このエピソードで五章は終わりです。
明るい日差しの差し込むオフィスで渚は上機嫌に鼻歌をうたっていた。大きな執務机にもたれて激しい声を上げているのは大前道代という女性だ。
「ほら、しっかりなさい。動きが鈍くなっているわよ?」
そう言って渚は道代のタイトスカートに包まれた尻を軽く叩いた。足を開いて渚に跨っている道代が甘えた声を上げて腰を振る。
「んふっ! なぎささま、これ以上は身体が……」
「しようのない子ね」
渚は深いため息を吐いて道代の身体を抱え上げた。膣内に咥えこまれていた渚のペニスがぬめる音を立てて抜ける。小さな悲鳴を漏らして道代が身体を震わせる。
吉良瀬トータルソリューションの専務取締役兼営業本部長を務める道代の機体は人の女性により近く作られている。そのために他のヒューマノイドより丈夫なのだが、さすがに二時間ぶっ通しで性交渉し続けるのはきついらしい。改めて渚の膝の上に抱えられた道代は荒い息を吐いている。
「……渚さま、申し訳有りません」
いいのよ、と渚が微笑むと、部屋の隅で忙しくキーボードを叩いていた波絵が言う。
「道代っち、謝る必要なんか無いよぉ。アンタの身体ぶっ壊れたら、大赤字なんだから」
その言葉にどことなく非難めいたものを感じて渚はじろりと波絵を睨んだ。すると慌てたように波絵が端末の画面に顔を寄せる。薄型の端末に隠れてしまった波絵から目を離し、渚は片腕に抱いた道代の頭を優しく撫でた。
「ごめんなさいね、無理を言って」
そう詫びて渚は道代の髪に口づけた。ウェーブのかかった柔らかい髪の感触をしばし味わってから顔を上げる。
「いいえ。私は渚様の部下ですから」
なんなりとお申し付けください。そう言って道代がにっこりと笑う。まあ、と微笑みを返して渚は静かに道代を膝から下ろした。渚の脇に立った道代がいそいそと乱れた着衣を整える。
「そうねぇ。そろそろ新しい子が見たいわねえ」
唇に指をあてがって渚は天井を仰いだ。部屋の隅に控えていた祐がティッシュペーパーの箱を抱えて渚に駆け寄る。祐は渚の傍に跪いて剥き出しになっていたペニスを丁寧に拭い始めた。
「その件ですが、本日、営業部に配属される機体が四体、ロールアウトします。見学なされますか?」
「服装は?」
道代の問いかけに渚は即座に切り返した。この間の奈月の姿が脳裏に蘇る。あれはとてもよく似合っていた。うっとりとした顔で奈月のことを思い出しながら渚はほう、と熱い息を吐いた。懸命に渚のペニスを拭っていた祐が可愛らしい悲鳴を上げて慌てたように何枚かのティッシュを抜く。少し萎えかけていたペニスが奈月のことを考えて一気に勃起し直したのだ。
「道代っち! それは内緒にしとくって言ったじゃない!」
慌てたように立ち上がった波絵が声を張る。渚は我に返って波絵に目をやった。あわわ、と呟いた波絵が焦ったように口を手で覆う。
「だから、プログラム中ですから服装も何もありませんですってばぁ、すっぽんぽんで寝てるだけですって」
そんなの見てもつまらないでしょう? 恐る恐るに口から手を離した波絵が笑い混じりに言う。渚はじっと波絵を見つめたままでいた。ごく微かに波絵の笑いが引きつっている。
「そうね……服は大事ね……」
渚はじっと波絵を見つめたまま呟いた。すると波絵がぱっと明るい顔になって頷いてみせる。
「その娘たちの着るスーツ選んであげるってのはどーですかぁ? 渚さん手ずから選んでもらったって知ったら喜びますよぉ」
いい考えを思いついた、とでも言いたそうに波絵の顔は輝いている。そうね、と呟いてから渚は薄い笑みを浮かべた。
「それはいいとして、私に内緒にしようとしていたのは何故?」
渚は足元にいる祐の頭を撫でながら波絵に問い掛けた。波絵が慌てたように道代と顔を見合わせる。
「だから、この前、渚さんにもお話したじゃないですかぁ……。営業部の業務が手一杯だから、新人さんたちもぉ、すぐにお仕事にまわさなきゃいけないって」
「そうね。そう聞いたわね」
渚はおうように頷いてそう言った。それで? と促すと波絵が困ったような顔をする。ちなみに今日の波絵はジーンズのつなぎに身を包んでいる。
「営業部の新人の子たち見てぇ、渚さんがいきなり全員抱いてぇ、壊しちゃったりしたらマズイなあって」
もじもじと指を絡めながら波絵が言いにくそうに告げる。それを聞いた渚はほほほ、と笑った。作ったような笑いを聞いた波絵がぎくりと肩を竦める。祐が綺麗に拭き清めたペニスをしずしずと渚の服の中に戻そうとする。だがそこで渚はがたん、と椅子を鳴らして立ち上がった。
「あなたは私と会社のどっちが大事なの!?」
びしりと波絵を指差して渚は声を張った。小さな声を上げて床に転がった祐が慌てて起き上がる。渚の少し後ろに立つ道代がそっとこめかみに手を当ててこっそりため息を吐く。
「渚さんですぅ」
でも、会社潰れちゃったらわたしたち全員スクラップですからぁ……。細い声で言う波絵を睨んで渚は足を振り上げた。がん、と激しい音を立てて机に片足を乗せる。
「そうよね!? 私のためなら修理なんてラクラク簡単よねっ!?」
無茶を言いながら渚はぎらりと波絵を睨みつけた。
「営業タイプの娘は、一人づつ、時期を見て呼び出して抱くってぇ、おっしゃったじゃありませんかぁ」
涙目になって波絵が訴える。渚は机に乗せた片足に体重をかけて不敵に笑った。
「馬鹿ね! 女心と秋の空って知らないの!?」
そう声高に告げてから渚は顔をしかめて机から足を下ろした。いたた、と呟いて股間を押さえる。剥き出しになったままだったペニスが、スラックスのファスナーに擦れたのだ。ちょっと目に涙を浮かべて椅子に腰掛けた渚の足元に祐が慌てたように跪く。
「予算があるならぁ、ストレス値上げてまで、こんなこと、いいませんよぉ」
ぽろぽろと涙を零しながら波絵が股間を探る。自慰を始めた波絵を見て渚はしゅんとうなだれてごめんなさいと詫びた。どうやら自分は随分な無茶を言ってしまったらしい。諦めるわ、と力なく告げた渚は深々とため息を吐いた。
渚のペニスを服の中に納めた祐が痛ましそうな顔で目を上げる。
「渚さま。その、予算の件なんですけど。増資の話があるのをご存知ですか?」
「え、なになに?」
意外なことを聞いて渚は熱心に問い掛けた。椅子ごと振り返った渚に道代が頷いてみせる。
渚が暴走中。