機械なのでそう見えるだけというか……。
透は要の身体を抱いていた腕を動かし、指先で背中をなぞった。背中の感じやすく設定されている部分を指先でくすぐりながら、要の唇を唇で割り開く。要は微かな呻きを漏らし、身体を震わせた。抵抗して透の胸を押していた要の手から力が抜け、自然と透の背に回る。
舌を伸ばして要の舌を舐め回す。そうしながら透は要の背に這わせていた手を尻に滑らせた。台の上で軽く腰を浮かせた要が尻を撫でられて小さな声を漏らす。最初は頑なに動かなかった要の舌が、やがて透の愛撫にぎこちなく応え始める。
丈の短いスカートを片手で捲り上げ、腿に手を這わせる。透は要と深く口づけしつつ、要の柔らかな腿を手で撫でた。要の腿には透明なものが伝っている。透は愛液の筋を指先で辿りながら要に少しずつ体重を乗せた。傾いた要の身体が自然に台に横たわる。
台に倒れた要を追いかける格好で台によじ登り、透は唇を離した。ドレスの肩紐を解いて要の乳房を剥き出しにする。
「んっ……ずるい、ですわ」
切なそうに顔を歪めた要が甘さの含まれた声で囁く。
「何がだ?」
問いかけながら透は要の乳房に手を乗せた。要が小さな声を上げて身を震わせる。
「傷心につけ込むなんて」
震える声で囁いて要が透の頬にそっと手をあてがう。
「ずるい男は嫌いか?」
そう言って透は嗤った。優しく要の乳房を弄る。すると要は愛らしい声を上げて透の首に腕を回した。
「……負けましたわ」
聞こえるか聞こえないかの小声で要が呟く。誘われるように腕に引かれ、透は要の胸元に唇を落とした。
「いや、おまえは勝ってる。先に惚れたのは俺だからな」
透は要の機械仕掛けの乳首を注意深く口に含んだ。小さな悲鳴を上げた要が苦笑をしながら透の頭を優しく両手に包む。
「もう……。そういうところが……ずる……あん!」
甘えた声を上げて要が仰け反る。
「考え直すなら、今のうちだぞ。おまえは人形で、俺は製作者だ。その気になれば、俺はおまえを好きに操る事ができる」
顔を上げて透は要を間近に見つめながらそう告げた。すると要が少し眉を寄せて考えるような顔をする。やがて要は困ったような顔で笑った。
「これまで、わたくしにそんなことを言う男は一人もいませんでしたわ」
微笑みを浮かべて言ってから要は首を傾げてみせた。優一郎様ですら、と要が呟くのを聞いて透はぴくりと眉を上げた。
「俺はあいつみたいに優しくないぞ。おまえが下僕やらペットやらを従える事を許すつもりは無い」
「あら。それは困りましたわね」
そう答えてから要は微笑みを消して目を伏せた。それまで相当に気を張っていたのか、顔を歪めた要の目にはすぐに涙が溜まり、頬を伝った。透は目を見張ってそんな要を見つめた。
「わたくし、白銀に、申し訳ないことをしましたわ」
涙に揺れる声で要が言う。やがて要は目許を手で覆って声を殺して泣きじゃくり始めた。
「傷心の所を悪いが、言っていいか?」
透の問いかけに要が無言で頷く。
「あいつは、おまえを見ていなかった。あいつが見ていたのは風の貴婦人の幻だ」
「判ってますわよ! そんなこと!」
泣きながら声を張った要が手を顔から退けて透を睨む。だがすぐに要は小声でごめんなさい、と詫びた。
「優一郎はおまえを信頼している。だが、それは恋愛感情ではない」
透は静かにそう指摘した。要が顔を歪めて頷く。泣きながら懸命に声を殺す要を見つめ、透は深く息を吐いた。
「好きに、なってくださったから、好きに、なるのではないでしょう?」
小声で途切れがちに要が言葉を紡ぐ。要はとめどなく零れる涙を何度も指で拭った。
「一方通行の想いは歪みを生む。特におまえは人形だからな。いつか、破綻していただろう」
そう告げる透の脳裏には義父、総一郎と義母である由梨佳の関係が思い浮かんでいた。ある時を境にしてあの家庭は壊れた。だがそれは当り前だ。元々、あそこに幸せな家庭などなかった。あったのはただ、脆い幻の家族という名の由梨佳の夢だ。
要が微かに笑う。
「破綻が怖くて恋愛なんて出来ませんわ」
そう答えて要はそっと透の胸を押し戻した。押されるままに身を起こした透から目を背け、要はその場に身を起こした。肩紐の解けたドレスを手で胸まで引き上げて呟くように言う。
「……みっともないところを見せてしまいましたわ。ごめんなさい」
要は俯いてドレスの肩紐を結わえ始めた。
「謝るな。俺のほうこそ、酷いことを言った。だが」
「あなたこそ謝らなくて結構ですわ」
さらりと言って要が反対側のドレスの肩紐を結わえる。めくれていたスカートを戻して要は手で顔を拭った。漸く頭を上げた要がにっこりと透に笑みかける。
「人形は、ヒューマノイドは片恋に耐えられるようには出来ていない。俺は、おまえが壊れる姿を見たくない」
「あら。わたくし、あなたを信用してはいませんもの。そういう言葉は、本当に好きな女性におっしゃってくださいませ」
笑みを崩さず言ってから要は言葉を継いだ。
「ごめんなさい。本当に気分が優れないんですの。一人にしていただける?」
「ああ」
頷いて透は台を降りた。そこで両腕を伸ばして軽々と要を抱え上げる。驚いた顔をした要を抱えたまま、透は歩き出した。
「だが、部屋までは送らせろ」
「別に一人で歩けますわ」
眉を寄せて要が言う。透は静かに部屋を出て透明な床を歩いた。
「快感で、腰のバランサーの感覚が麻痺しているはずだ。三十分は歩けない」
各部屋はこの透明な床で出来た廊下に面している。広々とした研究施設にはいつの間にか煌々と明かりが灯っている。透明な壁から覗く空はもう暗い。
「あら、そうですの?」
不思議そうな顔をして言ってから要が身体の力を抜く。透は廊下をゆっくりと進んで要にあてがわれた部屋のドアを開けた。自動的に明かりの灯った部屋の奥に進んでベッドに静かに要を下ろす。
「では要、おやすみ」
透は要に軽くキスをして背を向けた。歩き出そうとした透の背に要の涼しい声が届く。
「割と諦めの早い男ですわね。……これだから女心の判らない男は」
呆れたようにため息を吐いて要が肩を竦める。透はゆらりと肩越しに要を振り返った。両手を軽く開き、やれやれというように要が首を横に振っている。
「俺はずるい男だって、言わなかったか?」
そう言って透は振り返って嗤った。あら、そうでしたかしら。さらっと答えて要がほほほ、と笑う。
「わたくし、自分に都合の悪いことはコンマ一秒で忘れる主義ですの」
ベッドに腰掛けた格好のまま、要が天井を向いて高笑いをする。
「スカートをたくしあげて、脚を開け」
「その前に」
命令をした透にびしりと手のひらを突き出して要が言う。
「わたくしが傅いている彼らとまぐわらない代わりに、あなたはわたくしにどんな約束を下さいますの?」
首を傾げて要がいつもの高慢な顔で言う。ほんの少しだけ涙の跡が頬に残っていたが、今の要にはさっきまでの悲しみは感じられない。
「俺のモノにしてやる」
要を真っ直ぐに見つめて透は言った。他の女を切るとは言いませんのね、と少し不満そうに呟いてから要が片目を閉じて透を伺う。
「それじゃあ、俺の一番にしてやる。このあたりでどうだ?」
「あら。悪くないですわね」
悪戯っぽい笑みを浮かべてから要はスカートを自分からたくし上げた。膝を軽く折り曲げて腿を左右に開く。要の股間を目の当たりにした透は慌てた声を上げた。
「壊れてるじゃねーか!」
要の秘部はオーバーヒートして小さな火花を散らしてショートしていた。要があら、と呟いて自分の股間を覗きこむ。それから要はにっこりと笑って言った。
「ちょっと意地を張りすぎましたわ」
ぐらりと要の身体が傾ぐ。透は慌てて駆け寄ってぐったりと脱力した要の身体を抱きとめた。
「すぐに直してやる、と、その前にメカマンコのセンサー切らないとな」
スゲー痛いだろうに。そう続けて透は要の顔を覗き込んだ。要は透に身体を預けて失神している。透は苦笑して要の額に軽く口づけた。
要、陥落!w