強制? でしょうか。
『気にしないで、きみはあれの傍にずっと居たのだから、侵食されても仕方が無い』
というかこうして無事でいてくれて良かった。ほっとしたような顔で言う立城を斜めに見上げてから水輝は微かに嗤った。まだ力の入らない身体を何とか動かして脱力した佑の腕をつかむ。水輝はそのまま佑を引きずってベッドに近づいた。ぼやけた顔をした蒼の居るベッドに佑を無造作に放り投げる。軽く身を弾ませた佑に早速、蒼の陰茎が絡みつく。
「疲れた。膝枕くらいしろ」
そう言って水輝は踵を返し、部屋の隅にあった大きなカウチに近づいた。途中で落としていた本を拾い上げ、カウチの上に寝そべる。立城は宙を泳いで静かに水輝の傍に腰を下ろした。
『あそうだ。水輝、誓約はきちんと履行しないと損だよ』
そう言って立城が力を使ってベッドの陰に転がっていた生首を拾い上げる。水輝は細い立城の腿に頭を乗せてそれを見つめた。恍惚の表情のまま事切れた槙花の首がその場からかき消える。
「誓約?」
まだ立城の身体は少し幼い。細い腿に頭を乗せて本を開きながら水輝は答えた。立城が優しく水輝の髪を撫でる。すると水輝の肌から溢れていた血は少しずつ止まった。
『食べ終わった後、彼に引き渡すって、約束していたのでしょう?』
「ああ、そんなことも言っていたか」
気のない返事をしながら水輝は血に濡れた手を舐めた。本のページには水輝の血がところどころついている。
「そろそろ頃合か。奴もどちらの言い分が正しいか判った頃だろう」
口許に嗤いを浮かべて水輝は肩を小刻みに揺らした。失神した佑の身体に絡みついた蒼の陰茎がしきりに蠢き始める。佑の身体に陰茎を擦りつける蒼の呼吸が少しずつ速くなる。
「やっ!」
小さな悲鳴を漏らして佑が身を捩る。佑の肌に直に触れた蒼の陰茎がじゅっと音を立てて灼ける。
『僕、育て方間違えたかな……』
そんな二人を眺めていた立城がぼそりと声を漏らす。水輝は喉の奥で嗤いながら肩を竦めた。
「大層な淑女じゃないか。よほど大事に育てたんだろう?」
陰茎を灼かれているというのに、蒼は恍惚の表情で身じろぎしている。陰茎の先から射出された精液が佑の身体に撒き散らされる。水輝はその光景を横目に見てから本に目を戻した。
『うん。可愛くてね。物覚えも良くて。従順でいい娘だよ』
でも、貞操観念をきっちり植付けすぎたかなあ……。ぼやくように立城が呟く。水輝は苦笑して本を開いたまま胸に乗せた。少し首を反らして立城の頭を片手に引き寄せる。軽く唇を触れさせてから水輝はベッドの方を見た。
「佑。一度しか言わないからよく聞け。大人しく蒼に抱かれろ。いいか、大人しくだ」
冷ややかな声を放ってから水輝は胸の本を取り上げた。懸命に身を捩っていた佑が泣きそうな顔をして水輝を見る。だが水輝は素知らぬ顔で本を読み続けた。
「はい……水輝さん」
嫌悪に顔を歪めつつも、佑は足を開いてガウンの裾をはだけ、蒼の陰茎を自分の股間に導いた。赤く膨れきった亀頭部分が精液に塗れたままで佑の股間の間に消える。それを横目に見てから水輝は呆れた顔をした。
「人の子でもあるまいし、厳しく育てすぎじゃないか?」
ため息混じりに呟いて水輝は上目遣いに立城を見た。優しく水輝の髪を撫でながら立城が困ったような顔をする。
『ちゃんと娘として育てたから』
使わなくて済むなら、それが一番良かったんだけど。そう続けた立城をしばしの間見つめ、水輝は本に目を移した。
「別にいいぞ? 今からでもまともな世界に戻してやるか?」
素気なく言いながら水輝は小さな字を目で追いかけた。蒼のペニスを受け入れた佑はまだ嫌悪に顔を歪めている。水音を立てて佑の膣に出入りする蒼の陰茎は悦びにうねっている。
『僕は戻るって決めたから』
にっこりと笑う立城をちらと見てから水輝は本に目を戻した。
「無理強いはしない。元々は誰も居ないところに居たんだからな」
小声で呟いた水輝の頭を立城がそっと手で押さえる。急に立城が手を止めた理由が判らず、水輝は訝りの顔をして本を胸に下ろした。
『僕は、必要ない?』
立城がじっと水輝を見下ろして言う。水輝はしばし立城と視線を絡ませてから微かに笑った。そんな訳がないだろう、と囁くように言って水輝は腕を伸ばして立城の頭を撫でた。それからゆらりとベッドに目をやる。
蒼が熱い息を吐いて腰を震わせる。その瞬間、佑の体内に力が注がれる。十分に槙花から吸い上げた力が流れていくのを水輝は目で追いかけた。一度、蒼の中にねじ込まれた槙花の力は佑が受け入れ易いように静かな流れへと加工されたのだ。
唇を噛みしめ、嫌悪に震えながらも佑が呼吸を整える。冷静に力を吸収している佑の様を見取ってから水輝は胸の本を持ち上げた。
「たっぷり吸ってやれよ。胎が精液で溢れる頃には終わる」
冷ややかな声を佑に投げかけて水輝は読書を再開した。佑は水輝の言葉に頷き、目を閉じて無心で力を受け止めようと努力をしている。幻に囚われた蒼は射精の後もしきりに陰茎を蠢かしている。よほど主のことを想っているのだろう。そうでなければこれほど深く幻に捕まるはずがない。
『ね? いい娘でしょう?』
微笑みを浮かべて言う立城に水輝は苦い顔をした。
「ああ、人形のような娘だな」
吐き捨てるように答えて水輝は鼻の頭に皺を寄せた。身じろぎをして立城の腿にしっかりと頭を乗せ直す。
『じゃあ、あの、我が侭な人形のほうが良かった?』
水輝のシャツに包まれた胸を指先でなぞりながら立城が笑う。水輝は微かに目を細めて喉の奥で嗤った。
「あれはおれの一部だ。すぐに取り返す」
だがそのためには邪魔な翠を排除しなければならない。あれが傍にいる限り、あの人形の主龍神には手を出しにくい。例え出せたとしても時を巻き戻されては無意味だ。現実として確定させるほんの刹那の間にでも、翠になら時流を操ってしまうことが可能だ。
『ちょっと、心配してたんだよ。あの娘に捕えられてしまうんじゃないかって』
杞憂だったみたいだけど。そう告げて立城がにっこりと笑う。水輝は鼻で嗤って肩を竦めた。
「おれは奴じゃない。人形を斬るのに何でためらわなきゃならないんだ」
すらりと答えて水輝は本のページをめくった。そこでふと挿絵が目に留まる。幾多の龍神が空を覆い尽くしている絵だ。思わず懐かしいな、と呟いて水輝は口許に笑みを浮かべた。
『本当に、杞憂だったみたいだね』
そう言って立城がふわりと浮かび上がる。ベッドで腿を開いて蒼を受け入れている佑を嗤って見下ろす。
『それじゃあ、また』
宙に浮かんでいた立城がかき消える。水輝は静かに本を胸に乗せて頭の後ろで手を組み合わせた。
「佑。気をやってやれ」
冷たく言ってから水輝はのろのろと身を起こした。身体のあちこちに走っていた傷はすっかり治っている。疲れた肩を手で揉み解しながら水輝はベッドで絡み合う二人をのんびりと眺めた。
「水輝……さん?」
小声で呟いて佑が閉じていた目を開ける。どうやら命令の意味が判らないらしい。水輝は呆れた顔をしてからカウチに深く寄りかかった。
「気だ。判らないか? 快感を覚えているうちに徐々に昇るだろう?」
苛々と頭をかきながら水輝はため息を吐いた。
「快感……?」
まるで判らないという顔で佑が水輝を見つめる。そんな佑の膣には蒼のペニスがひっきりなしに出入りしている。水輝は姿を消してしまった立城を内心で罵りながら頭を抱えた。
「感じていないのか?」
確かに佑から流れてくる感情に快楽は含まれておらず、あるのは蒼に対する嫌悪だけだ。そのことは判っていたが、水輝は低い声で問い掛けた。
「待って……やってみる」
必死の面持ちで頷いて佑が自分の感じているものをまとめあげ、蒼に叩きつける。その瞬間、蒼は呻きを漏らしてぐったりとその場に崩れた。佑の膣に入っていたペニスがずるりと抜け落ちる。水輝は深々とため息を吐いて力なく首を振った。
「あのっ! 水輝さん、もしかして、また、わたし、失敗した?」
泣きそうな顔をして佑が身を起こす。ベッドに伏せた蒼がごめんなさい多輝様、と呻く。そんな二人を代わる代わるに見てから水輝は額を手で押さえた。ベッドの上を蠢いていた蒼の陰茎がするすると短くなっていく。
「おれはこいつの使いどころが判らなくなってきたぞ」
そうぼやいて水輝はぐったりと肩を落とした。
佑は奇抜というか……何をするか判らないところがあるので、周りが振り回されます。