暑い。溶ける。こんなことなら来るんじゃなかった。なんなら、ひと思いに殺してくれ。
呪詛のような言葉が、熱気に乗って流れてくる。ベッドで枕に顔を埋めている
いちいち反応する気にもならず、オレは天井を仰ぎ見た。
蜃気楼。いや、これは瞼にまで汗が浮かんでいるせいなのか。ローテーブルに放置されているリモコンを手に取り、またしても意味のない動作を繰り返す。どうせ故障するなら、もっとタイミングを選んでくれればいいのに。頭の中で呟くだけで、口を動かすことすらすでに億劫だった。
「あー、っちぃ……」
扇風機が、凝縮された生ぬるい風をぶつけてくる。苦痛。苦行。空調管理された生活が当たり前の現代人にとって、エアコンの有無は生き死にに関わる。
びっしりかいた汗のせいで、山田ちゃんのダークブルーの髪は風を受けても微動だにしない。薄い色のタンクトップ。あとは下着だけという、ラフを極めたような格好をしている。天然サウナに放り込まれていなければ、さぞかし股間に響く情景であったに違いない。それだけ、いまは緊急事態だった。
「なあ」
「やだ。もう無理。移動に使えるエネルギーなんて、微塵もない」
「先読みして拒否するなよ。この状態で耐えてるくらいなら、絶対外行った方がマシだと思うんだけど」
「んー……、うー……」
喉を鳴らしたような呻き。山田ちゃんの気力は、底をつくどころかマイナスまで振り切っているらしい。
枕に埋まっていた顔が、半分ほどこっちを向いている。オレの私物を勝手に着こなしてくれているから、タンクトップの胸元はゆるゆるだ。美乳の輪郭がくっきりと浮かび上がる。それに、魅惑の突起の位置まで妙にはっきりと……。
「感謝してよね、お兄さん。これが外界だったら、変質者として通報されてること間違いなし。ふっ。ノーブラの魔力が、やはり童貞には強すぎたか」
「オレが童貞だったら、そっちこそまだ処女じゃねーか。ま、いいや。暑くてなんにもやる気にならないし、ちょっと確認させてもらうとしますかね」
「は? ちょっと、んっ……」
ベッドに上がって、倒れ伏すように山田ちゃんの下半身をつかまえた。
枕よりも断然やわらかなお尻に、ひとまず顔からダイブしておく。汗だくなのに、どこかフローラルな香りがするんだから女の子ってずるいよな。
手で全体の質感を確かめながら、もっとも気になる部分の味を舌でチェック。かすかに感じる塩気が、いまは異様にうまく思えた。
「私をドン引きさせる天才だよね、お兄さんって。せっかくだし、外界じゃないけど通報してもいい? は、ふうっ……。んっ、んんっ、ン……」
下着をきゅっと持ち上げ、秘部にちょうどよく食い込ませる。
出現するのは、魅惑的な肉の割れ目。唇。舌。どちらで触れても、熱を感じる。浮かんでいるのは、果たして汗だけなのだろうか。音を立てて吸いつくと、山田ちゃんの口からかわいらしい声が洩れた。
「はあっ、ふっ……。なんか、頭ぼーっとしすぎて、新しい曲思いつくかも。ペンとノートとるから、ちょっと動く」
「あ……? ほら、どーぞ」
そういう頼まれ方をすると、おいそれと無視することはできない。
山田ちゃんの奏でる音が、オレは好きだ。ズブの音楽素人だろうが、好きか嫌いかを言う権利くらいはあってもいいはず。
それに好きっていうのは、なにも音楽をやっている間のことだけじゃない。呼吸。会話のテンポ。歩くときのリズムまで、こいつとはうまく噛み合う。
恥ずかしいから、普段は絶対思わないようにしてるけど。
「隙あり。とうっ」
「むぐっ……。むぐぐ、ぐ……?」
思考の海にぼんやり沈みかけていたオレを、不意討ちが襲う。視界は、ほとんど塞がれてしまっていた。
強い密着を感じる。もちろん、どちらも汗をたっぷりかいているせいなんだけど。それに、なにかが口に押しつけられている。感じるのは、先ほどと似た塩気。舌を動かしてみると、滑った肉の質感が生々しく伝わってきた。濡れた下着は、あのわずかな時間で脱ぎ捨てたんだろう。
「はあっ、はっ……。山田ちゃん、これって」
「いわゆる、シックスナイン。変態のお兄さんは、こうされると射精我慢できなくなるんだって。河原のブツが、そう教えてくれた」
言いながら、山田ちゃんが取り出したチンポの先を遠慮なく咥える。いつも以上に感じる体温が、抜群に気持ちいい。
やってくれるじゃねえか、干からびたエロ本のくせに。
両手で尻を抱き寄せた状態で、割れ目の中に舌を侵入させた。反応がまた変化する。
もっと舐めて。もっと、吸い尽くして。
呼吸が苦しくなるほど、肉を押しつけられている。当の山田ちゃんはというと、夢中でチンポをしゃぶっている最中だった。
「ん……、ふふ。こうやって、んしょ……。胸も使ってみるか」
「お、おおっ……。これが、人類の培ってきたエロの歴史。オレみたいなクソガキが、抗える大河じゃねえ。あぐっ、ああ……」
「突然詩人になったりして、暑さでほんとに頭おかしくなった? それとも、んっ……」
思考が、すべて快楽に塗り替えられる。
直接視界で捉えることができないのが、本気でもどかしい。タンクトップと山田ちゃんの美乳に挟まれて、チンポは早くも決壊寸前だ。そこに口を使った刺激まで加えられると、昇ってくるザーメンを押し留めていられなくなる。
「おちんちん、味、すっごく濃い。それに、匂いも。あんっ、んっ、れろっ、れっ……。もっと、吸って。一緒に、気持ちよく」
全身が、山田ちゃんと溶け合ってしまいそうになる。肌という肌が密着し、それがバカみたいに気持ちいいんだ。
腰を突き出しながら、必死になってびしょ濡れの割れ目を舌でかき回す。顔面は、とっくに汗と愛液まみれ。山田ちゃんの方も、我慢汁で汚れることなどお構いなしだろう。
「あー……、まじでもう限界。今日は顔にぶっかけたい気分なんだけどなあ、山田ちゃんの」
「うぐっ……。嫌って言ってるじゃん、前から。髪ベトベトになるし、匂いもとれないし。はむっ、んっ、じゅぷ、んあっ……♡」
チンポを責める動きが激しくなる。これはつまり、お許しをいただけたと理解してもいいのだろうか。
都合のいい解釈をしてから、垂れ落ちる愛液をすする。山田ちゃんの限界も、すぐそこに来ているはずだ。
「はあっ、くる……。おちんちん、射精したくてすっごくふくらんでる。胸、火傷しそう。出されたら、もっと大変なことになるのかな」
指で裏筋を押しつぶされる。
発射に向けて、準備に抜かりはない。くぐもった声を洩らしながら、高く腰を突き出す。心の眼で美麗な顔の中心を狙い、全力でトリガーを引く。
「ふうっ、んっ、ん……。やだ、びゅるびゅるって、あうっ、噴水みたいに。胸にも、たくさん流れてきてる」
顔射ってのは、動物のマーキングと似ているのかもしれない。
時折、やたらと主張したくなるのは男の性。劣悪で薄汚い行為こそが、至高の快楽を生む。
「んえっ……、しょっぱ。一日分のタンパク質、どうにかこれで摂取できないものか。赤ちゃんの素だし、確実に栄養満点なはず」
びくっ、びくっと下腹部を反応させながら、山田ちゃんが自分の世界に入っている。どんな場面だろうとマイペースを貫くというか、ぶれのない女だ。
「やらかしてくれたおちんちんは、お掃除フェラの刑に処す。はぁ……、あむっ。んっ、じゅるっ、んっ、んっ♡」
「おっ、おおう……。気持ちよすぎて、頭変になりそ……。あー……。もう一発、このまま出そうかも」
「えっ。いくらなんでも、早すぎでは。それに、ね……」
ずっと塞がれていた視界が、ついに開ける。
見えてきたのは、精液でべったべたになった山田ちゃんの整った顔。それに加えて、口元にある見慣れた輝きは。
「ゴム、ちゃんとつけること。今日は危ない気がしてるんだ、私」
「嘘つけ。絶対、テキトーに言ってるだろ」
「あ、バレた?」
銀の包装を手際よく破り、山田ちゃんがゴムをチンポに被せてくる。
「確かめるって言ったでしょ。はーっ、んっ、んうっ……。私が、処女かどうかだっけ」
脱ぎ捨てられたタンクトップ。顔と同じく白濁で汚れた美乳が、ぷるんと姿を現した。
オレの胸に手をつき、山田ちゃんが騎乗位で結合を開始する。なんの引っかかりもなく根元まで呑まれていき、最後は子宮の入り口にぶつかった。
「きもち……いね。お口もいいけど、ここが、やっぱり。ふうっ、あっ、んうっ……」
好きなようにチンポを使いながら、山田ちゃんが身体を跳ねさせる。引き締まった腹筋のおかげで、バランスが崩れることはない。
こうなったら、オレはおとなしく快感を享受するだけだ。といっても、揺れる二つの果実を捨て置くことなんてできるはずがない。むにむに、むにっ。無防備な胸をつかまえ、好きにいじくる。無駄を一切感じさせない洗練されたビジュアル。それが、オレの指先ひとつで形状を変化させる。
「やわらかすぎて、語彙力なくなる……。なんで、胸揉んでるだけなのにチンポに響くんだろうな」
「普通、相手にそれ訊く? はふっ、あっ、あんっ……。私は、全然そんなことないけど。お兄さんのおっぱい触っても、気持ちよくなったりしないし」
「やっ、それはそうなんだが。あーっ、そこいいかも」
「なるほど。男の人も、乳首で感じるんだ。虹夏にもってく土産話が、また増えてしまった」
「えっ」
「えっ……?」
いまなにか、背筋がぞっとするような内容の話が聞こえたような気がしたんですが。
お互い顔を見合わせたのは、ほんの一瞬。今度は胸に舌を這わせて、山田ちゃんがリズミカルに腰を打ちつける。
「精液、あがってきた? 私は、んっ、あんっ、んっ、はあっ……♡ 結構、気持ちよくなってきてるけど」
「もう、なんだっていいか。たっぷり汗かいて、これだけ体力使って、うっ……。幻聴だって、多少は聞こえてきてもおかしくないよな」
「おちんちんに血が集まりすぎてるんじゃない、お兄さん。顔だって、さっきからずっと真っ赤。びゅるって精液洩らして、楽になればいいのに」
「あ、山田ちゃん。おっ、ああっ、あっ……」
全身が熱に浮かされる。
自分の放った匂いを感じながらの、深い口づけ。散々おかしくなってばかりの思考が、もっとダメにされる気分だった。チンポを締め付ける力が明らかに強くなっている。絶頂を味わいたいのは、間違いなく山田ちゃんだって同じ。
擦りつけるような動きを繰り返す下腹部を引き寄せ、膣内でも限界まで密着。互いに吐息を浴びせて、二人三脚でゴールラインを目指す。
「ちんちん、気持ちよさそうに中で跳ねてる。あっ、ふうっ、んっ、んーっ……。そこ、もっと擦って……♡」
「まじで溶ける。山田ちゃんの中から、チンポ抜けなくなったりして」
「んっ……。それならお兄さんの部分だけ、どうにかパキッと分離させられない? ふふふっ。おちんちん生やしてみるのも、たまには悪くないのでは」
「たまにはってなんだよ。あっ、もう出るかも……。山田ちゃん、くっ、あっ……!」
最高にくだらないタイミングで、最高の快楽が訪れる。
これもオレと山田ちゃんらしいのかもな、と頭の片隅で思いながら、存分にゴムに精液をぶちまけた。
♪
汗だくになった身体をベッドに沈み込ませて、余韻を堪能する。いろいろな面倒事は、ひとまず忘れることにした。
「うへっ、つめたっ」
「もごもご、はむっ、じゅる……。どう? クールダウンできてるんじゃない、お兄さん?」
「いやっ、だからって、汁をボタボタ垂らすんじゃない」
ソーダ色のきらめく雫が、顔に数滴落ちてくる。
冷凍庫に残っていた、おそらく最後の一本。オレをマット代わりにして、山田ちゃんはアイスをうまそうにかじっていた。
というかクールダウンとか言うくらいなら、せめてひと口舐めさせてくれませんか。
「お兄さんが口で受ければ、一石二鳥。貴重なアイスなんだから、最大限利用してあげないと。んれっ、んっ、ン……」
口腔内の熱で溶けた雫が、またポタリと落ちてくる。
どうにか舌で受け止めると、すぐに山田ちゃんの唇が落ちてくる。ひんやりとしていて、いつもよりも甘酸っぱい。
二人分の熱を浴びせられて、アイスは瞬く間に消えていった。