※この作品はR-18です。

まやかしの終わり 一部 二人の水輝   作:伊駒辰葉

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説明ぽいエピタイですみません。
苺なイメージの多輝にぴったりかと思いましてw
エロシーンはありません。


いちご!GO!GO! という曲があってですね 1

 不満一杯の顔をして多輝は黙々と苺を食べていた。苺がてんこもりにされた皿を抱えて部屋の隅にうずくまる多輝を斎姫が困惑の眼差しで見つめる。

 

「仕方ないじゃない? 優くんの命令なんだから」

 

 多輝の顔を覗きこんで斎姫が言う。多輝はだが膨れ面で苺を食べ続けた。部屋の中ではきゃいきゃいとちなりと巴がはしゃいでいる。二人が使って遊んでいるのは多輝の杖だ。振り回したり、バトンのようにくるくると回したりしているらしい。多輝は上目遣いでそんな二人を見つめてから次々に苺を口に運んだ。すっかりへそを曲げてしまった多輝に困り果てたのか、斎姫が深々とため息をつく。

 

「あの……。多輝さん、苺なら、翠さんがいくらでも出してくれますから、そんなにあわてて食べなくても」

 

 少し離れた場所に立っていた奈月がそう言って気遣うように多輝を見つめる。だが多輝は黙々と苺を食べ続けた。奈月の隣に立っているのは翠だ。

 

 あれから酷い目にあった。桜の見張りを言いつけられた多輝は昼食を口にすることも出来ず、じりじりとみんなの帰りを待っていた。だがいつまで経っても誰も部屋には戻って来ず、腹を減らした多輝が暴れようとしていた夜になって漸く透だけが姿を現した。食え、と渡されたのはしなびたビーフジャーキーが一本きり。それを渡すと用は済んだとばかりに透はさっさと部屋を出て行ってしまった。

 

 結局、多輝は今朝まで一人で桜を見張っていたのだ。氷づけになった桜は未だに部屋の中央で彫像のように固まっている。

 

「桜さん……」

 

 心配顔をした奈月がそっと桜を振り返る。するとその横にいた翠がべったりと奈月に抱きついた。今の翠は何故か桜の格好をしているのだ。抱きつかれた奈月が硬直して頬を引きつらせる。だが翠はそれに構わず奈月に頬擦りをする。多輝はうろんな眼差しでそんな二人を見ながらもやっぱり黙々と苺を食べ続けた。

 

「もうすぐ由梨佳さんも到着するわ。もし、何かあったらあなたと翠くんが頼りなんだから」

 

 斎姫に言われて多輝はぴたりと苺を持った手を止めた。

 

「だからって、だからって、だからって」

 

 震える声で言った多輝の指の間で苺も一緒に震える。多輝は苺の乗った皿を抱えてがば、とその場に立ち上がった。

 

「なんでこんなかっこをせにゃならんのだー!」

 

 多輝はぴったりと身体にフィットした服を身に着けていた。まるでレオタードかという形のこの服は、ご丁寧に胸のところがハートマークに切り抜かれている。大きく胸元のえぐれた服の間には多輝の胸の谷間がくっきりと見える。腰に申し訳程度に巻きついている超ミニのスカートの裾からはばっちりショーツが見えている。足にはラメの入ったストッキング、ピンヒール。多輝は皿を持つ手を震わせて怒りに任せて地団駄を踏んだ。

 

「可愛くて、とっても似合うと思うけど」

 

 頬を押さえてそう言ってから、斎姫が振り返る。奈月さんもそう思うわよね? と話を振られた奈月は多輝を見つめて慌てたように頷いた。そんな奈月にはまだ翠がしがみついている。

 

「もう一度変身したら、服変わったりしないんですか?」

「何度も試したんだよ! けど、何故かこの服しか出てこねえんだ!」

 

 大声で喚いてから多輝はしおしおとその場にへたり込んだ。膝を抱えてうずくまり、また黙々と苺を口に運ぶ。今の心の支えはこの苺だけだ。多輝は目を潤ませて鼻をすすった。

 

「それに心配しなくても、優くんは水輝さんと一緒なんだし」

 

 そう言って斎姫が頷く。多輝は唇を尖らせて頬張った苺を飲み込んだ。苺を取ろうとして皿が空になっていることに気付く。多輝は泣きそうな顔で空っぽになった皿を見つめた。すると慌てたように奈月が多輝に近寄る。翠に抱きつかれているためにまるで重い荷物を引いているような格好だ。

 

「翠さん、多輝さんにおかわりを」

 

 そう言われた翠が無言で頷いて皿に手を差し伸べる。すると見る間に多輝の持つ皿には真っ赤な苺が山積みになった。多輝は鼻をすすりながらまた黙々と苺を食べ始めた。

 

 不意に空気が揺れてその場に透が現れる。それまではしゃいでいたちなりと巴が慌てたように透に敬礼してみせる。どうやらあれが今の二人の遊びのようだ。

 

「なんだよ、多輝。まだいじけてるのか」

 

 呆れたように言って透が近づいてくる。多輝は恨みのこもった目で透を睨みながら黙々と苺を食べ続けた。幸い、翠の出してくれたこの苺にはへたはついていない。次々に丸ごと苺を口に放り込んでいく。

 

「まあ、多輝も立派な女の子だもんな。昨日は悪かった、これで勘弁してくれ」

 

 背に回していた手を前に戻して透が言う。透の手にしていたものを見止めて多輝は思わず目を輝かせた。真っ白なデコレーションのされた苺のケーキがホールのまま差し出される。だが多輝は慌ててつん、と横を向いた。

 

「食い物で懐柔しようとしても無駄だからなっ」

 

 そう言ってから多輝は皿の苺を次々に口に放り込んだ。

 

「仕方ないなあ。これはじゃあ、皆でわけて食ってくれ。ケーキは他にもあるけどな」

 

 そう言って透が手にしていたケーキを傍の台に乗せる。続いて透はその場に何種類ものケーキを現した。モンブランやミルフィユ、チーズケーキと次々にケーキがステンレスの台に並ぶ。真っ先にちなりと巴が歓声を上げ、続いて斎姫と翠に抱きつかれた奈月が笑顔になって台に寄っていく。一人きりになった多輝は涙目になって黙々と苺を食べ続けた。

 

「多輝。僕が至らないばっかりに昨日はひもじい思いをさせて、すまなかった」

 

 唐突に優一郎の声が聞こえてきて多輝は慌てて顔を上げた。周囲を慌ただしく見回す。だが優一郎はどこにもいない。訝りに眉を寄せた多輝の耳に今度は小さな笑い声が聞こえる。見ると透が口を押さえて懸命に笑いを堪えていた。どうやら透が優一郎の声を真似たらしい。多輝は怒りに真っ赤に頬を染めて余計に身体を縮こまらせた。

 

「多輝、似ていないかい?」

 

 台から離れて少しだけ多輝に歩み寄った透が優しそうな笑みを作って言う。多輝はそんな透を上目遣いで睨んだまま呻き声を漏らした。じりじりと壁を伝って部屋の隅へ隅へと逃げる。

 

「どうして逃げるんだい? 多輝」

 

 透が哀しげな顔をしてそう言う。多輝はうっ、と呻いて眉を寄せた。大事に苺の皿を膝に抱えてじりじりと部屋の隅に移動する。すっかり夢中になっているのか、他の連中は楽しそうに話をしながらケーキを食べている。

 

「多輝、おいで」

 

 ゆっくりと歩み寄った透が微笑みを浮かべて手を差し伸べる。多輝は泣きそうな顔で透と膝の上の苺の皿を見比べた。確かに優一郎によく似ているが、これは透なのだ。そうは思うのだが、何故か身体が熱い。多輝は怒りとは別の感情に真っ赤に顔を染めてつんと横を向いた。




苺入りのボウルを抱えていじけている多輝をご想像くださいw
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