※この作品はR-18です。

Over World:愛欲楽土   作:ぬっ

8 / 10
(前回までのあらすじ)
蜥蜴人の集落を征服し支配下に置いたナザリックは、スレイン法国打倒のため支配を広げていく。
その中で、モモンガとアルベド、シャルティアが結ばれた。


007_日常

 ある昼のこと、僕はエ・ランテルに足を運んでいた。

 

 あまり冒険者としての仕事をサボるわけにはいかないし、スレイン法国の件もある。

 既にアダマンタイト級冒険者として一定の名声は得ていたが、これをさらに利用する必要があった。エ・ランテルがそうであるように、王都でも僕達の力を欲しがる人間はいるだろう。

 

 とはいえ、拠点はあくまでエ・ランテルだ。名声を得るには実直さが必要であり、簡単に拠点を変えてしまえば金目当ての卑しい人間だと見られるかもしれない。それは避けなければならない。

 

 もっとも、実際に僕達は金が目的なのだが。

 

 モモンガさんからも「早く稼いでこい」と急かされている。僕自身もそれを感じているが、セバスたちは貴族を装い、あちこちで大金を浪費している。わざとそうしているのだから仕方がないが、そのせいで僕まで「食事禁止」の指輪をつけられる羽目になった。これが非常に腹立たしい。モモンガさんでなければ、とっくに殺していたかもしれない。

 

 この怒りを晴らすため、モンスターたちに八つ当たりすることにした。いつもより多めに討伐依頼を受け、狩りまくっている。本当はすべての依頼を引き受けたいところだが、名声のためにも他の冒険者の仕事を奪いすぎてはいけない。

 

 討伐を終えた僕達は、アジーやクレマンティーヌと共にエ・ランテルの城門へと向かっていた。

 

 城塞都市であるエ・ランテルは国境に位置し、物流の要所となっているため、多くの人間が行き交う。中に入るには検閲があり、少なからず時間を要する。

 しかし、僕たちはアダマンタイト級冒険者だ。検閲も顔パスで済むし、そもそも並ぶ必要もない。

 

 待ちぼうけを食らう一般の人々を追い抜きながら進む中、「暁光」の名前が囁かれるのが聞こえる。この注目にもさすがに慣れてきたが、チーム名だけでなく僕たちの容姿についてもさまざまな声が飛んでくる。

 

 アジーは以前からその美しい外見で注目を浴びていたが、最近では僕まで「可愛い」だの「美しい」だのと言われるようになった。たしかに、ゲーム時代に工夫したこの顔は美形だ。

 しかし、「かっこいい」ではなく「可愛い」と言われるのは何とも言えない気分だ。それも妙齢の女性達からの声が多い。彼女たちの視線にはどこか生々しさがあり、時折ギラついているのが分かる。

 

 最初に冒険者組合の受付嬢に対して可愛らしくぶりっ子をした自覚はあるが、それが原因でこうなったのだろうか。冒険の高揚感に浮かれてテンションが上がった結果だったのだが、以来、受付嬢からの過剰な身体的接触(ボディタッチ)を受けるようになってしまった。

 

 街の人々まで僕をそういう目で見てくるとは思いもしなかったが、直接的な被害がないので大した問題ではない。僕の種族が美形として以上の魅力を放っているのかもしれない。

 

 ちなみにクレマンティーヌは、以前とは違う姿をしている。今はシスターのような格好をしており、戦士職に相応しくスカートにはスリットが入っていて、機動性を損なわない作りだ。

 度重なる凌辱の影響か、髪色は白に近いホワイトブロンドとなり、顔には常に微笑みが浮かんでいる。性根はさらに歪み、狂気の中に忠誠心だけを残している。

 今回の討伐でも、彼女は嗤いながら敵を打ち倒していた。

 

 彼女を外に出したのは、追っ手を釣るためだ。彼女が苦戦するどころか、敵わないほどの相手が追ってくるらしいが、それで構わない。その相手を捕らえ、情報を抜き取ることこそが狙いなのだから。

 

 

 

 巨大な門の前に到着した頃、そこにはカルネ村のエンリがいた。どうやら検問所で詰問を受けているらしい。

 

「どうもー。エンリさん。どうされました?」

 

 僕が声をかけると、兵士たちがざわめき、エンリは驚いたような表情で僕を見た。その後、僕の正体に気づいたようだが、僕が彼女の名前を知っていることに疑問を抱いたようで、その理由を尋ねてきた。

 

 しまった。僕は彼女のことを一方的に知っているだけで、顔を合わせたことはあっても、きちんと挨拶を交わしたことはなかった。

 

「あぁ、いや。ンフィーレアさんから聞きまして。困っているようなので声をかけた次第です」

 

 そう答えると、エンリは納得したようで、すぐに検問所から解放された。僕のアダマンタイト級冒険者としての立場が役立ったらしい。

 その後、カルネ村にいるはずの彼女がなぜここにいるのかを尋ねてみる。話を聞くと、どうやらカルネ村に危機が迫っているとのことだった。

 

 はて、そんな話は聞いていない。もしかしたらモモンガさんが何か知っているのかもしれないが、あの村には僕が契約で縛りポーションを開発させているバレアレ一家がいるし、護衛としてルプスレギナも配置しているはずだ。もし何か異変があれば、僕にも連絡が入るはずなのだが。

 

 冒険者組合までエンリと同行し、詳しい話を聞いた後、受付嬢に「エンリさんをよろしく」と頼み、依頼の報告を済ませた。

 

 その後、場を離れ、モモンガさんに伝言(メッセージ)を送って話を聞いてみることにした。

 

『モモンガさーん、トブの大森林で異変が起こってるらしいんだけど、何か知ってる?』

『え? は? そんな事聞いてないですよ』

 

 戸惑った様子のモモンガさんからも、何も聞いていないという返答が返ってくる。

 

『ルプスレギナからも報告上がってない? 今日エンリちゃんに会ったんだけど』

 

 僕がエンリから聞いた話を伝えると、彼は驚いた様子を見せた。そして、ルプスレギナに直接話を聞くと言って伝言(メッセージ)を終えた。

 

 どうやら急ぎルプスレギナを呼び出して事情を確認するらしい。一緒に僕も話を聞くべきだろう。NPCであったルプスレギナが、僕たちの命令をサボタージュするなどというのは考えにくいが、何かが起きているのは確かだ。この問題を解決するため、僕も急ぎナザリックに向かうことにした。

 

 

 結論から言えば、ルプスレギナはサボタージュしたわけではなかった。いや、したようなものではあったが。彼女はトブの大森林で起きていた出来事を「大したことではない」と独断で判断し、報告を怠っていたのだ。

 

 モモンガさんの怒りは相当に激しかった。しかし話を聞き進めていく中で、今回の問題の原因が指示の曖昧さにあったことが分かった。つまり、ルプスレギナは護衛の理由をきちんと理解しないまま、ただ仕事に当たっていただけだったのだ。

 

 ため息を吐きながら、モモンガさんは謝罪する。指示が不正確だったこと、そして彼女の性質を正しく見抜けなかったことが、今回の事態を招いた原因だと自覚したのだ。

 

「ところで、何故アジー様がポーションをお渡したことをお許しになられたのですか?」

 

 カルネ村の重要性について説明を受け、護衛の理由にようやく納得した様子のルプスレギナが、僕に質問してきた。しまった。このままでは僕がモモンガさんの計画を邪魔した馬鹿な男として見られてしまう。

 

「……あれはンフィーレアを釣るためだよ。結果を見れば分かるだろう? モモンガさんはその上で計画を練ったんだ」

 

 僕は適当にごまかしながら、モモンガさんを持ち上げる。モモンガさんは抗議の視線をこちらに向けてきたが、無視だ。こうしてさすモモしておけば、彼女たちは勝手に納得してくれる。結果的に、モモンガさんは『智謀の王』として崇められることになった。最近は『痴棒の王』だった気がするが、そんなことを彼女たちが考えるわけもない。

 

 最後に「次はない」と釘を刺し、ルプスレギナに退出を促した。扉越しに、モモンガさんを褒め称える彼女の声が聞こえたのはご愛嬌だ。馬鹿な子だが、次は同じ間違いをしないだろう。

 

 その後、モモンガさんはアウラと共にトブの大森林へ向かうことになった。問題を解決すると同時に、ついでに大森林を支配下に置くつもりらしい。

 

 

 一方で、僕は二人と別れ、一人で食堂へと向かった。

 

 依頼のため、しばらく食事から離れていた僕は、今日は山ほど食べることにした。

 クレマンティーヌやアジーは宿屋に残してきたため、一緒に食事をすることはできない。

 それが少し寂しいが、メイドたちと共に食事をすれば気が晴れるかもしれない。

 

 そこで、暇そうにしていたメイドに声をかけ、食事を共にすることにした。料理長は僕を喜ばせようと、以前褒めた時から特に気合を入れて料理を作ってくれている。そのため、量が驚くほど多いが、僕のレベル100の体なら何とか収まる。大柄な本体のサイズも影響しているのだろう。

 

 食事中、メイドたちから「人間など相手にせず、私達を相手していただけないでしょうか」という声が上がった。しかし、クレマンティーヌは僕にとってペットであり、可愛い玩具だ。一方で彼女たちはそうではない。機会があれば優しく相手してあげると伝え、話を落ち着かせた。

 

 最近、モモンガさんが性に暴走してしまったことで、ナザリックでは意識改革が進んでいる。いや、僕も自分の痴態の痕跡を隠さなかったせいか、NPC達の間で性行為への憧れが広がってしまったのだ。その影響で、こうして気軽に頼まれるようになってしまったのは困ったものだ。

 

 モモンガさんもこの事態に頭を抱えているようだが、本人もあちこちでおっ始めてしまっているため、あまり強く言えないのだろう。その度に僕をじっと睨んでくるが、少しばかり感謝が足りないと思う。

 まぁ、僕は気にしていない。欲望を抱くことは良いことだし、彼女達が本当に望むなら相手をしてもいい。だが、今はただ憧れで真似ているだけの者が多いのだ。もちろん、僕が気に入れば話は別だが。

 

 そんなこんなで楽しい食事を終え、エ・ランテルの宿屋に戻る。個室では待機していたアジーとクレマンティーヌが出迎えてくれた。

 お土産として持ち帰った食事を、伏せて待っていたクレマンティーヌに与える。

 

 ちなみに、アジーは食事が不要な存在であり、僕が食べるから付き合ってくれているだけだ。

 

「美味しいかい、クレマンティーヌ?」

「はっ、はむっ、美味しいですぅ!」

 

 床に置かれた食事を、彼女は手を使わずに口だけで食べる。犬のように舌を出して笑顔を浮かべ、僕に媚びを売っている。しかし、その目はどろりと淀んでおり、正気は感じられない。

 僕は彼女の頭を撫でながらアジーに語りかける。

 

「もはや犬なんだか猫なんだか分からないね」

「そうですね……失敗しました。いますぐどちらかに矯正したほうがよろしいでしょうか?」

「いやいや、これでいい。今の彼女は素敵だよ」

 

 いつの間にか食事を終えたクレマンティーヌは、僕の足をぺろぺろと舐め始めた。その様子を見て僕は声をかける。

 

「めっ……そんな粗相をしちゃだめですよ……」

「くぅーん……」

 

 彼女は腹を見せ、許しを請う。ますます犬のようだ。しかし、その肢体は猫科の動物のようにしなやかで、美しい曲線を描いている。そんなクレマンティーヌの胸を靴で踏みつけ、少しばかり虐めてみる。硬いはずの靴で踏まれても、彼女は痛がるどころか、次第に艶のある熱い吐息を漏らし始めた。

 

 アジーが羨ましそうにこちらを見つめていた。

 

「そういえば、立ってるの疲れちゃったな」

 

 アジーは興奮した表情で四つん這いになり、その背に僕を乗せる。そのまま僕はペットを踏み鳴らし、空いた手で従者も可愛がる。

 

 二人から歓喜の声が響き渡る中、あくる日を迎えた。

 

 

 * * *

 

 

 ナザリックにあるモモンガさんの執務室を訪れた。

 

 部屋にはモモンガさん、デミウルゴス、マーレ、コキュートス、そして部屋付きのメイドがいた。軽く挨拶をして、用意されたソファーに腰を下ろす。このソファーは元々なかったが、僕のために新調してくれたものだ。

 

 部屋ではデミウルゴスが、ンフィーレアたちに出す食事について相談しているところだった。僕も意見を求められ、話に加わる。確かにフォアグラは好みが分かれるだろう。特に子供はシンプルな料理を好む傾向がある。僕もデミウルゴスの提案に概ね同意した。どんな料理であれ、あの料理長が作るものであれば間違いなく美味しい。

 

 ンフィーレアたちをナザリックで歓待するという話には僕も大賛成だ。彼はこれまで多大な努力をしてくれたし、成果も上げている。友好的な相手なら迎え入れても構わない。それに僕個人としても、彼の存在を好ましく思っている。

 

 相談が終わり、一同は風呂場へ向かうことになった。

 先日回覧板で案内があったのだが、今日は男連中だけで風呂に入る予定が組まれていた。

 絆を深めるための催しらしい。裸の付き合いが大事だ、というのは僕自身がかつて示した考えでもある。少し古臭い気もするが、こういうのも悪くない。

 

 デミウルゴスとマーレは入浴の準備があると一旦別室へ向かった。

 

 その間、コキュートスが質問を投げかけてきた。彼は八肢刀の暗殺蟲(ナイトエッジ・アサシン)の数が減っていることを疑問に思ったらしい。

 

「モモンガさんと相談して、エ・ランテルの宿屋を監視させているんだよ」

 

 僕はそう答えた。

 アジーとクレマンティーヌの二人は言わば釣り餌だ。スレイン法国の追っ手が現れる可能性を見越し、シモベを配置しているのだ。まだ反応はないが、しばらくはこの作戦を続けるつもりだ。

 

 しばらく三人で談笑していると、アルベド、シャルティア、アウラの三人がやってきた。

 どうやら風呂に入る予定のコキュートス達に嫉妬しているらしい。アルベドとシャルティアは既にモモンガさんと風呂に入る以上の事をしているというのに、それとは別に「ずるい」と連呼している。

 

 一方でアウラは特にまずい様子だった。目には生気がなく、まるで亡者のような顔をしている。

 おそらくアルベドとシャルティアに散々自慢されたのだろう。以前アジーにも自慢されて悔しがっていたことがあったが、最近の性行為ブームも相まって、彼女が自分だけ取り残されていると感じているのは想像に難くない。

 

「アウラ、君だけが愛されていないわけじゃないよ。君には君にしか果たせない役割がある。それは知っているだろう? 君はまだ幼いんだ。焦る必要なんてない」

 

 僕は静かに諭し、彼女の頭を優しく撫でた。涙目になった彼女の表情に一瞬嗜虐心が芽生えたが、それを抑える。大事な子供たちを壊すわけにはいかない。

 

 しかし、アルベドとシャルティアは収まらず、戻ってきたデミウルゴス達と小競り合いになりそうだった。モモンガさんが一喝して場を収める。

 

「モモンガさんを怒らせるんじゃあないよ、もうっ」

 

 そう言い残し、僕達は男湯へ向かった。

 

 しかし、不意にモモンガさんの股間が反応したり、女湯で騒ぎが起きたりと、結局ゆっくりお湯に浸かることは叶わなかった。

 げんなりした様子のモモンガさんたちを見て、何だか面白くなり、僕は思わず声を上げてけたけたと笑ってしまった。

 

 こんな日も悪くない、そう思った。

 

 

 * * *

 

 

 エ・ランテルをしばし離れ、王都に遊びに行くことにした。

 

 そのことを組合長アインザックに伝えると、予想以上の勢いで引き止められた。

 あくまで遊びに行くだけだと説明しても、彼は僕の服を掴んで懇願してくる始末だ。そんなアインザックを、アジーが無理やり引き剥がし、ようやく冷静に話を聞いてもらえる状況になった。

 

 結局、幾つか条件を設けることで合意することになった。

 条件の一つは、エ・ランテルをこの国における恒久的な所属とすること。そして、王都での依頼よりもエ・ランテルでの依頼を優先することだ。

 その代わり、報酬や待遇は最高のものを約束させた。依頼人からの報酬だけではなく、組合が割増分を支払うという条件だ。

 これにより、僕たちがあくまで優位な立場であることを示した。

 

 そもそも、僕達は巡礼の途中という設定で活動している。それに冒険者というのは旅をするものだ。それを縛ろうとするのだから、彼らにはそれなりの覚悟をしてもらう必要がある。実際、エ・ランテルを拠点にすることは前から決めていたし、これまで受けられる依頼はすべて果たしている。今やここにいても特にやることがない状態だった。

 だからこそ、気分転換も兼ねて王都に行くことにしたのだが、アインザックがここまでしつこいとは思わなかった。

 

 執拗に懇願を続けるアインザックにウンザリしていると、クレマンティーヌが近づき、小声で囁いてきた。

 

「殺しましょうか? 組合長が死ねば大騒ぎになります。その様子を見るのは楽しいと思いますよ~」

 

 僕は手を振り、その提案を却下する。確かに鬱陶しいが、アインザックには利用価値がある。もし彼を殺せば、次の組合長と一から関係を築かなければならず、それは非常に面倒だ。クレマンティーヌの軽率な発言に、アジーが罰を与えた。

 

「ぴぎっ!」

 

 クレマンティーヌの体に電流が走り、彼女はその場に崩れ落ちた。あれ、そこまで強くなかったはずだが? と目を向けると、彼女は絶頂を迎えて痙攣していた。

 

 ため息を吐きながら、僕はその場を後にし、前へ進むことにした。

 

 

 




そして王国へ……。
時系列上は進んでますが、物語はあんまり進んでないので次は発展させたい……。
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