午前五時。隣で寝ている山田ちゃんの、苦しむような声で目を醒ました。
身ぶり手ぶりのアクションがあるせいで、全体的にうるさい感じがする。夢の中で、誰かに追いかけられでもしているのだろうか。ついには、両足までジタバタさせはじめている。
というか、ほんとに起きてないのかよ、これで。かなり疑わしくなってきたので、試しに鼻をつまんでみる。
「ふがっ……。ふごっ、むぐぐっ、ふーっ、ふーっ……」
表情が、いよいよ険しくなっていく。
口呼吸、なんとかヨシ。しばらく観察していると、宙を彷徨っていた右腕が、ぱたりと力なくベッドの上に落ちた。
あっ、これって普通にヤバいやつなんじゃ。
現実から逃げたくなって、布団にくるまりなにも見なかったことにする。知らない。オレは、なにもやっていないんだ。
だから神様。いきすぎた承認欲求のために、雑草で食いつなごうとする
そんなこんなで、オレは気持ちよく二度寝に突入した。
♪
寝返りをうちながら、山田リョウという名の抱き枕を手で探す。
空を切る。またしても、腕が空を切る。豪快な空振り続きで、気持ち的には完全試合でも食らっている気分だった。
しょうがないので、重いまぶたを指でこじ開ける。時計。まだ、七時にもなっていない。ちょうどこのタイミングで、山田ちゃんはトイレにでも行っているのだろうか。どうやら、悪い夢からは無事抜け出せたようである。
広くなったベッド上の空間。手足を伸ばせることに一抹の寂しさを感じてしまうのだから、オレも人並みに弱くなったものだぜ、なんてキザっぽく感慨にふけってみる。
十分。十五分。横になって待ってみても、山田ちゃんがもどってくる気配がない。早朝から予定があるとも聞いていないし、なんなら今日は夕方までぐうたら過ごすだけの一日だ。
「けほっ……。なんだこりゃ」
家の中ではまずしないような匂いが漂ってくる。例えるなら、どこかで野焼きでもしているような……。
「くっさ! 焦げくさっ!」
瞬間的に、オレはベッドから飛び起きていた。
まさか、どこかで火事にでもなっているんじゃないだろうな。そうした緊張感と一緒に、自室を出る。いきなりエンジン全開でぶん回しているせいか、動悸がとまらない。とにかく、いまは山田ちゃんを見つけることが先決だ。
一歩踏み出そうとした瞬間、ショックのあまり目眩がしてきた。膝から崩れ落ちた反動で、持っていたスマホが床に落ちる。
「いや、火元はてめえかよ」
「どうかしたの、お兄さん。その苦しそうな顔……。まさか、我慢できずにそこで漏らしたとか。ぷぷっ……。いいよ、内緒にしてあげる。ただし、口止め料は高くつくけど」
この状況で平気で笑っていられることには、素直に感心する。
すっくと立ち上がり、無言のまま急速接近。ちょっと気圧された山田ちゃんの立っていたのは、キッチンだったりする。
食べられるなにかだった黒い塊。黒すぎて、もはやフライパンとほとんど同化してしまっている。
猛烈な焦げ臭さを放っているのは、間違いなくこいつだ。それにしても、ダークマターってほんとに存在してるんですね。
臭いの発生源を処分しようとするオレの意思を察知したのか、山田ちゃんに腕を掴まれた。いや、このシチュエーションだけは絶対おかしいだろ。
「えっ、捨てちゃうんだ……。こうなるまで、がんばって育てたのに」
「むしろ、育てたのが問題なんでしょうが。はい、ポイしちゃうから手を離す」
「はあっ、ふう……。こ、これぞ、断腸の思い。愛しいわが子よ、さらば……」
ダークマターを閉じ込めた袋の口をきつく結ぶ。
これで、一応どうにかなったはずだ。薄っすら涙目になってる山田ちゃんのことは気にしない。
「どういう気持の変化なわけ? 料理してるとこなんて、一度も見たことないけど」
「むぅ、失敬な。昨日だって、カップラーメンにお湯注いであげたじゃん。お兄さん、記憶大丈夫?」
もう、言葉なんて必要ないだろう。
山田ちゃんのほっぺたを左右から拘束し、揉み潰す。ふにふに。ぷにぷに。もにゅーん。カランカランの頭と同じく、ここもファンシーな音を奏でる部位のようだった。いじくられている当人は、不満で思いっきり唇を尖らせているわけだが。
なにか言いたそうにしているので、ひとまず解放。ついでに、換気扇をフルパワーにした。
「ひどい悪夢を見た。結束バンドが売れた未来のSNSで、私だけがぶっ叩かれてる夢。山田リョウは家事しないとかなんとか、くだらないゴシップ以下の記事が発端となり……」
「えっ。もしかして、それで悔しくなって……?」
こくこく、と山田ちゃんが激しく頷く。
伸びたロンTだけの極めてラフな恰好。下は当然のようにパンツ一枚で、引き締まった素足が床を踏んでいる。そこにエプロンを着用しているから、なんともマニアックな状態ができあがっていた。裸エプロンよりも、正直こっちのほうがエロいかもしれない。
「詰めかけた記者のせいで、家庭は崩壊。精神的に疲弊した私は、自演バイトを雇ってどうにか沈静化を図ったものの……」
「最後の手段が妙にリアルでなんか嫌だな。というか、家庭って」
「そう。すべてを理解したお兄さんは、私を守るために溶鉱炉へと身を投じて……」
よよよ、と山田ちゃんが涙を拭う仕草をする。最後の最後、展開がいきなりすぎて情緒がぶっ壊れそうになったんだが。
いや。夢の中とはいえ、オレを選んでくれていること自体は、シンプルに嬉しいんですけどね。
「あー……。あのさ、山田ちゃん」
「ちょっと、近い……。んあっ、んっ、んむっ……」
タコ糸ほどの太さしかない理性が見事に焼き切れる。辛抱たまらなくなり、山田ちゃんを抱きしめた。
ついばむところからはじめて、すぐさま深いキスに切り替える。ダークマターの残り香を色濃く感じてはいるが、シカトを決め込む。生尻に両手でふれると、山田ちゃんが小さく吐息を洩らした。
「いまの話の流れで勃起できるのって、すごい才能。研究機関で解剖してもらったら、いいお金になるかもしれない」
「ひとの性欲で商売しようとするんじゃありません。ほら、そんなこと言ってると」
「ふむっ……!? あっ、ひあっ、んっ、んーっ……♡」
やわらかいお尻の肉を、思いっきり指で潰す。
男の欲望を逆撫でするようなエロい声。同時に、山田ちゃんの腕が首に絡みついてくる。ゼロ距離での甘いキス。息と一緒に、互いの思いをぶつける。これで興奮しないくらいなら、確実に死んだ方がマシだ。
「練習までだらけるつもりだったのに、はあ、んっ、ああっ。朝イチでセックスとか……、おっ、あんっ、あっ……♡」
「準備運動になっていいんじゃない。ン……。山田ちゃん、もう濡れてる」
湿り気を感じるクロッチの部分を指で押しこむ。声も、吐息もすでに甘々だ。
取り出したペニスで、子宮が存在しているであろう箇所を軽く刺激。オレが、このままどうしたいのか。山田ちゃんも薄々理解していたようで、余計に身体を昂らせているのかもしれなかった。
「この前したばっかりだけど、ごめん。外に出すから、山田ちゃん」
「ぷっ……。クズ男が言いそうな台詞、いただきました」
言い返す言葉がなにもない。山田ちゃんが、突き放すように離れていく。両手をキッチンの端に置き、かわいいお尻をオレの方に向けて、って……。
「できたて熱々の誘惑には、逆らえないので。いいから、早く。おまんこ、冷めちゃうともったいない」
「お、おお……」
エプロン姿の山田ちゃんに手招きをされると、萎えそうになっていた心に一瞬で火がついた。普段使わないような淫語もかなりきく。また、
それにしても、扇情的な光景である。ロンTの裾をぺろんと捲り、しっかりお尻を眺められるようにスタンバイ。これから、定期的にこの恰好でエッチさせてもらうのもありなんじゃないか。ひくつく亀頭を入り口に沈ませると、ほどよい締め具合に声が洩れた。
「あっつ……。おちんちん、いつもよりすごいね。はっ、はうっ、あっ、ん……♡ どう、気持ちいい? こうやって、あんっ……。エッチさせてあげてるんだし、家事なんてどうでもいいか。挙げ句火事でも起こしたら大変だし。ふっ、ふへへっ」
「う、ぐっ……。締め付け、やばっ。腰、とまらない……!」
熱々のおまんこ相手に、ひたすら腰をぶつけていく。生で挿入しているから、襞の粒立ちまでわかってしまうのがむしろ辛い。この感動を味わうために、オレたちはゴム有りセックスをしているんじゃないか。この快楽は、いつまでも特別であってほしい。そういう、謎の願いが腹の底から湧いてくる。
余裕がないのは、山田ちゃんもおそらく同じ。ガッチガチになったチンポで、好きな部分を重点的に刺激。浅瀬を引っかき、焦らすように奥の奥へと。
抽送を続けていると、締め具合がどんどん甘く切なくなってくる。
「ふぐっ、あんっ、あーっ、あっ……♡ お兄さん、んふっ、おっ、ふえっ……」
エプロンをまさぐり、ほどよい大きさをしている胸をつかまえた。直にふれている時ほどのやわらかさはない。それでも、この恰好をしている山田ちゃんの胸をもんでいるということに、最大の意味があるのではなかろうか。
「おっぱい、うくっ、うっ。そんなに、好きなんだ。いいよ、たくさん甘えても。ふっ、ふふっ、んっ……♡」
「ああ、もう……! なんで、こんなに好きなんだろうな。山田ちゃんのことしか、考えられなくなる。こうやって、バカみたいに」
「はっ、はへっ、はっ……♡ イキそうになってるときに、突然好きとか言うの反則なのに。制限通り越して、禁止カードいり確実。あっ、ああっ、あっ、うあっ……♡」
膣内の感触が果てしなく甘くなっている。胸をぐちゃぐちゃにもみながら、山田ちゃんに求められてのディープキス。
朝七時を迎える前からこんなに劣情をぶつけあってしまって、今日一日もつのだろうか。そして、ぐうたらするだけって目標よさらば。きみとは、一生わかりあえそうにない。
「いって。もう、ほしいから。お兄さん、思いっきり反則やらかしたのは、わかってるよね。罰として、最後の一滴まで中出しすること。こぼしたら、最初から全部やり直し。わかったら、はやく……うっ♡」
「はあっ、はっ……。こ、こうなったら、もうどうにでもなれ。山田ちゃんの中に、全部、ぜんぶ」
「あっ……! くる、熱いの、びゅーってでてる……ぅ。はーっ、はあっ、はっ。あっ、あっ、あっ、んぅ、んーっ♡」
まさかのお許しが出たところで、オレは限界を迎える。
白濁した思考の中で、はっきりしているのは山田ちゃんの言葉だけ。腰を突き出し、ふるえる身体をしっかりと抱き寄せる。性器同士を隙間なく密着させ、朝イチの特濃精液を送り出す。山田ちゃんのイキっぷりのかなりのもので、気持ちよさのせいで気が狂いそうだった。
「あーっ、あうっ、んっ♡ お兄さん。はっ、はっ……。お兄さん」
まったく萎びる気配のないチンポで、ぐちょぐちょになったナカをかき混ぜ続けた。
しばらくして、部屋からいつもの癖でセットしていたアラームが鳴りだす。まだ離れるのはだめ、と山田ちゃんの舌がねちっこく絡みついた。