ケモミミ貴族令嬢にTS転生したら、ふたなりたちに玩具にされた 作:ぐらんぐらん
84 決めた! 絶対ハッピーエンドにする!
マイカと名付けられたマフィとアヤの子は、本来ならホウジョウ家の乳母によって育てられる。
だがマフィは義母に直談判し、婦人教育をしながら育児もするハードスケジュールを認めてもらう。やればできる男……もはや男ではない。
夢にまで見た愛する人との子供だ。他人ではなく自分の手で育てたかった。
さすがに24時間付きっきりにはなれないので勉強中などの時間は家人に世話を任せていたが、貴族の中でも珍しいくらいマフィは子供にべったりだった。
自分の乳を与え、寝る時も一緒。
アヤがまだ卒業していない頃は、フォンクリスタルで埋められない寂しさを癒してくれた。
そして時は流れ、リトル桜狐のマイカも1歳の誕生日を迎えて少し過ぎる。
「ほら~ママだよー! こっちにおいでー! あんよが上手~!」
かつては手が出るタイプの悪ガキだった、記憶を取り戻してからは男としての自認を保とうとした、あの狐はすっかり甘々ママと化していた。
ホウジョウ邸、和室チックな部屋で腕を大きく広げて子供の歩行を応援している様など親バカの称号に相応しい。
そしてよちよちと時間をかけてやってきた我が子に愛情たっぷりのハグ。
「まんま!」
「あああ~~~! マイカマイカマイカ~!」
「まーか!」
子供が産まれると人は変わるというが、マフィのそのタイプだったよう。
在学中は「俺が孕むんじゃなくてアヤを孕ませてやる」なんて考えていたものだが、愛娘を見ると「そんなこと言ってましたっけ?」になる。
子供が声を発するだけで嬉しいし、畳の上をよちよち歩いてるのを見るのも嬉しい。
後ろめたい浮気相手の子でもなく、小難しい庶子契約でもなく、愛のもとお腹を痛めて産んだ我が子は何よりも愛らしい。心がママになった。
「マフィ、ママではなくお母様か母上と呼ばせないとダメですよ」
「ちっうえ!」
「はい、父上ですよー」
お小言を言いながらも微笑みながら襖を開けたのはマフィの夫でありマイカの父親でもあるアヤ。
彼女が学院を卒業してから約半年、雰囲気こそ大人び始めたものの背丈や顔立ちはほとんど変わらない。
この歳になってまた背が伸び大学生っぽくなったマフィと比べると小さく見える。
まぁこの国には女しかいないのだから低身長でナメられることはないが。
マフィとアヤの輝かしく微笑ましい夫婦生活は続いていた。
花の咲く季節は共に庭園を散歩し、汗のかく季節は共に縁側で涼み、葉の散る季節は庭先で魚や芋を焼き、雪の降る季節は炬燵で隣に座り合う。
温かくて、健やかな日々だった。
ずっとこんな日々が続いて、お互いにしわくちゃになっても手を繋いで微笑み合うのが用意に予想できる、優しい日々だった。
「おかえり、アヤ。今日もお疲れ様」
「同じ家だからおかえりというのは変ですが……ただいまです、マフィ」
マフィが婦人教育を受けるように、アヤも次期当主としての教育が続けられている。
家業を継ぐというのは意外と暇のない日々だ。
神事を司る家の当主というのは大事な日に引っ張り出されることも多く、アヤは父に付き添って学んだり引き継ぎしたり。
マナーから祝詞からなにから覚えることも多い。
「明日は朝には出ますから、マフィも今日できる支度は今のうちにしておいてくださいね」
「うん。マイカはヒサメさんに預けるからお留守番な」
「だー」
そして貴族である以上、偉い人からの呼び出しにも応じる必要がある。
アヤとマフィは揃って王城に呼ばれており、その間は乳母に任せるわけだ。
「あ……あのー……マフィ」
「どした?」
「その、そろそろ私の…………はつ……じょ……」
「…………ああー! そっか、もうじきか」
発情期というのは無情だ。子供が産まれてもやってくるのだから。
それはマフィにも、もちろんアヤにもやってくる。
子供が産まれて1年以上経っているのだから、去年はそれで2人とも苦しんだ…………いや、正確には片方だけか。
マフィとアヤは互いの発情期にゴムセックスしまくっていた。
ラブラブ夫婦なのだから誰憚ることなくヤリまくった。
実際去年はアヤがそれで乗り切っている。
今年もそろそろ彼女の発情期がやってくるので、一児のパパだというのに生娘のようにモジモジする可愛い桜狐はあらかじめ知らせてきたのだろう。
ではマフィも同じくそれで問題なく乗り切ってたのかというと……まぁそんなわけない。
アヤの子供ちんちんでは開発された体の発情期を慰められるわけがなかった。
夫とのセックスに満足したふりをして、学生時代から愛用しているディルドのお世話になりまくった。
多分その時期が人生で一番プルミリアに感謝してた。
発情期だけではない。
2人は貴族夫婦の中でもかなりラブラブな部類……となると営みも多いわけで、その営みもはっきり言ってしまえばおままごと。
腹ボコ失神ックスなど程遠く、体は叫ぶ。「足りない」と。
オナホのように好き勝手ズポズポされて、トイレのようにドバドバ射精されたいと。
だからといってマフィが夫に不満を見せることはない。
あれは終わったことだ。結婚してから変わったのだ。アヤ一筋という正しい道に戻ったのだ。
アヤを心から愛していることは事実であるし、可愛い夫と裸でくっつくのも、たまに入ってるか分からないような短小チンポを受け入れるのも抵抗はない。
女体というのは不思議なもので、たとえ相性が良くなくても長年連れ添えばパートナーのサイズ専用に膣の形も変わっていく。
どれだけかかるか知らないが、それを待てばいい。
そうすればアヤ相手でも満足できる営みができるはず……
などと、その気になっていたお前の姿はお笑いだったぜ。
翌日、ホウジョウ次期当主夫妻は城を訪れた。
家から馬車で15分。割と近所である。
首都カンナは森と西洋の街並みが一体になったような、ファンタジーで言えばエルフでもいそうな都会だ。
その中心部にある王城はさぞエルフチック……と思わせて、なんか普通にファンタジー城。学院と同じような様式の建築である。
ホグワーツから逃げられない。
学院と似ているのに雰囲気が違うのは、そこが勉学の場ではなく大人たちが使う政治の場だからだろう。
「見て、ホウジョウ家の次期当主夫妻よ」
「かわいいー♡」
「パング族の方はあの服が本当に似合うわね」
使用人や他の貴族たちのヒソヒソとした目線に晒されながら城に入る。
2人の装いはパング族の伝統的なもの──つまりは着物。
アヤは二位官家次期当主として装飾は最低限の白布を纏っている。
日本風に言えば狩衣みたいな。
マフィは時代劇で見るような武家のご婦人っぽい感じ。夫の髪色である桜色の着物だ。
髪などは後ろでまとめているが、前髪を上げてるわけでもない。
ハチミツ色も相まってコスプレ感が……あるか無いかでいえばある。
ホウジョウの女となったからにはこれがデフォだ。
何故わざわざ城まで行かなければならないのか、それは近々行われる祝日の催事の打ち合わせのため。
各氏族の神事に関わる家が運営側で参加するので、アヤが当主代理として参じた次第。これも次期当主としての修行みたいなものだ。
ではマフィが同行する理由は何かというと、社交のため。
貴族社会というのにはいくつものグループが存在する。
例えばホウジョウ家なら『二位官』『パング族』『狐』という要素があり、その要素ごとに集まりもある。
さらにはそれとは別に他家との様々な関係も。
なので貴族夫人はあっちの集まりこっちの集まりと奔走することが多い。
嫁修行と並行して顔を覚えたり覚えてもらったりの挨拶回りもあって大変だった。
今日マフィが呼ばれたのは、神事に関わる家のご婦人たちのお茶会。
打ち合わせに呼ばれた各家の当主の連れ……つまりは貴族夫人にとっての仕事の場である。
たとえ知り合いがひとりもいなくても、参加は必須。顔を出すということに意味がある。
「それで夫ったら──」
「地方のお布施が──」
「最近教会に来る人が減って──」
「娘がようやく洗礼を──」
案の定と言うべきか、楽しくお茶を飲むはずの場は堅苦しい空気だった。
交わされる話題は家の仕事のことと、家族のこと。
前者はなんかビジネスの会議みたいだ。後者は……うん、いかにも貴族らしい。
貴族というのは見栄の商売だ。みんな自分の夫や子供を良く見せようというのが透けて見える。
ホウジョウ家での嫁修行でこうした場にも難なく適応できるが、もし記憶を取り戻す前の自分がこんな場に放り込まれたらと思うと……良いビジョンが浮かばない。
しばらくお茶を飲みながら相槌を打ったり愛想笑いを振り撒くマフィに、ひとりの使用人が近付いてくる。
「ホウジョウ二位官夫人──」
彼女が耳元でひそひそ伝えるタイプの伝言をすると、マフィは少し目を見開いてカップをテーブルに置く。
「失礼、どうやら呼び出されてしまったようなので……私はお先に失礼します」
誰に呼ばれたの? ──などという無礼なことを訊く者はいない。
二位官夫人を呼び出せるような立場の人間は限られる。わざわざ問いただすのは無礼とされるのだ。
なので誰にも深く突っ込まれず、マフィは席を立つことができた。
まぁ実際に偉い人からのご指名なのだからマフィが後ろめたさを感じることはない。
なにせ王族──第四王女は国で上から数えた方が早いくらい偉いのだから。
普段は学院に住んでいるような彼女でも、この城に専用の部屋くらいは持っている。
偉そうな執務机、びっしり本が並んだ棚、客をもてなすソファとテーブル……いかにもな部屋に通されたマフィは、またお茶を振舞われる。
「久しぶりだね、マフィ。新年のパーティー以来だから半年と少しぶりかな」
ジャスリンは相変わらず女子にキャーキャー言われるタイプのビジュアルをしている。
変わったところといえば髪を少しだけ伸ばしウェーブをかけているところか。
学院にいた頃はナチュラルイケメンだったのが、フェミニンさをプラスしたことで一気に大人イケメン女になっている。
もし職場にこんなのがいたらドキドキして仕事が手に付かないだろう。
「はぁ……それ久しぶりって言うんですかね…………で、なんでリアがいるわけ?」
「もちろんお姉様に会うためです!」
「学院はどうした学院は! 長期休み終わっただろ!」
「延長です!」
「ならんだろ!」
部屋の主であり呼びつけた張本人であるジャスリンがいるのは別にいい。
だが現在学院で下半期真っ盛りなはずのリアリスまで城にいるのはどういうことなりや?
「あんまりひっつくな! この服シワ出来やすいんだから」
「そんなぁ! わたくしも久しぶりにお姉様とお会いできたというのに……!」
「いやお前は長期休みに会ったじゃん。半年に一回は確実に会ってるじゃん」
白髪赤目の妹狐もまた、去年一昨年と比べて成長している。
背も伸びたし、髪なんか少しカールをかけて大人っぽく。
マフィはそういうのに頓着しなかったが、次期当主でもあるリアリスは学院でもナメられないために外見にも色々と気を遣っているらしい。『優雅さ』とか『攻撃力』とか。
まぁ中身は学院入学前と同じ。いつまでも姉に甘えたいシスコンだ。
「落ち着いておくれ。リアリス君は課外活動という名目で無理やり連れだした形だから、お咎めがあるとしたらボクの方に来るさ。そう気にしなくていいよ」
そして学院での彼女は成績優秀なエリート令嬢であると同時に、マフィも在籍した錬術薬研究会のメンバーでもある。
最初に聞いた時は面食らったものだ。
だってジャスリンとリアリスだもの。マフィとしてはロクな組み合わせではない。
しかし研究には真面目に取り組んでいるようで、ジャスリンに「姉妹揃って筋が良くて驚いたよ」と言わしめている。
なんだ、何もないじゃん。
単に姉の足跡を追ってみたかっただけなのかも。
「さて、大事なお茶会に横入りしてキミを呼び出したのは他でもない…………コレについてだ」
ジャスリンがテーブルに置いたのは、紫色の液体が入った小瓶。
見るからに錬術薬。
わざわざ王女自らが見せるそれは、ただの薬ではない。
「え…………それ……」
「ああ。今さらになってしまったけれど……完成したよ」
それはかつてマフィが学院生活という青春の大半をなげうって作ろうとした物だった。
コレのために王女のセフレになり、子供まで産んだ。
寝ても覚めてもついて回り、実験と失敗を重ね、時にはアヤよりも優先して追い求め……ついぞ作れなかった。
それが今、目の前にある。
ちんちんを生やす薬だ。
「ま、まさか本当に……」
「本当だよ。まだ発表していないんだ。キミに一番に見せたかったから」
「でも、なんでリアも?」
「クラブ活動の一環として、彼女にも協力してもらったからだよ。あとカレン嬢もか」
リアリスの婚約者であるカレンもまた、入学と同時に錬術薬研究会に(無理やり)入らされたのだが……まぁこれはまた別の話か。
それよりも薬だ。
「キミにあげるよ。学院での2年間、共に研究してきた証として」
「私に……」
「効果は確認済みだよ。まぁ大きさには個人差があったけどね」
「これを飲めば……私──俺にも……」
手を伸ばす。
求めてやまなかったのだから、飲まない理由はない。
リンリン・ブライドが自信を持って完成したと言う薬は、きっと求めた通りの効果がある。
女に生まれて18年以上、TSしたと自覚して3年以上。
とうとう戻れるのだ。
TS転生したけど最後には男に戻ったという稀有な主人公になれるのだ。
セクタムセンプラ!
……今「生えるだけじゃふたなりになるだけで男に戻ったとは言えなくない?」という疑問をズタズタにしてやった。
「…………」
マフィの手が小瓶を掴もうとし……止まる。
そしてスッと膝元に戻された。
「……やめておきます」
「マフィ?」
「ジャスリン様、本当にありがとうございます。この薬を作るために協力してくれたことも、こうして渡してくれたことも、とても嬉しいです」
でも──マフィは大人びた微笑みと共に続ける。
「もう、
あれほど求めた薬は、本当に今さらだった。
処女を失い、何人ものふたなりと体を重ね、好きな人と結ばれ、子供を産み、育てている。
女として、母親として過ごすことに染まりつくされた。
アヤとマイカ……新たな家族と暮らし、幸せと充足を感じている。
マフィはもう、男ではない。
心のすべてが女であることを受け入れた。
それどころか「自分は本当は男だったんだ」ということすら、幼少期の思い出のように薄く彼方。
心血を注いで作ろうとした物が実際に出来上がったことは単純に嬉しいけど、もはやマフィにとってそれ以上の価値はない。
「そうか……分かったよ。効果が効果だから一般には流通しないけど、欲しくなったらいつでも言ってね」
ジャスリンはふっと笑って小瓶を戻すと、「さて」と仕切り直す。
「では別の話をしようか。お茶は美味しいかい?」
「ええ、美味しいですけど……?」
「それはよかった」
「でもなんか、変なに、おい…………」
ニコニコと笑うジャスリン。そしてさっきから微笑むだけで何も言わないリアリス。
どうしたのかと2人に問おうとするマフィの舌が回らない。
「んぇ……あう?」
「実を言うとキミを呼び出したのはこっちの話の方が本命でね」
「そうですわお姉様。わたくしたち、とっても頑張って考えたんです」
2人の笑顔を最後に見て、マフィは眠りに落ちていく。
そして意識が途切れる直前に思う。やっぱこいつらロクなことしないと。
でもサブタイ通りならハッピーエンドするんだってよ。