三人で寝室に向かう。
それほど時間は経っていないのに、なぜだかとても久しぶりな気がする。
私がいなくても、涼子が掃除をしっかりとしていてくれていたようで、綺麗そのものだった。
ベッドは大きなサイズのものを涼子に購入してもらっていたので、三人並んでも問題ない。もっと多くても……いや、今考えるべきじゃないだろう。
「ふふ」
「ねえ、翼。本当にするの?」
玲於奈が訊いてきた。
「いや、するのが嫌なんじゃなくて! 涼子さんとワタシ出会って一時間も経ってないんだけど!?」
「――私の夢だったんだ」
私はゆっくりと口を開く。
「美少女と美少女を侍らせたり、美少女同士でセックスしてもらったりするのが」
玲於奈も涼子も冷めた目を私に向けている気がする。
しかしもう止まることはできなかった。
「昔からの夢だったし、正直かなうことなんてないと思ってた! でも、それがかないそうで、ぶっちゃけ本当に楽しみなんだ!」
涼子と出会って。玲於奈を私のオンナにして……ふたりでもハーレムに違いない。
「その夢をかなえたいので、三人でセックスしよう!」
腰を九〇度近く曲げ、ふたりに懇願する。
「命令しないの?」
玲於奈の冷静な声が私に届く。
「え?」
顔をあげると困惑気味な玲於奈がいた。
「いや、ワタシたちに『私とセックスしなさい』とか命令すればいいじゃない?」
「あー。それも考えたんだけどさ」
私はベッドに腰かける。
「それだとつまらないというか、操り人形が欲しいんじゃなくてさ」
両手をベッドにつき、顔を天井に向ける。染みひとつなかった。
「ふたりが欲しいから抱いたのは事実だけど。たとえば朝食を用意してくれたり起こしてくれたりするでしょ?」
「そうね」
涼子がうなずいた。
「それは私のためなのかもしれないけど、私にそうしたいと考えた結果なわけでしょ」
「まあ、うん」
「そういう気持ちが尽くされてるって感じがして、個人的にはいいんだよ」
ふたりに視線を向ける。
「そう」
「――ね、玲於奈さん」
私をにらんでいる玲於奈に涼子が声をかける。
「はい、涼子さん」
「わたしたち、翼のオンナでしょ? なら翼の夢をかなえてあげるべきじゃないかしら」
涼子は笑顔だった。もしかしたら私の夢が、あきれ果てて笑うしかないのかもしれないが。
「それは、その……いいんだけど」
玲於奈がもじもじし始めた。
「わかるわ。恥ずかしいんでしょ? わたしもそうよ」
涼子はそんな玲於奈の手を取り、自分の胸に当てた。
「どう?」
「……心臓バクバクしてる?」
玲於奈の瞳は涼子の顔に向けられていた。
「ええ。私も翼以外とはしたことないもの」
涼子は発言の途中で私に視線を向けた。
「それに、玲於奈さんがこんな美少女だから、わたし翼に捨てられちゃうかも」
「そ、そんなことないって! 涼子さんすごく綺麗だから! 自信持っていいから!」
玲於奈が涼子の肩に手を置き、揺らし始めた。
「本当に?」
「嘘なんて言わないって!」
涼子の問いに玲於奈は必死だった。
「ふふ、嬉しいわ」
「涼子さん……」
玲於奈の声量は小さくなっていた。
ふたりがいい雰囲気になってくれてよかった。これでふたりでセックスしてもらうこともきっと大丈夫だろう。
「これでふたりともさっきよりは仲良くなったかな」
立ち上がり、ふたりの腰に手を回す。
「仲良くは……まあ、少しは」
「もうわたしたち親友よね」
涼子が顔を玲於奈に近づけささやいた。
「それ以前に翼のオンナたちだけどね」
「それもそうね」
玲於奈の声に涼子は笑う。
ふたりの距離はこれまでよりも明らかに近くなっていた。
これなら。
「よし」
私はふたりをベッドに押し倒す。
抵抗なくふたりの美少女がベッドに背中をあずけた。
「じゃあ、しようか」
涼子と玲於奈。ふたりの顔をしっかりと交互に見る。
ふたりの瞳はとろけていた。これからのことに期待をし、どんな悦びを得られるのか期待している瞳だった。
どうしてわかるのか、それはふたりとも私のオンナだから。
「や、優しくして」
玲於奈はそっぽを向いてしまった。
「翼」
「うん」
「これから翼の夢がかなうということね」
「そうそう」
夢がかなう。
その事実だけで暴発してしまいそうだった。
※※※
私はあらためてふたりに視線を向ける。
黒髪ロングで清楚な感じの、上流階級出身の涼子。
金髪ミディアムショートのギャル系ファッションをしている玲於奈。
涼子は厚手の白いシャツワンピース。
玲於奈は肩を大きく露出した、肌なじみのいいサンドベージュのオフショルニットに黒いミニ丈のフレアスカート。
オフショルニットは陽に焼けた砂のような、淡い色合いで金髪によく映えていた。
どちらも美をいくつつけても足りないくらいの美少女だった。
私がいなければ、ふたりは会うことも会話することも、それこそキスすることもなかったのだろう。
私がふたりの人生を狂わせたとも、私と出会うことがふたりの運命だったとも言えるだろう。
「翼……」
涼子が手を伸ばし私のほおにふれる。
「じゃあ、涼子から脱がすね」
私は涼子に覆いかぶさる。
「お、お願い……」
涼子の着ているシャツワンピースはボタンが前についている。そのボタンを少しずつ外していけばいい。
「ほ、ホントに……」
玲於奈が唾を飲んだのがわかった。
ボタンを外すごとに涼子の肌が見えてくる。
シャツワンピースの下にはセミシースルーの少し青みがかった白いブラジャーとショーツを穿いていて、清楚な涼子にぴったりだった。
「どう? 似合っている?」
涼子は恥ずかしそうに笑いながらたずねてきた。
「お店で見た時、これなら翼が喜んでくれるって思ったの」
わかっていたが胸部のその“ボリューム”はやはりすごかった。
下を向いてもさえぎるものがほとんどない自分とは比べものにならないほどだ。
簡潔に言えば雨宿りできそう……ってそれは今別にどうでもいいことだ。
顔を左右にふり、あらためて下着に目を向ける。
涼子の下着は清楚な感じで、上品にフリルがついている。ブラジャーもショーツもどちらも真新しいのは、購入したばかりだからだろう。
玲於奈のところから涼子のところに移動する時に涼子に連絡した。そこでどうなるかを予測して準備していたに違いない。
そんな心遣いが嬉しかった。
「素敵だよ」
「ふふ、よかった」
そのひと言でよかったのかわからなかった。だから涼子にキスをした。
「あ」
玲於奈の声が聞こえてきたが、涼子とのキスは止められなかった。
涼子は涼子で手を私の身体に添えてくれた。
「ほ、本当に……涼子さんも……」
その声には嫉妬が混ざっていた。そして、それ以外の感情も。
「ちょっと待っててね」
唇を離し、涼子にそう伝える。
「ええ、わかっているわ」
涼子のほほえみはまるで聖母のようだった。
玲於奈に向きを変える。
「じゃ、次は玲於奈の番だよ」
胸中に発生した悲しみを隠しながら、ベッドに座り私は玲於奈を手招きする。
「ほん、とに……?」
玲於奈は枕で自分を隠していた。
「本当だって」
手をわしゃわしゃとしながら玲於奈に少しずつ近づく。
「……ばかっ」
唐突に視界が真っ黒になった――玲於奈が枕を投げつけたのだ。
「ばかって……私は本気だからね」
玲於奈に優しい声をかける。
ここで命令することもできたし、何も言わず脱がすことだってできた。
でも、そうしなかった。
夢をかなえるためとはいえ、無理矢理というのは嫌だった…… まあ後日玲於奈にどれだけ殴られるのかもわからなかったし。
「ね、いいでしょ? 涼子はもう下着姿なんだよ?」
玲於奈に近づき両手を掴み、そのまま上げる。
「ほら、バンザイして」
オフショルダーのニットはそうしないと脱がせられなかった。
「そしたらおへそから脱がしてあげるからさ」
「ヘンタイ」
玲於奈は言いながらも両腕を上げたままだった。
そのタイミングを逃すことなくニットを脱がす。
涼子に勝るとも劣らない“ボリューム”が私の視界に入ってきた。違いは下着の色だった。
ブラレットというのはワイヤーもパッドもない、飾りのような下着で、隠すことよりも魅了すること前提の下着である……というのはこのあと検索して理解できた。とにかく玲於奈に似合っていた。
「セクシーだよ、玲於奈」
自分とのサイズの差に心の中では涙を流しながら玲於奈に告げる。
「ヘンタイ」
先ほどから言葉の暴力が過ぎるが、まあ、いい。
「次はスカートだね」
視点を玲於奈の下半身に向けながら伝える。
「……下まで脱がすの?」
胸を両手で隠した玲於奈が問う。
「もちろん。玲於奈のぜんぶ、涼子に見てもらおうよ」
玲於奈の耳元でささやく。
「そ、れ……!」
目を大きく見開いた玲於奈の隙をつき、フレアスカートのウエスト横にあるファスナーを下ろし、スカート自体をそっと下ろしていく。
これでタイツを穿いていたらもうひと手間あったが、涼子は白いショートソックス、玲於奈は黒いリブソックスを穿いていたので、まあ大丈夫だろう。必要ならあらためて脱がせばいい。
ショーツも涼子のものと比べると布地が少ない。いわゆるセクシーな下着だ。
「やっぱりセクシーだね、玲於奈」
私は笑顔を向ける。
「ばか」
玲於奈は即答し、再び枕で攻撃してきた。
「……大丈夫かしら」
心配そうな涼子の声が寝室に響いた。