涼子と玲於奈にそれぞれ内情を語ってもらい、そのあと本編を進めます。
一年以上更新が止まってしまって申し訳ありません。仕事が忙しいのがいけないんです。休みがないのがいけないんです。
幕間:涼子
それまで、恋というものとは無縁な人生だったと思う。
もしかすると女子校に進学したことも、影響があるのかもしれない。
なんであれ、彼女……翼は、最初は同じ学年の学生のひとりでしかなかった。もしかしたら入学式で顔は見ていたのかもしれないが、当初はそこまで印象に残ることはなかった。
「白河さん」
「どうかしたの?」
「後ろ姿見かけたから」
女性だとは理解していたが中性的で、ときおり男性のようにも感じられた。だから、最初は少し敬遠気味だった。
ただ、いつからか印象が変わっていた。
同じ講義で、翼が私の隣の席に座ったことがあった。
次の講義でも、翼は当たり前のように私の隣に座った。
それ以降、私は隣の席をひとつ空けるようにしていた。もちろん、翼のためだ。
『どうして』、『なぜ』と質問されても上手に回答できない。
「涼子さん」
「は、はい」
「どうして急によそよそしくなったの?」
「そ、そういうわけじゃ……」
弁明するものの、狼狽していることは隠しきれなかった。
翼が笑っているのも、きっと私の慌てぶりを理解しているからなのだろう。
それまで女性ばかりの生活をしていたからか、翼が見せるちょっとした仕草が、妙に気になった。
講義の時、集中している横顔は案外かっこよかったし、口を大きく開けて笑う姿には、どこか親しみを感じられた。
友達になってからは外で一緒に遊んだり食事したりしていたが、気がつけば私の住むマンションに翼が来るようになっていた。
涼子。
最初は名字だったのに、いつの間にか涼子と呼ばれていた。他の人ではそうでもないのに、翼に涼子と呼ばれ始めた頃は、いつもドギマギしていた。
そう呼ばれるのが嬉しいと気づいたのは、ファーストキスの前だった。
翼は優しくて、嘘はつかない。見た目もまあ、悪くない。
だから、彼女との距離が縮まることが、ただ嬉しかった。
ファーストキスは、私のマンションで翼とふたりで過ごしている時だった。
「涼子」
私の名前を呼んでから、翼はキスをしてくれた。
「翼」
嫌ではなかった――少しでも嫌悪感があったら、ふたりきりになっていなかった。
今まで恋愛をしたことがなかった。でも、翼とはそういう関係になるのだと、きっとどこかで確信していたのだろう。
「涼子」
翼が私をベッドに押し倒す。
肩にふれた手が、少し震えていた。
「あのね、涼子」
「ええ」
「……できれば、驚かないで欲しいんだけど」
そうつぶやいてから、翼は服を脱ぐ。
裸にならずとも、下着になった時にわかった。
翼の穿いているボクサーパンツが、内側から盛り上がっていた。
「これ……」
思い当たるのはひとつだけ。
「やっぱり驚くよね」
私の顔を見て、翼が説明をしてくれた。
内容を要約すると、ある日を境に存在していたということのようだ。
ずいぶんと曖昧だと思うかもしれない。正直なところ、有無はどうでもよかった。
私はボクサーパンツ越しに、『それ』にふれる。
「りょ、涼子!?」
驚いた翼の声が聞こえ、布地を介して翼の熱が届く。
「きゅ、急にさわらないで」
慌てた声が上から届く。
翼の瞳には焦りが見え、翼の体は震えているとわかった。
「ふふ」
無意識に笑っていた。
「ど、どうして笑うわけ?」
私は翼のほおに手をそえる。
手を通して翼の熱が伝わってくる。
「ただ、嬉しいの」
翼を見上げながら問う。
「愛して、くれるのよね?」
「いいんだよね?」
「ええ」
私は翼の頭をなでる。
そのまま私たちはどちらからともなく裸になり……そして、それ以降、私は翼のオンナになった……というわけ。
その後、玲於奈さんを紹介された時は、驚きや呆れ――様々な感情が入り混じった。
ただ、玲於奈さんも玲於奈さんで翼のことが好きだってわかった。
なんだかんだで三人でベッドを共にした相手で、親友と言っても過言ではない。
なにより、私と同じように翼のオンナになることを選んだのだ。そんな女性を嫌いになることなどできそうになかった。
※※※
私のマンションで翼が暮らすようになって、ソファを新調した。
翼と私は、ぴったりと寄り添って座っていた。
今の私は、翼で満たされている。
「ねえ、涼子」
嬉しそうな翼の声が聞こえてくる。
「どうしたの?」
「玲於奈を呼んでもいい?」
「もちろんよ」
翼の質問に、私は笑いながらそう答える。
翼となんでもないような時間を一緒に過ごすことができて、私は幸せだった。
幕間:玲於奈もすぐに投稿できたらいいですね(遠い目)。
あとすでに投稿した文章で誤字脱字などあったので、適宜訂正していきます。