守男の学生生活、再スタート。
守男は荷物を背負って、学園までの道を走ってゆく。その異常な速さに、見た人が目を剥いている。
「な、なんだ!? バイクか!?」
「違う、人だ!!」
「人間があんなに速く走るわけないだろ!!」
周囲からそう言われながら、守男は学園に到着した。守男は学園を見上げて、『前』のことを思い出す。学園は、魔王軍新四天王にして守男の軍人時代の隊長、ジャスティー・アルベルトに燃やされてしまったので、守男の時代には現存していなかった。
「今度こそ、みんながこの学園をちゃんと卒業できるように……」
守男は改めて決意を固めながら、教室へと歩いていく。教室のドアを開けて、懐かしい景色を見る。守男は自分の机に座って、しばらく待っていた。そこでドアが開かれて、わためが来る。
「お邪魔します!! ……あっ、あの時に靴選んでくれた人!!」
「お久しぶりです、同じクラスだったんですね」
「そうみたいだね!! 私、角巻わため!! 見ての通り羊の獣人だよ!! 君は?」
この世の闇など知らない、とても明るい顔で尋ねるわため。眩しい光を見たかのように、守男が少し目を細めながら言う。
「申し遅れました。僕は堀川 守男……見ての通り、人間です」
「わかった!! 堀川くん、よろしくね!!」
「えぇ、こちらこそ」
守男はわための差し伸べた手を取って、握手した。守男はその純真その物の目を見て、少し見惚れると同時に……それがどんどん濁っていった光景を、思い出す。目の前のわためがそれと重なって、守男の体から冷や汗が溢れ出てくる。
「あ、あれ? どうしたの? そんなに汗かいて……」
「いえ、大丈夫です。お気になさらず、ここまで走ってきたもので」
「そっか、ちゃんとお水飲んでね?」
そう言われて、守男は頷いた。そして、怪しまれなかったことに安堵する。心の中で、守男は自身の迂闊な行動を反省した。
(ここで怪しまれたら、元の歴史から行動が変わりかねない。それにわためは優しいし、俺を心配して深く関わってくる可能性もある……そうなったら、また死んでしまいかねない。これからはできる限り、関わらないようにしなければ)
「あっ、わため。もう来てたんだね」
「トワちゃん、おはよう!!」
そう言われて、またしても守男は少しだけ反応する。バレないようにそちらを見ると……体に傷一つない、目に光のあるトワが立っていた。とっくに消えたはずの守男の心が、ズキズキと痛む。そこから、他のみんなも次々に入ってくる。
「おはよう、トワにわため!! 先に来てたんだね!!」
「かなたじゃん、おはよう。かなたが来たってことは……」
「おっ、もう三人いるじゃん!! かなたんに、メンヘラに、羊か……あとは姫様だけだな」
入ってきたココにメンヘラと言われたトワが、不満を顕にしている。そのやり取りを見て、守男は微笑ましく思った。
「誰がメンヘラだって!?」
「ごめんごめん、冗談です!! トワは天使でしたよね!!」
「天使じゃなーい!!」
そんなやり取りをしていると、ルーナが入ってきた。みんなよりは遅い到着だ。まだ眠そうに眼を擦っている。
「おはようなのら~……」
「姫様、アンタまた寝坊かぁ?」
「ふわぁぁ……めちゃくちゃ心配されて、大変だったのら~」
ルーナは席に座って、今にも寝てしまいそうな様子だ。守男はその様子を見ながら、必死に解決策を模索していた。
(まず第一に、流賛と干満をなんとかしないといけない。あいつらに別のことをしているのがバレたら、その時点でアウトだ……その次に魔王だな。とりあえず、バルカは街を襲う前に止めておくべきだろう。それから……)
「みんないるな。じゃあ始めるぞ、みんな席について」
「はーい!!」
全員が席について、教員の指示で自己紹介をしていく。ルーナがゼロ歳と名乗ったせいでみんなが少し混乱するのも、守男の記憶通り。自己紹介は続いていき、守男の番になった。
「じゃあ次、堀川守男くん」
「はい」
「……なんか、変な空気になってない?」
「暗いやつだな……」
そんなコメントが聞こえてくる。そう言われることも予測していた守男は、簡潔に自己紹介をした。
「堀川守男です。趣味や好きな物は特にありません、強さには自信があります。よろしくお願いします」
「……趣味も好きな物もないって、流石に嘘だろ?」
「でも、ガチトーンだったよ?」
守男はまばらな拍手を受けながら、席に戻った。それから教員の指示で、体育館に向かって入学式が行われる。入場してすぐに学園長が出てきた。守男のいた世界では、大半の人間が戦争で死んだので学園長も死んでいるだろう。そう考えて、また守男の心が痛む。
「皆さん、はじめまして。ホロライブ学園、学園長のyagooと申します」
そこから校長の長い話が始まった。寝ている者や余所見をしている者が多い中、守男だけは真面目な顔で耳を傾けていた。
「狭き門を潜り抜けたあなた達こそこの国の、ひいては世界の未来を変える原石なのです。この学園で輝きを磨いて、輝かしい未来を作る宝石となって欲しいと思います」
「……そうですね」
「それでは、皆様お待ちかね……バトルロワイヤルの解説をします」
そう言われて、みんなが起き上がった。守男はそれを見て、苦笑してしまった。
「明日、皆様には仮想空間に意識を飛ばし、広大な空間でバトルをしていただきます。これは殺戮の幇助などではなく、魔王軍に対抗するための戦闘演習であることをご理解ください」
「……わざわざ言うとは、クレームでも来たのか?」
「ギブアップを宣言するか、その世界で倒されるとそこで脱落となります。また一位になった人は、軍事系の職業に就く時に優遇が受けられます」
もう就いているんだけどな。そんなことを思いながら、守男は心の中でため息をついた。それを聞いて、学生のみんながはしゃいでいるが、未来を知っている守男からすれば笑えない。終わらない戦争に駆り出されて、おかしくなっていく者達を見たから。
「では、今日はこれで解散といたします。皆さん、教室にお戻りください」
そう言われて、守男達が教室に戻っていく。ともかく、守男の中で優勝するのは決定事項だった。結果を出せば、ルサンチマンも安堵して油断するはずだと踏んでいるのだ。そうなれば、少しは動きやすくなる。
「武器はあれでいい。あとは鍛えるのを忘れないようにしないと」
「守男くん!! 明日バトルロワイヤルだね!!」
「角巻さんか。えぇ、絶対に優勝します」
決定事項として、守男は言い放つ。わためはその様子を見て、闘志を燃やしているようだ。
「わためだって負けないよ、絶対に勝つ!!」
「楽しみにしておきます。それでは」
「また明日ね!!」
守男は家まで走って帰り、栄養ゼリーを飲んで風呂に入って寝床につく。守男は味覚や食欲がないので、いつもこればかりだった。配給される食べ物は、こっそり人々に分ける日々。
「準備はできた。明日優勝したら……とりあえず、ダンジョンが出るまで待っていよう」
守男はそう決めて、とりあえず眠る。そして次の日、また学園へと向かった。教室には緊迫した空気が流れている……この空気も懐かしいと思いながら、体育館へと向かった。そこには、VR一式と一人用のカプセルが置かれている。
「では、これより! バトルロワイヤルを開始する!! 制限時間は四時間とし、生存者が二人以上いる場合は、よりダメージの少ない方を一位とする!! いいな!!」
「「はい!!」」
「各自準備はできたな!! バトルロワイヤル、始め!!」
そう言われて、目の前の景色が白くなり……景色が市街地に変わる。守男はこの後起こることを知っているので、後ろから来る銃弾を難なく躱す。
「なっ、今のを……がはっ!?」
──ドジャウッ。
「これで一人目だ」
「このぉっ!!」
守男は気づく暇すら与えず、その者の後ろに回り込んで剣を心臓に突き刺した。そこを狙って、剣を持った男が向かってきたが……守男は冷静に拳銃を構えて、二発発砲する。
──ドドォォンッ!!
「グハッ!!」
「ごぁっ、なんでバレた……!?」
「これで三人だな」
守男は隠密魔法で隠れていた者にも銃弾を撃ち込み、二人とも額を撃ち抜いて倒した。守男にとっては、この程度は赤子の手を捻るより容易い。
「そりゃあぁぁぁっ!!!」
「うわぁぁっ、ビルが倒れて……!!」
「ぐぁぁぁぁぁ!?」
──ズドォォォォ……ン。
守男は彼女が来たことを察して、ビルの屋上に飛び乗る。すると、そこにはやはり天音かなたがいた。
「あ、キミ! 奇遇だね! 同じ場所にスポーンするなんて!!」
「話をする場所ではありませんし、早く戦いましょう」
「そうだね……面白くなりそうな予感がするよ!!」
守男はこの戦いに意味を見出していない。かなたは強者との戦いに胸を躍らせているが、守男は戦いに飽き飽きしていた。かなたは拳を構えて、剣を持った守男の懐に飛び込む。しかし、守男はそれを横に動いて躱す。
「はっ、はぁぁっ!!」
「……なるほど」
「でぇやぁぁぁぁぁ!!」
──ドゴォォォン!!
地面に叩きつけられた拳が、ビルにヒビを入れた。守男は冷静に、そのビルから飛び退きながら拳銃を発砲する。
──ダダンッ!!
「うわっと、危ない……!! そこだ!!」
「そう来るのは、わかっていた」
「えっ!?」
かなたが驚愕の声を上げる。それもそのはず、守男は空中で自分の拳を、片手で止めて見せたのだから。
「強い力だな。だけど、俺は負けられないんです」
──ドガァァッ!!
「ぐふっ!?」
「これで終わりだ」
守男はかなたを空中で逆に殴り飛ばし、地面に落とす。そこに剣を投げつけて、一気に刺し貫いた。炎が体を焼き、急所を貫かれたかなたはもう動けない。
──ズジャオォッ!!
「ぐはっ、がっ……まさか、こんな……」
「これで四人か、先は長いな」
「今だ、喰らえ……ぐぇぇっ!!」
守男はそう言って、襲ってくるモブを薙ぎ倒しながら進んでいく。守男は過去の記憶を辿って、次に戦う人を思い出す。しばらく進んで会ったのは、やはり彼女だった。無数の銃を扱う悪魔の女の子、常闇トワだ。守男はそれに対して、早速剣を構えた。一気に接敵して……居合切りの要領で、切り裂く。
「ダッシュスラッシュ!!」
──ブォォォウンッ!!!
「ッ、危ない……!! あなたは……かなたを倒した人?」
「そうですね。あなたも倒させていただきます」
守男は剣を両手で持ち、前に構える。動かされた剣から、火の粉が散った。一方トワは、かなたとの戦いを見ていたので、内心かなり焦っていた。
(……どうする? あのかなた相手に無傷の上、拳を片手で受け止めていた。銃も剣も達人……いや、それ以上? とにかく……少しでも気を抜いたら、一瞬でやられる!!)
「喰らえぇぇっ!!」
──ドドドドォォォンッ!!!
「おぉ、すごい量だ……」
トワは守男に攻撃の暇を与えないために、最初から全力で銃を出現させて撃つ。追尾してきたり、拡散して襲って来る大量の弾を、守男は軽くあしらうように弾いていく……トワは守男に弾かれることを予測して、空を飛んで銃を構えていた。
「サイクロンスラッシュ!!」
──バォォォォウッ!!!
「それは、読めてた!!」
「……グレイトスラッシュ!!」
──ブォンッ!!!
上からの攻撃にも、守男は焦らずグレイトスラッシュで対応する。剣の残像に弾が無効化されて、掻き消えた。そこでトワは、(弾の種類)を変えて上と横の二方向から撃ち込む。
「それなら、これでどうだっ!!」
──ドドドォォォンッ!!!
「なら、こうするだけだ」
「えっ!?」
守男はそこで、マシンガンを取り出して……飛んでくる弾に撃ち込んだ。乱射しているように見えて、その弾はとても正確だ。そして、次の瞬間……弾が全て爆発した。
──ドガガァァァン!!!
「ッ、嘘でしょ……!? どんな化け物……うぐっ!!」
「油断大敵ですよ」
「しまっ……」
守男はその爆風に乗じて、トワに拳銃を撃ち込んだ。撃たれたトワが、地面に落下する。叩きつけられるのを回避するため、羽を羽ばたかせてゆっくり着地した……が、守男はトワの落下先に、スライディングで滑り込んでいる。
「……ジャッジスルー2!!」
──ズダダダダダダッ!!!
──ズダァンッ!!!
「ぐあぁっ、がぁぁっが……うぐっ……!!」
「さようなら、常闇さん」
そう言って守男は、蹴り挙げられて地面に叩きつけられたトワに背を向けた。しかし、トワはまだ諦めていなかった。最後の力を振り絞り、守男に弾を撃ち込もうとする。
「油断大敵!! ……えっ?」
「そう来ることも、予測済みです」
──グォォンッ!!!
「そんな……一体、何者……?」
普通は突然後ろから撃たれれば、少しは戸惑うはずだ。しかし守男は、後ろにも目があるかのように反応して、グレイトスラッシュで叩き落とした。そして即座に拳銃を構えて、トワを撃つ体勢でいる。
「ただの人間です」
「っが……」
「これで……何人だったかな」
守男は淡々とそう言って、歩いていく。守男の目的は飽くまで『彼女達が幸せになれること』であり、自分が幸せになることではない。だから、懇ろになれなかろうと嫌われようと別に構わないのだ。大分人が減った市街地を、守男は歩いていく。そこで守男は、欠伸をしているルーナを見つけた。
「ふわぁ……みんな弱いのらねぇ」
「隙あり」
──ヴォンッ!!
「んなっ!?」
守男が地面を蹴って、ルーナに接敵。そのまま、ダッシュスラッシュを横なぎに振った。しかし、ルーナはそれを躱す。
「……流石にやられてくれないか」
「お前もやられに来たのら? それなら、喰らえーっ!!」
──ブニュッ。
「最初はやはりこれか……はっ!!」
兎が餅つきの臼で地面を叩くと、その部分から餅が溢れ出してくる。それは守男を拘束しようとしてきたが……守男はグレイトスラッシュで切り飛ばした。
──ブォォンッ!!
「あ、焼きたてのお餅になった!! んー、美味しいのら~」
「そういうところは変わらないようだな」
「邪魔すんななのら!!」
守男の記憶通り、ルーナは邪魔させまいと板チョコを飛ばしてくる。これを剣で迎撃したことで、守男は足を拘束されてしまった。しかし、もう守男には通用しない。守男は剣を収めて、両手を握りしめて前に出した。そして、飛んでくるチョコレート達を……殴りつける。
「だぁぁぁっ!!」
──バキィィッ!!
「……あれ? なんで殴ってるのら!?」
「こっちの方が、これには合ってる!!」
チョコは次々粉々になっていき、動かなくなる。ルーナは、それを見てまた魔法を唱える。クリームのついたコーヒービスケットが、守男を挟み込むように出現する。
「それなら、こうなのら!!」
「無駄だ」
──バキャキャキャキャァ!!!
「えっ、そんな……がぁぁぁっ!?」
守男はそこで、サイクロンスラッシュを発動。炎の嵐がビスケットを切り刻んで、粉々にしながらルーナを巻き込んだ。守男はルーナを切り裂いて、一礼する。
「ありがとうございました」
「やられたのらぁ……帰っておやつ食べるのら~」
「これで、あと戦うべきなのは二人か」
それぞれ、わためとココ。どちらも強敵だったが、今の守男にとっては敵にならない。なので、後ろから向かってくるわために対しても……簡単に対応できる。
「グレイトスラッシュ」
「うぎゃあーっ!? な、なんでわかったの……!?」
「気配には敏感なもので」
守男はそう言って、トドメを刺そうとしたが……そう簡単にいかないのがわためだ。毛玉の形をした爆弾を、守男に投げつける。
「でも、諦めない!! 喰らえっ!!」
「こっちだって、負けられないんだ」
──ドゴォォォンッ!!!
「モフモフボムを撃ったか……でも、いくらでも出せるよ!!」
わためは爆弾を次々に投げて、爆弾の包囲網を展開する。しかし、守男は全く焦っていなかった。なんと守男はボムの一つを、思いっきり踏みつけた。
「なら、こうするだけだ」
「えっ、何を……!?」
──ドゴゴォォォン!!!
「はっ!!」
守男は踏んだ爆弾の爆風すら利用して、飛び上がる。爆弾の包囲網を抜けて、わための上を取った。わための綿毛爆弾は、風に乗ってゆっくり飛んでいく。上に投げても、守男には届かない。守男は自由落下の勢いを乗せて、そのまま切り裂く。
「やばっ……!!」
「グレイトスラッシュ!!」
──ブォォォンッ!!!
「うっ、ぐがぁっ……!!」
逃げようとしていたわためは、守男が全力で振ったグレイトスラッシュを受けて、敢え無く倒れ込んだ。そのせいで地面が守男を起点に真っ二つに割れて、わためのところで止まっている。
「これで……あと一人だ」
「すっごく、強いんだね……堀川、くん……」
「……ありがとうございます」
そう言って守男は、消滅していくわためを見届けた。そして後ろから響いてくる足音に、身を翻す。
「ゴリラに天使、姫様に羊……四人ともやっちまうとはなぁ。お前、すげぇ動きしてたぞ」
「お褒めの言葉、痛み入ります」
「だけど優勝は私がもらう!! はぁぁぁぁぁ……!!」
ココの姿がどんどん変わり、大きくなっていく。ココが竜の姿を現して、即座に炎を口に溜める。
「クロスファイア……ブレス!!!」
──ゴァァァァァッ!!!
「グレイトスラッシュ!!」
──ヴォォォンッ!!!
「がぁぁぁっ!? 嘘だろ!?」
なんと守男は、ココの体に唐竹割りを打ち込んで……一撃で怯ませて、ブレスをやめさせた。ココ自身も、これには驚いている。守男は追撃の手を緩めず、次々に攻撃を打ち込む。剣の攻撃が、ココの鱗を削っていく。
「サイクロンスラッシュ!!」
──ズギャギャギャギャッ!!!
「ぐぅぅっ、がっ……舐めるなっ!!!」
──ガシャアァァッ!!!
「おっと。グレイトスラッシュ」
守男は横なぎに振られた尻尾を跳躍して躱し、尻尾に上から剣を叩きつけた。それにより、ココの尻尾が千切れ飛ぶ。
──ブチィィィッ!!!
「ぐぁぁぁぁぁぁッ!!!」
「サイクロン、スラッシュ!!」
──ズジャジャジャジャッ!!!
「うぐっ、ぎっ……やられて、たまるかよ!!!」
鱗の削れた部分に、守男がサイクロンスラッシュを打ち込んだ。ココはもう瀕死だったが、最後の力で口に炎を溜める。守男はそれを見て、両手で剣を持ち……背中に着くまで振りかぶる。
「死ねぇぇぇぇっ!!!」
「グレイトスラッシュ!!」
「なっ、斬られて……がぁぁぁぁぁ!?」
口から放たれた凄まじい炎は、守男によって容易く掻き消されてしまった。そのまま斬撃はココに命中し、真っ二つになる。
「……これで、終わりだな」
「くそっ……とんでもねぇ、強さだ……本当に人間か?」
「人間です。ありがとうございました」
守男はまた一礼して、消滅を見届ける。そこで試合終了のアナウンスが流れた。
(生存者1人! 生存者は……堀川 守男! よって、このバトルロワイヤルの勝者は堀川 守男とする!!)
そのアナウンスが聞こえて、守男が剣を収めた。また目の前が白くなり、現実に戻ってきた守男はカプセルから出て、額の汗を拭く。
「おい、あいつ何者だ……? ほぼ無傷だってよ」
「銃も剣も魔法も当たらない、拳は片手で受け止める……ズルでもしてんじゃねぇのか」
「くそっ、調子乗んなよ……!!」
周囲から嫌疑の声や、冷たい目線が向けられる。しかし守男は、慣れているので何とも思わない。そこでyagooによる表彰が行われて、表彰台を降りる。しかし、それを良く思わない人達が多いようだ。そんな中、戦った人達がこちらに来る。最初に口を開いたのは、トワだった。
「……君も大変だね。大丈夫?」
「ご心配なく。慣れてますから」
「気になったんだけどよ、私にはお前が人間に思えない。何かとのハーフだったり、聖騎士だったりしねぇの?」
そう言われたが、守男は純人間だ。何なら、堀川家の中でも魔法を全く使えない守男は、落ちこぼれとまで言われた程だ。
「いえ、全く。このためにめちゃくちゃ努力してきた、それだけです」
「努力か……勝つだけなら納得もできるけど、無傷な上ボクのパンチを片手で受け止めるなんて……」
「……そういえば、これはなんとなくの感覚なんだけどね?」
わためが突然、守男に言ってくる。次の瞬間、守男は自分の耳を疑うことになった。
「なんでしょう」
「私達、靴屋さんの前にどこかで会ったことない?」
「……は?」
守男はもちろん、みんなのことを覚えている。しかし、他の人が覚えているのは聞いていない。守男は焦った、関わられるのは困ると。もう死なせるわけにはいかないのだから。
「わためも? 実はトワもなんだよね」
「えっ、なになに? もしかして幼なじみ?」
「わからないんだけど、なんか懐かしいような……悲しいような……」
守男の体を、冷や汗が伝う。守男はそこで、ハッキリと言い切った。
「……ごめんなさい。僕は何の覚えもありません」
「そう? じゃあ、やっぱり気のせいかな」
「多分そうだと思います。とにかく、お気遣いありがとうございました。またお会いしましょう」
そう言って守男は、逃げるようにその場を後にした。帰り道を歩きながら、守男は考える。何故、そんな感覚が残っているのか。どうして二人だけで、他のみんなにはないのかと。
「……そういえば」
ひとつ思い出したのは、自分が死んだタイミング。あの時、生きていたのは……トワとわためと、こよりだった。
「だからなのか? 冗談じゃない……」
守男はもう二度と、彼女達を苦しめたくなかった。彼女達を脅かす物だけ殺したら、樹海にでも行って自殺するつもりでいた。それなのに……今日のこれだ。
「もし、思い出したら……」
彼女達はどうなるだろう、そう守男は考える。自分を恨んでくれるなら、それが最善だ。しかし……もしも、それで人格が変わって、生活が壊れてしまったら。
「それだけは、絶対に……」
守男はそう呟いて、必死に考えた。それを避けるにはどうすればいいのかを。
答えは出なかった。
わためは目の前で告げられた言葉が、理解できなかった。でもその言葉は冷たくて。どこまでも現実的で……残酷だった。渡された文書は、冷酷にそれを表している。
《堀川守男少佐 死亡》
「リマーニ国の奴ら、あれで降伏したってよ」
「守男さん、やっぱりすげぇなぁ!! 銅像も立つらしいぜ!!」
周りの声がやけに遠く聞こえた。トワとこよりは、頭を抱えてただ叫んでいる。トワは報告した人に掴みかかって、激怒している。
「う゛あああああああ!!! うそだぁぁ、いやだいやだぁぁっ!! いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「嘘を言うなッ!!! 守男が死ぬわけないッッ!!! トワは守男がいないと生きていけない!!! 返せ!!! 守男を返せぇぇぇッ!!!」
「だから、彼は死んだんですって……!!」
冷静な言葉は、トワの耳に嫌でも入った。涙声で、トワはただ叫び続ける。
「うそだ……うそだぁぁぁ……あ゛ぁぁぁぁ、守男……もりお……あああああああああ!!!」
「……」
「私はもう行きますからね。ったく、うるさい奴らだ」
わためはそんな中、ただ立ち尽くしていた。現実が理解できなかった。したくなかった。でも、理解する他なかった。何より受け入れ難い、好きな人の死。わためは……だんだん、涙が溢れてきた。
「ぐすっ、うっ……もり、お……!! うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
次の瞬間、わためがベッドから飛び起きた。汗でびっしょり体中が濡れている。
「また、この夢だ……どんどん鮮明になってるし、見る時間も長くなってる気がする」
靴屋で守男に出会った夜から、わためはこの夢を見るようになった。それに、長さがどんどん長くなっている。守男が軍人で、それが死んでしまって三人で泣き叫ぶ夢。守男が軍人であるという事実が、妙にしっくりきていた。
「守男くん……か」
わためはそう呟いて、彼のことを想う。何故こんな夢を見るのかと考えたが、答えは出ない。わためはしばらくして、また眠くなってきたので……また目を閉じ、眠りについた。
わためとトワ様の様子が、おかしいようです。