当初の予定と異なり、22番道路に進んでしまった私。
関所のお兄さんに地図の見方を教えてもらい、漸く、本来進むべき方向を知る事が出来た。
思えば、途中に看板や立て板も有ったと言うのに……嗚呼、恥ずかしい。
でも、悪い事ばかりじゃなかった。
こうして道に迷ったお蔭で、私は本来ならば出会う筈の無かった子達とも会えたのだから。
更に嬉しい出来事が他にも有った。
トキワシティへ引き返す途中、私は少し珍しいポケモン「マンキー」と遭遇した。
今迄に出会った中で最も好戦的な性質の持ち主であり、中々に手強い相手だったけれど、無事にその子とも友達になれた。
いやぁ~、迷子も存外、悪い物では無いね。
◇◇◇
扨……随分と時間が掛かってしまったけれど、改めてトキワシティから再出発を果たした。
周囲の看板や、図鑑に備わっているマップ機能を確認して、今度こそ確実に2番道路へと足を進めた。
歩いている最中、私は想定よりも道が細長い事に気付いた。
辺りを見回すと、東側に別の道が通っていると分かった。
成る程……私が歩いているのは、本来の半分の広さに過ぎない訳だ。
向こう側も気になるけれど、木々が生い茂っていて、そちら側には如何にも行けそうにない。
只、焦る必要も無い。
私の旅は未だ始まったばかりだ。気になる場所は、後で道を探せば良い。
世界は広い。1度に全てを見て回れるなんて、端から思っていないのだから。
◇◇◇
道中、私は経験を得る為にも、遭遇した野生のポケモンとは積極的にバトルをしていた。
戦えば戦う程に皆は強くなるし、私自身もバトル中の指示の出し方等を学習出来る。
又、そうして戦っていれば、新しい出会いも果たせるかも知れないと言う期待も有った。
そして、私の期待は早々に現実となった。
何かが動く気配を察知して身構えると、そこには黄色い体をした虫ポケモンが居た。
「初めて見るポケモンだ! 何だろう?」
図鑑で確認した所、あの子は「ビードル」と言うらしい。
旅に出て以降、虫タイプのポケモンは初めては見た。
これは是非ともゲットしたい所だ。
私は息を潜めて、相手に気付かれぬ様に距離を詰めて行く。
そんな最中、背後から微かに足音が聞こえる。
直後、隠密行動中の私を無視して、その足音の主は声を掛けて来た。
「そこのポケモントレーナー。お前、何処の出身だ?」
「――え?」
振り返ると、そこには虫網を携え、頭に兜を被った短パン姿の男の子が立っていた。
「私? 出身はマサラタウンだけど、君は――」
「見付けたぞぉっ!!」
答えた以上、私も彼の出身地を尋ね様としたのだけど、言葉も途中に飛び掛かって来た。
「きゃぁっ! な、何よ急にっ?!」
吃驚しながらも躱した私が問い掛けると、男の子は虫網を私に向けて息を荒立てる。
「俺の名前はカズヒコ! 打倒マサラタウンに燃える誇り高き侍だぁっ!!」
さ、侍……?
侍要素、頭に被っている紙製の兜しか無い様に見えるけど……。
持っているのも刀じゃなくて虫網だし……。
最初、呆気に取られて固まっていた私だったけど、大切な事を思い出して前に向き直る。
「そうだ! ビ、ビードルは?!」
振り返った時には、既に姿は見え無くなっていた。
邪魔が入った所為で、折角見付けた新しいポケモンに逃げられてしまった。
「貴方! 如何してくれるのよ?! 逃げられちゃったじゃない!」
「お前がボーッとしていたからだろ? 俺の所為じゃない」
私は自称・侍の男の子に抗議するけれど、彼は聞く耳を持たない。
如何やら、彼は私の都合なんて考えてくれぬ様だ。
酷い話じゃないの。
◇◇◇
ビードルに逃げられてしまった私は、少し眉を吊り上げて彼と向かい合う。
「カズヒコ君って言ったっけ? それで? 私がマサラタウン出身だからって何なのよ?」
不機嫌な口調で問い掛けると、カズヒコ君は虫網を下ろして、敵意に満ちた目を私に向けて来る。
「俺……マサラタウン出身のトレーナーに3連敗してるんだ。アイツ等……俺と同じ位の年齢だったのに、滅茶苦茶強かった! だから俺は……だから俺は……次こそはマサラタウン出身のトレーナーに勝つと誓ったんだっ!!」
そう叫ぶカズヒコ君は、微かに手を震わせていた。
見た所、相当に悔しい思いをして来た事が伝わって来た。
私は未だ野生ポケモンとのバトルしか経験した事が無いけれど、彼の気持ちは良く分かる。
そう、分かるよ。私だってトレーナーだもの。
全力を出しても勝てなかったら、屹度、泣きたくなる位に悔しい筈だ。
◇◇◇
私は一旦気持ちを落ち着かせると、今度は普通のトーンで話し掛ける。
「所で、その3人ってどんな子だったの? マサラタウンは小さな町だから、そう頻繁にあの町の出身者が通るとも思えないけど?」
尋ねると、カズヒコ君は眉間に皺を寄せて、声のトーンを落として答える。
「1人目は赤い帽子を被った奴。兎に角、熱意に満ちた奴だった」
「2人目はキザな野郎だった。スゲェ自信家だったけど、それに見合う強さだった」
「3人目は女だったから、俺も油断してた……。確か、スカートを穿いていた」
特徴を聞いた私は、その場から逃げ出したくなった。
如何しよう……その3人……多分、全員知り合いだ……。
気不味い思いを抱く私を余所に、カズヒコ君はポケットからモンスターボールを取り出して私に宣言する。
「トレーナー同士が出会ったら、バトルをするのが流儀だろう? マサラタウン出身の女! 俺と勝負しろっ!!」
えぇーっ!? バ、バトルぅ?!
若しかして、トレーナー同士のポケモン勝負?!
わわわっ! 心の準備も出来ていない状態だったから緊張しちゃう!
でも、逃げる訳には行かない。
そうだ。私だってポケモントレーナーだ。
彼もトレーナーである以上、私達が出会った時点で戦う運命に在ったのだ。
私は深く息を吸い込むと、帽子の向きを軽く整え、ベルトに装着してあるモンスターボールを手に取る。
そして、真っ直ぐに彼を見据えて宣言する。
「私はマサラタウンのルリカ! その勝負、受けて立つわ!」
両者の間に視線の火花が散ると、互いに同じタイミングで叫んだ。
「「バトル!!」」
その宣言は、私のトレーナー人生に於いて、大きな1歩となった事だろう。
◇◇◇
遂に始まった、生まれて初めてのポケモンバトル。
野生のポケモンとの野良バトルと違い、相手のポケモンもトレーナーの指示を受けて行動する。
屹度、今迄の様な単調なバトルとは一味も二味も違う筈だ。
使用ポケモンは互いに3体。
途中交代は禁止のタイマン勝負だ。
初めてのトレーナー戦――完全初心者の私はどれ位戦えるのだろう……。
表情こそ強気な私だが、内心は不安で一杯だった。
所が、勝負は呆気無い程にトントン拍子で進んだ。
カズヒコ君が繰り出したポケモンは、1匹目がキャタピー。2匹目がビードルだった。
対する私が繰り出しているのは、オニスズメ。
只でさえ素早さで勝っている上、「つつく」の攻撃は虫タイプのポケモンには効果抜群だった。
結果、オニスズメは相手の攻撃を受ける事も無く、カズヒコ君のポケモンを2匹立て続けに倒してしまった。
◇◇◇
後が無くなったカズヒコ君は地団駄を踏みながら涙目になっている。
「チクショウ……チクショウ、チクショウ! 俺は又、マサラタウンのトレーナーに負けるのか?!」
弱気な台詞を吐く彼に対して、私は余計なお世話だと分かっていながらも、喝を入れる心算で呼び掛ける。
「トレーナーならば、途中で諦めちゃダメだよ! 次は絶対に勝つ……そう誓ったんでしょ?!」
「ルリカ……」
私の大声に反応したカズヒコ君は、ハッとした様子で顔を上げる。
そして、倒れたビードルをボールに戻して私を見据える。
「ルリカ……俺は……俺はお前に勝てるのか?」
今にも泣き出しそうな顔になってしまっている彼に、私は肯定も否定もしない。
「それは最後迄分からないよ。ほら、貴方にも未だポケモンが残っているのでしょ? 貴方もトレーナーならば、心に決めた事が有るでしょ?! 誰かと約束した事が有るんじゃないの?!」
私が呼び掛けると、カズヒコ君は兜を脱ぎ、中から不思議な色のボールを取り出した。
普通のモンスターボールとは全然違う……上半分が迷彩柄のボールだ。
「出来れば、コイツには頼りたくなかった……本当は、自分1人の力で勝ちたかった……でも、今の俺では、アイツに勝てない……」
カズヒコ君は、何やら葛藤した様子でボールを握り締めている。
しかし、決意が固まったのか、先程とは丸で別人の様な面持ちで前を向いた。
「兄ちゃん……俺は何時か、兄ちゃんを越える……! 今は遠く足元にも及ばなくても、何時かは越えるんだ! もっともっと戦って、勝ちまくって、強くなるんだ! だから、兄ちゃん! 俺に力を貸してくれぇっ!!」
叫びと共に放たれたボールが開くと、眩い光と共にポケモンが出て来る。
砂埃を立てて着地すると、そのポケモンは低い唸り声を上げながら身を起こした。
「な、何それ……!!」
余りに想定外な登場を受け、私は思わず図鑑を向けた――。
◇◇◇
カイロス――くわがたポケモン。
2本の長い角はパワフル。挟まれたら大怪我をする恐れが有るので、充分に注意する事。
図鑑の説明を聞き、私は口をあんぐりと開ける。
「そ、その子は一体……」
私が吃驚仰天していると、カズヒコ君が説明してくれる。
「こいつは兄ちゃんが……俺が1番尊敬する兄ちゃんがくれたんだ。虫ポケモンが好きな俺を想って……何時か自分に追い付いてみろって。憧れる丈でなく、何時か自分を越えて見せろって! そう言って、俺にくれたんだ!」
聞けば、カズヒコ君のお兄さんもポケモントレーナーだそうだ。
旅に出発する当日、別れを惜しんで泣きじゃくる弟に託してくれたのだと言う。
本当は、旅に出るお兄さん自身も不安で一杯だった筈なのに……素敵な兄弟愛ではないか。
◇◇◇
感動的な話にほっこりする私だが、状況としては不味い事になった。
見た限り、あのカイロスは既に育成が施されている。
少なくとも、今の私達では相手にすらならないだろう。
私の焦りは表情にも出てしまっていた様だ。
カズヒコ君は私が怯んでいる事を覚ると、声高らかに指示を飛ばす。
「行っけぇ、カイロス! ハサミギロチンだっ!!」
ヤ、ヤバい! 来る!!
私が怯んだ所為で指示が一呼吸遅れてしまった。
最悪の事態が脳裏を過ったのだが、しかし――。
[…………]
カズヒコ君の指示を受けた筈のカイロスだが、自慢の角を開け閉めしながら佇んでいる丈だ。
攻撃をして来る気配が無い。これは若しかして……。
「ねぇ、カズヒコ君。その子、『お兄さんから貰った』って言ったよね? だとすれば……」
私が尋ねると、彼はバツが悪そうに頷く。
「そ、そうなんだ。俺の言う事、未だ聞いてくれないんだ。なぁ、カイロス、頼むよ。今はバトル中なんだ。お前だって、負けるのは嫌だろ? 一緒に戦ってくれよ」
カズヒコ君が懇願する様な口調で話し掛けるけれど、カイロスはうんともすんとも言わない。
そう言えば、聞いた事が有る。
ポケモンはボールに入れたからと言って、無条件でトレーナーに従う訳ではない――と。
ポケモンは知能が高い。故に、「自分を従えるに値しない」と判断したトレーナーの指示には従わないそうだ。
そして、持ち主が変わった場合、その判断基準はより高くなると言う。
要するに、人から貰ったポケモンは、相当な腕前を持ったトレーナーでないと御する事が出来無いのだ。
それは如何やら、兄弟の様な家族同士でも例外では無いらしい……。
◇◇◇
カイロスはカズヒコ君の指示に従う気が無い様だ。
ならば、私達にも付け入る隙が有る筈だ。
仮にレベルに大きな差が有ったとしても、これならば――。
そう判断した私は、相手が動く前に行動を起こす。
「オニスズメ! 真正面から戦ってはダメ! 1度、背後に回って、それから――」
ジャキンッ!!
私が未だ指示を出している途中だった。大きな物が高速で動いた様な気がした。
何かを挟む様な音がしたと思った次の瞬間、カイロスの位置が少し変わり、私のオニスズメがポトリと地面に落ちた。
「オニスズメ……? オニスズメ!!」
一瞬、何が起きたのか分からず混乱していた私だったけど、事態を把握してオニスズメに駆け寄った。
オニスズメは目を回している。戦闘不能であるのは明らかだった。
一撃……目にも止まらぬ速さの一撃でオニスズメは倒されてしまった。
驚いたのは私丈ではない。
カズヒコ君も最初、何が起きたのか分からずキョトンとしていた。
しかし、彼も事態を把握したのか、困惑しつつも徐々に喜びの笑みを浮かべ始める。
「へ? や、やったのか? カイロス、お前……! やったぁ、倒したぞ! 偉いぞ、カイロス! 良いぞ、その調子だ!」
褒められるカイロスだけど、カズヒコ君の方を振り返りもしない。
嗚呼、そうか……あの子にとっては、目の前に敵が居たから倒した丈なのか……。
しかし、これは困った。
カイロスがカズヒコ君の指示通りに動かなくとも、矢張りレベルが違い過ぎる。
どんな技だろうが、恐らく、一撃でも受けたらアウトだ。
(大体、さっきの技は何よ……? あんな技、見た事無い……)
私は初めて見るポケモンに加えて、初めて見る技にも翻弄されていた。
随分と後になって知ったのだけど、先程の技は「シザークロス」と言うらしい。
虫タイプの技なので、飛行タイプのオニスズメに対しては効果今一つの筈なのだけど……レベル差の暴力とは恐ろしい。
◇◇◇
その後の展開は想像通りだった。
何とかカイロスに戦ってもらおうと、懸命に指示を出すカズヒコ君。
全く言う事を聞かず、そっぽを向いてしまうカイロス。
隙を突いて私達が攻撃を仕掛け様とすると、鬱陶しそうに応戦する。
そして、一撃で倒される……。
オニスズメに続き、マンキーとニドラン♀を倒され、勝負は私の負けで終わった。
「ニドラン! ま、負けた……」
「やった……やったぁ! 遂にマサラタウンのトレーナーに勝ったぞっ!!」
喜ぶカズヒコ君と、落ち込む私。
勝負は付いたけれど、乗り気ではないバトルに駆り出されたカイロスは物凄く機嫌が悪そうだ。
すると、私の姿が視界に入った瞬間、2本の角を大きく開き、一直線に私へと突っ込んで来た。
気付けば、直ぐ傍に迫っていたカイロス。
私は自分の身体が真っ二つにされる幻影を脳裏に過らせ、顔から血の気が引いて行く。
「き、きゃぁぁぁっ!!」
私が悲鳴を上げると、勝利の喜びでピョンピョン跳ねていたカズヒコ君が慌ててボールを構える。
「わぁ! も、もう終わりだって! 戻れ、カイロス!」
赤い閃光が迸り、カイロスはボールの中へと戻された。
助かった……本気で殺されると思った……。
◇◇◇
扨、トレーナー同士の腕前は別として、勝負は私の負けで終わった。
トレーナー同士がポケモン勝負をした場合、敗者が勝者に賞金を支払うのがルールとなっている。
「アイツ、結局俺の言う事は1度も聞いてくれなかったな。だが、勝ちは勝ちだ」
「うん、そうだね。カイロス、凄く強かった……私の完敗だよ」
私は勝負に負けてしまったけど、不思議と然程の悔しさは抱かなかった。
当然だ。あんな相手に勝てる筈が無いのだから。
それに、ピカチュウとの一件を乗り越えた私にとってみれば、今回の勝負は真の意味で「敗北」とは思えなかった。
カズヒコ君本人のポケモン丈で戦っていたら、恐らく、結果は私の勝ちだったとも思えた。
◇◇◇
そんな訳で、私は穏やかな気持ちでカズヒコ君と向き合う。
「おめでとう。勝負は貴方の勝ちよ。これは賞金――賞……金……」
私は賞金を支払おうとしたのだけど、お財布を開けて固まってしまった。
何故なら、中身は空っぽだったのだから。
最初、カズヒコ君は固まった私を不思議そうに見詰めていた。
しかし、私がお財布を逆さまにして見せると、彼は色々と察した様子で表情を曇らせた。
「なぁ、ルリカ。俺としても女に金を要求するのは心が痛むが……それは失礼だぞ?」
「はい、仰る通り……」
「ポケモン勝負の賞金はトレーナーにとって生命線だ。俺も含めて、トレーナーは基本的にポケモン勝負で生計を立てている」
「はい、私もです……」
「俺は負けが立て込んでいて、今回漸く勝てたんだ。久々の収入になる筈だったんだ」
「は、はい……」
穴が有ったら入りたいとは、正にこの事だ。
忘れていた――私はトキワシティを出る際、モンスターボールや薬を可能な限り買い込み、有り金を全て叩いてしまったのだ。
◇◇◇
気不味い沈黙が10秒程流れた後、カズヒコ君はその場で崩れ落ちた。
「こんなのあんまりだぁぁぁっ! やっと勝てたのにぃっ!!」
「ごめんなさぁいっ!!」
悲痛な叫びを上げるカズヒコ君と、申し訳無さの余り謝る事しか出来ぬ私。
2番道路に私達2人の叫びが反響した。
しかし、本当に如何しよう。
昔の人も「無い袖は振れぬ」と言っていた様に、今の私は無一文なのだ。
お金の代わりに道具を渡す事も考えたけど、それは失礼の上塗りになりそうなので止めた。
◇◇◇
如何した物かと私が困っていると、やがて、カズヒコ君が何かを思い付いた様に「そうだ!」と叫んで立ち上がった。
立ち上がったカズヒコ君は、腕を組んで私の真正面に立つ。
そして、何故か少し頬を赤らめながら、私の事を上から下迄じっくりと見詰めた。
何を要求されるのだろう……。
私が不安を抱いていると、カズヒコ君は口を開いて、やや上擦った声で告げた――。
「じゃあ、身体で払ってもらおうかな?」
「――えっ?」
言われた瞬間、私の胸には確かな動揺が走った。
私は勝負に負けた。
負けたのに、勝者に対して賞金を支払う事が出来無かった。
それは本来、ポケモントレーナーとしては失格の烙印を捺されても文句が言えぬ非礼だ。
そう、悪いのは私だ。
私は動揺を抑えながらも、同じ位ドキドキした様子を見せているカズヒコ君に尋ねる。
「それで……それで赦してくれる……?」
私が縋る様な上目遣いで尋ねると、カズヒコ君はコクリと頷いてくれた。
「嗚呼、約束する」
ならば、私の選択肢は1つしか無い。
勝者に支払うべき賞金――それをお金で払えなかった私は、身体で支払う事になった。