高だということを。

 

 

 

 この日、カレン・メイヤーの運命は決まった。

 

 チュラントの言う『強さ』とは、別に腕っぷしの話だけではない。

 毅然とした態度とか自信とか、己のために周りに言うことを聞かせる影響力とかも指す。

 

 その点リアリスは合格としか言いようがない。

 

 カレンがいくら威嚇しても動じず、神術を察知するや否やすぐさま拘束の術をかけてきた。

 さらに「妻になれるよう躾けてやる」とまで言ってきた。

 

 お腹の奥がキュンキュンした。

 

 

 チュラントの女は強いふたなりでなければ認めない──

 

 裏を返せば、自分を負かすほど強いふたなり相手には仰向けになって腹を見せるほどに媚びちゃう。

 

 つまり強いふたなりに負けたいのだ。

 チュラントの女は、みんな負けたいのだ。

 負けてマゾメス屈服する相手が欲しいのだ。

 

 カレンもチュラントの女。

 根っこは強者に跪きたいマゾ。

 

 口では反抗的だが、本能が既に未来の夫に媚び始めている。

 

 

 あとはメスを満足させられるモノやテクを持っているかどうか……割とこれも重要だ。

 いくら他が完璧でも、チンコのデカさが原因で寝取られるなんてことはチュラントではよくあるのだから。

 

 まぁこれも実質クリアしている。

 

 近いうちに嫌でも思い知るだろう。

 デカチン白狐相手に、屈服マゾメスが勝てるわけないということを。

 

 発情期を迎えた時、カレンは女として始まり……そして終わる。

*1
62話参照

*2
この世界における警察のようなもの

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。