※この作品はR-18です。

まやかしの終わり 一部 二人の水輝   作:伊駒辰葉

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まだまだ活躍中!★
……というか、不器用極まれりという感じです。
エロシーンはありません。


マジカルプリンセスいちご、活躍中!★ 3

『これは空の宿体ね。力で構成したものでなくて、わざわざ作ったものよ』

『ふうん。ヒューマノイドみたいなもん?』

 

 そう答えつつ、多輝はするりと動いた。実験台の影に潜んで桜を見つめる。台に乗った桜の身体の横には硝子のドーム型をしたケースが設えられている。その中にほんのりと灯っているのは桜色をした光だ。

 

 ふと、部屋のドアがノックされる。何事かを話していた二人がぴたりと黙り、巴が立ち上がって返事をする。開いたドアから覗いた顔を見た多輝は息を飲んだ。

 

「あれー? とーるくんは留守?」

 

 へらへらと笑いながら順が話し掛ける。するとちなりがふて腐れた顔をして立ち上がった。

 

「ダメなんだからー! 勝手に入っちゃ!」

「そうですよ! 順様! ここは入っちゃ駄目です!」

 

 ちなりと巴がそれぞれに叫ぶ。えー、と間延びした声を漏らして順は困った顔で頭をかいた。

 

「冷たいなあ、二人とも。そんなことじゃいいお嫁さんになれないよぉ?」

「出てってください! ほら、早く!」

 

 巴が大声で言ってドアを引く。冷たいー、と声を残して順が扉を閉める。巴が怒った顔でソファに戻る。

 

「順様ってば、もう!」

「透くんに誰も入れるなって言われてるのにねー」

 

 巴とちなりが口々に言って頷き合う。何だかなあ、と呟いて多輝はため息を吐いた。どうものんびりとしていてわざわざ監視するようなこともない気がする。多輝はそんなことを思いながらふと視線を動かした。そこで思わず息を止める。

 

『……斎姫』

 

 そう声をかけながら多輝は見ている場所を指差そうとした。だが、影に溶けているために動けない。

 

『どうしたの?』

『あの硝子の入れ物の足元』

 

 桜色の光の灯った硝子のケースの据えられた台をゆっくりと黒いものが伝う。多輝や斎姫の溶けている影と同じ、黒い色をしたものは細いみみずのような形をしていた。銀色の台の足を黒いものがじわじわと這い登る。

 

 多輝は慌ててソファの二人を見た。だが二人に気付いている様子はない。口々に順に文句を言いながらふて腐れている。

 

『多輝くん。指示が出たわ。罠のカードを隣室の今から送る座標で発動させて』

『トラップ? そんなもん何するんだ』

 

 話している間にも黒いものは足を伝い、やがて台座の裏側にたどり着いた。ひくり、と蠢いた黒いものが台を突き抜けて桜色の光に触れる。その瞬間、台の足に絡み付いていた黒いものはしゅるんと身を縮めて一気に台座を突き抜けた。

 

 まるで揉み合うように黒いものが桜色の光の珠に絡まる。最初は黒と桜色とのまだらになっていた光は、やがて混ざり合って鈍い赤を帯びた灰色になった。

 

『罠よ、闇に潜みし者を暴け。多輝、呪文は回線側だけで唱えて大丈夫だよ』

 

 唐突に優一郎の声がする。多輝は慌てて言い返した。

 

『そんな、影使ってる間に別のカードなんて無理だ!』

 

 灰色をした光が硝子のケースに内側からぶち当たる。がたん、と台座が揺れて初めてソファの二人がそちらに目を向ける。そこでやっと二人は慌て始めた。巴が揺れる台を懸命に押さえる。

 

『それなら、とりあえず、見てるだけでいいそうよ。とにかく情報収集に徹して』

『それはいいけど』

 

 多輝は斎姫にそう答えてから二人に目を戻した。ちなりが慌てた様子で股間を探る。どうやら通信回線を開いているようだ。

 

「あっ! 透くん!?」

 

 悲痛な声でちなりが呼びかける。

 

「桜さんが……桜さんが」

 

 次の瞬間、硝子のケースがけたたましい音を立てて割れる。衝撃に巴が悲鳴を上げて倒れ、ちなりが悲痛な声を上げる。ケースを飛び出した光は真っ直ぐに桜の身体に飛び込んだ。

 

 横たわっていた桜がゆっくりと起き上がる。倒れた巴に駆け寄ったちなりが震えながら桜を見上げる。桜の顔には表情はない。やがて桜は静かに視線を動かして床にへたり込んだちなりを見つめた。巴は衝撃を受けて気を失っているのか、ぴくりとも動かない。

 

 がくがくと震えながらちなりが嫌がるように首を振る。

 

「助けて、透く」

 

 もの凄い勢いで桜がちなりに飛び掛る。悲鳴を上げる間もなくちなりはがっくりとその場に崩れた。壊れた訳ではない。ちなりは桜に電源を落とされてしまったのだ。

 

 ゆらりと桜が立ち上がる。その目はどこも見ていない気がする。多輝は無意識に息を殺して桜を見つめていた。

 

『多輝くん、もし、桜さんに見つかったら、あなたは気にせずにトラップを発動して。わたしが桜さんと対するから』

『そんな、無茶な』

 

 だってあれは桜じゃない。そう呟いて多輝は息を飲んだ。それまでぼんやりと佇んでいた桜が急に身を折り咳き込む。桜の口からは鮮やかな血が散った。床にへたり込んだ桜が血を吐きながら何度も咳き込む。

 

『多輝くん。指示が出たわ。シャドウを解除して。トラップを発動したら、再びシャドウで隠れて撤収にかかれって』

『判った』

 

 そう答えて多輝は影の効力を解除しようとした。だがその直前に部屋に誰かが現れる。多輝は思わず出かかった声を慌てて飲み込んだ。部屋の入り口近くに現れた絵美佳が白衣を翻して桜に駆け寄る。




前のエピソードのラストと繋がりました。
絵美佳がすっ飛んできました。
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