※この作品はR-18です。

まやかしの終わり 一部 二人の水輝   作:伊駒辰葉

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小さくなったままなので風呂に入ってもエロいことが出来ない!
……という、水輝の葛藤シーンでしょうか。
エロシーンは……裸ではあるのですが、それっぽいのはないです。


弱体化の兆し?

 泡立てたスポンジで佑の背中を洗いながら水輝はぼんやりと視線を余所に彷徨わせた。吉良瀬の屋敷のバスルームは各階層に二室ずつ設えられている。二人は佑の部屋に一番近いバスルームで風呂に入っていた。湯がたっぷりと張られた風呂は深さも十分にあり、大人が数人で入っても足をのんびりと伸ばせるサイズだ。

 

「ん。出来たぞ」

 

 綺麗に佑の背中を洗ってから水輝はスポンジを片手に立ち上がった。バススツールに座っていた佑が慌てて身体の向きを変えようとする。それを制して水輝は佑の前に回った。

 

 タイル張りのバスルームは湯気がこもり程よく暖まっている。水輝はスポンジを泡立てなおして佑の首から胸にかけてを丁寧に洗い始めた。

 

「水輝さん……。わたし……」

 

 掠れた声で呟いた佑の目に涙が浮かぶ。水輝はちらりと佑を見つめてから泣くなと言った。すると佑が慌てたように頷いて鼻をすする。細くしなやかな両腕を洗い、腹までをスポンジで擦ったところで水輝は顔を上げた。

 

 今の水輝の背丈は幼い子供ほどしかない。それまで立って洗っていた水輝は佑の足の間にすとんと座った。足、と声を掛けると佑が頷いて足を伸ばす。綺麗なラインを描く両足を洗ってから水輝は泡だらけのスポンジを佑に手渡した。

 

「後は自分でしてくれよな」

 

 そう言い置いて水輝は少し佑から離れてシャワーのコックを捻った。すぐに落ちてきた温かな水流に身体を突っ込む。避けようとした水流に逆らうなと小声で命令してから水輝は自分の身体を洗い始めた。

 

「水輝さん。光の標って何?」

 

 スポンジで腰周りを洗いながら佑が訊く。水輝はあー、と間延びした声を漏らして頭を振った。身体を伸ばしてボトルの頭を押してシャンプーを手のひらに受ける。

 

「あまり気にすることはない。属性を示すあだ名のようなものかな」

 

 柔らかい髪を洗いながら水輝は淡々と答えた。すると佑が手を止めて水輝を見やる。水輝は視線は感じたが無言で髪を手早く洗った。泡だらけになった頭をシャワーの水流にまた突っ込む。

 

「わたしを示すあだ名。なのね?」

 

 確かめるようにひと言ずつ区切るようにして佑が問う。水輝は髪をきっちりすすいでから水流から逃れて佑を見た。濡れた髪を後ろに手で撫で付けてからため息を吐く。涙ぐむ佑の真摯な眼差しに負けて水輝はため息混じりに告げた。

 

「佑の一面を示す名だな。全てじゃない」

 

 そう説明して水輝は傍にあったバススツールを足で寄せた。腰掛けて壁にかけられているスポンジを取る。

 

「一面……。そうか、そうなのね」

 

 自嘲気味に呟いた佑をちらりと見てから水輝は深い息を吐いた。

 

「誰でもそうだろ? おれも色んなあだ名があるが、それらはおれの一面を示す名前だし」

 

 スポンジにボディソープをつけて泡立てる。ぼんやりとした目をタイルに落としていた佑が慌てたように立ち上がって水輝に寄る。言われるままに身体を洗ってもらいながら水輝は何気なく佑を見つめた。

 

「ありがとう。水輝さん」

 

 視線が出会ったところで佑がにっこりと笑う。水輝はしばし佑を見つめてからさりげなく視線をずらした。

 

「……いや。悪いな。落ち着かせられるような言葉をかけられればいいんだが」

 

 佑の産んだ翠はすくすくと成長し、今はもう幼稚園に行くほどになった。人と比べれば段違いに早く成長している翠は龍神の一人だ。時折、唐突に姿を消しては成長して戻ってくる。時の龍神と呼ばれる翠はじきに佑の許から完全に離れるだろう。

 

 なのにおれはこのままか。水輝は少し俯いて両手を軽く握り締めた。小さな手は幼いままで少しも元には戻らない。突発的に戻ることはあっても安定しないのだ。

 

「いいえ。今は水輝さんのほうが大変だもの」

 

 慣れた手つきで水輝の身体を洗いながら佑が真面目な顔で頷く。水輝は苦笑して軽く手を伸ばした。間近にあった佑の乳首を軽く指先で弾く。すると佑は意外と大きな声を上げて慌てたように胸を腕で隠した。

 

「もう、悪い子ね」

 

 くすりと笑いを零して佑が改めて水輝の身体にスポンジを押し付ける。傍にあったから、と答えてから水輝は立ち上がった。

 

 二人で泡を流して風呂につかる。水輝は浴槽の縁の段に腰掛けて手足を大きく伸ばした。下手をすると泳げそうなほどに広い浴槽に佑と二人でのんびりと入っていると時間の流れが酷くゆっくりに感じられる。

 

「そういえば今日は翠は迎えに行かなくていいのか?」

 

 たっぷりと湯を手にすくって顔を洗ってから水輝は何気なく佑に声をかけた。翠が一時的に通っている幼稚園には送迎バスはない。いちいち誰かが送り迎えをしてやらなければならないのだ。

 

「今日は奈月さんが学校の帰りに寄ってくださるそうよ」

「そうか」

 

 それなら安心だな、と頷いて水輝は何気なく佑を見た。濡れた髪をまとめて留めている佑のうなじがまず目に入る。白いうなじから細い肩、豊かな胸までに視線を這わせてから水輝は慌てて目を逸らした。どちらにせよ、この格好では何をすることも出来ない。

 

「あの……佑」

 

 言いようのない苛立ちに近いものを感じつつ水輝はそっと呼んだ。それまでぼんやりと中空に視線を向けていた佑が笑顔で水輝を見る。そこで水輝は慌てて視線を逸らした。

 

 何を言おうとしていたのだろう。そう自問して水輝は何でもないと言葉を濁した。すると佑が不思議そうに首を傾げる。

 

「言いかけてやめるなんて、水輝さんらしくないわね」

 

 にっこり笑って佑が促す。水輝はしばらく迷ってから呟くように言った。

 

「……その……順のことなんだが」

 

 視線を逸らしたまま、水輝は佑の反応を待った。佑はしばし緊張したように顔を強張らせていたが、やがて苦笑のようなものを浮かべて静かに水輝に近づいた。水輝の目の前に座った佑が手を伸ばす。両手をつかまれたところで水輝はのろのろと佑に視線を戻した。

 

「後、何回くらい抱かれればいいのかしら?」

「いや、あの……」

 

 あくまでも真面目な顔で問われて水輝は困り顔になった。

 

「別に、佑が嫌なら、無理に抱かれなくてもいい」

 

 そう口にした途端に胸がずきんと痛む。だが水輝は素知らぬ顔をして佑の手を握り返した。水輝自身が佑に命じた筈なのに急にそんなことを言ったからだろうか。佑が驚いたような顔になる。

 

「だって必要なんでしょう? だから、わたしは……」

 

 俯いて佑が唇を噛む。水輝は慌てて首を横に振った。だがその瞬間に頭を激しい痛みが襲う。

 

「佑が嫌なら別にいい。おれは」

 

 どうしても必要な訳じゃない、と言おうとして水輝は頭を押さえた。何かが身体の中で暴れている気がする。頭や胸を次々に襲う痛みに耐えかねた水輝の身体が傾ぐ。驚いた声を上げて佑が水輝を両腕に抱きかかえた。

 

「水輝さん。嫌じゃないから、大丈夫」

 

 わたしは一面でしかないのだから、問題無い。水輝をしっかりと胸に抱えて佑がそう告げる。だが佑のその声も水輝の耳には酷く遠くに聞こえた。返事をしない水輝を訝ったのか、佑が焦った声を上げて水輝を揺する。水輝はぼんやりと目を開いて何とか言葉を紡ごうとしたが、どうしても声が出せない。呼吸が荒くなり始めた水輝を抱えて佑が慌ただしく立ち上がる。

 

 近頃、水輝は唐突に熱を出すことが多くなっている。高熱にうなされ始めた水輝を抱えて佑が慌ただしくバスルームを出る。手早く二人の身体を拭いて服を身に着けた佑がバスタオルに包んだ水輝を抱えて廊下に出る。水輝は目を閉じたまま、佑に身を預けていた。

 

 遠くで誰かが話している声が聞こえる。だがそれが誰の声か理解することも出来ず、水輝は熱に身を任せていた。頭や胸を襲っていた痛みが熱になっている気がする。意識を熱にさらされながら水輝は傍にある温もりに何となく頭を寄せた。




書く前は小さい水輝というのを想定していなくて、書いた後で爆笑した記憶があります。
この時はまだ小さいままなので色々とまずいことになってます。
というか早く戻らないとエロが出来ないからね!w
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