※この作品はR-18です。

呪いで獣耳娘にTSした親友の冒険者と色々あって結ばれる話   作:うきつねこ

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2 二人でのクエスト

 森の中、トシアキの愛用のロングソードが鳥型のモンスターの胴体を貫く。

 モンスターは断末魔を上げるとかき消えるように消え、後には小さな宝石が残された。トシアキはそれを素早く拾いあげる。ドロップアイテム。モンスターを倒すと現れるもので、ギルドからの討伐報酬と共に冒険者の生きる糧となっている。

「これで討伐完了だな」トシアキが言った。

 

「そ、そうだな、まあ、楽勝だったぜ、当然だな」

 背後でキヨヒコのかすれた声。トシアキが振り向くと、肩で息をし、汗びっしょりとなったキヨヒコが苦しそうな表情で笑っている。

 

 この鳥型モンスターの討伐のクエストは、C級クエストだ。B級冒険者のトシアキならもちろん、本来A級のキヨヒコにとっては楽勝と言ってもいい相手だった。なのに、獣耳娘となったキヨヒコは完全に一杯一杯で、敵の動きに翻弄されていた。もし、トシアキがいなかったら、嘴の餌食になっていたかもしれない。

 現状のキヨヒコの力不足は明らかだった。

 

「キヨヒコ、あのさ」

 木の根元で、へたり込んで水袋から水を飲んでいるキヨヒコにトシアキは心配そうに声を掛けた。

 

「言いたいことはわかってる。酷いもんだったよな。何度も助けられちまって。分かってはいたが、思ったよりずっと、体が言うことを聞かねえや。正直、お前がいなかったら、どうなってたか分かんねえよ…」

 苦笑いを浮かべるキヨヒコ。奴にも自分の実力不足は相当堪えたようだ。

 

「正直、お前が新人冒険者だったら『一から鍛え直せ』って言うくらいかもな」

トシアキの目は真剣だ。

 

「つまり引退を考えた方が良いくらい、って言いたいのか?」

 

「・・・」無言のトシアキ。

 

「どうしても、負けたままじゃ終われねえんだよ、俺は」

 キヨヒコは呻くように言った。

 

「気持ちは分かるが、敵はS級モンスターの妖狐だぞ。生きていただけで儲けものだろ」

 

 キヨヒコは首を振った。

「俺は絶対に妖狐を倒したい。妖狐は『解呪アイテム』をドロップすることがある。それはどんな呪いでも消すことができるって話だ。俺はそれが欲しい」

 

「キヨヒコ、それは…」

 その手の話は、重い呪いを掛けられた者がすがる伝説のようなものだ。実際にそんなものを見た者はいない。

 

「殆どありえないことは分かっている。ただ、こんな姿にされて、俺の冒険者としての終わりがこれっていうのは受け入れられない」

 

 キヨヒコは自分の手を眺めてから、拳を握り、続けた。

 

「実力不足は分かった。でも、もう一度俺は奴に挑みたいんだ。この身体でも絶対にやれる。だから頼む。鍛え直したい。俺とクエストをしばらく一緒にしてくれないか?」

 覚悟を決めた目。しかし、その瞳の奥には明らかな不安と恐れが隠れていた。

 

 A級冒険者は羨望のまなざしを向けられる存在だ。そんな奴が、姿を変えられ、醜態をさらして、それでも鍛え直したいと言うのは、中々言えることではない。そうでなくても、親友のキヨヒコに言われて、こんな目を向けられたら。手を貸さないわけがないだろう。キヨヒコは答えた。

「もちろんだ」

 

「じゃあ、しばらく頼むぞ相棒!」

 

「おう」

 差し出されたキヨヒコの手を握り、改めてその小ささを感じるトシアキ。しかし、握った手から感じる熱は、彼の決意の表れだったのだろう。

 

 

 

 それから二人でクエストをこなすうちに、キヨヒコはどんどんと力を付けていった。

 力任せに剣を振り回す戦士スタイルから一変し、短剣を握り、素早く動き、時に道具を使い、跳ね、飛び、滑り、背後を取って敵を刺す。まさに、獣耳族の熟練の冒険者のような動きをどんどんと習得していった。それと同時に、自分の弱さに自嘲の笑いを浮かべることもなくなり、その目には自信が満ちるようになっていった。

 

そうしてクエストをこなしていたある日、キヨヒコは装備を一新してトシアキの前に現れた。

 

「よう、どうだ!俺の新しい装備は!」

 

 腹が見えるような裾の短い、ぴっちりとしたノースリーブシャツの上に皮のベストを羽織り、首には赤いチョーカー。膝上までのショートパンツからすらりと伸びた脚にショートブーツ、ニーガード。左右の腰には一対の短剣を刺し、ベルトには物入れのポーチが沢山ついている。

 キヨヒコがくるっと回ってみせる。見事な尻尾がふわりと揺れた。

 

 思わずトシアキが漏らした。

「か、かわ…いや、似合ってる。似合いすぎだろ」

 

「は?どういう意味だ?」とキヨヒコ。

 

「いや、なんというか、獣耳族の冒険者らしいって感じだなあって」

 今のキヨヒコの装備は敏捷性を重んじる獣耳族特有の装備。すらっとした脚と腕を露出させたスタイルはボーイッシュな獣耳娘のそれで、キヨヒコと知らずに町中で会えばドキッとしてしまうような格好だ。というか、可愛い。

 

 トシアキの言葉にぽかんとした後、意味に気づいたキヨヒコが必死で弁明を始める。

 

 「いや、別にらしさとかじゃなくて、これが今の俺に一番合ってんだよ。獣耳族の素早さを活かすためには、なるべく腕と脚は自由にしておくのがいい。素早くアイテムを使うために荷物はポーチに入れる。このチョーカーだって飾りじゃなくて、マジックアイテムだし…とはいえ」

 

 ズイッと近づいて、上目遣いに言う。

 「とはいえ、似合っているって言われるのは悪い気はしねえけどな!」

 歯を出してニカッと笑う。

 その笑顔に思わず見とれてしまった、ところをすかさずひっぱたかれるキヨヒコ。

 

 「バーカ。何だよその顔は」

 (ちくしょう、からかいやがって!)

 

 その後もキヨヒコはどんどん腕を上げ、トシアキにかばわれることもなくなり、互いに背中を任せ合う存在になっていった。そして、トシアキも自分がいつの間にかキヨヒコと冒険をするのが楽しくなっていることに気づいた。

 でも、とトシアキは思う。あくまで、これはキヨヒコの頼みで、あいつを鍛えるのを兼ねて、一緒にクエストをやっているだけだ。時が来れば、奴は妖狐に挑むつもりだ。そして、それは本当に命を賭けた戦いになる。

 以前なら、キヨヒコが死んでも悲しいだけだっただろう。冒険者にはよくある友人の死。でも、こうして過ごしてきた今では、あいつを失うのは耐えられなかった。

 それで、クエストから戻る道、傾いた日に照らされた林道を歩きながら、トシアキはキヨヒコに言った。

「なあキヨヒコ、妖狐に挑む準備ができたら言ってくれよ。俺も一緒に行くからな」

 

 キヨヒコはトシアキを一瞥した後、答える。

「これは俺の問題だ。危険な戦いにお前まで巻き込むわけにはいかない。それに自分の負けは自分で取り返したい。そうでないと、俺のプライドも許さない」

 

「でも、負けたら意味がないじゃないか。一緒なら絶対勝てるとは言わない。でもほら、俺たちの連携も良くなってきたし、冒険者として一番良いやり方で挑んだ方が…」

 

「だから、これは俺の問題で、良いとか悪いとかじゃない。分かってるだろ」

 

「分かってる。わかってるけど!でも俺は、お前が一人で負けて妖狐の餌食になるのは耐えられないんだ!キヨヒコ、お前を失いたくないんだよ!」

 トシアキは叫ぶように言っていた。

 

「…」

 その叫びに足を止めたキヨヒコは無言のまま、その表情は西日の影で見えなかった。

 

 

 

 

 ここはダンジョンの地下深く。地中とは思えないほど明るいのは、壁が自然に発光しているからだ。曲がりくねった通路を抜けると、屋敷の大広間ほどはあろう広い空間が広がり、その中央にモンスターがいた。

「妖狐」と呼ばれるモンスター。

 

 顔と四肢の形状は頭部の獣耳を除けば人間の女性に見えなくもない。しかし、全身を覆う金色の毛、腰から生えた長く太い巨大ないくつもの尻尾。そして、彼女の周囲を音もなく旋回する無数の蒼い火の玉。それらを見れば、それが人間ではなく極めて危険な魔物であることは一目瞭然だ。

 

 そして、その怪物とやや距離を取って対峙しているのは、獣耳娘の冒険者、キヨヒコだった。

 

 妖狐がキヨヒコを見やり、口を開く。

「誰かと思えば、いつぞやの人間か。せっかく可愛らしい姿に変えてやったのに逃げられて、ずっと残念じゃったが、戻ってきてくれて嬉しいぞ。今日はワシのおもちゃになりにきたのかや?」

 

「うるさい。お前を倒して、俺は元に戻る」

 キヨヒコは腰から一対のナイフを抜き、低く構えた。

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