※この作品はR-18です。

ボーイ8メンタルアウトアウト~学園都市編~R18 ver.   作:真夜中のミネルヴァ

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昼下がりのいとなみ

 

 

「……好き……大好き、先生……」

「……ダメよ……レイくん……」

 そこは実習棟三階にあるLL教室の、その隣の狭い準備室だった。

 窓の外からは真夏を思わせる午后の強い陽光しが差し込んできていて、照明を点けなくても白塗りの壁の照り返しに部屋の中はすこし眩しいくらいに明るい。

 LL教室のある実習棟は理科室や音楽教室などと纏められて本校舎とは離れているため、平日でも授業がない時はひっそりとしてしまうが、とりわけ今日は第二土曜日、食堂では月に二度しかないプライムリブステーキが提供される日ということもあって、生徒たちは就業ベルが鳴るのを待ちかねたように教室から飛び出していて、いまは居残る者もなく建物全体がすっかり静まりかえっているのだった。

 ときおり開け放たれた窓越しにどこかのグラウンドではしゃぐ子供たちの声が間遠に響いている。

 その細長い部屋の奥で操祈は少年と並んで腰を下ろしていた。床の上に両脚を投げだし、背にした壁にもたれるようにして唇を重ね合っている。

 ランチになる前にレイがもとめてきたのだ。

 操祈にはそのつもりはなかったが、しかたなく彼の腕に身を委ねて接吻を受け容れていた。けれどもキスに熱がこもってくるとやはりたじろぐ。少年の舌は彼女の口をこじ開けにかかっていた。

「ダメっ……ダメよ……」

「大丈夫、誰も来ないから……」

「……ちがうのっ……学校でこんなこと……あ……ヤッ……んんんっ……」

 少年の舌に口腔を貪られているうちに、操祈にも本能的な衝動がこみあげてくる。その誘惑を振り払って少年の胸を押し返して逃れた。やっとディープキスから解放されて、操祈は乱れたほつれ毛を整えながら詰るように少年の顔を睨んだ。

 ただ温もりのある茶色のつぶらな瞳でそうされても美貌を際立たせるばかりでかえって逆効果、柔らかな曲線を描く眉は瞋恚(しんい)を伝えるよりも哀しげに見えてしまうのだ。

「こんなの、ルール違反よ……」

「そうですね……」

 少年は笑顔をみせている。罪のない無邪気な笑顔を。

 少し癖のある漆黒の髪、どこかひ弱な印象の色白の肌、黒い瞳……。

 レイはどこからみてもごく普通の中学生、それも思慮深さを感じる少年だった。けれどもこれがクセ者なのだ。内には彼女がたじろぐほどの激しい欲望を秘めている。情の深い恋人であるとともに女の肉体を支配する暴君でもあった。

 そのことをこの夏、操祈は身をもって知ったのだった。

 初めて恋の、その性愛のおそろしさと、まばゆいばかりの肉体の感動を。

 男の子があんなにもひどいことをするなんて――!

 思い出すと羞ずかしさに身が竦む。

「お昼を一緒にするだけって言ったのに……」

 操祈は少年の非礼を窘(たしな)めた。

 彼女にしてみれば二人で食事をするだけでも大冒険。もしも誰かに見咎められるようなことになったらどうしようと考えてしまう。

 それにひきかえ少年の方は恬淡(てんたん)としている。

「やっと二人っきりになれましたね」

 たしかにレイと二人だけになるのは、あの日――以来だった。

 都心のシティホテルでのデート、永遠に続くかに思われた熱い午後、操祈が初めて経験した歓びのベッドで少年と別れてからはプライベートでは逢ってはいない。

 その後は意識して彼とは距離を置くようにしていたのだった。

 ひとつには二学期から病休をとった英語教員の代わりの一部を担うことになり、夏休み明け以降、急に忙しくなったからだ。数学担当にもかかわらず三年次の英語のリーダーも任されて、週のコマ数がいきなり六つも増えて仕事量は倍近くにもなってしまっている。

 それに――。

 彼女には自分の心と体に起きたことを受け容れられるようになるための時間が必要なのだった。

 それほど操祈にとって初めてのハードコアな性経験はショックで、後を引きずってしまっている。

 実際、夏休みが終わって教室に戻ってきてもレイの顔をとても正視できずにいた。

 授業中でも少年と目が合うと、堪らずに視線を伏せることになる。彼にされたことを思い出すと顔を覆って逃げ出してしまいたくなるほど羞しかった。

 あの子の顔が……あの顔がずっと自分の股間と接していたなんて……。

 他人には見せてはいけない部分をさらして、彼には自身の羞しい姿のなにもかもを知られてしまった。

 クンニリングス――?

 操祈は、あんなことは自分には無関係だと思っていたのだ。

 男の人の顔の前に秘所を晒して、恥ずかしいところをみんな見せてしまうなんて、そんな恐ろしいことを自分がするハズはないし、できるわけがないと。

 だいたいキタならしい陰部を舐めるなどという異常なことを、普通の男の人がするとも思えなかったのに……。

 それを、いちばん身近にいた教え子の男の子から求められるなんて!

 いつもは聞き分けのいい彼が、その時にはまるで人が変わってしまったように女の願いを容れてはくれずに顔を押しつけてきた。

 本当に長く留まって、執拗に秘密を舐りとって彼女から女の誇りを奪っていった彼――。

 泣いて、恨んで、そして欲望に屈していった体……。

 初めてのセックスが、教え子のお口の中で果てていくことになるなんて想ってもいないことなのだった。

 そのまま男と女の関係を結ぶことになると覚悟したのだが、なぜか少年はそれ以上を望まずに、その代わりに何度も顔を寄せられて、性器ばかりかもっといけない場所までもそれはそれは念入りに嗅ぎとられて舐めまわされている。

 男の子がこんなにもひどいことをするなんて信じられなかった。

 気立てのいいおとなしげな教え子だとばかり思っていたのに、彼が女の体にあのような強い執着を秘めていたなんて……。

 差し障りのあることばかりを経験させられて、レイが去った後で独りに取り残されてからも、情けなくて悔しくて両の眼から涙が溢れてしばらくは止まらなかったのだ。

 でも――。

 操祈の心はここで揺れる。

 彼が思いを遂げようとしていたことも感じていたのだ。少年の行為の一つ一つ、すべてに気持ちが込められていたことを。

 愛情、優しさ、思いやり……。

 女のいちばん敏感な肌がそれを知らずにいられるはずもなく、だからついには操祈は自ら身をゆだねることを選んでいたのだった。

 体を開いて彼の愛撫を受けいれていた……。

 

 そうだったわ……みんな自分が望んだことだった……。

 

 拒むことができたのに、そうしなかったのだから。

 だって、相手は十四歳の非力な男の子、強く叱責すれば従わせることはできたハズ……それができることを判っていたのに、そうしなかったのは……。

 悩ましい追憶に操祈は目を閉じた。

 

 だって……あまりにも眩しかったから――。

 

 それはすぐ目の前にあって、ほんの少し手を伸ばせば届きそうなところで操祈を誘っていたのだ。

 この上なく甘美な禁断の果実の誘惑。

 だから……。

 欲望に屈して頬張ってしまった。

 ああ、なんて甘い素敵な経験だったことだろう、初めて知った性の感動、女であることの歓び。

 羞しくていけないことなのに、どうしてあんなにも素敵な気持ちになれるの……?

 ほんとうに身も心もとろけてしまいそうだった。

 そして満たされて、悦楽の海に漂っていたときに操祈自身が抱いていたのは彼への信頼と感謝。

 恥ずかしさを忘れて、後ろめたさも禁忌を責める心も、その時だけは固く口を閉ざしていた。

 少年の胸に包まれて素直に甘えていると年の差も立場の違いも忘れることができたのだった。

 ただ夢の時が過ぎると、現実はまた彼女を苛んでくる。

 本当のところ操祈には自分がいったいどうしたいのかよくわからずにいるのだ。

 分別のある大人として、教師として、ただちに関係を解消しなければ……。

 理性の声に素直に従えばそういうことになる。

 けれども彼女は気づいてしまった――。

 独り寝の時に思う寂しさは、傍らに恋人が居ないからだというのを……それは少年と関係を結ぶ以前にはけして知らなかった感情なのだった。

 操祈の葛藤をよそに、少年はスキンシップを無条件に喜んでいるようすで、彼女の頭を包むように抱くと鼻をならして髪の匂いを嗅いでいた。レイにそうされていると操祈は自分が教師から女になっていくのを感じてしまう。

「あなたと学校でこんなこと……でも、逢いたかったわ……」

 逢いたかった、というのは嘘ではなかった。

 ただ学園内でというのは、ある意味一線を越えてしまった感じもしている。

 あたし……やっぱり、いけないことをしているのね……。

 少年のキスのとり仕切る範囲が操祈の唇から蒼白い首すじ、喉もとの辺りまで彷徨うようになっていた。唇を這わせながら、同時に手は彼女の体を愛撫している。肩から背中にかけて、そしてくっきりと描かれた腰のくびれへと……。そうしているうちにサマージャケットを巧みに脱がされてしまうのだった。

 脇腹を這い上がった手が胸の膨らみに辿りつくと、量感をたしかめるようにそこに長く留まっている。敏感な部分をなぞられて、操祈はこらえきれずに熱っぽい吐息をついた。

 レイに触れられるといつも体の方が心よりも先に走り始めてしまうのだ。体は少年の愛撫を求めている。触れられる、と想う、ただそれだけで期待に全身の細胞が熱っぽく騒ぎだしてしまう。

 レイに体を愛撫されたい、この間のようにやさしく可愛がって欲しい……。

 待ちかねた感触に女の体はもう身構えていた。

 が、少年の手がスカートの中に忍び込んでくると、さすがにそれは、と、操祈は膝をたてて逃れた。理性のブレーキに密やかな器官が抗議の声をあげるのを堪えて、少年の悪戯をやんわりとたしなめた。

「それは、ダメ……ダメよ……」

 拒んでも、レイは少しも気分を損ねたという様子を見せずにいる。寧ろどこか愉しんでいる風にも見えた。

「それよりお昼にしましょう、お弁当、ちゃんとつくってきたんだゾ」

 頭の中に立ち込めてきた妖しい靄(もや)を振り払うつもりで努めて声を明るくして言った。

 操祈は布製の買い物袋の中からランチの入った紙袋を二つ取り出すと、その一つを少年にも与える。

 献立は前菜がシーフードサラダ、メインはベーコンサンドとチーズマフィンの二種類、それにデザートにはクリームパフケーキのチェリー添えという具合だった。

 既製品をベースに組み合わせただけだったが今朝はいつもより早起きをして、みな一人で拵(あつら)えたのだ。

「レイくんのリクエストどおりにしたつもりよ……」

「うわぁ、きれいにできてるじゃないですか」

 袋の中身を膝の上に広げて少年も目を瞠(みは)っている。

「デリカで買ったものにちょっと手を加えただけだけど……」

「美味しそうに仕上げるのもウデなんですよ。同じ食材を使っても見栄えが悪いと味まで台無しになるから」

「ええ、だから言われた通りにパンを切る前にはちゃんと包丁を研いだし、盛り合わせる時には彩だって考えたのよ、どう、見直した? あたしの女子力」

 少年は同意して首を縦にふるが、

「でも――」

 と言ったきり口を閉ざしてしまうのだ。

「でも、なあに? なにかご不満でも?」

「別に不満じゃないけど、これは仕方ないかなって」

「仕方ない?」

 操祈はちょっと不満げに唇を尖らせた。

「だって、作ったものよりも、作った人の方が美味しそうなのは仕方ないじゃないですか」

「え――!?」

「ボク、やっぱり先生が食べたいな……だって先生の汗のにおいがするから……すっごくいいにおいで、頭がクラクラしてくるくらい、美味しそうで……」

 少年は言いながら彼女の半袖のボタンシャツの袖に指をかけて腋の下を覗こうとしていて、操祈は慌てて両脇を締めると腕を交差させて胸を庇った。キッとなって少年の顔を見つめる。

「ホント、エッチなんだからぁ」

 傍で少年は幸せそうに微笑みかけてくる。それと淫らな要求とのギャップがいつも操祈を混乱させてしまうのだ。

「夏休みの続き、したいな……先生のダイジなところに、またキスがしたい……」

 いきなりのプロポーズに操祈はしばし絶句する。何と返したものかと言葉を選んでいると……。

「とってもステキだったから……ボク、天にも上るくらい嬉しかった……」

 天にも上るような心地にされたのは、むしろ自分の方だと操祈は思うのだが、そんなことを口にできるはずもなく

「ああいうことは……とってもイケナイことなの……だから……」

「愛し合っていれば自然なのことなのに」

「………」

「先生はいっぱい誤解してますよ」

「誤解……?」

「クンニリングスって、悪いことでもイケナイことでもないはずなんです。だって本当に大切に思っている女性にしかできないし、したくないことだから……例えばボク、舘野さんのことは好きだけど、彼女にクンニをしたいと思ったことは一度もありません。すごく魅力のある子だと思うけど、でも先生に感じているものとは全然違う……」

 舘野唯香はレイと同じ操祈の受け持ちのクラスの少女だった。艶やかな長い黒髪の美しい素晴らしい美少女。少し大人びた雰囲気のある子で、最近、また一段と愛らしく魅力的になったように思う。

 そんな美少女と比較されて、微妙に自尊心がくすぐられるのだった。

「ボクは先生にしかしたくない……でも先生にだけはしたいと思う……あんなにステキなことは他にないから……」

「………」

「先生だって、この間は別れる時にちゃんとキスさせてくれたじゃないですか」

 操祈はホテルでの少年との別れぎわ、いちばん最後に交わしたキスがやっぱりクンニリングスだったことを思い出した。

 短い時間ではあったがお尻の方まで舌を伸ばされて、その日、ベッドでしたことの復習をしっかりさせられていた。

「ボク、先生のにおい……大好きだから……」

「……いわないで……」

 操祈は豊かな金髪から覗く耳まで赤くして顔を伏せた。

 女にとっていちばん差し障りのあるプライベートな場所、セックスのニオイを恋人から好まれて体が竦むほど恥ずかしいのに、なぜか胸がドキドキと高鳴っている。自分でもわからないが彼を好ましく感じてしまうのだ。

 レイくんはやさしい人よ……とてもやさしくて、本当に神さまみたいにやさしくしてくれるの……。

 ああ……あたし……どうしたらいいの……。

「でも、どうしてもイヤって言われたら、我慢しますけど……」

 そういいつつも少年は再び手をスカートの中に忍ばせてくる。操祈はぶるっ、と身じろぎするが強い拒絶といえるものにはなってはいないのだった。

「レイくん……」

 大きな目をぱちくり瞬(しばたた)かせて、逃げ道を探すように視線を泳がせるが、閉じようとしていた内腿の間に手がスルリと差し入れらて、もうダメだわ――と、体から力を抜いた。

 やがて訪れるショックへの不安と畏れに目を閉じる。

 少年の腕が体に巻きついてきては逃げられず、覚悟を決めるしかなくなってしまうのだ。肌着の上からだったが股間のデルタを広く包まれていて、薄衣を通して股間全体に彼の手のぬくもりがじんわり伝わってくるようになっていた。

 操祈は脚を開き加減にしてそれを許している。

 それから肌着に指がかかって、ゆっくりと下されていき……。

 この後ことはもう良くわからなかった。まるで催眠術にでもかけられたように、気がついた時には彼女は床に仰向けにされていたのだ。スカートの前が盛り上がっていて、立膝を開いて股間に彼の口づけを感じていた。

 初めての時の、あの日と同じ――。

 密やかな谷間の上をなぞるように上下している彼の舌の感触。くすぐったくて、こそばゆくて、自然に頬に笑みが泛(う)んでくる。それなのに敏感な部分を掠められると、瞬間、全身に電気が奔(はし)るような快美感に、たちまち追い詰められた表情に一変していた。

 もっと知りたい――という欲望の導火線に火がついて、操祈はその時を待ち望むようになっていくのだった。

 彼女のそうした変わりように実に機敏な少年は、指で陰部を拡げるようにして操祈の秘密の粘膜を奥の方まで露わにすると、広く舌をあててそこをじっくりと舐めるようにする。

 女の秘肉をすみずみまで味わいつくそうとするそのやり方を、すごく淫らでいけないことだと思いながら操祈はもう拒まなかった。

 こんなふうにされてしまったら、どこにもプライバシーなんてなくなってしまうわ……。

 自分が失われるようで哀しかったが、反面、秘密を分かち合える心からの友を得たようにも思うのだ。

 恋をするって、男の人とセックスをするって、こういうことだったのね……。

 諦めは、同時に操祈にとっての少女時代との決別も意味しているようで、二十歳をとうに過ぎて今更なのだが、もう何も知らなかった頃の自分ではなくなっているのを認めるのだった。

 性と肉の歓びを知ってしまった――。

 それは一度でも経験すると、けして忘れられず、誘惑に抗い難くなるものだった。

 ただ、操祈には恋の相手が教え子であること、それが気がかりなのだ。

 これは、してはいけないことなんだわ……。

 いけないこと……。

 でも……。

 一方、少年は、操祈の一対の花びらのひとつひとつを丹念に口中に含んで、柔らかに翻る肉の感触と粘膜が帯びた潤みの、その成熟した味わいを存分に楽しんでいた。

 敬愛する師であり、やさしい姉であり、誰よりも高潔な心根をもった女性――。

 温和な笑顔が、時にどこか淋しげな翳りを帯びる時、自分はこの人を絶対に守らなければ、と勇気を奮い立たせてくれるのだ。

 長いまつげの、つつましげで楚々とした清潔感のある美貌は誰よりも魅力的だと思う。

 ほっそりとしているのに、裸になるとびっくりするくらい豊かな乳房に目と心を奪われるのだった。

 こんなにも美しい女性がこの世にいることの驚きと歓び。

 彼女は、まさに生ける女神だった。

 そんな操祈先生のセックスやお尻の穴を間近にできるなんて!

 思いがけず匂い豊かであることも好ましかったし、愛の蜜の量がとても多いのも嬉しかった。

 どんなに顔を寄せていても飽くことなんてけしてなかったのだ。彼女を知れば知るほどもっともっとと知りたくなる。永遠の謎……尽きることのない謎の塊、甘い謎がちりばめられた柔らかな肉の神秘。

 ずっと想っていた通りに、操祈のカラダに口づけできない場所なんてどこにもなかったのだった。だからお尻の穴にだって全然ためらうことなく舌を押し当てていく。

 愛くるしい顔が羞恥に沈むのを見ていると、どんなことでもして可愛がりたくなってしまうのだ。

「カワイイっ……ボク、先生が愛おしくて……」

「ダメ、いけないっ……レイくんっ……そこはダメっ……」 

 男と女の立場の違い、互いに求めるものは違ってはいても、操祈のスカートの中では粘膜を通して、愛という強い絆で結ばれた男女の間だけで交わされる深く尊い命と魂の対話が為されていた。

 少年は切ないほどの愛情を舌と唇にのせてうったえて、操祈はあふれるような愛を潤いにして応えていた。

 そして、もう逃れられない――と、覚悟する。

 初めての時は心の整理が必要なほどショックだったが、二度目となる今は自分の気持ちを確かめることにもなっていた。

 愛してる――。

 私はこの子のことを愛している……。

 本当になんてやさしい子……。 

「先生のは美味しいよ……においはどんな花よりも香しい……大好きです……」

 スカートの中から顔を出した少年が、頬を赤く染めて操祈に呼びかけていた。

 真摯な眼差し、黒い瞳を懸命にしていて、言葉は彼の心からのものだとわかるのだ。

 なにより、自分がどんなに大切にされているか、どんなに愛情が注がれているか、体の方がしっかり受け止めていた。

「……愛してるわ……レイくんのこと……好きよ……大好き……」

「ボクも……」

 少年はふたたび飴色のふわふわした和毛(にこげ)の中に顔を埋めて女の匂いを嗅ぎ始めた。そのどこか哀しげな、愛情に溢れた瞳の色に操祈の心がふるえる。それ以上に彼の舌と唇はもっとやさしくて彼女の体はふるえ上がっていた。

 クリトリスが唇に捉えられて包まれてしまった時、操祈はもうこのまま死んでしまってもかまわないと思うほど、身も心も甘美な感動に包まれていた。

「ああっ……レイくんっ……」

 場面が進むと逆に少年は無口になって愛撫に熱中するようになるのだった。操祈の思いに応えて行為に代えてお返しをしてくる。

 それはいっそう彼女を歓びの高みへと誘うことになっていく。

 操祈は豊麗な腰をわななかせて貪欲に少年の唇を求めた。彼が望むまま、飽くことをしらない舌と唇が、襞と襞とが織りなすあらゆる場所に分け入り、舐りとろうとするのを大胆に体を開いてそれが容易くできるようにしている。両手で少年の顔を太腿の間に閉じこめると、秘所をぴったりと密着させて、逸楽の更なる高みをめざして駆け上がっていった。

「……とけちゃう……本当に……とけちゃうわっ……」

 高く高く浮き上がるような飛翔感と、下へ下へと堕ちていく墜落感、それらが交互に襲いかかってきて、やがて二つが溶けあった。

 もう彼女には自分がどちらに向かって堕ちているのか判らなくなっていた。

「ああ、もう……もうダメっ……ダメになっちゃうっ……」

 何度目かの大きなうねりにのみこまれた時、操祈はついに懊悩する肉体から解き放たれて自由になった。

 遙か光の彼方にむけて引きしぼっていた歓びの矢を射かける。

 体の深奥から熱いものが流れ出していく感じがして、操祈の体が優美なアーチを描いてのけ反った。

 操祈は薄れていく意識の中、愛する男の名を呼ぶ、女の悲痛なうめき声をこだまのように遠くに聞いていた。

 

 

          ◇          ◇          ◇

 

 

 操祈はいっぱいに押しあげられたままの引き上げ窓に両肘をついて、静かな外の風景をぼんやりと眺めていた。

 目の前にある人工池と対岸の丘陵地帯に点々とひろがる職員や学生、生徒用の共同住宅の屋並み。まるで子供のクレヨン画のように鮮やかに、まとまりなく点在する建屋の色……。

 遠く、キンコーン、カンコーン、とチャイムの音が聞こえてくる。隣区にある小学校の閉門十分前を告げる予鈴だった。

 時刻は午後三時近く――。

 お昼からかれこれ三時間近くも実習室で過ごしていたことになる。

 そのほとんどの時間、食事も忘れて愛し合っていて、そしてそれは今も続いていた。

 実際、操祈がいま注意を向けているのは猫がミルクを舐めるときのようなネロネロという湿った音の方。彼女は膝を割ってレイの顔に跨るような形になっている。

 少年の仕草は少し前までの彼女を逸楽へ誘おうとする濃厚な口唇愛撫ではなくなっていて、後戯の、いたわるようなそれにかわっていた。はしたなく分泌した秘液をきれいに舐めとってくれているのだ。

 それが操祈には少しもの足りなく思えてきて、少年の頬をしなやかな両脚の間に挟み込むと、愛撫をねだるようにまた尻を蠢かせた。ヘアの陰に少年の嬉しそうな悪戯な瞳が見えている。いつの間にか彼女はスカートも脱がされていて下半身はつるんと裸にされているのだった。

「スゴいな、先生……キミが自分から乱れるのって、初めて……」

「うそよっ、うそだわっ……そんなことぉ……」

「だってボク、何にもしなかったもん……」

「うそつき……」

「ホラ、この状態じゃ、ここまでしか届かないんだよ……」

 少年は操祈にも見えるように舌を伸ばして、茂みの中に探りを入れようとしていた。それを半泣きするような表情になって息をのんで彼女は見まもった。

 デリケートな粘膜に差し込まれる、おっつけるような舌の感触の心地よさ……ゾクゾクするような期待にじっと身をかたくして……。

 けれども少年の舌先は軽く掠めただけで、肝心の部分には触れようともしない。もちろんワザとそうしているのだ。

「ね……」

「いじわる……」

 レイはどうしても自分に主導権をとらせるつもりのようだった。少年は嘲(あざけ)るように舌をのばしている。

「ナマイキな子……覚えてなさい……」

 覚悟を決めて操祈が少年の頭を抱き寄せようとすると、それを待っていたように少年は床にごろんと仰向けになった。

「じゃあ、おいで……」

 何を求められているのかはすぐにわかった。先に一度、求められてさすがにそれは、と拒んだ体位。

「そう……そうなの……いいわ……」

 結局、言いなりになるしかないのね……と、操祈は半ばなげやりな気持ちになって、一度は逃れたその要求に今度は応じてみることにする。どんなに羞ずかしい体位も、抵抗感の強いことでも、最後にはレイに譲らなくてはならないとすっかり諦めて……。

 操祈は少年の顔の真上に立つとゆっくりと腰を下ろしていった。自らすすんで体を開き、大胆にも少年の顔を股間に組み敷こうとして。強い羞恥に躊躇いを感じながら、それでも勇気を持って少年の顔の上に、自らの秘所を押しあてようとした刹那、突然思わぬ方角から声がかけられたのだ。

「操祈先生ぇ、そんなところで何してるんですかぁ?」

「ひぃっ!」

 不意をつかれて、思わず狼狽の悲鳴をあげてしまった。

 窓辺にいる操祈に気づいて、下を歩いていた女生徒のグループが声をかけてきたのだ。

「ちょっ……と、さがし物をしてるの……」

 咄嗟(とっさ)のことで慌てて意味不明の言い訳になってしまった。下を見ると、自分を見上げる少女たちの屈託のない笑顔が列んでいる。

 操祈は窓の縁に両手を副えて体を支えていて、中腰になったこちら側では下半身を剥きだしにして、牝の肉体が少年の奉仕を強制しようとしているのだった。

「おさがし物ですかぁ? お手伝いしましょうかぁ?」

「いっ、いいのよっ」

「そう、さがしものしてるんだよね……どこいっちゃったのかなぁ、先生のちっちゃなサクランボ……」

 股の下でレイのからかいを含んだ囁き声が聞こえた。少年の顔が寄せられるのが気配でわかる。舌先が巧みに動いて彼女の柔らかくひるがえるものがかき分けられると、再び、鋭敏な花芯を探しあてられて、すぐに剥きだしにされて舌が絡みついてくる。熱い舌のスポンジの中に女の秘密のシンボル、肉色をした真珠がすっかり包まれてしまった。

 その戦慄を覚えるようなスリリングな感触に我を失いそうになりながら、操祈はかろうじて声をあげるのをこらえた。

“あ……ああ……いい……気持ち……”

「さっきこっちの方で何か変な声が聞こえたンですけどぉ……」

 少女の中の一人が言った。

「へっ、変な声っ?」

「女の人の悲鳴みたいな……あの声って、もしかして先生ですかぁ?」 

 見上げる少女たちの顔に、かすかな疑惑の色が泛(う)かんだように操祈は思った。

「えっ!?……ンはっ……ああっ、さっき書類を床に落としちゃって……きっとその時よ……」

「なぁんだ、そうだったんですかぁ……」

「うっ?!」

 臀(しり)の肉をぐいっと掴(つか)まれ、むりやり左右に広げられてしまう。尖った舌先が会陰をなぞるように恥穴に迫っていた……。止めてっ、と焦ったが、表情を崩すこともできないままに操祈は、そのまま新鮮な刺戟を味わう羽目になっていた。

“いまそんなところ……舐めないで……”

 思いながらも自然に腰をつかって、舌が心地よくあたるようにしてしまう。もちろんそこを愛されるのは初めてではない。その感覚はそこにも女の歓びがあることを教えていて、操祈自身もそのことを知っているのだ。

「気持ち、いいですか? 先生……」

「……くやしい……くやしいな……」

 少年の、思った通りとでも言いたげな声の調子にうっかり応えて、それを聞き咎(とが)められたのか、女子生徒の誰かがすかさず「そこに、誰か居るんですかぁ?」と訊いてきたのだ。

「だっ、誰も居ないわよっ」

「でも、今……たしか……」

「そんなこと、ないわっ……」

「……声が聞こえたような気がしたんですけどぉ……男の子の……」

 男と聞いて、周りにいた少女たちが色めき立った。

「まさか、先生っ、生徒の誰かに個人レッスンしてるんじゃないですよねぇっ?」

「個人レッスンって、なーんかあやしいー」

「えーっ、先生っ、そうなんですかぁっ?」

 と、更に突っ込まれて操祈を慌てさせる。

「そんなっ……そんなワケないでしょ、きっとラジオよっ……点けっぱなしにしてるからっ……」

「なぁんだ、つまんないぃー」

「冗談ですよぉ、マジにとらないでくださぁいっ」

「………」

「ねぇ先生……さがし物って、おひとりで大丈夫なんですかぁ!?」

「え、ええっ?……平気よっ、たいしたことではないからっ…」

「何か私たちにもできることがあれば……」

「……そっ……そんなっ……ひいっ……」

「え? なんですかぁ?!」

「なっ、何でもないわっ!」

 レイの舌の上で、懇ろに花芯があやされている。今また指の刺戟が加わって、深く深く奥まで忍び入ってきたのだ。操祈はそんな非道な陵辱者に対して叱責することも払いのけることもできずに、ただされるままになっているしかなかったのだった。

「あのう……私たち、そちらに行きましょうかぁ?」

「だっ、ダメよっ! 来てはダメっ、来ないでっ!……試験問題もあるからっ」

「試験っ!? ああ、それじゃダメですね、みんなでお手伝いしようと思ったんですけどぉ……」

「ああっ、ありがとうっ、でも、ひとりでだいじょぶだからっ、じき済むのよっ」

「そうですかぁ、ちょっと残念です」

「じゃあみんないこっか? 先生、お忙しいみたいだから」

「うん、そうだね」

「先生、あたしたち、これからカラオケに行くんですけどぉ、今度、先生もお付き合いしてくれませんかぁ?」

「わかったわ、今度ねっ……」

 体の方がいよいよ忙しなくなってきていた操祈は、少女たちとのやりとりを終えたくて易請(やすう)け合いをしてしまったが、今はそれを危ぶむことすら疎ましかった。

「ヤッタァ、約束ですよぉ、操祈先生ぇ」

「あなたたちもっ、週末だからって、あまり浮かれていないで気をつけてお出かけなさいねっ」

 ようやく、ハーイ、と唱和する声が返ってきて、みな素直なお辞儀している。

 操祈は、体が萎えてしまいそうになるのに耐えながら、少女たちに困ったような、柔和しい頬笑みを返すのだった。

 

 




ボーイ8メンタルアウトアウト学園都市編の96、7話と
ボーイ8メンタルアウトアウトの修学旅行
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