「そして、同じ想いを抱く存在として妬みあい、牽制しあいながらも、夜叉同士も惹かれあっていった」
二人が同じ時に生まれなければ、互いに知り合うこともなかっただろう。そして夜叉はその性質ゆえに互いに惹かれあう。より想いを強めるために、だ。
「どうして、その話を……わたくしに」
掠れた声で桜が問う。水輝はそんな桜を見やって嗤った。
「そうだった。ごめん。釈迦に説法とはこの事だよね。それを調べてくれたのは君だもの」
くすくすと笑って立城が桜を見る。桜は力なくうなだれた。
「貴様はよくやってくれた。貴様が居なければあれは自ら消えかねなかったからな」
嗤いを浮かべて水輝は目を細めた。立城が水輝の手を取り、そっと口許に近づける。舌先で血に濡れた指先をちらりと舐められた水輝はぴくりと指を動かした。
「莢花さんって、覚えてる?」
水輝の指を舌先でくすぐりながら立城がにっこりと笑う。はっとしたように顔を上げて桜がゆらりと立ち上がる。
「君が水輝に討たれたあと、彼女も命を落したんだ」
桜はスカートを握りしめて震えている。水輝はそんな桜に嗤いを向けてから、立城の舌を指先で軽く撫でた。ちゅ、と音を立てて水輝の指を吸ってから立城が桜を見やる。
「莢花さんは、水輝を愛していた。紫翠は彼女にとって過去の存在に過ぎなかった。莢花さんが願ったのはふたつ。水輝の幸せと、そして」
「生きろ」
水輝は喉の奥で嗤って肩を揺すった。こみ上げてきたものに任せて咳き込むと、鮮血がシーツに散る。片手で胸を押さえて水輝は身を折った。だが立城に取られている手だけは動かさない。
「あれはおれに生きろと言った。他の誰にじゃなく、このおれに」
血を吐いて咳き込みながら水輝は低い声で嗤った。
「つまり、二つの相反する誓約が成立してしまったんだ」
くすくすと笑って立城が首を傾け、水輝の指に唇を押し当てる。水輝は薄く嗤って再び枕に身を持たせかけた。
「醜い嫉妬から解放され、今度こそ……」
そこまで言って水輝は口許に流れた血を舌で舐めた。
「……誰かを妬む気持ちにほとほと疲れ果てたんだろうな。見事にその感情だけがあれから消えていた」
そう言って水輝は横目に桜を見た。桜は俯いて肩を震わせている。よほど何かを堪えているのか、スカートを握る手は白くなっている。
「それに夜叉に惑わされるのはもうこりごりだったからね。彼女の想いを利用して、僕は安全な存在に作り変えたつもりだった。水輝だけを盲目的に愛する人形として。こうして夜叉はこの世から居なくなった」
渚さんの夜叉としての力は既に水輝に食われてたからね。そう続けて立城が愛しそうに目を細め、水輝の手を自分の頬にあてがう。水輝は指でそっと大事に立城の頬を撫でた。
「紫翠の想いなんて、この世には存在していなかった。水輝への想いと、単なる純度の高い紫翠の力の塊は存在していたけどね」
そう言って立城が嗤う。水輝は指先で立城の頬に血の赤い筋を引いた。その指で唇を掠めてから腕を下ろす。
「最初からないものを求めていたことを悔いているか?」
囁くように言って水輝は桜を見た。桜が俯けていた顔を上げる。桜の頬には涙が伝っている。
「水輝を護る。君の幻のお姫様は言っていたよ。その言葉の通り、彼女はあの哀れな彼を一言で消し去り、紫翠を殺した。永遠に」
「可哀想にな。心から互いを愛していたのにな」
立城の言葉に流れるように言葉を重ねて水輝は優しく囁いた。
「それとも貴様は最初からあれが幻のまほろばだと知っていたのかな?」
桜が愕然と目を見張る。その目からはとめどもなく涙が流れ落ちている。
「あと、空の主を支配しようとしたのも裏目に出たね。誓約の判定をするのは彼なのに」
真っ直ぐに桜を見つめて立城が言葉を継ぐ。
「貴様が探す紫翠龍は、もう、居ない。だが、貴様は本当に、紫翠龍を求めていたのか?」
ゆっくりと優しい声音で水輝は桜に囁きかけた。桜の瞼がぴくりと震える。
「僕を求めていたわけではないのは確かだよね。僕の帰還なんてさらさら望んでないって叫んでたものね」
立城が立ち上がりながらくすくすと笑う。間を置かずに水輝は畳み掛けた。
「お前はただ、居場所を求めていたんじゃないのか? 安らぎの、まほろばを。例えそれが幻だと判っていても」
ゆらりと腕を広げて水輝は嗤った。吐いた血が水輝の口許から首や胸、シーツに散っている。桜はしきりに瞼を震わせ、忙しなく視線を動かした。真っ白になっていた頬に少しずつ赤味が戻ってくる。
「相手は、紫翠龍でなくても、良かったんだろう?」
水輝はひと言ずつゆっくりと紡いだ。
「地上の王よ、これからあなたはどうなされるおつもりですか?」
柔らかな声で立城が問う。桜の頬はほんのりと赤く染まっている。スカートを強く握りしめていた手から少しずつ力が抜ける。
「わたくしは……ただ……寂しくて」
呟くように桜が言う。水輝は薄く嗤って首を傾げてみせた。立城が静かに水輝の身体にかかる布団を退ける。立城は水輝のシャツのボタンを一つずつ外し、ベルトを緩め、ズボンのボタンを外してジッパーを下げた。下着ごとずり下げられた水輝の下穿きの下から勃起したペニスが現れる。
「僕はお邪魔のようだね。それじゃあ失礼するよ」
桜の耳元にそう囁いて立城が微かに笑う。桜がびくん、と身を竦めて慌てたように立城を見る。
「何だ。脱がせて欲しいのか?」
喉の奥で嗤って水輝は立城を見やった。苦笑をした立城が桜のワンピースの後ろのジッパーをゆっくりと下げる。桜は頬を染めつつも抵抗しない。
「心配するな。身体だけならたっぷり愛してやるぞ」
両腕を軽く広げて水輝は嗤った。桜の肌を滑ってワンピースが床に落ちる。
「綺麗な身体だね」
立城が笑って桜のブラジャーのホックを外す。その場に立って動こうとしない桜の胸から立城は静かにブラジャーを剥がしとった。続いて桜のショーツに指を引っ掛ける。するすると腿をずり下がったショーツの股布についた細い煌きが糸を引く。
「準備は万端のようだな」
さあ、と水輝は囁いた。ふらりと歩み出した桜の足からショーツを抜き、立城が身を起こす。ごゆっくり、と微笑んだ立城が静かに部屋を出て行く。桜は自分からベッドに上がり、水輝に跨った。
おしい!w
エロシーンの前までです!w