主人公セイタンがクレマンティーヌをペットにした事で、スレイン法国がシャルティアの仇であることが分かった。
玉座の間。そこには階層守護者達とその手下達が片膝を突き、頭を垂れている。
第八階層守護者のヴィクティムの姿も見える。
アルベドの号令で、一斉に顔が上がる。
その後、各々にモモンガさんが感謝を述べ始めた。
デミウルゴスは
次に話題はヴィクティムへの礼とシャルティアの件へ。
確かに、シャルティアの問題を有耶無耶にするわけにはいかない。
スレイン法国という元凶を思い浮かべると、思わず眉間に皺が寄る。その表情を見て、シャルティアが慌ててしまった。僕も慌てて否定する。
「モモンガさんと僕は同じ気持ちだよ。シャルティアちゃんには追って命令を与える。それで罪を償うといい」
そうして話題は、コキュートスの戦果報告へと移った。
彼は玉座の間に入ってからずっと震えている。
モモンガさんは報告を続ける彼に優しく改善点を教える。彼は怒っていない。僕も同じだ。
しかし、
「彼らを殺したくない」と。
まごつく彼に、アルベドが叱責を飛ばす。
──邪魔だ。忠誠心が高いのは良いが、出しゃばるのは良くない。
「アルベド。今、モモンガさんが話を聞いている。君は主の質問の邪魔をするのか?」
強い言葉に、アルベドは怯えた様子で謝罪し、後ろに下がった。空気が張り詰める。
僕はわざと声の調子を柔らかく変え、コキュートスに話しかけた。
「そんなに
内心、僕は喜んでいた。
欲望を持つということは、彼らが「生きている」という証拠だ。
忠誠以外の感情を育むことを願っていた僕にとって、コキュートスが「欲する」という行動を見せたのは大きな進展だった。
彼は、弱者なれど諦めず立ち向かう輝かしい戦士達を欲したのだ。
僕は彼を肯定する。
だから、口下手な彼の代わりに支配するメリットをモモンガさんに提案した。
世界征服を目指す以上、単に殲滅するだけでは達成できない。勝ち、支配し、征服する──それが真の征服だ。人々がいなければ支配の意味はない。無人の土地など増やしても無価値だからだ。
そのための第一歩として、殲滅ではなく統治に切り替えるのはどうだろう。
僕の提案にモモンガさんは頷き、守護者たちからも異論は出なかったため、命令は変更された。
もっとも、彼もこの結果を望んでいたのだろう。コキュートスへの質問は、コキュートス本人の成長を促していたのだ。
最後にスレイン法国の件が周知される。
クレマンティーヌから得た情報をモモンガさんに伝えた際、彼は激怒していた。しかしすぐに冷静さを取り戻し、慎重に計画を練り始めた。
クレマンティーヌの情報だけを鵜呑みにするのは危険だ。
「スレイン法国は第一の攻撃目標だ。だが、まずはこの地におけるナザリックの支配を固めることを優先する。各員、このことを頭に入れておけ」
モモンガさんの言葉を受け、守護者たちは戦意をみなぎらせながら命令を承った。
* * *
「はぁ……疲れた……」
モモンガさんの個室。彼はそのままベッドへ倒れ込んだ。
先程の会議もそうだが、僕が冒険者活動に勤しんでいる間、彼はナザリックの支配者としての役割を全うしていた。途中、何度か伝言で相談を受けることはあったものの、忠誠に報いようと支配者の仮面を被り続けるのは、いくらか精神的な疲労を彼に与えているようだった。
「お疲れ様。もう少し気楽に振る舞ったらどう? モモンガさんは支配者なんだろ?」
「いや……あいつらだって、いつまでも忠誠を誓ってくれるとは限らないですし……。俺が相応しくないって思われたらどうなるか……」
ため息交じりに、彼は言う。
確かに、自由意志を育てた先にそういった未来もあり得る。だが、それでも僕たちが作り上げたNPCたちなのだ。少しくらい信じてあげてもいいのに。
「そりゃセイタンさんは
今度はジト目で言われた。なんだろう、とてつもない嫉妬の波動を感じる。
確かに、毎日アジーと楽しんでいるし、そこにクレマンティーヌも加わった。冒険者活動も順調で、余裕ができたおかげでナザリックにはない食事も味わえるようになった。
ナザリックに閉じこもりがちなモモンガさんが羨ましく思うのも、無理はない。
「もう少しでモモンガさんも楽しめるものができるから、期待してて」
「はぁ……変なもの作らないでくださいよ? 前も、るし★ふぁーさんと変なことして大迷惑だったんですから」
懐かしい記憶が蘇る。以前、僕がるし★ふぁーさんのゴーレムとアジーに作らせたアイテムを使い、ナザリックに混乱を巻き起こしたことがあった。
具体的には、ギルドメンバーが一人になった瞬間を狙い、ひたひたと後をつけてくるゴーレムを九階層に放ったのだ。つけられていることに気付いて後ろを振り返ると誰もいない。探知魔法を使っても、ゴーレムはナザリックの備品と判定され見つからない。
名付けて、『オヤシロサマ』だ。
侵入者かと大騒ぎになり、あまりに問題が大きくなったので僕が秘密をバラしたのだが、その結果、るし★ふぁーさんと二人で大目玉を食らったのだ。
「ははは……まぁ、今度はモモンガさんのためだから、ほんとほんと」
苦笑を漏らしながら僕は答えた。
カジートもアンデッド化してもらったし、実験は順調に進んでいる。あと少しで成果が出るはずだ。
そう考えながら、僕達は思い出話に花を咲かせた。
疲れ切ったモモンガさんに、しばしの安らぎを与えよう。彼もまた、迷える子羊の一人なのだから。支配者としての重責から解放される時間も必要だ。
「ところで、聖王国の両脚羊ってどんなのだと思います?」
僕は笑顔で、さりげなく嘘をついた。
* * *
蜥蜴人たちにコキュートスとの対決を告げた後、アウラが作ったという要塞の一室に入る。僕たちが入ると知り、彼女は頑張って装飾品を揃えたのだろう。粗さは感じるものの、これはこれで味があって悪くない。
奥には骨でできた白い椅子が二つ置かれている。デミウルゴスお手製で、様々な動物の骨を使って作られたらしい。
「へぇ。中々邪悪で良い椅子じゃないか。さすがデミウルゴスだね」
そう言いながらデミウルゴスに礼を述べて座る。さすがウルベルトさんが生み出した存在だ。いい趣味をしている。
だが、モモンガさんは何故かシャルティアを椅子代わりにして座った。罰だとかなんとか言っていたが、この椅子が嫌だったのだろうか? 僕はいい椅子だと思うんだけどなあ。
デミウルゴスはその光景に興奮した様子でモモンガさんを褒め称え、アルベドは嫉妬で鬼のような表情を浮かべている。モモンガさんは鈍感なのか、それに気づいていない。
一方のシャルティアはというと、椅子にされたことをむしろ喜んでいる。彼女は被虐趣味のせいで、これがご褒美になってしまっているのだ。
そんなシャルティアを見て、アジーが「いいなあ」とぽつりと漏らす。
「デミウルゴスがせっかく用意してくれたんだ。僕はこのまま座らせてもらうよ」
僕がそう言うと、アジーとシャルティアが愕然とする。特にシャルティアは、どうやら僕にも自分を椅子にするつもりだったらしい。知らないふりをして本題に移ることにした。
本題はスレイン法国についてだ。玉座の間で方針を伝えたものの、その具体的な中身について守護者たちと相談する場を設けたのだ。どうすれば滅ぼせるか──アルベドとデミウルゴスを中心に活発な意見が飛び交う。
国という存在の大きさを侮ってはいけない。個人戦闘能力がいくら優れていても敗北する可能性はある。コキュートスが示した通りだ。そして感情のままに突貫する気もない。夷陵の戦いで大敗した劉備のようにはなりたくない。最初にモモンガさんにそれを伝えたとき、彼も十分に理解していた。
ただ、彼の精神の沈静化がなければ怒りはここまで収まっていなかっただろう。
誰よりもナザリックに対して愛情深いのだ。僕なんかよりずっと。
冷静な話し合いの中でも、時折怒りの感情を滲ませるモモンガさんの影響で守護者たちも怒りを纏っていく。僕らが黒といえば黒、白といえば白。それが彼らの本質だ。
「ひとまず、偵察用のシモベを送り込む。なるべく高レベルの者がいいだろう」
モモンガさんそう提案すると、周囲はうなずいた。
情報が出揃っていないうちに下手に攻め込んで周辺国家から逆襲される危険もある。まだ見ぬ虎の尾を踏む可能性もある。そのため、王国か帝国に潜伏する案も議題に上がった。所属を預けることで、矛先をそちらに向けさせるためだ。
王国は貴族による腐敗が進み、魔法詠唱者を軽視している国だ。冒険者活動中もそういった偏見を感じて面倒だった。価値が低いように思えるが、ガゼフのような例もある。『蒼の薔薇』や『朱の雫』といった冒険者の強者もいるらしい。僕達のような
帝国は違う。『鮮血帝』と呼ばれる若き有能な皇帝が支配する国だ。即位してすぐに多くの貴族を粛清したことでその名がついたという。有能なリーダーのいる国は強いが、彼らの力がどれほどかは未知数だ。配下には四騎士に加えてフールーダという大魔法詠唱者がいるらしい。聞いた通りの能力であるなら容易い相手だが、果たしてどうだろう。
いずれにせよ、しばらくは支配を固める方針で動く。そして各国の情報を集め、スレイン法国に攻め込んだ場合でも別勢力からの攻撃に耐えられる地盤を作る。王国か帝国のどちらかに潜み、万全の状態になってからスレイン法国を滅ぼす。それが決まった方針だった。
その一環として
映し出されたのは白い蜥蜴と緑の蜥蜴が交わっている姿だった。
気まずい沈黙が訪れる。
僕とモモンガさんの目が合う。これまで緊迫感のある話し合いがされていたのに、彼らは愛を育んでいたのだ。命を繋ぐための必死な行動なのだろうが、守護者達のざわめきが空気を一気に崩した。
僕はアジーを呼んで彼女を抱きしめる。
モモンガさんとアルベドから鋭い視線が送られた、気がした。
* * *
蜥蜴人の集落の支配は、結果として何事もなく完了した。コキュートスとの決戦も問題なく終わり、先ほどまで交わっていたリーダーらしき蜥蜴を生き返らせてすべて終了だ。特に感慨はなく、興味があったのはコキュートスの成長くらいだった。
そして、日常へと戻った。冒険者の依頼で稼ぎつつ、情報を集める、そんな日々に。
ある日、僕はふとモモンガさんに尋ねた。
「アルベドのこと、どう思ってるんです?」
「えっ!? な、なんですか急に」
突然の質問にモモンガさんは戸惑いながら問い返す。
「質問を質問で……いや、ね。いい加減受け入れてあげても良いんじゃないかって思ってさ」
僕が言うと、モモンガさんは顔を背けて口ごもるように答えた。
「いやいや……前も言いましたけど、アレは設定のせいで……」
しかし、それを変えたのは他ならぬモモンガさん自身だ。例え遊び心でそうしたのだとしても、アルベドは生きていて、心を持っている。
「責任、取るべきなんじゃない? あれだけ想ってくれているんだぜ。今の自分が虚像だと思ってるのかもしれないけど、ここはもう現実なんだ」
僕は思うところを正直に話した。モモンガさんはその言葉に考え込む様子を見せた。
「少しでもその気があるなら、これを使ってみない?」
アイテム『D4U』を差し出す。そう、ついに実験が完了したのだ。雑魚アンデッドやデミウルゴスの牧場を使い、何度も安全性を確認した上で完成させたものだった。
「は、はあ……スライム? ですか。三吉くんみたいなものかな……」
不安げに受け取るモモンガさんに、僕はすかさず
一日に一回しか使えない僕の
元々は敵NPCを裏切らせるために使っていたが、実験の中でスキルを調整し、『失うもの』と『得るもの』を変えられることに気付いた。
今回、モモンガさんには骨の体の完全性を失い、男性器を得るという効果を与えたのだ。
「なっ!? う、うぉぉおおおお!!」
光に包まれながらモモンガさんが叫ぶ。すると、その声を聞きつけたアルベドが扉を蹴破って現れた。
「モモンガ様!? 何か異変でも!?」
彼女は一瞬こちらを睨んだようだが、僕は軽く手を振って気にしないことにした。
やがて発光が収まり、モモンガさんの体に異変が起きたのがわかった。普段彼が着ているローブの股間付近が、明らかに膨らんでいる。
これにはアルベドも気付いたのだろう。
「モモンガ様! ご無礼をお許し下さい!」
好色に染まったような表情で言いながら、彼に駆け寄ってローブを脱がしかかるアルベド。
だが、モモンガさんも必死に抵抗していた。
「うぉっ! や、やめるのだ!」
彼の声が上がるが、戦士職であるアルベドの力を振り解くのは難しいようだ。
そんな二人のやり取りを横目に、僕は静かに立ち去ることにした。
「ふっ……後はお若い二人だけで、ってね」
扉を閉めた向こうから、何やら嬌声が聞こえてきた。
こうして『ナザリック♥ラブラブ大作戦』は無事に成功した。
* * *
後日、アルベドが僕の部屋を訪れた。どことなくツヤツヤとした顔の彼女は、席に着くと改まった様子で感謝の言葉を述べた。
「この度は、お時間を頂けたこと、感謝いたします」
彼女は例の計画がうまくいき、遂にモモンガさんと結ばれたことに対する感謝を告げたかったらしい。しかし、それだけではなく、別の重要な話があるようだった。
「無礼を承知で申し上げますと、セイタン様のことをどこか疑っておりました。他の方々のようにお去りになるのではないかと、裏切りを恐れておりました」
アルベドは視線を外しながら、ぽつりぽつりと話す。僕はそれを無言で受け止めた。彼女の疑念を抱かせた自覚が僕にはあった。どれほどの言葉を尽くしても、彼女からすれば言い訳にしかならないだろう。
「しかし、あなた様は戻られて以来、ナザリック、いいえ、モモンガ様のために尽力されておられます。先日のわたくしの無礼な出しゃばりに対し、お怒りになられたのもモモンガ様のため。そして、先日の件も──」
アルベドは顔を上げ、僕を真っ直ぐに見つめた。
「あのアイテムは、モモンガ様の孤独を癒そうと開発されたものだったのですね……それを知らず、わたくしはただ貪ってばかりで……何と恥知らずだったのでしょう」
彼女の言葉には重い懺悔の色が滲んでいた。僕に謝罪し、これまでの罪を告白するような口調だ。
「数々のご無礼、不快に思われたのなら、この首をお刎ね下さい。それが叶わぬのであれば、改めてわたくしの忠誠をお受け取り頂けませんでしょうか?」
覚悟を決めてこの場に臨んでいるのだろう。その瞳はわずかに揺れており、彼女の言葉の重みを物語っていた。後ろに控えていたアジーからは怒気が昇る。彼女はどこまでも僕に忠誠を誓う存在だ。その非礼を詫びる程度では納得がいかないのかもしれない。
しかし、僕は静かに口を開いた。
「いいよ。君の忠誠を受け取ろうじゃあないか。君がモモンガさんと契りを交わす機会を得たのは、君が彼を支え続けたからだ。女としての役割を果たそうとしたからだ」
鷹揚に応えながら、彼女が忠誠を示してきた事実を言葉にして伝えた。
「ありがとうございますっ! 重ねて感謝申し上げます!」
アルベドは感極まったように何度も頭を下げ、感謝の意を述べた。話が終わると、彼女は退室していく。その去り際、アジーが冷然とした声で話しかけた。
「アルベド……我が主を疑ったこと、決して許しはしません。しかし、セイタン様はお許しになられました。今後は、より一層の忠誠をもってお仕えなさい」
アジーは無表情だったが、その声には怒気を抑え込んでいるような硬さがあった。
そして、僕は最後に軽く告げた。
「モモンガさんを裏切ったら──死ぬよりひどい目に遭ってもらうからね」
その一言で、部屋には静寂が戻った。
* * *
そう言えば、結局のところ僕のアドバイスは無意味に終わった。誘い受けをするまでもなく、アルベドは能動的にモモンガさんの貞操を奪い去ってしまったのだから。
「まぁ、結果が良ければそれでいいか」
あれから、モモンガさんとアルベドは二人だけで過ごすことが多くなった。朝昼晩を問わず、アンデッドの体力も相まってお盛んな様子だ。それ自体は全く構わないし、むしろ望んだことだったのだが、配下たちにとっては少々困った事態になっているらしい。
ぶっちゃけ、執務が滞っている。
モモンガさんの邪魔をしてはいけないと必死にフォローに回っているようだが、彼本人の承認が必要な案件が山積みで、それが進まず配下たちは右往左往しているらしい。
そして、アルベドが疲れ果てるまで休憩時間は訪れず、その短い休憩時間に執務をこなしているとか。
そんな日々がしばらく続いたが、ついにシャルティアが我慢ならないと突撃した。慌てたモモンガさんがシャルティアを制止しようとしたものの、アルベドによって止められ、その場で話し合いが始まる。だが、なぜか話し合いの結果、シャルティアも閨を共にすることになってしまったのだ。
その気になれば逃げられるはずなのに、そうしないということは、彼も楽しんでいるのだろう。肌を重ねるというのは、一種のコミュニケーションだ。まぁ彼に肌はないのだが。
これで、僕以外に本音を語れる相手がいない彼の孤独が、少しでも癒されていると良いのだが。
そして久々に会ったモモンガさんは、少しばかり様子が変わっていた。
「セイタンさん……やってくれましたね……」
どことなく怒りを滲ませた口調だ。
「えー、いいじゃん。美人二人を抱けたんだろう? しかも二人とも心から君を慕っている」
「性欲が収まらなくて大変だったんですよ! セイタンさんの
なんだかんだで楽しんでいたくせに。
しかし、どことなくスッキリしたような、気持ちが軽くなった雰囲気を感じる。
「スッキリはしましたけど……なんか違うスッキリというか……」
ゴニョゴニョと呟く彼に、僕は今後の話をした。スレイン法国という敵をどうやって滅ぼすか、まだ具体的な目処は立っていないが、時が来たら正妃を迎えるのも良いのではないかと提案した。正妃はアルベド、側室はシャルティアだ。
しばし考えた後、彼は静かに頷いた。
「そうですね……正直、やってくれたなとは思いましたけど……責任は取ろうと思います」
「うんうん、いいね。僕も鼻が高いけど、執務はちゃんとやってくれよ?」
「誰のせいだと思ってるんですか!」
怒るモモンガさんを見て笑いながら、僕は彼に別れを告げた。
ナザリックは良い方向に進んでいる。僕の望んだ通りだ。
多少のイレギュラーはあったが、欲しいものは次々と手に入っている。
欲を言えば、もう少し人間で遊びたい。
蜥蜴は興味の対象外だった。いじめても心が動かない。
クレマンティーヌも調整が完了したし、冒険者として連れ回すのも良いかもしれない。
『蒼の薔薇』というチームも気になる。何でも大層立派な女性達らしい。スレイン法国を滅ぼしたいのに上手く動けないストレスを、彼女達にぶつけたい。
下卑た思いを抑えきれない自分に苦笑する。
「いつからこんなにワガママになったのだろうね。優先順位があべこべだ」
欲望に流されてばかりでは、目標から遠ざかるかもしれない。
しかし、残虐な悪の化身こそが今の僕だ。悪とは己の都合のままに他者を踏みにじるもの。
少し遠回りにはなるかもしれないが、もう少しだけ手を伸ばしてみよう。
ひとまず、この溢れかえる衝動をアジーとクレマンティーヌにぶつけることにした。
案外、僕もモモンガさんにあてられていたのかもしれない。
出迎えに現れた二人を突き倒し、牙を立てる。
そして、獣は贄と踊り狂う夜を迎えた。
ちょっとスレイン法国にすぐに行くのは難しいなって判断しました。16巻時点と違って色んな情報が足りてないからですね。いくらモモンガがブチギレてても、いきなりカチコミはしないかなって思いました。
ほんとはすぐに向かわせたい……絶死ちゃん……