「――ん、んんっ……ぷあ」
気持ちにまかせたなのはの口付けは、彼女の息が続かなくなるのと同時に終わりを迎えた。少年の双眸はショックのためか、いまだに焦点を得ていなかった。なのはと重ねたくちびるの湿りが、数瞬前の出来事を生々しく回想させる。
「なん……で」
「お兄ちゃんのことが、好きだから」
ようやく開いた廣明の口からは、そんな無意味なことしか発せられなかった。本当は、わかっている。たどたどしくも情熱のこもったキスの意味を。それを率直に認めていいのか、廣明は迷いに陥っていた。
「……やっぱりおかしいよね、こんなこと」
大好きな年上の少年のうろたえる姿を、なのはは拒絶されているのだと受け取った。握られていた手は力なく離され、温もりは悲しみへと変化していく。なのはの瞳にはもう涙が溢れそうになっていた。それを見てようやく、廣明は我に返る。
(なのはを泣かせるのは、おれの望みじゃない)
恐る恐るだが、今度は廣明から彼女の手を取った。そこからじんわりと、あたたかさが広がっていく。年下だから、妹同然だから、そんな考えが下らなく感じるような優しい想いが生まれていく。
「なのは、大好きだ」
「え……」
自分から告白しておいて、なのはは嬉しいはずの返事に言葉を詰まらせた。先ほどからの反動で、たまっていた涙が頬をつたう。廣明がそっと涙を指で拭うと、これは嬉し涙なんだとなのはは理解できた。
「き、キス、お兄ちゃんからもしてほしいな……」
廣明は、吹っ切れたようになのはのお願いを行動に移した。余計な煩悩を押し殺して、ただ彼女とキスをすることに集中する。
「ちゅ、んっ……ちゅう」
「ふぅ……ちゅる……ふにゃあ」
キスを終えてくちびるが離れると、なのはがやけに甘ったるい声を出す。当たり前なことだが、なのはにはろくに性に関する知識はない。テレビドラマなどの影響で、愛し合う男女がベッドの中で絡み合うところまではなんとなく想像がつくが、所詮子供の考えであった。今回の急な告白劇にしても、密にライジングサンと相談しての計画である。マスターを想う彼女が黙ってことの成り行きを静観しているのも、そのためであった。
「かわいいやつめ」
くしゃくしゃっと廣明がなのはの髪を混ぜる。抵抗してじゃれつくような仕種を見せる彼女のことが、廣明には抜群に愛しく思えた。兄貴ぶった思いの下に、こんな不健全な感情が隠れていたとは彼も知らなかったが、なのはに恋をしていた部分は存在していたのだった。
「ねえ。また、好きって言って欲しいな」
「……好きだぞ、なのは」
間髪いれずに真っ直ぐで純粋な気持ちを伝える。
「好きだよって、魔法の言葉だよね」
小さな声で、なのはがささやいた。自分で言って恥ずかしかったのか、彼女は顔を枕に押し付けてしまう。
「おやすみ、なのは」
小さな恋人に布団をかけなおしてやってから、廣明は仰向けになる。今度こそ本当に、幸せな想いに包まれて2人は眠りについた。
夜も更けきった頃。
2人の静かな寝顔を、青髪の少女がいたたまれないような表情で眺めていた。マスターと、ついさっき家族のような関係から抜け出した少女。ライジングサンは、それをもっと素直に祝福できると思っていた。だが、現実には心中に複雑なノイズが生じていて、どうにかなってしまいそうな気分であった。
「主さま……」
自分がこれからしようとしていることが、どんなに卑怯なことなのかは承知している。もし、それを打ち明けたのならば、優しい少年は許してくれるかもしれない。心を整理しきれなくて、目の奥から水分が分泌される。
「ごめんなさい……」
刹那の間、少女と少年の影は重なる。朝、少年が目を覚ますと、腕にあったはずのデバイスは枕元に転がっていた。
◇◆◇
なのはの告白から数日、サンが自ら話かけてこないことを廣明は気にしていた。謎の敵との遭遇に、先日のなのはとのことなど、思い当たる節はいくらでもある。マスターとしても、しっかりと彼女のことを受け止めてあげなければならない。そう考えつつも、なかなか言い出せずにいた。幸い、現在は学校から帰宅したばかりで廣明とサン以外には誰もいない。なのはも塾に行っているから、来るとしても数時間先のことである。
「……サン。おれの推測で悪いんだけど、なにか言いたいことってないか」
「はいッ!?」
とてもわかりやすい態度で、サンは身体を硬直させた。
「それとも、不満があるなら聞かせてくれ。こういうことが後手後手になっていくのはよくないと思うから」
はっとしたような表情で、サンは頭(かぶり)を振ってそれを否定する。
「不満なんて違います。隠し事をしているのは、わたしなんですから……」
隠し事をしていると、サンははっきりと言った。ならばやはり、元気がないのはこの前の戦闘のことだろうかと廣明は察する。
「あの鎧は知りませんが、使用された転移魔法は恐らく姉妹機・シャイニングルナのものだと考えられます」
「お前の姉妹機なら、どうしておれたちを襲ったんだ」
廣明の疑問に、サンは表情を歪める。できることなら認めたくはないが、どうしても1つの結論に行き着いてしまうのであった。
「わたしたちは、自立機能のおかげでマスターを選ぶことができるのはお話した通りです。姉であるシャイニングルナもわたし同様、ともにあるべきマスターを求めて旅をしていたと考えられます」
「ということは、その自立機能が失われている可能性があるってことか?」
はい、と廣明の質問に首肯して、サンは言葉をつなぐ。
「それも、悪意ある者に従わされているとさえ予想されます」
最もあってほしくないことが、現に目の前で起きてしまっている。しかも相手はライジングサンの姉妹機。かなりの性能を持っていることは廣明にもわかる。
「……敵の脅威に対するには、いまのわたしと主さまでは力が不足しています」
廣明に、目をそらすことのできない実状が突きつけられる。鎧に完敗したことを思い出し、強く握られた拳が悔しさで震える。
「なら、強くなるためにはどうすればいい」
「主さまとのリンクが最大限になればあるいは」
サンはこれまで廣明の身体に負担をかけすぎないよう慎重にリンクを強めていっていた。そのために行使できる魔法も限られ、出力もデバイスとマスター双方にとって分不相応なものとなっていた。
「まさかとは思うんだけど、また前みたいな……?」
魔力リンクの話を聞くと、どうしても前回の奉仕のことが頭をよぎる。真っ赤になって視線を逸らすサンは、図星をつかれた子供のように小さくなっていた。
「せ、性行為をしていただく必要があります……」
か細い声で、サンはそう言った。あの時とは違い、マスターには恋人がいる。彼がそのつもりでなくとも、なのはにとって裏切りに等しい行為になりかねない。こんな方法しか見出せない自分が、サンはどこが高性能なのかと侮蔑したくなる。
「サン、ちょっとこっちに来い」
ソファーに座る廣明が手招きをして、膝の上に来るように指をさす。サンはそれに従い、彼に抱きとめられるような形になる。
「あの、主さま?」
ぎゅっと抱きしめられると、いけないと思いつつもサンはドキドキしてしまう。
「お前だって、おれの大切な女の子だよ」
廣明は耳元でそうささやく。彼にとってはサンもなのはも、同じく愛情をそそぎたい存在であった。デバイスだからなんて関係ない。
「んっ……ひゅぷ、ちゅ」
サンに後ろを向かせ、そのくちびるを奪う。なのはの告白によって開放された廣明の本能が、理性を焼き尽くしていく。
「ちゅ、あ、主さま……」
とろけたような表情のサンが、もっとしてほしいというようにねだる。男の部分に火がついた廣明は、魔力で生成されている彼女の上着を剥ぎ取るように脱がす。
「下着つけてないんだな」
「いらないかなーと思いまして……、ひゃあ」
風呂で偶然見た時と変わらない、薄い胸を廣明はなでる。
「きれいだよ」
白磁のような美しい肌に男は指を這わせていく。神聖なものにいやらしいことをしている気分になり、さらに昂っていく。
「やあ、それ気持ちいいですっ」
ぴん、と存在感を示す両胸の乳首を、廣明は一気につまみあげた。急な快楽に、サンのはく息が荒くなっている。それだけで我慢できなくなった彼は、胸から腹、そして短いスカートの中に手を潜り込ませる。縞模様の下着の上から大切なところをなでまわし、サンの反応を確かめる。
「ぬ、脱がすぞ?」
緊張によりのどが渇くのを感じながら、廣明はサンのスカート、そして下着を足首までずらした。サンの秘部が空気に触れ、わずかに震える。生まれてはじめてみる女性器に、廣明の目は釘付けになっていた。ぴったりと閉じられたそこに、指をあてがう。上下に動かすと、段々と指が中に飲み込まれていく。
「すごいな……」
「あんまり見ないでくださいよお」
サンの全身が、羞恥で赤く染まっている。くにくにと人差し指を使って彼女の内部を刺激すると、じわりと愛液が染み出している。指にまとわりつく液体に廣明はおかしな感激を覚え、恋人が感じてくれていることを認識した。
「あの、主さまは、苦しくありませんか?」
彼女は先ほどから、自分の尻に男の勃起したそれが当っていることを知っていた。淫らなことだと思いながらも感じられる身体であることに、少女ははじめて感謝する。しとどに濡れた陰部は男のペニスを挿入される準備を完了しており、だらしなく愛液を垂らしていた。
「サンのはじめて、ありがたくもらうよ」
疎ましかったジーパンと下着を脱ぎ捨て、廣明はソファーに座りなおす。今度は少女と向かい合うように抱き合い、その陰部におのれの限界まで大きくなった欲棒を擦りつける。愛液で滑りのよくなったそれは、明らかにサイズ違いの穴の中に先端を潜らせた。
「あ、ああ……」
異様な圧迫感から、サンはうめき声を発する。じりじりと亀頭が挿入されていき、一番太いところは抜けた。
「もう、ちょっと」
ゆっくりとサンの腰を落とさせながら、廣明も歯を食いしばる。あまりの刺激に、少しの気の緩みで暴発してしまいそうになる。そんな情けのないところ、がんばってくれている少女に見せたくはなかった。
「は……いってます、奥まで、主さまのが」
男性器が半分ほど隠れたところで、サンの膣の最深部にあたる。両者共にどっぷりと汗をかき、何キロか走ったように疲れを感じていた。それだけに、嬉しさも人一倍だった。
「よくがんばったな、偉いぞ」
廣明は目の前の少女の頭をなでる。身体と身体で深くつながることによって、より相手を愛おしく思える。ほころぶサンの顔のあちこちにキスをしていき、労いのしるしとした。
「主さま、動いても大丈夫ですよ?」
その状態から何分か経ち、サンはペニスを入れられている感触に慣れてきていた。
「それじゃあ、ゆっくりな」
彼女の尻に手をやり、そこを支点にして腰を動かしていく。激しく突き上げているわけでもないのに、肉棒が狭い膣に締め付けられて射精感が増していく。
「あっ、ん……ふぁあ、奥にこつこつって主さまのが……」
子宮の入り口をこすられて、サンが気持ちよさにだらしなくよだれを垂らす。それを見た廣明は、舐めとるように彼女に口付ける。頭の中が真っ白になるような快感が近づき、1秒でも多く彼女の膣(なか)を味わいたくて廣明は加減を忘れたように下から突き上げる。
「お腹に、わたしのお腹の中に主さまの、くだしゃい……」
呂律が回らなくなる中、すがりつくように少女は男にせがむ。
「ああ、ぐっ!」
少女の腰をぐっと掴み、男は最深部で欲望をぶちまけた。どろどろの精液が、少女の膣内を満たしていく。身震いするように、少女も絶頂の快楽を味わっていた。するとなにかがはまったような感覚が廣明に生まる。
「はあっ、あう……。主さま、成功ですよ」
くったりと、糸が切れたようにサンは廣明の身体に体重を預ける。
「ああ、確かにサンと近くなったって感じる。これがそうなのか」
いまは誰よりもぴったりとくっついている2人であるが、それとはまた別のつながりを廣明は確信できるようになっていた。
「まあ、それよりも」
初めてのセックスの余韻を、廣明はサンの首筋にキスをしながら楽しむ。息を整え終えた彼女もマスターに負けじと口を吸う。
「主さま」
キスの最中、真剣な目をしてサンは廣明にお願いをする。
「わたしの姉さまを、どうか助けてあげてください……。あの方がわたしを攻撃するなんて、ありえないんです」
「わかってる。サンの大事な人なんだから、当然だ」
少女の不安を打ち消すために、廣明はもう一度くちづけをする。その言葉を嬉しく思いながら、サンは廣明との時間を楽しむことに耽る。心の中でなのはに謝罪しながらも、その身体は悦びにわなないていた――。