水輝がショタ的な形になるのは、前の話からの仕様です。
エロシーンはありません。
「時に要。何だ、白銀の持ってるのは」
しかめ面をして多輝は杖で白銀の抱える機械を示した。よほど重いのか、白銀は機械を抱えて腰を曲げている。おほほ、と毎度ながらの高笑いをしてから要は胸を張ってみせた。煌びやかな銀色のレオタードが陽光を反射する。
「クーラーですわ!」
「……は?」
多輝は眉を寄せて要と白銀とを見比べた。クーラーが必要なほどには今は暑くはない。怪訝な顔をした多輝は何気なく傍にいた蒼を見た。蒼はマイクを手にくるりと背を向けると観客と化した人々に向かって声を張った。
「これより時間無制限一本勝負! 恐怖の女王バーサス苺姫の戦いが!」
「始まらねえ!」
途中で蒼に怒鳴ってから多輝は要に向き直った。要はおほほ、と笑って多輝を侮蔑のこもった目で見る。
「あの、お二人とも、よろしいでしょうか?」
急に話し掛けられて多輝はそちらを向いた。結界を保持しつつ、由梨佳が静かに歩み寄ってくる。何事かを言いかけていた要が首を傾げて何ですの、と問う。
「弱ってるうちに止めを差したほうがよろしいかと」
穏やかに告げた由梨佳が少し離れた場所を指差す。そちらを見た多輝は慌てて身構えた。要の力によって一度は弾かれた魔が脈を打つように動いている。
「確かに言い争ってる場合じゃねえな」
「そうですわ。そんなだから優一郎様に愛想を尽かされるんですわ」
きっぱりと要が言う。その途端に多輝は真っ赤になって要に怒鳴った。
「誰が愛想尽かされてんだよ! てめえこそ、こないだ妙な料理持ってきやがっただろう!」
「しっ、失礼ですわねっ! 妙ではありません! あれは海外から取り寄せた食材をふんだんに使った、豪華料理ですのよ!?」
要が負けじと声を張る。多輝は杖を握りしめた手を震わせて歯軋りをした。先日、要が持ってきた料理を相伴したおかげで、身体が痺れてしばらく動けなくなったのだ。あれは絶対に危険な薬物を盛られていたに違いない。
「おかげでおれは散々な目に合ったんだぞ!?」
「まっ! わたくしの料理をつまみ食いしたんですのね!? お行儀がなっていませんわ!」
目を吊り上げて要が言い返す。なにをう、と多輝が言い返そうとした矢先、視界を激しい光が覆った。何事かと振り返った多輝は結界の向こうにいた筈の人々が消えていることに仰天した。同じように要が息を飲む。
不意に風が駆け抜ける。唖然とした多輝の傍を通り抜けた風は、ひくついていた魔を蹴散らした。幾つもの小さな欠片に分断された魔が断末魔の咆哮を上げる。風を思わせる勢いで割り込んできたものが声を張る。
「裁きの雷よ!」
淡い蒼色をした雷が細かくなった魔を悉く焼き払う。呆然とその光景を見守っていた多輝は慌てて自分の身体を何度も触った。何故かは判らないが身体が妙な光を帯びているのだ。
「なにやってんだ、二人とも」
魔を討った男が振り返る。咥え煙草に刀を担いだ男を見止めて多輝はげっ、と呻いた。その隣で要が目を潤ませて胸の前で手を組み合わせる。
「水輝様! お久しぶりですわ!」
しなを作った要が挨拶すると、水輝と呼ばれた男ははいはいと苦笑して片手を上げてみせた。どうやら水輝が先に周辺の人々をどこかに転移させたらしい。多輝は自分とどことなく似た面立ちをした水輝を睨みつけた。
「……今から倒そうと思ってたんだよ」
苦い顔で言う多輝を水輝がせせら笑いながら横目に見る。蒼はすっかり解説する気が失せたのか、いつの間にかマイクを放り出している。白銀は大きな機械を地面に据えて全身呼吸をしている最中だ。
「阿呆。あれは二次形態に進化する奴だぞ? のんびりしてたらお前らの手には負えなくなるだろうが」
刀を鞘にしまいこみながら水輝が憮然と言う。多輝は負けないくらいに不機嫌な顔をしてそっぽを向いた。
「ご心配には及びませんわ! 多輝はともかく、わたくしであれば確実に仕留められましたもの!」
胸の前に手を組み合わせたまま、要が自信満々に言う。多輝は唇を尖らせて、おれにだって出来ると小声で呟いた。
「水輝さんの仰るとおりよ。多輝くん。あなたは大丈夫かもしれない。でも、周辺の人たちに被害を出したらどう責任をとるの?」
淡々と由梨佳に言われて多輝は言葉に詰まった。そういうこと、と薄笑いを浮かべて水輝は片手を軽く振った。するとそれまで周囲に張り巡らされていた結界が綺麗に消え失せる。
「それと要。お前はもう少し白銀の扱いを何とかしろ。本末転倒だぞ」
鞘に収まった刀を担いで水輝が顎をしゃくる。怪訝な顔をした要は振り返って大仰に首を横に振ってみせた。疲れ果てていたのだろう。白銀はぐったりと機械にもたれて全身で息をしている。
「情けないですわっ。龍神ともあろう者がこのていたらくとは!」
「しっ、しっ、仕方ない、だろ……これ、重くて」
息も絶え絶えに白銀が言う。多輝はこちらに背を向けた要を見て眉を寄せた。要の背中にはあの太いホースが繋がっている。どうやらあのクーラーで機体を直接に内側から冷やしているらしい。そのことに気付いた多輝は冷や汗をかいた。要は一体、どんな方法で魔を倒そうとしていたのだろう。ただでさえ要の機体の出力は大きいのだ。
そう。要や由梨佳は人間ではない。いや、ここにいる者は全て人ではないのだ。要と由梨佳はヒューマノイドと呼ばれる機械仕掛けの身体をしている。そして多輝も機械の身体なのだが、多輝の場合はヒューマノイド以前に人ではない。多輝と白銀、それに水輝は龍神と呼ばれる者なのだ。そして蒼は龍神の使い魔だ。
「さて、帰るか。次はもっと上手くやれよ」
要は白銀にはっぱをかけて無理やりに引き起こしにかかっている。蒼はやることもなく今の状況に飽きたのか、壊れたアスファルトや車を退かす作業に入っている。由梨佳は黙って傍に立っている。多輝は彼らを順繰りに見てから水輝に目をやった。
「……たまにはまともに帰れよ、あんた」
「は? 同じ屋敷に住んでてなに言ってやがる」
そう笑った水輝が急に嫌な顔をして舌打ちをする。その途端にそれまで白銀を励ましていた要が歓声を上げて駆け寄ってきた。ホースごとがらがらと大きな機械を引きずって近づいてくる。それについでに白銀も引きずられている。
「待ち構えるな!」
一声叫んだ水輝の輪郭が滲む。あーあ、という声と共に水輝の身体はいきなり小さくなった。ぶかぶかになった服に埋もれる格好で水輝がため息をつく。
「可愛いですわ! 水輝様!」
「はしゃぐな!」
嬉しそうに言った要を一喝し、水輝は指を鳴らした。すっかり子供の姿になってしまった水輝の身体にまとわりついていた大人物の服が消え、代わりにぴったりのサイズの子供服が現れる。水輝は落とした刀を拾い上げ、肩に担いでから憮然とした顔で多輝たちを見上げた。
まだFAQを作ってないんですよね……。
毎回、コピペしてから作ってるので被るところがたくさんあります。
なんかすみません(汗)