ノーマルが好きな方は逃げてー!
(色んな要素があるのでそう言うしかないのです(泣))
屋敷中に響き渡る悲鳴に水輝は苦笑した。やがて激しい足音が聞こえてくる。ほどなく水輝の居た部屋のドアがけたたましい音を立てて開いた。寝室兼書斎に居た水輝は真っ先に部屋に投げ込まれた白銀の姿を見て思わず笑い声を上げた。続いて入ってきた佑がソファに寝そべっていた水輝に駆け寄る。
「こいつが、わたしの唇をっ!」
引きずっていた白銀の足を放り出し、佑が肩を怒らせて喚く。水輝は読んでいた本を胸の上に伏せて佑に手を差し伸べた。怒りに目を吊り上げていた佑の腕を取って引く。
「じゃあ、消毒してやろう」
腕を引かれて身を屈めた佑の頭を抱き寄せて水輝は唇を合わせた。すると怒りに燃えていた佑がゆっくりといからせていた肩から力を抜く。うっとりとした面持ちになった佑の唇をしばし吸ってから水輝は手を離した。
「お前はこれを落とすんじゃなかったのか?」
佑が顔を上げたところで水輝は床に伏せた白銀を指差した。光に撃たれた白銀は目を回して倒れている。服のところどころが焦げているのは、きっと佑の怒りのパワーによるところだろう。
「ごめんなさい。そういえば水輝さんの命で……あっ」
そこまで言って神妙な顔になった佑が顔を伏せ、上目遣いで水輝を見る。のんびりと胸に乗せた本を持ち上げた水輝はそうだな、と呟いた。
「別の意味で落としてどうする」
続きを読みながら水輝はぼそりと言った。すると慌てたように佑が水輝と白銀とを見比べる。
「ごめんなさい……」
消え入りそうな声で詫びてからはっとしたように佑が顔を強張らせる。ちらりと横目に佑を見てから水輝は本に目を戻した。古びた本には昔の物語が書かれている。薄く丈夫な紙に書かれた物語を読みながら水輝はどうした、と佑を促した。
「最後の命を、思い出したの。水輝さん、どうぞ」
そう言って佑が透き通った笑みを浮かべて目を閉じる。水輝は本を読みながら、何がだ、と低い声で告げた。すると佑が閉じていた目を開けて困ったように眉を寄せる。
「わたしの事を殺すのでしょう? わたし、水輝さんに出会えて幸せだった」
「何でおれがお前を殺す必要がある?」
不機嫌な顔でそう言って、水輝はちらりと佑を見た。だがまたすぐに本に目を戻す。殺されたいのか、と訊ねると佑は困惑した顔になった。
「あの、じゃあ、殺してもいいな、って水輝さん、言ったわよね?」
「雷龍神をな」
間髪入れずに言って水輝は頭の下に敷いたクッションの位置を直した。足を組み替えて本を読み続ける水輝を佑が呆然とした顔で見下ろす。
「あっ、ああっ……ごめんなさい!」
慌てたように佑が頭を下げる。水輝はちらりと佑を見てからまた本に目を戻した。床に伏せた白銀はそうとう強い衝撃を受けたのか、ぴくりとも動かない。
「どうでもいいが、その格好でいるならついでに相手をしろ」
水輝が淡々と言うと佑ははたと気付いたように自分の姿を見下ろした。そこで漸く自分が素っ裸でいたことに気付いたらしい。
「ええ」
笑みを浮かべて頷いてから、佑は少し声を落として告げた。
「あの、雷龍神って多輝くんよね? さっきも言ったけど、多輝くんはただの幼馴染で、わたしとは何の関係も無いからっ!」
「誰もお前が女同士で交わる趣味があるとは思っていない」
仏頂面で言ってから水輝は本から目を上げた。まじまじと佑の身体を眺め回してからまた本に目を移す。
「だから、わたしにわざわざ断ることなんかないわ。多輝くんには悪いけど、水輝さんが必用だと思うのなら理由があるんでしょうし」
「そうか」
低い声で返事をして水輝は佑を見やった。消える前までより佑の光の度合いが強くなっているのが判る。虹色に輝く髪は柔らかいのだろうが、触れれば切れそうなほどに透き通って見える。
「今度殺せと口走ったら、本当に殺すぞ。おれは面倒な女は嫌いなんだ」
難しい顔で言って水輝はため息を吐いた。すると慌てたように佑が頷く。
「水輝さん、本当に、ごめんなさい」
すっかり消沈してしまった佑を横目に見てから水輝は肩を竦めた。いいから早くしろ、と促すと佑がいそいそと水輝の傍に跪く。ベルトを緩める音が響き、ジッパーが下げられてペニスが露にされる。水輝は本から目を離して佑を見やった。佑はうっとりした面持ちで水輝のペニスを弄っている。
「そういえば、今度のその身体はデリケートだからな。外に出る時には気をつけろ」
そう言ってから水輝はまた本を読み始めた。片手でページをめくって書かれた字を目で追いかける。
「水輝さん。この身体、いったい?」
それまで水輝のペニスを熱心に愛撫していた佑が身を起こして自分の胸に手を突き入れる。水輝は眉を寄せて本をずらし、胸に突きこまれている佑の腕を引っ張った。胸から手の抜けた佑が慌てたようにソファに倒れこむ。
「あんまり中を弄るな。本来の半分でしかないんだぞ、お前は」
呆れたように言ってから水輝は本に目を戻した。
「そんなことないわ。以前とは性質が違うけど、同じくらいの力はあると思う。変なのは……」
「利き腕が変わっていることくらいか?」
言葉を途切れさせた佑の代わりに水輝はそう言葉を継いだ。確かめるように両手を握っていた佑がはっとしたように顔を上げる。
「それは気付かなかったわ。でも、それってたいした問題じゃないと思う」
これに比べれば。そう言葉を続けて佑が視線を下げる。水輝は無言で本のページをめくった。
「宝珠が違うのよ。まるっきり」
「何だ。そんなことか。気に入らなければ変えてやるぞ?」
淡々と言って水輝はちらりと佑を見た。
「変えたりしたら、逆におかしくなると思うわ。これがわたしの宝珠なのよ」
見る? と訊ねられて水輝は本を胸に伏せて頷いた。佑が胸に手を突っ込んで一つずつ宝珠を取り出す。
「白宝珠にあたるのがこれよ」
そう言いながら佑は虹色に輝く透き通った宝玉をかざしてみせた。水輝はへえ、と呟いて首を傾げた。次に佑が取り出した宝珠をかざしてみせる。
「黒宝珠にあたるのがこれ。これはあまり変わらないわね」
艶のない黒い色の宝珠を佑はかざしている。影を切り取ったような深い闇の色をした宝珠は、黒宝珠独特の鈍い輝きを帯びてはいない。あくまでも黒の沈んだ色をしているだけだ。
「金宝珠は懸け離れているわ。これだもの」
そう言って佑が取り出してみせたのは氷の塊のような透白色の珠だ。なるほど、と頷いた水輝は面倒だ、と佑に向かって指を鳴らした。すると佑がそれまで一つ一つ取り出していた宝珠が一気に胸から飛び出し、佑を囲む形で中空に浮き上がる。
「銀にあたるのがこの水色ので、紫にあたるのは、あまり変わらないけどちょっと赤味がかったこれ、翠にあたるのがこの地味な灰色ので、赤にあたるのは、この藍色の宝珠で」
そこまで言ってから佑が口ごもる。水輝はのんびりと頭の後ろに手を組んで宙を漂う宝珠を眺めた。
「えっと、この、赤くて、でこぼこしてて、丸くなくて、緑色のヘタみたいなのが付いてるのが、青宝珠に相当するものらしいの」
恥ずかしそうな顔をして佑が指差したものを見つめて水輝はぼそりと言った。
「……苺だな」
そう呟いて水輝は胸に伏せていた本を取り上げた。まだ赤い顔をした佑が一つずつ宝珠を胸にしまいこんでいく。水輝は本の続きを読みながら首を鳴らした。
宝珠が愉快なことになりましたw