蒸し焼きにされそうな酷暑の中を歩いた。足どりがやけに重いのは、右腕にまとわりつく
引きずっているツレの姿を、軽く確認する。外で手を繋いで歩くだなんて、稀もいいとこ。それに、このままじゃ別の意味で通報されかねない。
暑い。動けない。おんぶして。空に文句をぶつけながら機能停止しかかった山田ちゃんの手を取ったのが、十分ほど前のことだ。べっとりと汗をかいた手のひらの感触。お互いの肌が湿気で吸い付いて、簡単には離れそうにない。
「うー、あー……。溶ける……。もう一歩も動けない。移動式のクーラー買ってきて、お兄さん」
依然文句たらたらの山田ちゃんを引っ張り、ひたすらに進んだ。前方には、都会のオアシスが見えている。あと少しだけ、耐えるんだオレ。心の中で自分に対し鞭を入れ、足をさらに動かす。
快調に開く自動ドア。洩れる冷気を感じながら入店すると、全身に感じていた重みがすっと軽くなった。なにかの比喩なんかじゃない。それまで潰れかかっていた山田ちゃんが、ひと仕事やり終えたかのように、肩を回して自力で立っていたからだ。
「よし、復活。ちょっと歩いただけなのに、結構疲れた。今すぐ冷たいもの食べないと、確実に死ぬ。コンビニ入ったの、お兄さんにしてはナイスな判断」
「さらっと嘘をつくな、嘘を。誰のおかげで、ここまでたどり着けたと思ってる」
「私がダウンしかかったおかげで、人目をはばからずに美少女を介抱することができた。なので、お兄さんはむしろ感謝すべき。む、むぐぐぐ……」
無言で数秒ヘッドロックをきめる。
暑さでおかしくなった山田ちゃんの思考を正常にもどすためだ。これだけの大義名分、いったい誰が非難できる。あっ、すみません店内のみなさん。お騒がせしていますが、ほんとうになんでもないんです。石を投げるんだったら、どうかこのトチ狂った女にだけお願いします、はい。
「これとこれと……。あっ。このアイス、新作でてたんだ。お兄さんも気になるよね。私だけ食べるのも悪いから、こっちは二つ」
そそくさと手にした小さめのカゴが、静止する間もなくずっしり重くなっていく。時たま気を遣う素振りを見せながら、自分の欲求を全力で満たすことに余念がない。オレの好物もちゃっかり差し込んでくるのが、この女のワルいところだ。
晩飯の食料もついでにチョイスし、いざレジへ。バーコードを読み込む音がリズムよく鳴る。財布の中身を確かめていると、山田ちゃんの手が後ろからすっと伸びてきた。
「あとこれも。すぐ使うから、袋はいらないので」
ぽすっと軽い音がする。投下された箱を、店員と同じタイミングで凝視。そこにあるのは、めちゃ薄!という文字がデカデカと印刷されたパッケージだった。
はっとなって顔をあげると、店員さんが気まずそうにレジを打っている。はっきり言ってめちゃくちゃバツが悪い。山田ちゃん。キミはどうして、相手が女性店員の時にかぎってこういうことをするのかな。
冷え切った空気の中、支払いを済ませてダッシュで退店。ゴムは普通に必要なので、いらないとも言えないのがまた悔しい。
隣に追いつくと、なにごともなかったかのように山田ちゃんが袋をガサゴソと漁ってくる。たぶん、数分前にやらかしたことを、記憶していられないたちなのだろう。この女、ほんとうにご機嫌な性格をしていやがる。
「はー、きっつ。ここ、しばらく使うのやめるわ」
「お兄さんは救いようのないヘンタイだけど、米粒大の倫理観は持ち合わせていると。ふむ、理解した」
「人並みの理性を修得した方がいいと思うぞ、山田ちゃんこそ。ン……。それ、ひと口ちょうだい。どうせ、金出したのオレだし」
「むっ……。仕方がない。溶ける前に、さくっとどうぞ」
山田ちゃんの許可が出たので、断面の見えるモナカアイスをひと齧り。甘いミルクの風味が口いっぱいに拡がる。モナカの皮が過剰な冷たさをカットしてくれるおかげで、非常にうまい。調子に乗って、もう一度かぶりつこうとしたのだが。
素早く退避するモナカアイス。とろけた白い表面を、山田ちゃんが舌で舐めている。動きが全体的にエロく感じるのは、決して気のせいではないはずだ。
「まさか、今ので勃起してないよね。お兄さんもいい大人だし、それはないか」
いい大人だろうが、興奮する時はしてしまう。そもそも貴様、確実に狙って挑発しただろう。
「あっ、雨」
余韻もなにもあったものではない。モナカアイスを全速力で咀嚼する途中で、山田ちゃんがぽつりと呟いた。
雫が数滴落ちてくる。夏空の気まぐれだった。そこから走って家に到着したものの、二人揃って濡れに濡れた。
ボーイッシュで肌を見せない服装をしている山田ちゃんが、張りついた前髪を気怠そうに見つめている。それが、妙に絵になるというかなんというか。
玄関先で雨水を払い、靴と靴下を脱ぎ捨てる。それだけで、飽き足りるはずもなかった。
「よし、脱ごう。今すぐ脱ごう」
「えっ? やっ、ちょっと、お兄さん」
不思議な魅力を放っていた山田ちゃんの表情が、ガラッと崩れる。
有言実行。とりあえず、自分が率先してパンツ一枚だけになった。どうせ、濡れた服を洗濯する必要がある。ゴムも買ってきたことだし、それならついでに。
こうした時は、勢い任せだ。山田ちゃんの上下を剥ぎ取る。普段肌の露出が少ない分、下着姿の破壊力は抜群だった。
「……えっち」
「知ってる。黒、似合ってるよ」
「ンッ……。別に、お兄さんに褒められたくて選んだんじゃないし。そうだ、アイス冷凍室に入れないと。運動後の糖分補給は大事。お兄さんはそっちよろしく」
勝手知ってる他人の家とはこのことだ。裸同然の山田ちゃんが小走りに冷蔵庫まで駆け、買ってきたアイスを空きスペースにねじ込む。その間に冷房をオンにして、タオルで身体の濡れた箇所を拭く。
ちょっと思考が冷静になってしまいそうなものだが、半裸の山田ちゃんの後ろ姿を眺めているだけで、ヤル気なんていくらでも湧いてくる。その証拠に、下のアイツはすでにギンギンだ。
「わっ、おっき……。そんなに、私としたいんだ」
「当然。山田ちゃんは、エッチするの嫌?」
「言ってないじゃん、誰もそんなこと。部屋、エアコン入れてくれた?」
なんてことないやり取りを繰り広げつつ、自室へ移動する。
山田ちゃんは身長がある方だけど、抱き寄せるとちょうど頭のてっぺんが鼻先に当たるくらいになる。
「ていっ」
「おっ」
身体を撫でた流れで、胸を覆うブラをキャストオフ。もうちょっと見ていたい気持ちもあるが、生乳を拝みたいという欲望がここは上回った。
かたちのいい美乳が眼の前に出現する。
「五秒で千円。裸、見てもいいけど有料サービスで」
「そんなルール課されたら、半日と保たないぞ、オレ。一瞬でもやしすら食えなくなるわ」
「ンッ。あむっ、ちゅう……。んっ、あんっ……。じゃあさ、キスなら一回いくらまで出せる? 相場調査、今度してみようかな」
「やめときなさい。悪い大人に捕まっても、知らないぞ」
「ふっ……。悪いお兄さんには、とっくに捕まってるけどね」
冗談をぶつけ合いながら、何度も唇の熱を確かめる。舌を使ってのキスも、とっくに慣れっこだ。同時に身体にも触れていき、気分を高めていく。
引き締まった脇腹。揉みごたえのあるお尻。最後に、露わになった胸に触れると、山田ちゃんから甘い吐息が洩れる。
「よく考えるまでもなく、オレって山田リョウにサブスク課金してるようなものだろ。あー、なんだ。歩く財布だっけ? せめて、人間扱いしてほしかったなあ」
ボクサーパンツを床に脱ぎ捨て、隆起しきったペニスを山田ちゃんの腹に押しつける。これだけでも充分気持ちいいのだが、射精してしまってはさすがに勿体ない。愛撫とキスで気分を紛らわせ、さらなる高みを目指した。
「お兄さんのイジワル。財布とセックス、するわけないじゃん」
ぷいっと背けた顔。強引に正面を向けさせてから、深く唇を吸った。
蕩けるほど甘いキス。そっと押し倒すと、山田ちゃんが自然とはにかんだ。雰囲気は完全に出来上がっている。ゴムをひとつ手に取り、素早く装着。
身体の下には、黒のショーツだけを身にまとった山田ちゃんがいる。入り口が見えるようにちょっとずらすと、俄然ヤル気がみなぎった。
「かわいい、山田ちゃん」
「お兄さんは、すっかりケダモノ。これも、私という獲物が魅力的すぎるせいか。ふぐっ……。あっ、ああっ、あっ……♡」
締まりを感じる入り口を一気に突き抜ける。奥の奥を目指して、肌を密着。必死に声を飲み込もうとしているけど、山田ちゃんが感じているのは一目瞭然だった。
薄いゴムに包まれたペニスが、気持ちのいい穴を何度も出入りする。
快楽を得るためだけの繋がり。生殖を伴わない行為だけに、穿った見方をすればそうなってしまうのだろう。弾む乳房を掴まえ、舌を這わせた。口に拡がる甘さは、きっと気のせいなんかじゃない。
山田ちゃんの切なそうな喘ぎが、耳をついた。
「あうっ、ンッ、あーっ、あっ……。ンッ……。せっかく涼しくなってきたのに、これじゃまた振り出し。汗、とまんな……。あっ、そこっ……。ふあっ、やっ、あんっ」
「シャワー、浴びたらいいよ。どうせ泊まっていくんだし」
亀頭を最奥に当てた状態で、何度も擦りつける。激しい動きは必要ない。内側のうねりと、興奮してツンと主張を強める桜色の乳首。唾液をまぶして吸い上げると、山田は恥ずかしそうに顔を赤くする。
「もうちょっとで、あっ、イケそ……。お兄さん、このまま」
「素直な山田ちゃんも、オレは好きだよ。やっ。そもそも、山田リョウ以上に欲望に素直な人間、捜すほうが難しいか」
「なに、はあっ、んっ、あっ……それ」
体勢を入れ替え、女の子らしいお尻を押し潰すようにピストンを開始する。
お気に入りのクッションに抱きついて、山田ちゃんはラストスパートに備えている。愛液の雫が、床にいくつも落ちていた。
「はっ、はーっ、はあっ。も、もう、いっ……」
軽い絶頂がはじまる。お尻を左右から揉み込んで。オレはアシストに徹しようとした。
山田ちゃんの吐息が荒い。締まりも、そのままいい具合に強くなって。
「な、なに? ぐぬぬ……。こんな時に、いったい誰」
クッションに顔を埋めていた山田ちゃんが、飛び起きるように顔をあげた。それもこれも、突如スマホが鳴り響いたせいだ。
床に雑に置かれた山田ちゃんの所有物が、音と一緒に振動で着信を知らせてくる。確かに興醒めではあるけど、驚いた拍子の強烈な締め上げは癖になりそうだ。
「はあっ、はっ、ううっ」
バックからの合体を維持しつつ、二人同時に這うように、スマホの落ちている場所まで移動。膝でずりずりと動く山田ちゃんは、ほとんど芋虫同然だ。
「ンッ……。あっ、はあっ。も、もしもし、虹夏? 今、結構切羽詰まっているので、んんっ……♡ 手短によろしく」
いや、そのまま普通に出るんかい。
虹夏ちゃんていうとアレだ。結束バンドのリーダーであり、嵐を呼ぶドラム担当。山田ちゃんの無二の親友らしく、名前だけは前々から知っていたりする。
「えっ、なんだって?」
「だから、はあっ……。私、もうイキそうで」
「あー、ごめん。なんかこっち、電波悪いらしくてさー。場所移動するから、このまま」
途切れ途切れに、虹夏ちゃんの声が聴こえてくる。山田ちゃんもどこかスリルを楽しんでいる感じだし、まあいいかと思って腰の動きを再開させる。
「お゙っ……♡ おーっ、いっ、虹夏……?」
「あははー、ごめんごめん。ここなら、なんとかダイジョブそう。それでなんだけどさ、聴こえてる、リョウ?」
「あーっ、いっ……。全部、ンッ……。しっかり、聴こえてる」
通話を続ける山田ちゃんだが、絶頂寸前の肉体がいろいろと内容を妖しくさせている。
「なんか後ろで物音してるけど、誰かと一緒なの? あっ、もしかしてぼっちちゃんだったりして」
「そう、じゃない。おちんち……、あっ……。奥、いいっ……♡」
「お……、なんだって? あー、やっぱりダメか。ほんと今日、調子悪いんだよねぇ。バイトのシフト確認したかっただけなんだけど、またにしよっかな」
「い、イクッ……♡ いつでも、いけるから。あんっ、あっ、あーっ、はあっ」
「えっ、ほんとに? リョウ、珍しくすっごいやる気じゃん。おっけー、それじゃお姉ちゃんに伝えとくね。今度の練習も、その調子でたのむよー。じゃ、切るね」
「うっ、うんっ……。クルッ♡ お兄さんのおちんちん、たくさんきちゃう。ああっ、ふっ……。イクッ、あーっ……♡」
さすがに、ドキリとさせられた。同時に、強い快楽が押し寄せる。スマホを握りしめた状態で、山田ちゃんは腰をひくひくと痙攣させている。
すんでのところで虹夏ちゃんとの通話が終わっていなければ、電話口でセックスをしていることがまるっとバレてしまっていた可能性だってあったはずだ。
我慢するのがバカらしくなる痴態だ。山田ちゃんの子宮に流し込むイメージで、ゴムの中に思いっきり精液をぶちまける。
あー、最高。弾力のあるお尻が、密着する腰を押し返そうとしてくる。それをねじ伏せるように、再度奥へ。
「あっ……。お兄さんのも、ドクドクってなってる。ううっ、んーっ、ンッ♡ これ、めっちゃいい……」
射精を受けて、山田ちゃんが床で伸びている。
その姿がまるで轢かれたカエルだってことは、本人には内緒にしておこう。