※この作品はR-18です。

まやかしの終わり 一部 二人の水輝   作:伊駒辰葉

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白銀視点で続きます。
エロシーンはありません。


要(の機体)はちょっとトラブってるかも知んない 2

「つっ、つけあがるとはどういうことですの!? 白銀はペットなのですから、わたくしの態度は間違っていませんわ!」

 

 二人につい気を取られていた白銀は慌てて要の言葉に頷いてみせた。

 

「私はお二方の関係性に文句をつけるつもりはありません。ペットと主人という関係だというのならそれでいいでしょう。ですけど」

 

 壁際に置いてある灰皿代わりの空き缶を取りに行った由梨佳が、そう言いながら元の位置に腰掛ける。多輝は差し出された空き缶を受け取ってありがと、と由梨佳に言う。白銀はぼんやりとそんな二人の様子を見つめていた。

 

「客観的に見て、ここ二週間くらいの要さんの行動は以前に比べて余りにも余裕が無く、ペットの主人としても狭量に見えます」

 

 淡々と告げた由梨佳の言葉に白銀はぎょっとして肩を竦めた。そこではっと気付く。いつの間にか要は垂らした両腕を小刻みに震わせている。手はかたく握られていて、今にも何かを殴りにかかりそうにも見える。だがそれを見た白銀は泣きそうだと心の中で呟いた。

 

「冗談ではありませんわ! 今も以前もわたくしの態度には変わりありません!」

 

 そうよね、白銀! 叫ぶようにして言いながら要がぎらりと白銀を睨む。白銀は反射的に何度か頷いた。するとのんびりと煙草をくゆらせていた多輝が鼻で笑う。

 

「どーだかなー。お前みてえな女に限って、ベッドの上じゃ攻められまくってあんあん言ってるだけなんだろうけどなあ」

 

 嫌な笑いを浮かべて多輝が煙草の先で要を示す。要は慌てた声を上げて言葉に詰まってしまった。白銀は半ば反射的に多輝の言葉を否定した。

 

「そんなことない! 要はあの時でも強引で!」

「白銀!」

 

 真っ赤な顔をした要がもの凄い声量で叱りつける。白銀は慌てて腕で頭を庇った。だが要は何故か白銀を殴ろうとしない。

 

「要さん、失礼かもしれませんけど、最新のメンタルチェックの値を見せていただけますか? 問題が無いと仰るなら、私に見せても大丈夫でしょう?」

 

 恐る恐る腕を下ろして白銀は隣に立つ要を見上げた。要は怒りに燃える目で由梨佳を見つめている。

 

「何故、わたくしがあなたにそんなものを見せなければなりませんの? あなた、多輝の玩具なのでしょう?」

 

 腕組みをして鼻で笑った要を今度は多輝が剣呑な顔で睨む。まずい、と胸の中で呟いて白銀は慌てて要の服の裾を引いた。今のは幾らなんでも、と白銀が呟くのとほぼ同時に多輝がゆらりとその場に立ち上がる。

 

「今なんつった。もっかい言ってみろ」

 

 咥え煙草で間近に要を睨んだ多輝が低い声で言う。すると要は負けじと声を張った。

 

「何度でも言いますわよっ! そこの機体はあなたの玩具だろう、と言ったのです!」

 

 要がソファに腰掛けた由梨佳を指差す。いい度胸だ、と唇を歪めた多輝が唐突に腕を伸ばす。白銀は呆然と要の身体が傾くのを見上げていた。多輝にブラウスをつかまれた要がソファに放り出される。

 

「あっ、あの、多輝さん!」

 

 白銀は慌てて立ち上がって多輝を止めようとした。ソファに転がされた要が唇を噛んで身を起こそうとする。だがそれより早く、多輝が足で要の肩を踏んづけた。

 

「おれは今日は特に機嫌がわりぃんだよ。てめえに邪魔されるわ、水輝に邪魔されるわ、踏んだり蹴ったりでなあ!」

 

 せりふの最後にかけて声を張り上げて多輝が右手を自分の胸に一気に突き入れる。白銀が慌てて伸ばした手は多輝の放った光に空しく弾かれた。多輝の身体の輪郭がゆっくりと溶け、代わりに青年が現れる。性別は違うが、これは紛れもなく多輝だ。龍神である多輝はこうして性別を自在に変えることが可能なのだ。

 

「何をするんですの!? 離しなさい!」

「由梨佳をこき下ろしたツケはきっちりてめえで払ってもらうぞ!」

 

 そう叫んで多輝が要に圧し掛かる。白銀は真っ青になって多輝を押さえた。すんでのところで羽交い絞めにした多輝が拘束を解こうともがく。

 

「多輝くん!」

 

 素早く立ち上がった由梨佳が多輝に近づき、いきなり平手を見舞う。頬を打たれた多輝は嘘のように大人しくなった。暴れるのをやめた多輝から恐る恐る手を離し、白銀は急いで要をソファから起こした。

 

「由梨佳? 何で止めんだよ。こいつ、お前を馬鹿にしたんだぞ?」

 

 打たれた頬を撫でながら多輝が不服そうに言う。すると要がふん、と笑って肩を竦めた。

 

「わたくしを踏みつけにしたのですもの。当然ですわ」

「何だとこら。犯されたいのか、てめえ」

 

 一度は大人しくなっていた多輝が再び剣呑な目で要を睨む。白銀は慌てて要と多輝の間に割って入った。

 

「馬鹿にされてなんかいないわ。私が多輝くんの玩具なのは事実だもの。あなたまで冷静さを失わないで」

「玩具じゃねえ! 由梨佳はおれの女だ!」

 

 まあまあ、と多輝を宥めようとしていた白銀はそれを聞いて浮かべていた愛想笑いを引っ込めた。多輝は真剣な顔で由梨佳を見つめている。白銀は多輝に伸ばしかけていた手を下ろし、恐々と要を見た。要はじっと黙って唇を引き結んでいる。




多輝と白銀では会話が……w
由梨佳が頑張って中に入ってますけども、難しいと思います(汗)
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