重甲機兵セリアス×変異少女 コラボ特別編 ~新たなる侵略者と新興国~ 作:黒瀬夜明 リベイク
ジャーマ帝国
それはユーラ大陸の最西部、ドラゴニア星人によって占領されていない地域に誕生した新興国だ。誕生当時の国土は小さいものの、優れた技術力と、その技術力によって産み出される強力な軍隊によって、周辺の小国を短期間で併合し、ユーラ大陸西部地方での勢力を拡大していった。そしてこの日、ジャーマ帝国は隣国、ドーランポ王国との国境付近の演習所で演習を行っていた。そんな演習場を駆ける無数の重甲機兵セリアスがあった。
ダークグレーを基調とし、直線的な両肩アーマーは黄色、腹部中央のコックピットは赤で塗装され、頭部にバイザー型カメラ、そして直線的で細身な両腕、右手にはプラズマエネルギーライフル、左腕には曲線形のバックラーを装備し、ずんぐりとした大腿部とスラリとした両脛、爪先が上を向いた2本の爪のように見える両足、背中には大型のバックパックを装備し、その左右にマウントラッチが設けられており、そこにプラズマエネルギーソードの円筒状のグリップが1本マウントされている。
ジャーマ帝国が誇るのが、重甲機兵セリアス「シュターク」だ。
全高8.6m、重量23.8t*1ユーラ大陸で勃発しているドラゴニア星人との攻防戦に多数投入されているセリアスで導入されている「胴体に動力源である魔法石を内蔵し、コックピットを頭部に設ける」という構造を根本的に変え、コックピットを腹部に移し、動力源である魔法石をバックパックに内蔵する方式を採用したのだ。これにより、従来の重甲機兵よりも大きな魔法石を動力とすることが可能となり、パイロットの安全性も向上させることに成功したのだ。機体の小型化と軽量化、更には機体の高出力化がなされた「シュターク」は他国で運用されている重甲機兵の性能を凌駕することから「第二世代重甲機兵」と呼ばれている。
「エルザとウーラは左から回り込んで!シュティは後方から援護、私とオレアナで仕留めるわ!」
「イシュタール*2、了解!」
「ウーラ、了解!」
「エルザ、了解!」
「オレアナ、了解!」
そして、この日の演習で一際際立つ動きを見せるシュタークの部隊が存在した。その隊長機のコックピットに座る、白い肌と左右真ん中に分かれた前髪とワイドロングの金髪に、黒を基調とし、縁を白で彩られた太腿までしか生地の無いノースリーブチェニックに、白地のオペラグローブと白地に黒の差し色が入ったサイハイブーツを着用し、頭には左右に小さなバインダーがついた黒いカチューシャ、左目には情報収集用のバイザーを付けた、蒼い瞳の少女「アイン」は素早く部隊のメンバーに指示を送り、模擬標的を次々に仕留めていく。周囲には他の部隊も同様に演習を行っていたが、アインの部隊だけは特別動きが機敏で正確だった。スラスターを激しく噴かし、演習場を駆ける5機のシュタークは、演習終了までその機敏で正確な動きを崩すことはなかった。
「それでは本日の演習成績を発表する!本日の演習成績、最優秀部隊はアイン
「ハッ!ありがとうございます!」
演習終了後に演習本部に集められたシュタークのパイロットたちに結果が言い渡され、アインの部隊が成績最優秀であると、登壇していた
その日の夜、演習場から駐屯基地へと戻ったアインは、白のカッターシャツに赤いネクタイ、その上に黒のブレザー、黒地に白のチェック柄スカート、黒のハイソックスに黒のビットローファーの軍服に着替え、食堂で部隊メンバーと食事をしていた。アインの向かい側にはワイルドバングな前髪とロングストレートな金髪、釣り目に蒼い瞳のイシュタール、その右隣りにショートウルフな前髪にワイルドロングの金髪、シュティよりも控えめな釣り目に蒼い瞳のウーラ、シュティの左隣には、センターフロントな前髪に癖毛のロングヘアー、蒼い瞳のエルザ、そのエルザの向かい側に左右に分かれた前髪にワイドロングの金髪、蒼い瞳のオレアナが着席していた。
「皆のおかげで、今日もいい成績を出せることが出来たわ。ありがとうね!」
夕食のプレートを口に運びながら、アインが嬉しそうに笑う。
「あれは、アインの指示があってのことよ。貴女も誇っていいと思うけど?」
シュティがアインの言葉に反応して口を開く、少し疑問形で聞いたが、アインはすぐにかぶりを振る。
「そんなことないよ!皆が私の動きにしっかり合わせてくれたからだよ!」
「そんなことは………」
「まあ、そう言うことにしておきましょうよシュティ!アインも、こう言ってるんだし!」
と、今度はウーラが笑いかける。ウーラの言葉にシュティは大人しく引き下がる。シュティは少し押しに弱いところがあり、こういう時はすぐに引き下がってしまうのだ。
「何はともあれ、これで少しは給料が上がる着火剤になってくれると良いのですけどね」
エルザが少し苦笑いを浮かべながら、小声で呟く。
「何よアンタ、また借金増えたの?」
「ち、違いますわよ!」
オレアナが、エルザの言葉に反応して険しい表情で言い放つ。エルザはすぐに否定したが、それが嘘であると、ここにいる4人にはすぐにわかった。エルザはギャンブルにめっぽう弱く、借金がかさんでいるのだ。
「そ、そう言うオレアナこそ、また児童向けの絵本をまた購入したのでしょう!?いい加減、頼み過ぎですわ!」
「いいじゃない。借金がかさむより、マシでしょ」
そしてオレアナの趣味は児童向けの絵本を読むことだ。既に26歳*5、大人ともいえる年齢になってまで児童向けの絵本を読んでいるのだ。俗にいう、変り者なのだ。そんなエルザとオレアナは寝室が同室なので、お互いにこの様な喧嘩とも呼べない行為を繰り返しているのだ。
「あっははは……」
2人の会話を聞いてアインが苦い笑みを浮かべる。すると、ウーラが話題を変えようと口を開いた。
「そう言えばさ、みんなは聞いたことある?不審者の噂」
「不審者の噂?」
ウーラの話にシュティが食いつく。それに続くようにアインも、何その噂?と尋ねてくる。するとウーラは悪戯を企んでいる子供の様にニヤリと笑って口を開いた。
「なんでもね、夜になると基地の中を全裸の人物が徘徊してるんだって…」
「はぁ?何よそれ」
オレアナが呆れたような口調で答える。しかしウーラはオレアナを無視して話を続ける。
「しかもその全裸の不審者は、壁をトカゲのように張ったり、壁の向こうに突然消えたりするんだって!」
「それ、本当に人間なの?迷い込んだ動物の見間違いとかじゃないの?」
ウーラの言った言葉は人間としての行動を遥かに逸脱している。アインは不審者の事を人間ではなく、動物か何かだと思ったのだ。だが、ウーラはそれを否定する。
「私も最初はそう思ったんだけど、でも目撃した何人もが言ってたんだ。その不審者は、私たちジャーマ人とそっくり、金髪の人型だった。って言ってるんだよ!」
「じゃあ、ジャーマ人なのでなくて?変質者……とでもいうのでしょうか?」
「まあ、裸な時点で変質者ね。発情期を迎えた人物の可能性は無いの?」
惑星セリアに住むセリア星人は20歳*6になると、年に2度発情期を迎え、発情期を迎えたセリア星人は
「うーん。それがハッキリとわからないんだよね…目撃した1人がね。こんなことを言ったんだ―――」
瞳の色がピンクだった
「―――って」
「じゃあ、ジャーマ人じゃないわね。私はこの前買った本読みたいから部屋に戻るわ」
遂にオレアナが話に飽きてプレートを持って席を立った。オレアナは少し自己中心的な部分が目立つのだ。すると、それに釣られて―――
「なんか私も飽きてしまったわ。私も部屋に戻るわね」
シュティも話に飽きて席を立った。
「ああ!待ってよ2人共!」
するとウーラが慌てたようにプレートに残っていた食事を、がっつきあっと言う間に平らげた。そして2人の後を追いかけるように席を立つ。
「それじゃ、私も行くね。エルザはどうする?」
「あ、私も、行きますわ!」
アインが続けて席を立ち、エルザも食事を食べ切り、先に出ていったオレアナたちを追いかけた。そして、食堂を出たエルザとアインは廊下に出て寝室へ向かって歩いていった。そして丁度渡り廊下に2人が差し掛かった時、エルザが何を思ったのか外の方に目を向けた。
「ん?あれは……」
不意にエルザが声をあげたことに一瞬だけ驚いたアインは、エルザに振り返って尋ねた。
「どうしたのエルザ?」
「…あそこ。あの倉庫の右側……誰かいませんくて?」
「え?」
エルザは視線の先に見える倉庫の右側を指さした。アインがエルザの指さした方へ視線を向けると、そこには人間が立っているように見えた。夜の為、視界は悪いが薄っすらと洩れる基地の明かりによって照らし出されて人間の輪郭だけは見える。流石に目元まではわからないが、髪が金髪であることもわかった。そして―――
「……ね、ねぇ…あそこにいる人…は、裸じゃない?」
「ま、まさか!?あれはウーラの噂話ですわよ!」
「そ、そうだけど―――っ!?」
アインが咄嗟に否定しようとした時、アインの目があるものを捉えた。
わらっ……た?
倉庫の影に立つ人影が、ニヤリと笑みを浮かべるその顔を、アインはハッキリと目にした。しかし、外の倉庫を見ていた2人の前を別の兵士が通り過ぎた時、倉庫の傍にいた人影は消えていた。
「どうしましたの?」
「あ、ううん!何でもないよ!さ、行こっか」
アインとエルザは渡り廊下を後にした。しかしアインの脳裏から、ニヤリと笑った人影が離れることは無かった。