※この作品はR-18です。

Rewinded Soldier M   作:とも667

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 守男くんに同情してくれた皆さんに、この作品を捧げます。絶対に面白くするので、よろしくお願いします。


Bad Endの先に

堀川守男。それは、この世界では知らない者はいないと言っても過言ではない、高名な軍人である。人間はどんな敵も絶対に殺すその姿を、英雄と評して崇めた。一方戦うことになった敵からは、『死そのもの』として、とても恐れられている。

 

 守男は、この世で一番不幸な子供だった。産まれた瞬間に生き地獄に落とされて、死ぬこともできずに惨たらしい虐待に苦しんだ。牢屋のような部屋に閉じ込められて、殴られ蹴られ銃で撃たれることすらある日々。食料はゴミ箱をこっそり漁って、冷めきった食べ残しを食べていた。

 

 守男は必死に抵抗したが、所詮は子供。魔法の使える大人には全く敵わなかった。そして両親の暴虐は、それだけに留まらない。守男をラミア国という国に、少年兵として売ったのだ。幸か不幸か、虐待の日々により守男はサバイバル能力が高くなってしまっていた。

 

 抵抗できずに連れていかれ、戦争に参加した守男。虐待は終わらないどころか酷くなり、毎日のように軍人に暴行されて撃たれて刺された。その上、目の前で非人道的な拷問や強姦を毎日のように見せられ、降伏した防空壕の中の人達や、赤ちゃんですら殺されてゆく日々。発狂してもおかしくない状況の中でも、守男は死ねなかった。

 

 それからも戦況は悪化し続け、軍人達はどんどん狂っていく。街を襲撃し、一人残らず皆殺し。夫の目の前で妻を輪姦し、夫も妻も撃ち殺してしまった。守男は止めようとしたが、止められずに撃たれた。果てには食料が少なくなると、人の肉すら美味しそうに食べ始めた。

 

 更に時は経ち、敵がついに防衛ラインを突破してくる。こちら側のやったことを、全てやり返された。人肉を食べていたし、強姦もしていた。防空壕の中に手榴弾が投げ込まれて、全員死んだ。守男はもう何の感情も持たなくなっていた。その時、この環境でまだ生きている守男に利用価値を見出した両親が、守男を連れ戻す。

 

 守男は帰る途中で、丸い大きな物が運ばれていくのを見た。それに何故か恐怖を覚えた守男は、必死に逃げて国に帰った。そして次の瞬間、敵のフィオル国により新兵器の『元素融合爆弾』が投下され……ラミア国は、文字通り消滅した。四元素の反発エネルギーをぶつけて、炎元素と風元素による火災旋風と、水元素による大津波で確実にトドメを刺し、大地元素による土砂で埋めて全てを隠蔽する兵器。

 

 その真実を知った守男は、ニュースを見て顔を顰めた。それから、守男は奴隷としてこき使われることになった。自分達のコネを利用して法すら書き換え、家を『買ってあげた』ことにされて、そのローンや家に入れる金を無理矢理払わされる日々。守男は死なないために、必死に冷水まで被って働いた。生ゴミを漁って、冷たい目で見られながらなんとか食いつなぐ日々。

 

 そんな中、両親が今度は『ホロライブ学園』に行くようにと言ってきた。守男は断ったが、SNSを使用して戦争犯罪を押し付けられた上叩くように扇動されたことで、社会的抹殺と物理的抹殺どちらもされそうになる。その上、まだ抵抗をやめないならば他人まで巻き込むと言う。守男は、それがどうしても嫌だった。

 

 言うことを泣く泣く聞いた守男は、『有名人や地位の高い人と懇ろになれ』と言われた。息子を利用してコネクションを作らせ、それにあやかろうという魂胆である。この学園には『バトルロワイヤル』と呼ばれる定期考査が存在し、戦闘能力を推し量って優秀な人材を選び抜く考査だ。無論、考査の成績が良ければ人気も上がる。

 

 それから守男は、徹夜で勉強してなんとか学園に入学した。モテるために、顔に人工皮膚を貼り付ける手術もされた。戦争の傷痕がついていては、怖がられるしバレては困る。どこまでも狡猾な人間だと、守男は思った。更には『プレイヤー』の干渉が始まり、守男はたまに体の自由が効かないようになってしまう。

 

 守男は両親の予想通り、バトルロワイヤルで優勝した。守男は関係ない人を殺すことが嫌で必死に努力し、なんでもできる完璧で明るい男子高校生のようになっていた。しかし守男は、勉強に集中していたせいか、相手の出自などを調べるのを忘れていた。そのせいで守男は偉い人と関係の無い人ばかりたらしこんでしまった。

 

 そして、演技の終わりは訪れた。魔王軍によって飛行機がジャックされ、飛行機ごと守男を殺そうとしたのだ。更に混乱した乗客が暴れ始めて、機内がめちゃくちゃになってしまう。最後にはジェットエンジンが爆発して、守男一人を除いて全員が死亡。最初に暴れた者は、守男を逆恨みしながら死んだ。

 

 それによって守男のトラウマが溢れ出し、守男はそのまま魔王軍の幹部を殺しに向かった。飛行機も、元々そのために乗っていたのだ。覚醒した守男は、いとも簡単に幹部を殺してしまった。そこで右腕が飛ばされた上、剣を失う。更に、様子がおかしいことをみんなにも勘づかれてしまった。

 

 結局隠し通すことはできず、魔王軍の襲撃の時に左腕が飛ばされ、全てバレてしまった。みんなは真実を知り、とても悲しんで怒ったがなにも産まなかった。それだけで解決するほど現実は甘くないのだ。さらに、真実を知って激怒した両親が本格的な扇動を開始。そこに魔王軍幹部も来てしまい、守男の四肢はここで全損する。

 

 なんとか魔王軍幹部を下した守男は、恋人の一人である博衣こよりに義手義足を作ってもらった。それからすぐ、両親のところに向かったみんながボロボロで戻ってきた。みんなが捕まったことを知らされて、守男は両親の元に向かう。両親は悪趣味なことに、戦いを生配信して、それすら自分達の支持率アップに使おうと目論んだ。

 

 守男が真実を叫んでも、『自分達は弱者なのに』『酷すぎる』などと屁理屈を言って、それが支持されてしまう始末。それでも、守男は戦って……勝利した。あっけない幕切れだった。ここで剣がまた折れたため、ここで後に『神剣』と呼ばれる程の切れ味と頑丈さを誇る、『ウルカヌス』という炎の剣を手にした。

 

 しかし、今度は魔王軍が守男の戦争時代の隊長のジャスティーや、軍医のエミリシア……守男を逆恨みして死んでいった、飛行機事故の時の男である浦下 直哉(うらしも なおや)を蘇らせて、守男を殺そうとする。恋人であるみんなも参加しようとしたが、足でまといでしかなかった。

 

 それでも守男はジャスティーを殺し、エミリシアを殺し……魔王のところまで辿り着いた。魔王は言う、人間は汚すぎると。平和な世の中を作るために、人間は物言わぬ植物人間と化すべきであると。守男は反論しなかった。自分はそれをよく知っているから。しかし守男は剣を振るい続ける。魔王は問う、貴様は何故戦うのかと。

 

 守男は答えた。自分は軍人であり、魔王の言う『汚い人間』であると。だから、自分は軍人として最後まで戦わなければいけないのだと言った。何の信念も目的意識も持たず、ただ人間の奴隷であり続ける姿勢に魔王は激怒した。しかし、戦争は残酷である。魔王は壮絶な戦いの末、守男が持っていた銃で心臓を撃たれて死んだ。

 

 魔王の持っていた勇者の剣には、勇者の魂が宿っていた。かつて世界を救った勇者は、魔王を選んだのだ。魔王の最後の頼みを聞いて、守男は勇者の剣を破壊した。その頃浦下は自身の能力である『扇動』を使用して、人間と共に避難所を襲っていた。守男はそれを見た瞬間止めに入ったが、傷が深くて上手く動けない。

 

 みんなの攻撃も当たらず、挙句の果てに姫森ルーナが人質にされてしまう。そこで警察の署長が割って入り、怪我をしながらルーナを救出。やっと倒したと思ったところで、突如後ろから扇動された人間がやってきて……署長は、その者に刺されて相討ちになった。

 

 あまりに虚しい結末に、全員が失意の底に沈む。しかし世界はまだ守男を苦しめる。元素融合爆弾の使用がバレそうになったフィオル国が、それをしようとしたこの国に戦争を仕掛ける口実として、軍人を送り込んだのだ。守男はもちろん返り討ちにしたが、それを理由にしてフィオル国は宣戦布告。また戦争が始まってしまった。

 

 守男も恋人達も、戦争に駆り出された。フィオル国に勝利しても、終わる気配が見えない。守男は今度こそ、完全に壊れていく。

 

 はじめに死んだのは、Holoxの用心棒の風真いろはだった。仲間を庇って、あたかも弁慶の仁王立ちの如く、立ったまま死亡した。みんなは泣き叫んだが、守男は泣けなかった。それどころか、感情が全く湧いてこなかった。

 

 次に死んだのは総帥のラプラス・ダークネスだった。沙花叉クロヱと鷹嶺ルイは、必死に総帥を守ろうとしたが……無駄な努力に終わることとなった。

 

 次に死んだのは天使の天音かなただった。あたかも、神話のイカロスが太陽に灼かれ、地に落ちた時のように……焼夷弾に体を焼かれて黒焦げになり、激痛にのたうち回って死んだ。

 

 次に死んだのは竜族の桐生ココだった。巨竜と化し、炎を吐く力は軍事兵器として重宝された。しかし、しばらくすると竜に対する特攻兵器が開発され、頭を貫かれて死亡する。その体は解体され、武器として使用される運びになった。これは竜族との条約違反であるが、守男の国はそれを無視した。

 

 次に死んだのは姫森ルーナだった。守男の慰安としてやって来たところで、防衛ラインを突破され……必死に護衛が抵抗したが、それも虚しく殺害されてしまう。これにはお菓子の国が激怒し、敵国に宣戦布告を行った。

 

 そして、更に時は経ち。残ったのは守男と、悪魔の常闇トワ。弾が当たって失明した博衣こより。そして、角の片方折れた角巻わためだけだった。守男はいつも通り仕事をこなしに行き……大量の敵に囲い込まれてしまった。守男を最大の脅威とみなし、全戦力を投入したのだ。圧倒的物量を前に、守男は無双ゲーでもしているかのように無双する。

 

 しかし戦場は、いつ死ぬかわからないモノ。守男は、そこで銃弾を大量に食らってしまい、死ぬ寸前まで追い込まれた。その上、猛毒のガスを吸わされて、もう長くない状態となってしまう。その状態で、守男は敵を全滅させた。そして目の前にある前線基地へ、手榴弾を何個か奪って突撃した。

 

 そして、守男は基地を壊滅させた後……撃たれる直前に、手榴弾のピンを外した。敵は守男ごと爆発に巻き込まれて、全員死亡。凄まじいダメージを負った敵国は、そのまま降伏したのだった。

 

 

 

 敵の基地で自爆した守男は、何度見たかもわからない走馬灯を見ていた。今まであったことが、次々に目の前で再生されていく。守男はこれで死ぬということを悟っていた。意識が遠のく中で、みんなとの思い出が蘇る。

 

『お願い、行かないで!!』

 

『いやっ!! いろはちゃんっ!! いやぁぁぁぁぁ!!!』

 

『がっ、ごばっ……』

 

 守男は、どれだけ懇願されても聞かずにここに来た。いろはが死んだ時も何も思えなかった。目の前で血を吐いて死んでいく姿を見ても、何も感じなかった。もう人間ではないのだろうな、と……守男は心の中で自分を皮肉った。

 

『もり、お……』

 

『あがぁぁぁぁぁぁッ!!!』

 

「……何も、してあげられなかったな」

 

 守男は、声帯などとうに焼き切れたはずなのに、何故か自分の呟きが鮮明に聞こえた。もしかして、もう幽霊になっているのだろうか。そう思いながら、思い返す残酷すぎる過去。頭を貫かれて倒れるココ、目を潰されてのたうち回るこより。その時守男は、仕事に没頭して何もしなかった。守男は今になって、最低だなと自嘲する。

 

「俺と会わなかったら、こうはなってなかったはずだ……」

 

 自分の存在すら否定して、罪悪感に苛まれる守男。走馬灯が見せるのは、彼女達が昔自分にくれた優しさ。感じることができなかった、温かさ。

 

『トワはそれでも、守男を信じるから』

 

『待ってて、今回復薬作るからね!!』

 

『守男、わためは君の味方でいるから……ずっと、ずっと』

 

 一方的に優しくしてもらった。自分に何ができただろうか。守男は自分の行いを思い返して……ただ、戦うことしかできなかったことを思い出す。皮肉にも、死んだことで落ち着いた心から後悔が溢れだしてきた。

 

「……もし、やり直せるのなら」

 

『守男、大好きだよ』

 

「みんな、幸せになれるように……」

 

 しかし、時間は戻らない。そうして守男は深い後悔を抱えながら、爆発の中で粉々になる。そこで、その『記録』を見た『神』の一人が呟いた。

 

『それなら、やり直すといい』

 

 

 

 

 朝日が差し込み、鳥の鳴き声が聞こえる部屋の中。守男は、それに反応して瞼を動かす。守男が目を開けると……そこは間違いなく、守男が昔住んでいた家だった。守男は現実を理解できず、キョロキョロと辺りを見回している。

 

「ここが地獄? それとも……幻覚か?」

 

 守男はそう呟きながら、ベッドから起き上がる。そこで自分の腕や足の異変に気がついた。こよりのマークがなく、やけに生物的な腕になっていた。それが『自分の四肢』であることに気づくのに、時間はかからなかった。

 

「元に戻ってる……?」

 

 失ったはずの腕と足がある。服も、昔着ていた物を着ている。守男はもしやと思い、洗面所に向かって鏡を見た。そこには……手術されて傷一つない、綺麗な顔があった。試しに頬をつねってみたが、痛みがあった。痛覚など、とうの昔に焼き切れたはずなのに。

 

「まさか、やり直せってことか?」

 

 守男は非常に困惑していたが、そこで自分の最期の発言を思い出す。自分が『もしやり直せるなら』と言って、みんなの幸せを願ったことを。

 

「だが、本当にやり直せるとはな……」

 

 守男は家の中を探索してみたが、ウルカヌスはどこにも落ちていなかった。恐らく、持ち物は未来に置いてきてしまったのだろう。そう考えて、少しだけ落胆する。

 

「巻き戻ったのは俺の体だけか……」

 

 守男の体は筋骨隆々の、あの日のままだった。つまり、力はあの日と変わっていないということだ。守男はとりあえず、次の行動を考える。自分はどうすべきなのか、どうすればみんなを救えるのかと。

 

「……とりあえず、奴らの目を誤魔化そう。俺が今殺しに行っても、あいつらには暴力以外の手がある」

 

 そのためにもバトロワ優勝は必須。そう思った守男が立ち上がり、家のドアを開けた。血生臭くない空気を久しぶりに吸って、守男の気分が少し晴れる。

 

「まずは、重りを買いに行かないとな」

 

 そう呟いて、守男はまずトレーニングを始めることにした。重りを何個も体中につけて、信じられない程の量を平気でこなしていく……その途中で昔の因縁に絡まれたりもしたが、最早守男の敵ではない。軽くあしらって、追い払っておく。しばらくその生活を続けて、21日目。

 

「……確か、わために会ったのは今日だったよな」

 

 守男は昔のことを思い出して、呟く。この日に、剣を買いに行って靴を選んでいるわために出会った。守男は彼女に何か変化がないか、今すぐ確かめておきたかった。丁度、持ち物はリセットされていた。買いに行かない理由はないだろう。

 

「行ってみよう」

 

 すぐに守男は商店街に向かい、武器屋に入った。やはりそこには、あの日と同じように炎の剣が置かれていた。それを手に取って、購入する。それを背負って、懐かしい感覚を覚える守男。

 

「すぐに折っちゃったらゴメンな」

 

 前の周回では、『魔導皇帝』のヴァロンとの戦いで折ってしまった剣。守男は武器に謝りながら、ついでにマシンガンと拳銃を購入しておいた。今の守男なら、銃も使えるからだ。

 

「よし、これでいい」

 

 守男は弾を何個か購入してから、次の目的地に向かう。無論、靴屋さんだ。自分が知っている通りなら、彼女がいるはずだから。靴屋に入店すると、そこにはやはり……靴選びに悩む、彼女がいた。

 

「早く走れる靴……どれがいいかなぁ? これかな、それともこれかな?」

 

「ッ……!!」

 

『ごめんね、何もしてあげられなくて……』

 

 悲しそうな目でそう言ってきた、『角巻わため』。戦争に参加させられて、自慢の角も折れてしまっていた彼女が、五体満足で目の前にいる。守男は思わず声を上げそうになって、口を押さえた。そして、できるだけ落ち着いた口調で話しかける。

 

「なにかお困りですか?」

 

「うぇっ!? て、店員さん!?」

 

「いえ、違いますよ。困っているようだったので……つい」

 

 大袈裟に驚いて振り向いたわために、守男はたじろぎそうになる。しかし何とか耐えて平静を装い、ただの親切な人を演じた。わためは三つならんだ靴を指さして、守男に尋ねる。

 

「あ、ありがとうございます……実は、三つまで絞ったんですけど、どの靴がいいかなって。この中だと、どれがいいと思いますか?」

 

「一番左ですかね」

 

「やっぱり左ですか!? ありがとうございます、おかげで決心つきました!!」

 

 わためは守男に笑顔で頭を下げて、靴をレジに持っていった。購入してすぐに靴を履き、嬉しそうに走っていく。守男はそれを、ずっと見続けていた。

 

「……あんな嬉しそうな顔、久しぶりに見たな」

 

 優しいわためは、みんなの前では無理にでも笑顔を作ろうとしていた。しかし、心の底からの笑顔とはやはり違うものだと守男は再確認する。

 

「さて、俺もスパイク買わないとな」

 

 技のひとつ、ジャッジスルー2。相手を蹴り上げて、そのまま蹴りの連打を浴びせる技だ。これをするにはスパイクが必要不可欠なので、あの日はこれを買いに来ていた。前と同じものを購入して、また見てみる。

 

「新品だけあって綺麗だな……丁寧に使おう」

 

 守男の世界のスパイクは、使い込みすぎてボロボロだった。だから今度こそ、丁寧に扱うと決める。そのまま帰っていると、案の定守男は『奴ら』に絡まれた。

 

「おいそこのテメェ、前はよくもやってくれたな!?」

 

「今度こそぶっ殺してやる!!」

 

「死にな、クズ野郎!!」

 

 ──ドォン!!

 

 殺されそうになるのにはもう慣れているので、守男は相手が凶器を持っていても、至って冷静だった。握り拳を握って、前に一歩踏み出す。次の瞬間に、男が持っていたピストルが発砲された。守男は、それを難なく躱して接近する。

 

「なっ……」

 

「喰らえ」

 

「ごげぁぁぁぁ!?」

 

 ──ズガァァァッ!!

 

 守男は男の顔面を殴りつけ、歯をへし折って吹っ飛ばす。男は頭を打って、脳震盪になったのか動けずにいる。それに怒りを抱いたか、ナタとナイフを持った男二人が迫ってくる。

 

「テメェ!!」

 

「死ね!!」

 

「……甘いな」

 

 守男は無感情にそう言って、ナタを持った男を掴む。そして、そのまま持ち上げた。男は暴れているが、それで抜けられる程守男の力は弱くない。

 

「なっ!? は、離し……」

 

「はぁっ!!」

 

「うわぁぁぁぁ!?」

 

「ぐぎゃあぁぁっ!!」

 

 ──ドゴォォォッ!!!

 

 守男はそのまま、男を背負い投げで後ろに叩きつけた。それは後ろから来ていた男に激しくぶつかって、二人が凶器を手放して倒れた。守男は三人を上から見下しながら、言う。

 

「まだやるか?」

 

「ちく、しょう……化け物め!!」

 

「くそっ、覚えてやがれ!!」

 

「死ね、親不孝者が!!」

 

 そう吐き捨てて、三人は走り去っていった。守男はため息を吐き、久しぶりに愚痴を吐く。

 

「ルサンチマンにあれだけやられても懲りないなんて、相当肝っ玉が座ってるのか、ただのバカなのか……」

 

 恐らく後者だろうなと思いながら、帰り道を歩く守男。あの日来た人達は、全員暴力団に殺されてしまった。見せしめの意味もあったのだろうが、悲鳴など聞いて楽しい物ではない。

 

「そいつが心の底から憎いなら、違うかもしれないけどな」

 

 思い出すのは、遠くない未来に戦うことになる敵。魔王軍四天王、『不退転の軍師』バルカ。彼は、人間を魔王と同じくらい憎んでいる者だ。人間の味方をしていたラプラス、こより、いろはを操って傀儡にして、守男に差し向けた相手。あの時は憎かったが、今となっては……

 

「できれば、戦いを避けたいな」

 

 守男は理想論を呟きながら、家に帰っていった。そして、それから更に時は経ち……結局『スキル』を覚えることなく、30日間が過ぎた。

 

「どうやら『神の寵愛』っていうのは、もうないみたいだな」

 

 別にないと困るわけでもないので、守男はそれでよかった。今日は学園に行く日なので、早起きして朝ご飯を詰め込んでおく。

 

「さて、行くか……」

 

 守男の目的はただ一つ。壊してしまったみんなの人生を、元に戻すことだ。そのためなら守男は、今一度死ぬ覚悟すらあった。

 

「誰だか知らないが、チャンスをくれてありがとう。有効に使わせてもらうよ」

 

 守男はそう呟きながら……スパイクを履いて、二度目の入学式をしに行った。残酷な運命を、書き換えるために。




堀川守男 現在のスキル欄

『ジャッジスルー2改』

『メガトンパンチEX』

『グレイトスラッシュEX』

『サイクロンスラッシュEX』

『ダッシュスラッシュEX』

『クイックキャスト』

『狂戦士の魂』

『フェンス・オブ・ガイアEX』

『鍛え上げられた肉体』

『超スタミナ』

『料理上手EX』

『恐ろしき執念』

『刹那の見切り』

『剣術LvMAX』

『判定強化LvMAX』

『反応速度LvMAX』

『HP強化LvMAX』

『グランドフレイムEX』

『フレイムマインEX』

『軍人の勘EX』

『苦痛無視』

『味覚消失』

『嗅覚消失』

『三大欲求消失』
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