えろしー……え、どうだろう……事後ですかね。
BL警報です! 一応!
悪夢はやめて欲しい順 1
静かな水面が鏡のように陽光を照り返す。湖畔には青々とした柔らかな草原が広がり、その周囲には木々が立ち並んでいる。季節を問わず花は咲き乱れ、優しい風が吹くたびに花弁を揺らす。
鳥達は声を合わせて歌をさえずる。青い空にはぽっかりと白い雲が浮かび、風にゆっくりと流れていく。透き通った空には日が輝き、温もりを地面に注いでいる。
草原に座り込んで一人の幼い少年が泣いている。のどかな光景の中にすすり泣く少年の声が微かに響いている。少年は何も身に着けておらず、草の上に直に座り込んでいる。くっきりと肌に残るのは誰かの手の痕だ。
ふと、少年が涙を手で拭って顔を上げる。幼い少年の傍に寄った立城は微笑みを浮かべてみせた。
やあ。最初の僕。
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「うっきゃー!!」
けたたましい悲鳴を上げて順はものすごい勢いで飛び起きた。全身で息をする順をうろんな目で見て和也が眉を寄せる。
「ああ? 何だ、一体」
心底、嫌そうな顔で言った和也を振り返って順は胸を押さえた。そこでしっかりと包帯が巻かれていることに気付く。どうやら昨晩の和也は少しは親切だったらしい。傷の手当てがしてあることに苦笑してから、順は慌てて頭を振った。
悪夢だ、と呟いて順はうんざりした顔をした。おら、と低い声を漏らして和也が軽く順の背を蹴る。振り返った順は差し出された煙草をありがたく受け取った。続いて差し出されたライターの火に煙草の先を近づける。深く息を吸ったところでようやく順の気分は少しだけ落ち着いた。
「何だ。また例の夢か」
枕を背の下に敷いて身を少し起こした和也がにやにやと笑う。順はため息を吐いてがっくりとうなだれた。よくもまあ、懲りもせずに同じ夢を毎晩見せてくれる。順は何度か煙草をふかしてがりがりと頭をかいた。
「今度は色着きだった……」
「おお、進化したじゃねえか」
無責任に笑って和也が言う。うろんな眼差しで振り返って順は眉間に深い皺を刻んだ。セピアからカラーになったからと言って、嫌悪感が消える訳ではない。順は大きく伸びをした和也に向かって切々と訴えた。だが和也は知らん顔で煙草をくゆらせている。
「頼むよぉ、何とかしてよぉ。アンタなら出来るっしょー?」
泣きそうな顔をわざと作って順は和也に手を合わせてみせた。はっ、と乾いた声で笑った和也がそっぽを向く。くそ、と呟いて順はごそごそと毛布の中に手を入れた。股間を撫でられた和也がぴくりと眉を上げる。
「サービスしとくからさあ」
そう言いながら順は半分ほど勃ち上がった和也のペニスを指に軽く挟んで擦り始めた。アホ、と呟いた和也が遠慮のない力で順を蹴飛ばす。情けない声を上げて順はベッドに倒れた。だがしっかりと煙草を挟んだ手を中空にキープする。
「アホの相手はこのくらいにしておくか」
そんなことを言いながら和也がベッドから抜け出す。えー、と不服の声を漏らして順は起き上がった。咥え煙草のまま、和也が近くに据えてあった椅子に寄る。放り投げられていた服を着始めた和也を見つめて順は唇を尖らせた。
「いいじゃあん。主はいなくなったんだしさあ」
尖らせた唇に煙草を突っ込んで順は息を深く吸った。相変わらずの銘柄の味に眉を寄せて煙を吐く。和也は下着に続いてワイシャツを着込みながら笑った。
「俺にはまだ仕事が残ってる。てめえと違ってな」
執事を務めているとはとても思えない乱暴な話し振りに順は思わず苦笑した。胡座をかく順をちらりと見やってから和也が首にネクタイを引っ掛ける。
佑は消えた。実質上、今現在の吉良瀬の主は不在となっている。そのことを順は昨日の晩に和也から聞いた。和也はこっそりとあの別邸を抜け出して木村の本邸に遊びに来ているのだ。
「つれないなー……。仕事とオレとどっちが大事なのさー」
胡座を組んだ足を抱えて順は不満顔で身体を前後に揺すった。アホ、と呟いて和也が順を睨む。スラックスにジャケットを身に着けてしまうと、和也の身体は裸の時よりずっと細く見える。逞しい胸板の感触を思い出しながら順はにやにやと笑った。
ふと、ドアが鳴る。ほーい、と順が間延びをした返事をするとひょっこりと透が部屋に顔を覗かせた。真っ先に和也を見て透が嫌そうに顔をしかめる。だが和也は素知らぬ顔でネクタイを結わえ始めた。
「オヤジ。入るぞ」
「どーぞどーぞ」
だらしない笑みを浮かべて順は手で部屋の中を示してみせた。透が難しい顔をしたまま、するりと部屋に入ってくる。ネクタイをしっかりと結わえた和也が何食わぬ顔でベッドに寄って枕元の煙草の箱を取り上げる。
「あんたも良くこんないい加減なオヤジと付き合えるよなあ」
呆れた顔をして透が順に顎をしゃくってみせる。ええー、と声を上げて順は泣き真似をしてみせた。和也がそんな順と透とを見比べてにっこりと笑う。
「なんのお話でしょう?」
しゃらっとした顔で言ってのけてから和也は恭しく透に一礼した。
「これはこれは透様。ご挨拶が遅れました。おはようございます」
慇懃に挨拶してから和也が身を起こす。透は鼻に皺を寄せて嫌そうに和也を見た。
「ほんっと。曲者だよな。優一郎も良くこんな奴雇う気になったもんだ」
「違うよー。雇ったのはなぎちゃんだもん」
子供のように舌足らずな口調で順は言った。呆れた顔でため息を吐いた透が手近な椅子を引っ張り寄せて腰掛ける。出来たもので、和也は部屋の隅に寄って茶を淹れ始めた。
「金の姐御は紹介しただけだろ? 実際に雇ってるのは優一郎じゃん」
「姉御て。キミ、なぎちゃんにケソーでもしてんの?」
軽く笑いながら順は煙草の先で透を指し示した。すると透がめいっぱい嫌そうな顔をして身を捩る。あはは、と笑って順は唇に煙草を咥え直した。
このところの順は悪夢を連続で見てるよーですw