エロシーンです。普通だと思うので……警報はナシにしておきます。
吉良瀬の別邸は静まり返っていた。清陵にある吉良瀬の屋敷からは随分と離れている。肌寒さに震えてから佑は水輝を見下ろした。丁度、ベッドのある部屋を選んで移動したため、水輝はさっきまでと同じようにベッドに横たわっている。だがやはりベッドが冷たいらしい。すぐに水輝は顔をしかめて目を開けた。
「あれ? どこだ、ここ」
瞬きをして目を擦ってから水輝が周囲を見回す。佑はつられて部屋の中の様子を見回した。部屋の隅には懐かしいくまのぬいぐるみが置かれている。
「別邸よ。わたしが育った……」
そこまで言って佑は口を噤んだ。佑という人格を形成するため、紡がれた虚構の過去の中にこの吉良瀬の別邸は出てきた。虚構の中で佑は立城と共に長い時間を過ごした。毎日が穏やかで、波乱など一つもなく、ゆっくりと時間は流れていた。
へえ、と呟いた水輝が身を起こす。何も身につけていないせいで寒いのか、水輝はぶるりと身震いした。佑は静かに立ち上がって部屋の暖炉に近づいて火を入れた。あの時とそっくり同じだ。暖炉にはきっちりと薪が入っている。ただし、薪は古ぼけていて少し火が点きにくかった。
「水輝さん、服を」
振り返って佑は水輝に向かって力を放った。引き寄せられた服が水輝の身体にまとわりつく。あっという間に服を身に着けた水輝は佑に笑みかけた。
「悪いな」
そう言って水輝が静かにベッドを降りる。佑は暖炉を見つめて目を細めた。暖炉の上には飾り用の皿が三枚並んでいる。赤と緑と紫でそれぞれ皿には模様が描かれている。その上に飾られているのは写真の入った皿だ。写真には立城と幼い佑が並んでうつっている。
この部屋は幼い佑が暮らした子供部屋だ。虚構の中の出来事を思い出しながら佑は部屋を見回した。窓にかかるレースのカーテンも記憶の通りだ。深い色をしたじゅうたんは柔らかくて、その感触を楽しむために素足で歩いては立城にたしなめられた。猫を飼いたいとわがままを言った佑に立城は代わりにと猫の形をした置物をくれた。ソファにあるクッションは立城が自分で作ってくれたものだ。窓辺にある鉢植えもすべて記憶の通りで佑はしばし声もなく部屋の様子を見つめていた。
「何がまやかしで、何が本当なのかしら」
ぽつりと呟いた佑を水輝が静かに振り返る。鉢植えに咲いた花を見つめていた水輝は屈めていた腰を伸ばして佑に近づいた。佑は引き寄せられるままに水輝の腕の中に抱かれた。抱き合っていると水輝の胸の奥から音が聞こえてくる。とくん、とくんと脈打つ音にしても、どこまでが本当かは判らない。龍神の身体はヒトとは違う。本当は人のような形はしてはいない筈なのに。そんなことを考えながら佑は静かに目を閉じた。
されるがままに上向いて佑は水輝と唇を合わせた。部屋が寒かったからか、水輝の唇は少し冷たい。体温を移すつもりで佑は何度も水輝の唇に自分の唇を押し付けた。水輝が苦笑して佑の身体を抱きすくめる。
「もうっ、昨日あんなにしたのに……」
腰を抱かれた佑は拗ねた顔でそう呟いた。水輝が佑の首筋に顔を埋めてくすくすと笑う。呼気に首筋を撫でられた佑はぞくりとして思わず身体から力を抜いた。その隙を狙っていたのか、水輝が佑の首筋に口づけする。強く吸い付かれた佑は掠れた声を上げて水輝にすがりついた。
「んっ、水輝さん……」
うっとりとした顔をして佑は囁きで呼びかけた。水輝が指で佑の首筋を撫でる。
「痕がついたな」
薄い笑みを浮かべて水輝が指先で赤くなった佑の肌を確かめるように撫でる。再び顔を俯けた水輝は今度は佑のブラウスをずらして首の付け根に吸い付いた。片腕に佑を抱いて片手をさりげなく胸元に這わせる。服越しに乳房を揉まれて佑は目を細めて軽く背を反らした。
天井にはシャンデリアがぶら下がっている。佑は水輝の頭をそっと手に包んでじっと天井を見つめた。
「いつまで、こうしていられるのかしら……」
「出来ればずっと」
呟くような佑の問いにそう答えて水輝がするりとブラウスの裾から手を入れる。いつの間にか佑のブラジャーのホックは外れていて、水輝の手が肌を伝ってじりじりと這い登る。直に乳房に触れられたところで佑は甘い声を漏らして身体を捩った。
「あふっ! 水輝さぁんっ!」
「……ん?」
急に訝るような声を漏らして水輝が伏せていた顔を上げる。何事かと顔を戻した佑は低い振動音に気付いて苦笑した。どうやら電話が鳴っているらしい。やれやれとため息を吐いて水輝が佑を放す。佑はスカートのポケットで振動していた携帯電話を取り出して通話ボタンを押した。
「槙花さん、どうしたの? 白銀くんはつかまった?」
乱れた着衣を整えつつ、佑はそう訊ねた。すると水輝が黙って佑のブラジャーのホックを留め、ブラウスの裾をきっちりとスカートのベルトに挟む。
『あ、はい! 見つけたには見つけたんですが……』
今朝、まだ日が昇る前に佑は槙花に命じて白銀を連れてくるようにと命じた。どうやら槙花は佑の命令通りに白銀を発見はしたらしい。だが槙花の話ではどうやらその現場には絵美佳が一緒にいるらしいのだ。佑は一通り槙花から話を聞いて少しの間、考えを巡らせた。
「かまわないわ。絵美佳さんを招待しても」
絵美佳は佑のところへ連れて行けと言っているようだ。佑が苦笑しつつ言うと、電話の向こうで槙花が明るい声で返答した。
『はい、判りました。それとですね、白銀様なんですが』
そこで少し声を落として槙花が言う。どうやら白銀は要のところに行かなければならないとごねているらしい。それを聞いて佑はこめかみをかいた。佑は定期的に送られてくる機体ログを確認したからこそ、白銀を呼びつけようとしているのだ。
「とりあえず説得してみて。それでも駄目ならわたしのほうから要さんに手をまわすから」
『判りました。それではもう一度、お話してみます』
そう言って槙花が失礼します、と言って電話を切る。佑は電話を切ってからため息を吐いた。本当は要さんには知られたくないんだけど。そう呟いてもう一度息を吐く。だが現場には絵美佳がいるのだ。きっと何とかなるだろう。そう思いながら佑は電話をポケットにしまいこんだ。
エロの最中なのにちょいちょい邪魔が入るのはご了承ください(汗)