※この作品はR-18です。

ケモミミ貴族令嬢にTS転生したら、ふたなりたちに玩具にされた   作:ぐらんぐらん

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82 マフィ結婚! 希望の未来へレディー・ゴーッ!!

 学院を卒業して実家に戻ってからは忙しかった。

 なにせ長期休みの間に式を挙げるのだ。自然と準備が急がれる。

 

 挙式と同時にホウジョウ邸に移り住むから引っ越し準備もあるし、法的な手続きの書類や招待状なんかにも悩まされた。

 

 これが実家で過ごす最後の日々だというのに、モラトリアムもなにもない。

 

 ハイライトらしいハイライトといえば、大きくなりつつあるマフィのお腹を見て「おおう……」となったクラリッサとローラの顔だろうか。

 娘が妊娠して帰ってきたのだ。円満で幸せそうでもちょっと親として、なんかこう、マフィが初めて見る表情をしていた。

 

 

 気付けば準備も終わり、結婚の日がやってくる。

 

 苦節81話……マフィはようやく想い人と結ばれるのだ。

 

 

 

□□□□□

 

 

 

 色々とジャパニーズなパング族は結婚式もまたジャパニーズテイスト、神社らしき場所で行う神前式のようなものだった。

 

 ホウジョウ家の所有する銀瓦屋根のテンプルにはモフテイルとホウジョウの……そして個人的な縁者が集まり、いかにもファンタジーといった様相で様々な種族が一堂に会し、厳かな雰囲気に誰も口を開かぬまま花婿と花嫁を見守っている。

 

 互いに白無垢で、耳まで覆うクソデカ綿帽子を被っている2人はタンポポが歩いているかのよう。

 

 花嫁の大きなお腹については、幾重にも着込む和装ルックなためかそんなに目立たない。

 

 赤色が魔除けや祝い事に使われるのはどの世界も同じらしい。

 マフィとアヤ……2人には真っ赤なリップとアイシャドウが施されていて、2~3歳は上に見える。

 

 和装の狐娘といえば目尻に赤のアイシャドウ。これは天地開闢、嚆矢濫觴、掴趾追雀から決まっている世界の理だ。異論は認めない。

 

 

 厳かな雰囲気も式の流れも神前式と大体同じ。

 斎主がなんか長ったらしい文章を読み、盃に満ちたお酒を飲み、新郎新婦の2人が神様と来賓にお辞儀。

 

 結婚といえばどの文化でも「病める時も健やかなる時も~」というのを誓うものだ。

 そこには夫婦円満、浮気しないなどの誓いもある。

 

 もちろんマフィも誓う。今までが間違っていたのだから誓うに決まっている。

 これからこれから。神様だって許してくれるさ。

 

 

 その後は喋ってもいい時間。

 境内で立食パーティーを催し、新郎新婦だけが高いところに座っている。

 参列者は初詣みたいに列をなして2人に挨拶に伺うのだ。

 

 おめでとう、おめでとう、おめでとさん、めでたいなぁ、クワックアッ。

 

「めっちゃキレー! 白無垢似合うじゃない!」

「おめでとう、2人とも。とっても綺麗よ」

 

 メロキリの2人はパーティードレスでの参加。可愛らしい桃色とシックな黒のドレスは彼女たちのイメージカラーにぴったり。

 

 マフィにとっては来てくれて一番嬉しい顔。

 パング族の式では友人代表のスピーチなどは無いが、あったらきっとこの2人に頼んでいただろう。

 一方キリーネヤのシヤン族ではスピーチがあるのでマフィが読む予定だ。

 

 

「お2人とも、おめでとうございます」

 

 無難すぎる挨拶だけをしてさっさと戻ったのはイリーゼ。

 

 同じシュガー族でありモフテイルと親交もあるターカビーシャ家次期当主として、そして元クラスメイトとして参列していた。

 名残惜しいが、多分これが最後の出番。

 君は良いセフレだったよ。良い人を見つけて幸せにおなり……

 

 

「マフィちもアヤちーもおめでと! すっごく可愛い!」

「おめでとー、お幸せにー」

 

 アンジーとジェシカの赤毛姉妹もまたドレス。前に見た水着と同じエメラルドのおしゃまさん。

 

 学院で長い間セフレ関係にあったマフィにとっては「こいつらどのツラ下げて……」と思わなくもないが、彼女らはアヤの友達でもある。

 それに本人たちもあの日々など無かったかのように振舞っていて、まぁこの場でいきなり変なことは言わないだろう。

 彼女たちにとってマフィはあくまでSランクセフレ。なくすには惜しいが縋るほどでもないし、なにより変に深入りしてアヤにバレてはコトだし。

 

 

 親戚、かねてよりの知り合い、学院で親交を深めた人たち、知らない人たち……挨拶をしたり愛想笑いをしたりして、マフィもちょっと疲れてくる。

 

「お腹空いた……」

「我慢ですよ。もう半分くらい済みましたから」

「まだ半分なのかぁ……」

 

 目の前では参列者たちが思い思いに飲み食いしてるのに自分たちは挨拶されてニコニコしてなければならない。

 疲れを隠すのも貴族の新郎新婦の仕事である。

 厳格なホウジョウ家に嫁入りするのだからこれくらいでへこたれていられないし、アヤに恥をかかせるわけにもいかない。気合いだ気合。

 

 

 

□□□□□

 

 

 

 様々な文化が共生する神国カミガリにおいて、こうした式の段取りは氏族によってまちまち。

 

 だがホストに挨拶するゲストの順番というのは共通している。

 基本的に親族や近しい人は割と最初の方で、それ以外がズラッと並び、最後の方に二位官家以上……つまり一位官家や王族が挨拶する。

 法で厳密に決められているわけではないが、マナーとしてそうなっているのだ。

 

 かつて遅刻癖のあった偉い人が言った。

「自分より下の身分の奴の式に遅れて行って何が悪いの? 待たせときゃいいじゃん、行ってやるんだからさ」と。

 

 当時も身勝手と捉えられた発言だったが、身分が高いというのは多忙でもあることから時間を作りづらいというのも事実だった。

 

 この考えを元にして、偉い人は式の途中参加が許されるようになり、現在は「偉い人は最後に挨拶に来る」というものが定着している。

 

 

 今回もモフテイルとホウジョウの縁者という大勢の挨拶を捌ききったマフィたちが最後に相手をするのは身分の高い人たちだ。

 

「久しぶりだなマフィ! まさか招待状を寄越すとは思わなかったぞ!」

「「「「おめでとうございます」」」」

 

 本当に久しぶりに顔を見た。褐色熊族のブリュンヒルデ先輩。

 と、何人もの妻たち。内数人は学院でも見た覚えがあり、さらに数人はお腹が大きい……まだまだお盛んなようだ。

 

「お久しぶりです先輩。奥様方もお元気そうで」

 

 マフィは品行方正な花嫁の仮面を被ってニコニコ対応。

 

 この熊が来るかどうか、正直分からなかった。

 ぶっちゃけると別に来なくてもよかったし、広く招待した中のひとりでしかない。

 それでもまぁ一位官家が来るというのはデカい。箔が付く。

 

「久々に見てみれば、ずいぶん女らしくなったじゃないか」

 

 いきなりセクハラかよ、チュラントらしいな。

 ──という目を向けられるのは、かつて体を差し出していたよしみというか、ブリュンヒルデが馴れ馴れしくしてくるのと同じようにマフィにも親しみを感じている部分があるからだろう。

 

「そちらが花婿か。お初にお目にかかる、ブリュンヒルデ・シュターナだ。マフィとは学院で知り合ってな、色(・)々(・)と交流したものだ」

「キリと知り合いだったから何度か話したくらいだぞ!」

「そうでしたか。アヤ・ホウジョウと申します」

 

 そうして二言三言を交わし、筋肉熊は学院の時とそう変わらない雰囲気で何人もの女と共にパーティーへと戻っていった。

 

 チュラントのことだから人の結婚式で「今からでもオレ様の妻になれ」とか言い出すんじゃないかという失礼な想像は杞憂だったようだ。

 

「大丈夫? あの人フツーに怖いよな」

「ちょ、ちょっとだけ……でも一位官家とも知己を得られるなんてマフィは顔が広いんですね」

「アヤだって学院で色んな人と話してるじゃん。次来る一位官家の人はアヤ繋がりだったし」

 

 アヤ……というよりホウジョウ家はパング族の神事を司る家。

 なのでパング族の偉い人はだいたい知り合いだし、いかにも格式高そうな人たちがホウジョウ次期当主に挨拶する為にも出席している。

 

 参列者全体の割合を見ればモフテイルやマフィ個人よりもホウジョウ関連の方が多いくらいだ。

 

 

 そうして一位官家の挨拶が終わると、それ以上に偉い人が来る。

 王族だ。

 

「久しいのぅ! 妾も直接お主らを祝えて嬉しいぞ!」

「やぁマフィ、そしてアヤ嬢。結婚おめでとう」

 

 第二王女プルミリアと第四王女ジャスリンが並んで目の前までやってきた。

 

 さすがに王女が2人も揃って挨拶するのは珍しいらしい。周りから「マジかよ」って目で見られている。

 特に普段社交界に出てこない第二王女に対しては、この場で初めて見るという者も少なくなかった。

 

「来てくれてありがとうございます。プルミリア殿下とはお初にお目にかかります、アヤ・ホウジョウです。お会いできて光栄です」

「うむ! プルミリア・クルネイルじゃ! 妾もマフィの好き好きさんと会えて嬉しいぞ!」

 

 相変わらず色々小さいパッツンのじゃロリなプルミリアは人懐っこい満面の笑みで初対面さんともすぐ仲良くなる。

 

「2人ともとても綺麗だよ。君たちとはもう先輩と後輩──教師と生徒でもないけれど、困ったことがあったらいつでも頼ってほしいな」

「はいっ、ありがとうございます」

 

 女たらしでキザったらしい笑みに対し、嬉しそうに微笑み返すアヤはきっとこう思っているのだろう。

「噂はやっぱり噂でしかなかったな」と。

 学院でも今でも、ジャスリンはただかっこいいだけの優しい人だ。

 少しでも噂を真に受けていた己のゴシップ心を恥じてすらいるかもしれない。

 

 マフィに嫌われたくないから婚約者であるアヤにも愛想よくしていただけで、噂通りな人なのだが。

 

「それとマフィ……ボク個人としてもあの新薬は完成させたいから、出来たらまた知らせるよ」

「は、はい」

 

 今のやり取りを見て、プルミリアは察した。

「コイツ結婚しても妹と浮気するんじゃね?」と。

 

 アヤは思った。

「何の薬か知らないけど在学中あれだけ苦労していたんだし完成してほしいなぁ」と。

 

 

 

□□□□□

 

 

 

 王族の挨拶も終わり、ようやく2人は解放された。

 

「あ、足……足が……!」

「よくできました。マフィ、立てますか?」

「ちょ、ちょっとだけ待って……」

 

 パング族の家屋に土足文化はない。座る時も椅子ではなく床に腰を下ろすことも多い。

 椅子ではなく座布団に正座スタイルだったため、マフィは脚が痺れ切っていた。

 

 ややあってアヤにエスコートしてもらいながら立ち上がり、階段を降り、パーティーの輪の中へ。

 

 パーティー会場である境内は広い。

 多くの参列者に、さらにはそのお付きの人や会場の使用人までいるのだ。

 屋台でもあれば祭りと言われても納得するだろう。

 

 その中を「先ほどはどうも~」と愛想笑いを振り撒きながら向かうのは家族が集まっているテーブル。

 マフィとアヤの二親等くらいまでが集まって貴族らしい場を作っている。

 

「あぅ……怖い……ローラさんたすけて……」

 

 モフテイル家当主のクラリッサは……やはりこういう場には馴染めない。

 

 さっきまでプルミリアに話しかけられて「なんでここで職場の人に会わなきゃいけないの……」とMPを擦り減らし、今はホウジョウ家を相手にMPが枯渇寸前。宿屋に泊まるべきだ。

 ローラを盾にしなければとっくにHPまで尽きていたことだろう。

 

「あらあらぁ~、初めましてでもないのにつれないわぁ~♡ それにもう私たち家族じゃないの~」

 

 対してホウジョウ家当主のコダマはいつも通りのはんなりさん。

 娘の晴れの場でお酒も入って上機嫌。

 

「コホン……あなた、身内になるからこそ波風は立てないようにお願いします」

「お前も少しは慣れろ。まったく情けない……」

 

 ホウジョウとモフテイルの夫人が同時に夫に冷ややかな目を向ける。

 

 コダマの妻は夫の三歩後ろから支えるタイプ。ホウジョウ家らしい厳格さを持っている。アヤは母親から真面目さを受け継いだと言ってもいい。

 

 ローラは相変わらずのドンッ。去年に双子を出産したばかりだというのに精力的に動いているし、体型も戻りつつある。

 その双子はまだ幼すぎるため屋敷でお留守番。

 

 ついでにニンネもお留守番。お腹が大きくなったためだ。相手は誰なんだろうね。

 ドミルアとマレットもお留守番。さすがに脳が耐えられないと踏んだか。

 

 なのでこれといったメイドはリアリス付きの三毛猫アンニャしかいない。

 彼女は主人の後ろに控え……その主人はアンニャ以外にももうひとり猫を従えて、真っ先にマフィたちを迎えた。

 

 

「お姉様! あとアヤ様……ご結婚おめでとうございます。とてもお美しいです」

「お、オメデトウゴザイマス……」

 

 ぎこちなく礼をとったのは、リアリスの婚約者であるカレン・メイヤー。

 こうしてモフテイルの一員として参加しているというのは、私たち婚約してますというアピールにもなる。なので本来なら出席しないはずのカレンもここにいた。

 

 初めて見た時の勝気さはどこへやら。

 借りてきたを通り越し、もはや狩られた猫だ。ライオンなのに。

 初対面からまだ1ヶ月も経っていないが、マフィはこのぎこちなさを見慣れている。

 

「ありがとう、リア、カレン嬢」

「ありがとうございます、リアリス様。これからは私も姉妹として頼りにしてくださいね」

「(チッッッッッッッッッッッッッ)」

 

 くっそ幸せそうな2人にリアリスは内心で特大の舌打ちをした。

 だが淑女なので顔には出さない。

 

「え、ええ……! アヤ様がわたくしを妹と思ってくれるなんてとても光栄ですわ……!」

 

 出さない、出さない。出すなよ。

 

 

「あ、マフィ……!」

 

 ここでクラリッサが逃げ道を得たかのように早歩きで近付いてくる。

 

 考えてみればパーティー用のドレスを着てる父の姿を見るのは初めてのことで、マフィは少しだけ驚いた。

 化粧をして前髪も整えたクラリッサが、鏡で見る自分とそっくりだったからだ。

 いや似てるのは知ってたけど、メイクひとつでこうなるとは。

 猫背と陰キャな表情さえなければ見分けがつかなかったかもしれない。

 

「マフィ、おめでとう……! あ、あの、ちょっと離れた場所行かない?」

「そうやって逃げようってんでしょ、諦めてよ」

「うぐ……マフィ~……!」

「それではわたくしたちはこれで──ほら、歩きなさい」

「ひゃ、ひゃい……♡」

 

 話の邪魔になると悟った賢いリアリスは婚約者を伴って場を後にした。

 なんか様子がおかしかった気がするけど気のせいだろう。

 

「リアに気遣わせちゃってんじゃん……ほら、シャンとする!」

「うぅぅぅぅ……ローラさんみたいなこと言わないでぇ……」

 

 娘に言われちゃしかたない。

 つかみの陰キャコントをしたところで、クラリッサはオドオドしながらも桜兎を正面から見据える。

 

「あ、アヤ嬢も、お、おめでとう……それと……ありがとう……マフィすっごく幸せそうだから……えと、その……娘をよろしくお願いしますっ」

「こちらこそ……マフィとの結婚を認めてくれてありがとうございます、お義父様」

 

 ペコリと頭を下げるアヤに陰キャ狐は「へへへ」と笑う。

 

 マフィがアヤに惚れているように、クラリッサもアヤのことは「いい子だなぁ」と好ましく思っている。

 あと『お義父様』と呼ばれるのがなんか気に入ったみたい。

 

「あと、ずっとお礼を言いたかったんです! お義父様の作ったフォンクリスタルのおかげで、入学する前からマフィといつも話すことができて、とっても助かりましたっ。ありがとうございます」

「い、いいよいいよお礼なんて……えへへへへ……」

「そうそう~! アレがあったからアヤも寂しくなかったし、わたしからもお礼を言わないと~!」

「ひぃぃぃぃっ!!」

 

 ガシリと両肩を掴んできたコダマに背後を取られて情けない悲鳴をあげるモフテイル家当主。

 彼女は表では本当に情けないのだ。

 

「アヤ、マフィちゃん」

 

 そして気絶しそうなクラリッサの肩を掴んだまま、コダマは少し真面目な、それでいて明るい声を出す。

 

「おめでとう、2人とも。わたしから言えることは少ないし、さっきまで堅苦しいこと色々言われてたから砕けて言うとぉ~……2人がずっと好き好き同士でいることが、わたしにとっても嬉しいことだから! ずっと大切にね!」

「あなた、砕け過ぎです…………アヤ、マフィさんを幸せにしなさい。それが夫の務めよ。そしてマフィさん……ホウジョウに入るからには公私ともにアヤを支えてもらうから、そのつもりでいてちょうだい」

 

 ホウジョウ家当主、そしてその後ろからやってきた夫人に言われ、2人は背筋を伸ばし揃って「はいっ!」と返事。

 

 最後にやってきたローラもまた、クラリッサの代わりに堅苦しい言葉を言って──

 

「マフィ、たまには実家に顔を見せるんだぞ。孫も連れてな」

「うん……私も妹の顔見たいし、たまになら帰るよ」

 

 ローラにとっては娘と孫の歳がほぼ同じなのは……うん、目を瞑ろう。

 

 

 その後はパーティーを楽しんだり、これまで出てこなかったしこれからも出番はないマフィとアヤの祖父母からの言葉があったりしたが割愛。

 

 厳かでありながら盛大に祝われた婚姻は、確かに幸せの門出となった。

 

 ディズニーのプリンセス映画みたいに「2人は末永く幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし」で締めていいだろう。

 どう幸せになるかは別として……

 

 

 

□□□□□

 

 

 

 その後、マフィは未来のホウジョウ家夫人としての教育を受けながら出産に備える日々。

 現夫人──アヤのお母さんは印象通りの厳しい教育ママだった。

 

 アヤはまだ学生だったので家にいないが、フォンクリスタルのおかげで寂しくはなかった。

 

 

 半年ほどが過ぎて年途中の長期休みにアヤが帰省し、タイミング良く産気づく。

 

 産まれてきた子供はマフィによく似た顔立ちの、しかし桜色の毛並みを持つ狐のふたなりちゃんだった。

 これでホウジョウ家の世継ぎに問題はなし。

 

 

 産後間もなくマフィとアヤは夫婦そろってキリーネヤとメロリィの結婚式に出席。

 渾身のスピーチで黒猫を泣かせてやった。

 メロリィは照れくさそうにしていた。

 アヤは何故かもらい泣きしてた。かわいい。

 

 

 そしてまた時が少しだけ過ぎる。

 

 慣れてきたホウジョウ家での暮らし。

 慣れてきた婦人教育。

 軽くなったお腹を引き締めるためのスキマ時間を使った運動。

 

 そして卒業し、実家に帰ってきたアヤ。

 これからは家督を継ぐためにもっと修練したり試練を受けたりするらしい。

 大変そう。でもコダマ曰く「アヤなら大丈夫、一発で受かるわよぉ~」とのことなので心配もない。

 

 産まれたばかりだと思ってた赤ちゃんの成長も順調で、つかまり立ちできるようになったのを見て夫婦そろって喜び、厳しいホウジョウ夫人も目を細めた。

 

 順風満帆。

 理想の夫婦生活だった。

 

 出産から1年余り──それまでに何度も行った夜の営み以外は。




■TIPS ドレスの色

多くの種族が混在する神国カミガリにおいて、冠婚葬祭のマナーの中でドレスコードの優先度はかなり低い
「結婚式に赤いドレスなんて~」というのも無く、どちらかというと「祝詞や祈りの間は静かにしてる」という振る舞いが重要視される
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