BLとか百合とかftnrとか! 色々警報です!
人外なので仕方ないです!(ぉぃ
静かな湖畔の森の影から。
煙草の先から流れる紫煙が風に揺れる。順はぼんやりと目の前に広がる湖を眺めて歌を口ずさんでいた。何度も何度も、嫌というほど見せられた夢の中だということは判っている。ここから少し先に進むと裸の龍神の多くが交尾している場面が見える筈だ。
「えーと、煙草を吸えるのは仕様ですかね?」
頭をかきながら呟いて順はちらりと隣を見やった。順の隣には白衣を着た優一郎が立っている。
「茜さん? ここ、どこなの!?」
優一郎の形をしたものがそんなことを言う。明らかに女の口調で言った優一郎を横目に見て順は肩を竦めた。どうやら中身が違っているらしい。
「なに。キミ、早速死んじゃったの? 意外と早いなあ」
がりがりと頭をかいて順は首を鳴らした。同じ優一郎の形をしていても、中身が違えばこうも印象が違うものか。そんなことを考えながらも順はここが夢の中らしいことを説明した。
「仕方ないでしょ! 必要なさそうだったんだもの」
しょんぼりとした顔で優一郎が言う。あ、そー。軽く答えて順は肩を揉み解した。湖畔に立つ二人の姿は風景より少し透けている。しっかりと足で地面の上には立っているが、どうやらここでは自分たちの方が実体ではないらしい。
「えーとねぇ。ココはどうも大昔の世界らしくてねえ」
そう言いながら順はのんびりと歩き出した。湖に向かって行く順を慌てたように優一郎が追う。どことなく優一郎が内股になっているような気がしたが、順はとりあえずはそれを無視することにした。
「大昔?」
「そ。オレたちがいる時代よりずぅっと昔、龍神が出来始めた頃のオハナシ」
背の高い葦の林を越えて順は目の前に広がる光景を指差した。一足遅れて葦の林を抜けた佑が驚いたように目を見張る。
緑色の柔らかな下草の生えた湖畔に多くの龍神たちが居る。人の形をした彼らは誰もが素っ裸で、あちこちで交わりあっている。
「……!」
声を詰まらせた優一郎の顔が真っ赤になる。恥ずかしそうに頬を包んでいやいやと首を横に振る優一郎を見て、順は何だかなあと苦笑した。中身が優一郎でないことは判るのだが、どうも仕草が女の子らしすぎて言いようのないものを感じてしまう。
「ちょおっとキミには刺激強すぎ? 何ならココで引き返したら? そもそも、リンクしてんのはオレの夢と優一郎くんの夢らしいしね。今からでもバトンタッチしたら?」
へらへらと笑いながら順は中身の交替を提案してみた。
「このくらい平気よ!」
優一郎が強い口調で言って鋭い目で順を睨む。へえへえ、と苦笑してから順は歩き出した。
やはり夢の中の世界には干渉できないらしい。近づいても誰も順を気に留める風はない。それどころか順の身体はさかんに交わる龍神たちの身体に触れることもなく突き抜けてしまう。順は咥え煙草でポケットに手を突っ込み、交わる龍神たちを無視して真っ直ぐに目的の場所に歩いた。後からついてくる優一郎が小さな悲鳴を上げながらその場にいる龍神たちを避けている。
「手当たり次第に! いやらしいったら!」
「あははは。恥ずかしそうにしてるのに、ちゃんと見るトコは見てるんだ?」
無責任に笑いながら順は肩越しに優一郎を振り返った。ここにいる彼らは決められた相手だけと交わっている訳ではない。こちらが済めばあちらの誰か、あちらが済めばまた別の誰かと相手を適当にチェンジしているのだ。
「やっぱり、わたしには絶対無理ね」
悔いるような表情をして優一郎が呟く。順はあはは、と軽く笑って振り返った。交わる龍神たちの間を抜けてくる優一郎に近づく。優一郎が驚きの声を上げる前に、順は片手を伸ばして優一郎の股間をわしづかみにした。
「なーんて、ちゃんと勃起してんじゃーん? 今度しよーね、優一郎クン」
服越しに勃起したペニスを何度か揉んでから順はひらひらと手を振った。すると優一郎が真っ赤になって右手を揮う。順は飛んで来た平手をひょいと避け、また歩き出した。
「なんで、男!?」
裏返った声で叫んだ優一郎の身体が女性のものへと変化する。現れた佑に肩越しに笑いかけてから、順は早くきなよと声をかけた。
「そりゃ、キミが勝手に優一郎くんの夢に割り込んでるからであってね」
そう解説しつつ、順は唇に咥えた煙草を指につまんだ。煙を吐いてからまた唇に煙草を戻す。味もするし、煙も出ているのだがどうも煙草が減る様子もない。現実離れしてるねぇ、と順は笑い混じりに言った。
「これって優一郎の夢なんだ」
「そ。アレが見せる相手としては最適なんじゃないかなあ。情報を提供するから何とかしろ? ま、勝手な言い分だと思うけど」
頭をかいて顔をしかめつつ順はため息を吐いた。
「別に、ここにいるのが優一郎である必要はないってことじゃないの? 俯瞰して見たほうが、情報量は多いと思うし」
そう言いながら佑が周囲を見回す。そうだよねぇ、と間延びした声で同意しつつ、順はうんざりしたため息を吐いた。
「オレもね。こーして夢の中に入った状態になったのは初めてでねー。いやもうね、多分ね、アレもヤバーって感じなんじゃないかなあ……」
ぼやきにも似た呟きを口に乗せて順は肩を落とした。実際、こんな風に夢の中に入ったのは初めてだ。これまでは勝手に色んな光景を見せられるだけで済んでいたのだ。
「ということは、この夢を見ること自体は初めてじゃないのね?」
いちいち避けることに飽きたのか、佑が小走りに駆けて順の横に並ぶ。順は咥えた煙草を揺すって頷いた。
「ん、そう。全く同一って訳じゃないけど、同じような夢は散々見たよ」
この場に集う龍神たちはやがて一人、また一人と姿を消すことになっている。幾つもの昼と夜を越え、彼らは一人ずつが世界に生まれていくのだ。
「じゃあ、面白い場所とか、知ってるのね?」
案内なさい! きっぱりと言って佑が胸を張る。順は面白いものを見つけた気分で佑を横目に見た。
「あのさあ。オンナノコはもちっと控え目なほーがもてると思うよ。ま、人の好みなんてそれぞれだけどさー」
あはは、と軽く笑って順は肩を竦めた。すると佑が少しだけ眉を寄せる。
「好きな人の前だったらちゃんとするわよ!」
そう言って佑がぷくっと頬を膨らませる。拗ねた様子が何となく愛らしくて順は佑の頭を撫でた。
「うん、ちゃんと可愛い可愛い。やっぱね、オンナノコは元気で可愛くないとね」
だがそんな佑も恐らく水輝に斬られて死んだのだろう。そう思いながら順は周囲をぐるりと見回した。力量の差はあれど、彼らは大抵が美形だ。情欲に囚われて行為に狂っていても、その光景はどことなく見目麗しく思える。
これは大昔の話ということになってます。
順はこの手の夢を散々見せられてたので実はキレてますw