※この作品はR-18です。

まやかしの終わり 一部 二人の水輝   作:伊駒辰葉

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真面目な話だったはずなのに!w
エロシーンはありません。


魔法と3P?w 1

 色んなことがあった。水輝は記憶を取り戻した後も奈月を変わらず傍に置いた。そして奈月は戦いに巻き込まれ、水輝は奈月を取り戻すために多くのハンターを蹴散らした。だが水輝は罠に嵌って大きなダメージを負った。

 

 空間の狭間に飲まれた水輝の青い宝珠だけが奈月に残された。奈月も水輝と共に宝珠と眠りについた。長い、長い眠りの中で水輝は少しずつ回復し、やがて目覚めた。そして奈月も少し遅れて目覚めることになった。

 

 だが一度、奈月をさらわれた水輝は戦いに巻き込むまいとしてか、奈月を遠ざけるようになった。その頃だ。奈月は一人の魔法士から魔法を教えてもらうことになった。その陰には翠の姿があった。

 

「魔法は」

 

 ぼんやりと以前のことを思い起こしていた奈月は翠の声にはっと我に返った。翠はいつの間にかまた奈月を真っ直ぐに見つめている。

 

「言葉を用いて力を引き出す術を魔法と言う」

 

 感情のこもらない淡々とした声で翠が話しているのを奈月はじっと見つめ返した。翠の目は揺らぐ事なく真っ直ぐに奈月を捉えている。

 

「はい。ラスティさんにきっちり教えていただきましたから」

 

 ラスティさんたち、元気でしょうか? そう続けた奈月を見つめて翠は事もなげに言った。

 

「息災というところだな」

 

 その答えを聞いて奈月は僅かに表情を緩めた。再びボウルの中身を混ぜ始めた奈月を見つめ、翠が言葉を継ぐ。

 

「元々、魔法というものは力の交わりだった」

 

 時を渡る翠は奈月の知らないこともたくさん知っているのだろう。気軽に考えて奈月は合鎚を打った。きっと翠は色んな伝承を多く知っているのだ。

 

「交わらせるだけでなく、布を織ったり糸を縒るように、力を編むこともできますよね?」

「……それが出来るのは世界広しと言えど、多分お前だけだと思うが、この際その話は脇に退けておくとして」

 

 珍しく早めな口調で翠が言う。どことなく声が低く聞こえたのは気のせいだろうか。不思議に思って首を傾げた奈月を見つめ、翠が咳払いをする。

 

「言葉により力との交わりを行う、というのが魔法の本質だ。魔法は大元は娼婦や男娼の使う、基本的な術だった」

 

 再び元の淡々とした口調に戻って翠が言う。奈月は首を傾げてからしばし考えを巡らせた。

 

「えっと、その、もしかして、もともとの魔法の交わりというのは、あの!」

 

 急に頭の中に入ってきた情報が整理され、奈月は真っ赤になった。そうだ、と事もなげに翠が頷く。焦った奈月の手からボウルが音を立てて台の上に転がる。幸い、落下したボウルの中身は零れなかったが、奈月は落としたことにも気付かず頬を両手で包んだ。

 

「龍神の交わりとは本来、力と力の交わりあいのことを示す。魔法は交わりの一つの方法だった」

 

 すらすらと語って翠が片手を伸ばしてボウルの動きを止める。がらがらと音を立てて回っていたボウルがぴたりと止まり、調理場が静まり返る。

 

「えっとじゃあ、あの……」

 

 これまでに使った様々な魔法のことを思い出しながら奈月は赤い顔を押さえた。何も知らなかったとは言え、色んな力を随分と混ぜたような気がする。

 

「気にするな。交わりを与えられた者は多少の快楽を得るだけだ」

 

 子供に似合わない言い回しで翠がきっぱりと言う。奈月は恥ずかしさに赤面して俯いた。

 

「でも、だから、混ざらない力があったりしたんですね」

 

 ふと、気付いて奈月は思い切って顔を上げて言った。そうだ、と頷いた翠が椅子の上に膝で立ってボウルを奈月に方に押す。そこで漸くボウルを落としてしまっていたことに気付いた奈月は慌ててそれを取り上げた。

 

「本来は魔法を使うものと、力を引き出される者との交わりだからな。そこに別の力を交わらせる必要はない訳だが」

 

 淡々と語る翠の言葉に納得しつつ頷いてから奈月ははっと息を飲んだ。それは要するに二つ以上の力を魔法で引き出した場合、奈月と引き出された力の複数が交わりあうという意味なのではないだろうか。そう思い至った奈月の手からまたボウルが滑る。だが今度は翠が身を乗り出して落ちそうになったボウルを支えた。

 

「最近は金と青が相性が良かったから、多用してたんですけど、それって、あの、いえ」

 

 真っ赤な顔でうろたえながら言う奈月に翠が頷く。

 

「3Pだな」

 

 情け容赦なく翠が言う。奈月は真っ赤になって慌てて翠に首を振ってみせた。だが翠は淡々と告げる。

 

「魔法の本来の特性を理解しているものは今では少なくなってしまった。かつて、魔法を別の用途に使おうとする輩が出たのも原因だろうが」

 

 そう言ってから翠は乗り出していた身体を戻し、台に腕をついて顎をしゃくった。奈月は慌ててボウルの中身を綺麗に混ぜ合わせてからフライパンを取り出した。コンロにかけて暖めてから油を敷いてパンケーキの種を流す。

 

「もしかして、わたしってふしだらなんでしょうか?」

「上手いと思うが」

 

 泣きそうな顔で言った奈月に翠があっさりと言う。どういう意味かを問うのが怖くて奈月は唇を引き結んだ。顔の火照りがどうしてもおさまらない。奈月は何とか平静を保とうと真剣な顔でパンケーキを焼いた。表面にぷつぷつと浮いた泡が消え始めたところでフライ返しで引っくり返す。次々に焼けたパンケーキを皿に盛りつけ始めたところで翠がぼそりと言う。




不自然ですがここでエピタイを変えました。
翠が楽しそうです。
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