先端がぬくもりにつつまれ、その状態で玲於奈が顔をあげる。
「続けて」
玲於奈の頭をなでながら伝える。
軽くうなずいてから玲於奈は顔を動かす。
ゆっくりとではあるが、玲於奈は確実に私を咥えてくれている。
「んっ」
途中でくぐもった声が聞こえてくるが、それでも玲於奈は顔を動かす。
玲於奈の部屋で、部屋の主である玲於奈が、私に奉仕をしている。その事実と、現実に広がっている光景とが私をよりたかぶらせる。
「ふふ」
無意識に笑っていた。
「?」
笑い声に玲於奈が顔をあげた。
「上手だよ、玲於奈」
それをごまかすように、玲於奈のほおをなでる。
玲於奈はその手に自分の手を重ねた。咥えたままだからわかりづらいが、どうやら笑っているようだ。
「さ。続けて」
言いながら玲於奈の頭とほおをなでると、玲於奈は再び動き始めた。
しかし、口をこうやって本来とは違う用途で使用できるのだから、勉強がてら一度ぐらいはどちらかにアナルも使わせてもらうのもアリかもしれない。
もっとも入念な事前の準備が必要と聞いたことがあるから、難しいかもしれないけど。
「ぷはっ」
玲於奈が一度口を離した。
「なんだか嬉しそうだけど?」
何度も呼吸してから、そんな疑問が届く。
「そりゃあ嬉しいから」
自分でも声から歓喜を感じ取ることができた。
「玲於奈にこんなことしてもらえてるんだから――ほら、もっと刺激してもらわないと」
手で玲於奈の頭を移動させれば、すぐに咥えてくれる。
そのまま懸命に頭を動かす。
ときおりこちらに視線を向けるのは、問題ないかのチェックなのだろう。私は玲於奈の頭をなでる。
「上手上手」
そのひと言で玲於奈は安堵した瞳になる。
しばらくの間、玲於奈の口を楽しむ。
慣れてきたのだろう、唇だけでなく舌でも私を刺激する。
先端だけを攻めるだけでなく、だんだんと竿や根元にも刺激をあたえるようになっていた。
「――っ」
せっかくなのだから、できるだけ耐えてできるだけ大量に放ちたかった。
今なら玲於奈の顔をさわっても怒られないのだから、と私は玲於奈の髪にふれる。
金色のミディアムショートは見た目どおりサラサラだった。
「綺麗だよ、玲於奈」
髪をさわりながら伝える。
行為が少し乱暴になったのは、もしかすると玲於奈なりの照れ隠しなのかもしれない。
なんであれ、すでに刺激をあたえられている状態で、それまでとは違う刺激にそろそろ限界だった。
「玲於奈、出すね」
頭をなでながら、私は告げる。
どこになにを出すのか明言しなかったが、玲於奈はその言葉に応えるようにさらに動きを激しくした。
言葉の意図を汲んでくれていることが素直に嬉しかった。
だから伝えたことを、実行することにした。
せき止められていたからか、開放感は半端なかった。
口内が私の放ったもので満たされていくのが、熱でわかった。
玲於奈は口を根元まで咥えていて、それでいて離そうとしない。
ただ、表情は明らかに苦しそうだった。
「玲於奈、離しても――」
そこまで言ったが、そこで口が止まった。
玲於奈は私を見ていた。苦しいだろうに、涙目になっているのにもかかわらず、玲於奈は私を見ていた。
「……ありがとう」
唐突に感謝を伝えたくなった。
尽くしてもらえるという幸せが私の身体中を駆け巡った。
射精を終えても玲於奈はそのままだった。
肩で息をしていた玲於奈はゆっくりと私を解放する。
それは玲於奈から与えられたものと、自分自身が放ったものでテカテカしていた。
「『口を開きなさい』」
玲於奈は口を開いた。中は私の欲望で満たされていた。
「ありがとう……『口を閉じて、飲みなさい』」
玲於奈は口を閉じてからうなずき、嚥下し始める。
口、食道、胃。
十二指腸を経て小腸大腸……玲於奈を内側からも自分にとって都合の良いオンナにしているという事実が私をたかぶらせる。
文字通り玲於奈を征服している。玲於奈を屈服させている。玲於奈を組み伏せている。
「はあ……」
すべてを飲み込んだ玲於奈は私の太ももに頭を乗せた。
「フェラチオって結構大変なんだけど」
「ご苦労様」
玲於奈をなでる。
「――もう元気になってるし」
眼前の光景に玲於奈は苦笑する。
その言葉どおり、すでに元気を取り戻していた。
「それだけ玲於奈がよかったってことだよ」
金髪をなでながら玲於奈に伝える。もちろん本心だった。
「……もう」
すねた声が聞こえてくるが、表情はやわらかなものだった。
※※※
食欲と、ついでに性欲を満たしたあとシャワーを浴び、連絡をしてから服を着替えた。
「じゃあ行こうか」
「行くってどこによ」
私と同じように着替えた玲於奈が質問してくる。当然のことだ、なにせ「出かけるから着替えて」としか伝えていないのだから。
「いいところ」
「いいところねぇ」
玲於奈は怪訝な表情を隠さない。
「まあ、ワタシはもう翼のオンナだから従うけど」
言いながらポコポコと殴ってくる。力がこもっていないのがなぜか嬉しかった。
「あのさ」
ふたりで出かけてから玲於奈が口を開く。
「今度、服買いにいかない?」
「いいよ。ほしい服があるの?」
大学生になって、一番大変だったのは私服選びだったかもしれない。それまではそれほど気にする必要はなかった。
ただ、大学からは私服姿が基本といってもいいわけで、そしてセンスというものに圧倒的なデバフがかかっていたが、それでも色々と勉強して色々と学んでいた。
「ほしい服があるんじゃなくて」
隣を歩く玲於奈は金髪をいじりながらもじもじとしていた。
「――翼にワタシの服を選んでほしい」
玲於奈は私を見つめながらささやく。
「そうすれば……ほら……ね」
外で他人がいるからか、玲於奈は曖昧に告げる。
「そっか。わかった」
一方的でないことが、玲於奈も玲於奈なりに私のオンナであろうことに必死であることがわかって嬉しかった。
「今度行こうね」
「……ん」
言葉で言えばいいのに、玲於奈は指の腹でほおをつついてきた。
※※※
目的地はそんなに遠くなかった。歩いて二〇分ほどだった。
「うわ、すご……」
玲於奈は少し引いていた。
いわゆる億ションほどではないが、それでもそこに用のある学生は、一体どんな人生を送ればいいのか考え込んでしまえるような豪華な佇まいのマンションであることは間違いなかった。
私は軽い足取りで入り口にあるインターホンでとある部屋を呼び出す。
すぐに入り口が開いた。
「いいの、入って?」
「大丈夫大丈夫」
「ちょ、押さないで」
玲於奈のことを押しながらエレベーターで上層階に移動し、目的地についた。
すぐさまベルを鳴らせば……ドアが開く。
「おかえりなさい、翼」
そこには涼子がいた。
そこは……目的地は、私が涼子と暮らしている部屋だった。
※※※
「ええっと……」
涼子は困惑していた。
そりゃそうだ。自分が同棲している相手がいきなり知らない女性を連れてきたのだから。
「ただいま、涼子」
「翼、こちらの方は?」
「ふふ、わかるでしょ?」
私の発言に涼子はため息をついた。
「たしか、前に言っていたわよね。『たくさんの女性と肉体関係を持つ』って」
ゆっくりと涼子が言葉をつむぐ。
「彼女は、その第一歩ってところかしら」
涼子の視線が玲於奈に向けられる。
「そうそう」
「翼! この人もその……翼のオンナなの?」
玲於奈の疑問が私にぶつかる。
「そうそう」
私はふたりを近づける。
「ふたりとも私のオンナ。ほら、キスしてキス」
「き、キス……って」
「ああ。『キスをしなさい』って命令した方がいいかな?」
「あ……」
ふたりの瞳が一瞬揺らいだ、ような気がした。
そのままお互いに顔を見つめあい――キスをした。
美女と美女とがキスする姿がこんなにも美しいだなんて、それまで知らなかった。あと胸の大きな女性同士だとキスの前に胸がくっついて大変そうだなとも思った。
「んっ……」
黒髪ストレートで清楚な涼子と金髪のミディアムショートでギャルっぽいファッションの玲於奈。
対照的とも言えるふたりが、私の命令でキスをしている様はとても美しかった。
「ふー。眼福眼福。『ふたりとも離れなさい』」
ふたりはすぐに私のセリフに従った。
「……翼」
不満げな玲於奈の声がきこえてくる。
「キスさせる前にせめて紹介してくれない?」
「そっか。紹介してなかったね」
自分の欲望を優先してしまったため、基本的なことさえもしなかった。
「こちらは白河涼子さん。私のオンナ」
私は涼子を指さす。
今度は玲於奈に手を向けながら涼子に伝える。
「こちらは九条玲於奈さん。私のオンナ」
「は、初めまして……」
「はじめ、まして……」
ふたりとも困惑しながらも言葉を交わした。
「よし、自己紹介も終わったから、さっそくしようか」
私はふたりの腰に手を当て、寝室にその身を進ませる。
「しようか……って何を!?」
玲於奈のシャウトが部屋に響く。
「そりゃあ三人でセックスでしょ」
涼子との行為も玲於奈との行為、どちらもよかった。
であれば両方とセックスできるのであれば――そんな想像だけでふたりの裸体すら見ていないにもかかわらず、私のズボンの中のものが反応し始めていた。
「いつか、こんな日が来ると思っていたわ」
玲於奈とは対照的に落ちついた声を涼子が放つ。
「玲於奈さん、だったわね」
「は、はい」
「とりあえず今は翼の言葉に従いましょう」