婚活での同意ゴムセはスポーツらしい 作:楽しい煉獄
あるとき、普毎日車で片道5分の職場と自宅を往復する日々の繰り返しに危機感を覚えた俺は、それなりに給与を貰っている自覚があったので、二十代後半にして結婚相談所に登録した。それから休日になれば、スーツを着て電車で都会へ向かい、今まで無縁だった高級外食店で洗練された女性達との激しい心理戦(?)を繰り広げていたのだが……電車で流行りのウイルスを拾ってしまい、何日も自宅に缶詰め状態になっていた。
虚しい独身男性の趣味なんて、飽和している娯楽達で容易く埋められるものだが、それすら出来ないぐらいに身体の節々が痛み、無気力になって寝るばかりの日々を過ごしていたのだが──病気が治った日の朝にネットニュースを見たときや、閉じた同性コミュニティーな職場に復帰したときに、喉に刺さった小骨のような違和感を覚える瞬間が何度かあった。……なんというか、失言をしてしまった後のような一瞬の会話の空白や、ネット記事のステレオタイプな反応に共感出来ないような……価値観のズレ?
うーん、と唸って違和感の正体を掴めずモヤモヤした気分のまま金曜日の夜を迎えて、思い出したように結婚相談所の会員専用アプリを起動すると、週に数件あるか無いかの相手からのお見合い希望のはずが、今日は二桁も来ていたのがなんだか気持ち悪くて、俺はソッとタスクキルをして、風呂に入った。
風呂から上がり、入浴中もずっと気になっていたので婚活アプリを再度開き、相手のプロフィールを斜め読みすると、明らかに女性の層が変化していた。
入会金には20万円程度を払うことや、独身であることや年収の証明書の提出、プロフィール写真はプロのカメラマンに撮影してもらったりと、マッチングアプリほど気軽に始められず、だからこそ、生活に余裕があって婚活に真剣な30代から40代がボリュームゾーンなはずなのだが……。平均的に、若すぎる。背後には、親というパトロンがいるとは思うが、異常だ。プロフィールの内容にしても、これまでに20代前半からのお見合い希望もあるにはあったが、普通は遊びたい盛りの年齢の子達の結婚観ではなかった。
そして、まったく見覚えのない、新たに追加されていた『ラバースポーツマッチング』の項目などなど……。
基本的に、若すぎる相手は男への妥協を知らず、自分の若さの価値を高く見積もっていて時間を無駄にすることが多いので、普段ならば避けていたのだが……これはダメもとで学べるいい機会なのだ!と、若い女性に鼻の穴を膨らませてお見合いを希望し、担当者の方が日程調整を待つ段階に移った。
本末転倒とはこのことで、本来の目的だった明日に迫るお見合い相手との待ち合わせ場所と時間を確認し、プロフィールの情報を頭に叩き込んでから、俺はようやく眠りについた。
◆
より高性能なマスクを着けて、休日だろうが混み合った電車で揺られていると、尻を撫でられて腹が立った。……おっさん、間違えてんじゃねーよ!と振り向いて睨むと、ビクッと反応した綺麗なお姉さんがいて、バッグか何かが触れたのを勘違いしてしまった自分の自意識過剰っぷりが、恥ずかしくなった。
サッとトイレに入って鏡で身だしなみをチェックして、馬子にも衣装だな……と雰囲気詐欺な自分の姿を鼻で笑ってリラックスしてから、待ち合わせ場所へ向かうと、すでに相手の女性がいた。
「初めまして、戸塚さん……ですよね?」
「……ぁ……はいっ、そうですぅ」
「ああ、よかった。……さっそく、お店に入りましょうか」
「そうですね。行きましょう」
「わ、ケースに美味しそうなケーキがたくさんありますよ」
「ほんとう。みんな可愛くて、キレイ」
「言われてみれば。……僕なんか、食い気ばかりで恥ずかしい」
「ふふっ、美味しそう。後で一緒に選びに行きませんか?」
「いいですね!……すみません、予約をしていた──」
……初めてなのに、戸塚さんとは目が合う時間が多い気がする。そんなかすかな手応えがあるだけで、心拍数が増えてしまうこの心臓は客観的に考えて、正常ではない精神状態に陥る病気になりたがっているとしか思えなかった。
「──戸塚さんも車で通勤されてるんですね。ちなみに、どんな車に乗られいるんですか」
「その……ピックアップトラックを、少々」
「そんな、趣味はピアノを少々……みたいなテンションで、ピックアップトラックを少々と言う人を初めて見ましたよっ!……すみません、ビックリしすぎて、変なこと言いました」
「いえいえ、驚きますよね。じつは祖母のを譲ってもらって……」
「いや、お婆ちゃんめっちゃ元気っ!……ほんと、すみません。いやぁ、持ってるエピソードが凄すぎて」
「ふふふっ……ぁ……そろそろ時間みたいです。あっという間でしたね」
「本当だ。今日は会えてよかったです」
「あ、支払いは別々がいいです」
「……そうですか?分かりました」
俺が会計のレシートをサッと手早く取ると、予想外な提案の裏側について逡巡し、精神的な貸し借りを作りたくない戸塚さんのフェアな心を尊重することにした。
「……あの、プロフィールには書かれていなかったのですが、ラバースポーツマッチングについては、どう思っていますか?」
向かう駅の方向が同じなので連れて歩き、ホテルのエレベーターで二人きりになっていると、戸塚さんから質問をされた。
「すみません。その単語の意味を知らなくて、調べもせずに、保留にしていて……。なんとなく語感から、二人で協力するミニゲームを想像していました」
「……知らないなんて、そんなことあるんですね。今日一番の驚きです。お互いの同意が無いと出来ない規約ですが、あくまでスポーツなので……この後お時間がありましたら、一度試してみませんか?」
「……面白そうですね」
「まぁ!でしたらっ、まずアプリを開いていただいて、設定から希望するに変更をしまして。するとここに新しい報告フォームが出るので、相手……私とラバースポーツをする、と選択してください」
所々にうん?とひっかかる単語もあったが、子供っぽい上目遣いや、俺が乗ったときの笑顔が弾けてはしゃぐ戸塚さんに、いい格好をしたい気持ちが勝っていた。
「……これでいいの?」
「ありがとうございます。あ、もう部屋番が出ました。空きがあったみたいですね。では、行きましょう!」
さすが、ピックアップトラックに乗るだけはある元気さだ。……なんて、まったく違う生物をみるような目で戸塚さんを眺め、ぼんやりしていると腕を引かれて、危うく舌を噛みそうになった。
「……なんか、急に距離感近くないですか?」
「これからスポーツをする仲なんですから、そんなことを言っていると楽しめませんよ」
「うーん……一理あるかも」
「そうですよぅ。……着きました」
「……え、ここで合ってる?」
「中はしっかりしていますから。ほら」
「……うん」
ピピッ、ガチャン。
カードキーで鍵を解除し、分厚い扉を開くと、巨大なテレビにソファ、その奥にはベッドがあり、あの扉の向こうには巨大な湯船があるような気がした。
「……スポーツ、なんだよね?」
「……あるとき、エロい人は言いました。『セックスは、ゴムをすればスポーツだ。』と。……どうかッ、お願いしますっ!!こんな歳になるまで頭でっかちな知識ばかりで、男の人とここまで来れたのは今日が初めてなんです!!どうかっ、私の処女を奪ってくださいっ!!」
それは見事な所作で、冷たい床に頭を擦りつけて土下座をし、処女を奪ってほしいと頼み込んでくる戸塚さんの姿に、俺はようやく喉の小骨が取れたような気分になっていた。俺がずっと感じていた違和感の正体の、その輪郭がやっとみえた。
ラバーって、恋人じゃなくてゴムの方かいっ!と突っ込むタイミングは完全に逃してしまい、俺は一つずつ問題を解決していくことにする。
「正直驚いたよ、戸塚さん。同意がいるって、こういうことね。……とりあえず、一緒にお風呂に入りながらでも、あくまでスポーツの、ルールを教えてよ」
◆
落ち着いたブラウンの髪は肩まで伸びて先が外に跳ね、何を考えているのか分からない爬虫類みたいな目と色白な肌、淡いピンクの唇の端が少し上がると、八重歯がチラりと覗かせる。ややガーリーなリボンの清楚な服装に、小さな黒い鞄を持った、大人な女性。
今日この出会いを大切に育んでいけたなら……と想っていた彼女が、今は湯船で俺の股の間に座り、両手に柔らかなCカップの胸を揉まれている。
「ルールは、必ずゴムを装着してセックスをすることです。あくまでスポーツの範疇ですからっ。でないと、規約違反の罰金と強制退会になってしまいます。それと、暴力やハードなプレイの強要もNGです。それと……そうですね、今回は、キリがいいタイミングでお互いに今の相手のことが好きな%を書いて、その数値で競いましょう!」
「じゃあルールを追加して、お互いの%が揃ったら、戸塚さんの命令をスポーツの範囲内でなんでも聞くよ」
「……あ、墓穴を掘りましたね?ふふふっ……楽しいね」
「じゃあ、さっそく一回目。……そうだなぁ、湯船だし、僕は戸塚さんの背中に指で書くから、戸塚さんは口で言ってよ」
「いきなり変則的でいいんですかっ……ぁ……っ……」
「書き終わったよ。……戸塚さんは?」
「そんなのっ……ひゃくぱーせんと、ですぅ……///」
「凄い!いきなり揃っちゃったね。……それで、命令は?」
「私の名前、さやかって言うんです。だから……今日はたくさん、彩佳愛してる、って言ってほしいです」
「ああ、分かったよさやか、耳を貸して──これからたくさん、愛してやるからな」
「……ああ、男の人から求められるなんて、夢みたい」
戸塚さんが欲望の枷を一つ外す度に、俺もまた、枷が外れていくのを感じていた。勃起したペニスを背中に擦りつけてヤる気を主張し、新品のタオルで水気を拭ってベッドに移った。
「えへへっ、記念すべきゴム一枚目の開封っ!……あの、その行為の瞬間を、ビデオに記録したら駄目、ですよね?……マナー違反というか……」
「どうして撮りたいの?」
「一人で、その、慰めたり……友達に自慢したい、というか。映すのは、私の顔と接合部だけでいいです!」
「……うーん、今度はその友達も呼んで一緒にスポーツするならいいよ」
「え?友達って、同じサークルだったみんなのことで」
「じゃあ動画を見せた後に誘うだけ誘って、そのとき来てくれたみんなでスポーツしようよ。予定空けるからさ」
「あっ、その、やっぱり……やめます」
「ふっ……あははっ!冗談だよ。全部冗談」
「……あっ!私がまだ処女だからって、からかいましたっ!?……ぐぅ……悔しッ、んん゛っ♡ーーーッ!?いきなり……ぁ……もうっ♡」
「今、さやかの口の中に、どのくらい好きかの%を書いたよ」
「ううっ……悔しいけど、ひゃく」
「凄い!また揃ったね。それで……何を命令する?」
「……さっき言った通り、撮影をして」
「うん。撮影をして、それをサークルの友達に見せるとして、友達思いのさやかはその後、どうしたいんだ?まさか……俺を騙して、自分だけ処女を卒業して満足すれば、それでいいのか?……なんてね、怒ってないよ」
「わ……私、今度のスポーツはみんなを誘うから、最高の思い出にしてあげてほしいわ」
「さやかは優しいね。分かったよ、約束する。……じゃあ、PADで撮影するから、一枚目のゴムを着けるところから始めようか」
◆
『ん……んぐ……っぱぁ。……これ、変な味』
『しゃぶらなくていいよ。これから喋ってもらうから。さやかさんは、今何歳ですか?』
『27歳です。……なに、これ?』
『雰囲気づくりだよ。ほら、手を振ってみんなに挨拶して!』
『やっほー、みんなみてるー?……なんて、ちょっと恥ずかしいかも』
『これから僕とすること教えて』
『お試しゴムセ……じゃなくてっ!ラバースポーツねっ!これ、物的証拠だから、発言に注意しないとかも』
『そうだね。これからみんなのよく知るさやかちゃん、さやか先輩?と健全なスポーツをして、処女を奪うところを撮影していくよ。……どう、調子は?』
『うん……いつでもいいよ。って、どこを接写しているの!?』
『よだれダラダラのさやかまんこは、これからハメハメする準備が万端みたいだね!』
『……そのテンションでずっとやるの?』
『やめとく。さやか、思ったんだが、こんなビデオお蔵入りにしてさ、バレたら二人分の違約金を俺が払うから、俺とさやかの子供を作らないか?』
『……えっ、そんなのいきなりすぎて、待って。……仕事こととかあるし』
『……そう、だよな。普通はこんなこといきなり決断するなんて無理だよ。……ごめん、忘れてくれ!さっきのは後から編集でカットするから。気を取り直して──さやか、処女卒業おめでとう!!』
ミチィッ、パンパンパンパンパンッ!!……。
※挿入の一部始終をおさめた結合部を映してからカメラが投げられ、以下天井の景色と喘ぎ声を延々と繰り返す。
『はぁ……♡はぁ……♡ふうっ。うわっ、凄い量。これだけ出して、あんなに激しくして……もしも中で破れてたら……何千万、もしかしたら億匹の精子が私の卵子を追いかけて。ねぇ、そんなにも私のこと、孕ませたいのワケぇ?』
『さっそく2枚目のゴムを……といく前に、動画を締めないと。来週使う予定の、このゴムの箱を渡しておきますね。みなさんのよい返事を、楽しみにしています』
『あっ、最後顔映っちゃって──』
◆
「動画は間接的だからって……処女を挑発しすぎたら、後が怖いよ?招待状代わりに渡したゴムの先端を針で穴を開けるぐらいの工作はするかも」
「それは別にいいけどさ。……さやか、次のゴムは種類が違うんだね?」
「そう。さっきまでのより薄いから、生みたいな着け心地らしいよ?」
【SAY!YES!クリティカルHIT 環境に優しい水溶性コンドーム】そんなパッケージを見せつけるように封を切り、個別梱包されたゴムをさやかが手早く装着してくれると、既に色んな汁でドロドロなペニスがゴムを貫通したように見えた。……さやかの爬虫類のような大きな目が近づき、俺の唇を舐める。
「あなたが欲しい。120%だよ」
「また、%が揃ったようだ」
「さあ、最後までスポーツしましょう」
ビュルルルル、ビューーーッ!!