※この作品はR-18です。

対魔忍短編録   作:リクリク

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めちゃくちゃ難産でした。

消しては書き、消しては書きの繰り返し。

ついに触手も(ちょっとだけど)登場。
異種姦もシチュエーションに入ればもう少し幅を利かせられるはず


堕ちゆく幻影 ―淫魔の刻印、幻の愛―

「不知火さん、危ない!!」

 

「っ⁉」

 

 小太郎の叫びに振り向いた瞬間、不知火の視界に銀光が閃いた。

 眼前に迫る鋭いナイフの刃――それを間一髪、後ろへと跳ぶことで避けるも、わずかにバランスを崩す。

 

 膝が沈み、よろけた身体。

 そこへ間髪入れず、勢い余って突っ込んできた敵が――

 

「っはあっ!!」

 

 薙刀では間に合わないと判断した不知火は、すかさず苦無を投擲。

 眉間に突き刺さった男はもんどりうって後ろへ倒れた。

 

 一瞬の攻防。

 熟練の対魔忍である不知火だからこその瞬時の判断と、一投のもと敵を滅する技量に、小太郎は感嘆の声をあげた。

 

「流石です不知火さん。俺の助けなんていらなかったですね」

 

 小太郎は構えていた忍者刀を鞘に納めると、不知火へと声をかける。

 声をかけられた不知火は、どこかぼんやりとしながら、倒れ伏した男へと視線を向けていた。

 

「不知火さん?」

「えっ、あ……ごめんなさい。考え事を……してたみたい。何かしら?」

「いえ、流石だなって。俺だったらあそこまで迫られたら対処できなかったですよ」

「そんなことないわよ。あの程度、あなたでも対応できたわ。むしろーー」

 

 ーー小太郎がいなければ危ないところだった。

 

 漏れ出そうだった言葉を飲み込み、不知火は軽く頭を振った。

 

 最近注意が散漫になることが増えた。

 

 例えば任務中であったり――

 これまでなら先んじて察知していたはずの気配に、遅れて反応してしまったことが何度かあった。

 攻撃を受けたわけではない。誰にも気づかれてはいない。

 だが本人だけは、確かに“遅れた”瞬間を自覚していた。

 

 例えば、娘との夕食の席であったり――

 湯気の立つ味噌汁の前で、手にした箸が止まったまま、ぼんやりと一点を見つめてしまうこともあった。

 ユキカゼに「お母さん、聞いてるの?」と何度か呼びかけられ、ようやく我に返る。

 そんなことが、一度や二度では済まなくなってきていた。

 

 喉の奥に、なにか鈍い塊のようなものが引っかかっている――そんな感覚だけが、消えずに残っていた。

 

 熟練の対魔忍として、そしてアサギの右腕として、日々激務に追われる不知火は、ここ最近まともに休めていないのは確かだった

 

 だがそれでも、今までは軽い疲労感を感じることはあっても、任務中…ましてや戦闘中に注意散漫になるなど一切なかった。

 

「不知火さん?」

「…いえ、なんでもないわ、行きましょう」

 

 困惑顔で訪ねてくる小太郎にそう返すと、不知火は薙刀を強く握りしめ、廃墟の奥へと歩みを進めた。

 

 その時。

 対魔忍スーツの布地越しに薄ぼんやりと光る下腹部に、小太郎も、そして不知火も気が付いていなかった。

 

 

 ☆

 

「ただいま」

 

 不知火が自宅に戻れたのは時計の針が頂点を少し過ぎた頃だった。人っ子一人いない暗い玄関は不知火の帰還を無言で迎える。不知火は靴を脱ぐと、踵同士を擦り合わせて乱暴に脱ぎ捨てた。

 シャワーでも浴びようかと考えたが、そのまま寝室へと向かった。ジャケットを床に放り投げパンツを脱ぐと、そのままベッドに倒れ込む。

 うつ伏せのまま、不知火は枕に顔をうずめた。

 任務中は気を張っているため、疲労や睡魔などの身体に伸し掛かる重さを感じることはなかった。だがこうして一人になると、途端に全身を倦怠感が襲う。

 

 不知火は、暗闇の中で静かにまぶたを閉じた。

 

(……いけないわね)

 

 このまま眠ってしまえば明日に響くのはわかっているが、身体が言うことを聞いてくれない。

 

「ふ……ぅ……」

 

 気怠い身体。視界を閉じて意識を内に向けると、ぼんやりと下腹部に灯る、かすかな熱が浮かび上がる。

 ただの疲れではない、それと混じるような、鈍く疼くような感覚。

 その存在に気づかぬふりをしながら、けれど手は自然と腰のあたりへと滑っていた。

 

(……ほんの少しだけ)

 

 誰にともなく、言い訳のように囁くと、不知火はそっと指を脚の間に添えた。

 

 くちゅり。

 

 そっと触れたショーツのクロッチ部分が、いやらしい水音を立てる。

 不知火は枕に顔をうずめたまま、薄い布地越しに秘裂をなぞり始めた。

 

「ふぅ……んっ……」

 

 布を少しずらし、指先が割れ目の内側に触れた瞬間、ピクリと太ももが震える。数日前にも散々弄ったばかりのはずなのに、今日のそこは変わらず敏感で、ひと撫でするたび、甘い吐息が漏れ、背筋にぞくりとした快感が這い上がってくる。

 

「っ……ん……ふぅ……」

 

 不知火の細い指先が、秘裂の上をゆっくりと前後に滑る。

 ときおり豆肉をかすめるたび、小さく腰が跳ねた。

 

「んんっ……はぁ……♡」

 

 くちゅくちゅと湿った音が、静かな室内にいやらしく響く。

 布団の中、肌に触れる空気すらも熱く感じられ、太ももは小刻みに震えている。秘裂から溢れた蜜が指をたっぷりと濡らし、ぬるりと絡みつくその感触に、腰が勝手に跳ねた。

 

 

(ああ……気持ちイイ……♡)

 

 任務のこと、身体の不調、生徒たちの訓練の予定――。

 日常を構成する全てが快感に溶かされ、意識の底へと沈んでいく。

 

 指は意思を持ったかのように、焦らすように、時に執拗に、秘裂をなぞる。

 そして――。

 

(ああ…あなた)

 

 盛り上げるために思い浮かべたのは、懐かしい夫の腕だった。

 あの日、ぎゅっと抱きしめてくれた温もり。大きな掌。優しい声。

 

(あなた……)

 

 甘く呼びかけたその瞬間、思い出の中の彼は、そっと微笑みながら不知火を押し倒した。

 ――そして、冷たい光を灯した瞳で不知火を見下ろし、にたりと口元を歪める。

 不知火の妄想のはずの夫は、対魔忍スーツを纏い、その瞳には加虐の色を灯している。

 

『こんなに、ぐずぐずになって……ゆきかぜに見られてもいいのか?』

 

 嘲りすら含んだ声音。

 

 

 「っ、あぁん!」

 

 その言葉は不知火の妄想に過ぎない。

 しかしそれは彼女の身体をさらに熱くし、指先に力が籠る。

 

『ほら、もうこんなになってるぞ?』

「あっ♡ああっ♡」

 

 夫の声とともに、指の動きも激しくなる。

 くちゅくちゅと響く水音が大きくなり、快感のボルテージが上がる。

 

 幻の夫の大きな手が重なり、容赦なくぎゅっと強く乳首を摘まみ上げ、捏ね繰り回す。不知火は堪らず喉をのけぞらせた。

 がくがくと震える不知火を見た夫は、にやりと笑うと、さらに激しく責め立てる。

 

 まるで操られるように、不知火の手は動き続ける。

 

『まったく、どうしようもないなお前は』

「ああっ♡あっ♡ああぁんっ♡」

『幻影の対魔忍なんて嘯いている癖に、一皮むけばただの雌だ』

「はぁあっ♡い、言わないでぇ……♡」

『そら、イケ』

 

 夫の声とともに、とどめとばかりに秘豆を強く押しつぶす。瞬間ーー

 

「~~~~~~~っっ♡♡♡」

 

 不知火の身体が一際大きく痙攣する。顎が跳ね上がり、つま先が伸び、背中が浮き上がる。ガクガクと震えるたびに胸が揺れ、ギシギシとベッドのスプリングを軋ませる。秘所からは水鉄砲のように勢いよく潮が溢れだしシーツに染みを作っていた。

 

「お゛っ♡お゛お゛っ♡」

『ははは、お得意の蒼月刃か?ここには敵はいないだろ』

「ん゛ん゛ぅぅぅぅぅぅ⁉♡」

 

 浮き上がった腰に添えられた手が、ビンビンに勃起した肉豆をぐりゅっと捻る。快楽電流でショートしていた脳にとどめとばかりに過電流が流れ、身体がバタバタと異常な動きをする。

しかし夫の手は止まらない。指先で摘まんだ肉豆を、思い切りひっぱる。

 

「ん゛お゛っ♡い゛ぎぃっ♡♡♡」

 

 絶頂の最中にも容赦なく襲い掛かる快感に、不知火は獣のような叫び声を上げてのたうち回ることしかできなかった。

 

『なんだもう終わりか?』

「あ゛……あ゛ぁ……」

 

 ようやく夫が手を離す頃には、不知火の全身は汗まみれでぐったりと脱力していた。秘所からはまだぴゅっぴゅっと潮を吹き出し、口からはぶくぶくと泡を吹き、白目をむいたその有様は、とても対魔忍とは思えない惨めな姿であった。

 

「あ゛ー……っ♡」

『まったく、だらしのない女だ』

 

 不知火の幻の夫が呆れたように笑う。

 その瞳に宿るのは、先ほどまでの侮蔑の色はなく、どこか愛しそうな色をしていた。

 

『ほら、ちゃんとしろ』

「ん゛ぉ……♡」

 

 幻の夫はいつの間にか対魔忍スーツを脱ぎ、鍛えられた裸体を晒すと、気を失ったように脱力する不知火の前にビキビキに勃起した肉棒を突き出す。

 

『舐めろ』

「ん゛っ…ぉ゛…へろ…ちゅぱ…じゅる」

 

 支配者としての尊大な口調。

 半開きの口から、だらりと垂れさがっている舌が、肉棒へと添えられ舐め上げる。

 

 だが夫はあくまで不知火の妄想の中の存在だ。当然その立派な肉棒は実態を持っておらず、不知火の下はただむなしく空中を滑るだけ。

 

「んっ♡んふっ……♡」

 

 それでも不知火は、肉棒に奉仕するのをやめようとしない。それどころか、まるで本物の対魔忍が相手であるかのように、丁寧に、そして熱心に舌を動かし続ける。

 

『…まぁ、ここまでだな』

 

 幻の夫はそう吐き捨てると、不知火の頭を両手で掴んだ。

 白目を剥き、涙と鼻汁で汚れた美貌。開いた口から蛇のように空中のくねる舌が、その惨めさを際立たせる。

 

 しばらく不知火の醜顔を見つめていた夫は、ふっと笑うと雲のように消えた。

 

「あ゛ー……おほっ……♡」

 

 後に残ったのは、いまだに快楽痙攣を続ける雌対魔忍。、切なげに震える蜜穴からは、止まることなく蜜が溢れ、むわりとした性臭が湯気を上げ漂っていた。

 

 ☆

 

 

 「ご苦労様、1杯どう?」

 

 深夜の五車学園。

 その学園長室を訪れた不知火を出迎えたアサギは、氷の浮かんだロックグラスを持つ片手を軽く上げると不知火に座るよう促した。

 

「そうね…貰おうかしら」

 

 不知火の言葉に、裏返されていたグラスを手に取ると、アイスボックスから氷を数個入れ、琥珀色の液体を注ぐ。

 そのまま不知火にグラスを手渡すと、自身のグラスを掲げた。

 

「乾杯」

「乾杯…」

 

 一口含み風味を楽しむと、喉へと流し込む。

 久しぶりに飲んだウイスキーは、記憶のものと違わぬ味で、不知火の気分を少しだけ良くさせた。

 

「今日はありがとう。幻影の対魔忍に稽古をつけてもらって、学生たちにもいい刺激になったみたい」

「礼には及ばないわ。対魔忍として当然のことをしただけ」

「相変わらずね……」

 

 アサギは大袈裟に肩をすくめて見せると、グラスに口を付ける。

 

「ところで――なにか、悩み事でもあるの?」

 

 氷の溶ける音が、グラスの中で小さく響いた。

 

「……なんのことかしら」

 

 不知火は視線を逸らさず、けれどその眼差しは僅かに揺れていた。静かにグラスを傾ける仕草にも、わずかに躊躇が混じる。琥珀色の液体が喉を落ちていく感覚に集中することで、言葉を誤魔化そうとしているようにも見えた。

 

 アサギはその様子を、まるで観察するようにじっと見つめた。薄く笑みを浮かべながらも、その目は一切笑っていない。

 

「……今日の実戦訓練、見させてもらったわ」

 

 不知火の手が、ほんの僅かに止まった。

 

「あなたらしくなかった。動きは正確だったけれど、隙だらけ。それに――」

 

 アサギはグラスを置き、背もたれに軽くもたれた。

 

「ふうま君からも相談されたの。最近、任務中に小さなミスを繰り返しているって」

 

「……そう」

 

 ようやく返された不知火の声は、どこか乾いていた。肯定でも否定でもない、ただ事実を受け止めたような――疲れきった声音。

 

「なにか……あった?」

 

 アサギは不知火の目を真っすぐに見据えたまま、言った。

 それは優しげでありながらも、一切の虚偽を許さないという、意思が込められていた。

 不知火はしばらくの逡巡の後――口を開いた。

 

「……最近……調子がよくないみたいなの」

「調子?任務のことかしら」

「……ええ……」

 

 不知火が言い淀む様子に、アサギはわずかに眉を寄せる。

 だがそれ以上追及することはせず、ただ静かに先を促すように頷いた。

 

「少し……身体が重たいというか、気怠い感じなの。訓練や任務は問題ないのだけど」

 

 不知火が話している最中も、アサギの目は彼女の身体の線をなぞり続けていた。特に下腹部と腰回りを注視しているようだったが、その理由を知る由もない不知火は話を続ける。

 

「あとは……」

 

 そこまで言って言葉を切ると、再び不知火の手が止まりかけたのを誤魔化すように、グラスを口に運ぶ。

 

「あとは?」

「……最近……その……あの人の夢をよく見るの」

 

 自慰行為に浸り、幻の夫に嬲られ感じているとは流石に言えなかった。不知火はわずかに顔を赤らめながら、小さな声でそれだけ言った。

 

「そう…」

 

 アサギはそう呟くとグラスの中身を一息に飲み干した。

 不知火の夫が命を落としたのは、井河内部が二つの派閥に割れ、きな臭さを増していた頃のことだった。

 アサギを頂点とする改革派と、長老衆を擁する保守派――その確執の中で、アサギ派の実力者であった不知火の夫は、敵に囚われ、拷問の末に殺された。

 長老衆の企みにより事前に情報が流されていたという噂だが、真偽は今となってもわからない。

 

 家庭では愛妻家であり、父親としても娘を溺愛していた男だったと、アサギは記憶している。

 不知火がその死を乗り越え、娘を育てながら任務に身を捧げてきた日々――それを、アサギは誰よりも近くで見ていた。

 

(……癒えるはずがないわよね、あれほどの喪失が)

 

 アサギは小さく、そしてどこか自分を責めるようにため息を吐いた。

 

「……ごめんなさい、変なことを訊いて」

「いいのよ」

 

 不知火は静かに答えた。

 しばしの沈黙がアサギの執務室に流れる。

 

「ねぇ、不知火」

「なに?」

「不知火――しばらく休みなさい……温泉宿を手配してあるわ。疲労回復にちょうどいい、源泉かけ流しのところよ」

 

「いまは…」

「英気を養うのも仕事のうち」

 

 反射的に断ろうとした不知火の先を取るように、アサギは間髪いれずにそう言った。

 

「……随分と用意がいいのね」

「あなたが断るの、読めてたから」

「特務中隊はまだ軌道に乗ったばかりよ。五車の内部にもふうまの当主に個人戦力を持たせることに反対している連中はそれなりにいるわ…私とアナタ、そして特務中隊の成果でなんとか封じているけれど…」

「少しの間ならなんとかなるわ。それよりも貴女の不調の方が問題よ、不知火」

 

 アサギの言葉に、不知火は目を伏せた。

 

「……わかったわ。そこまで言うなら」

「そう……よかった」

 

 アサギはグラスを傾けると、中の氷をくるりと回した。

 

 

 

 

 アサギが紹介してくれたのは、都内から離れた山中にある旅館だった。

 

 静寂な山道を走る送迎車のエンジン音が止まり、不知火は小さく息を吐いた。

 車のドアが開かれると、涼しい山の空気がふわりと流れ込み、肌を撫でる。

 

 目の前には、しっとりとした風情を湛えた和風旅館が佇んでいた。

 瓦葺きの屋根に、軒先から吊るされた行灯が揺れている。

 小さな看板には、筆文字で「湯月亭」と記されていた。

 

「ようこそ、お越しくださいました」

 

 正面玄関から現れたのは、まだ二十代後半に見える若い女性だった。

 黒の作務衣に身を包み、端正な顔立ちには無駄な言葉を持たぬ静けさがあった。

 

 「女将の黒羽と申します」

 

 女――黒羽は、優しげな笑みを浮かべると頭を下げた。

 

「不知火です」

「お荷物の方はこちらでお預かりします。貴重品だけは身に着けていらしてください」

 

 玄関に控えていた仲居の女性がにっこりと笑って言った。

 不知火が旅行鞄を手渡している間に、黒羽は旅館の中へと手を向ける。

 

「どうぞ、ご案内致します」

 

 ゆっくりと歩き出すその背に続きながら、不知火は小さく息を吐いた。

 正直あまり気乗りしたわけではなかったが、せっかくアサギが用意してくれたのだ。せめてこの機会にゆっくり休むことにしよう。

 

「こちらがお部屋となります」

 

 黒羽が足を止めた部屋は、1階の端に位置していた。

 小ぢんまりとした和室は清潔感があり、窓から見える景色もなかなかのものだったが、ただ一つ気になる点があった。

 

「あら、露天風呂」

「はい。こちらは当館の売りのひとつでして……」

 

 黒羽は、微かに苦笑して言った。

 部屋の奥側に設えられた窓――その向こうに、赤褐色の岩に囲まれた湯溜まりがあった。木枠の湯船から溢れだす温泉が、湯気を立てながら流れ込んでいる。

 不知火は小さく笑みを浮かべると、部屋に入った。

 

「いいわね」

「ありがとうございます……ご夕食は18時から広間にてお出し致しますので……それではどうぞごゆっくり」

 

 黒羽は静かに頭を下げると退室した。一人残された不知火は、改めて部屋を見回した。

 古いながらも手入れの行き届いた内装や調度品の数々からは、そういった旅館に宿る独特の「空気」が感じられた。

 

(まぁいい……しばらくは任務を忘れてゆっくりするとしましょうか)

 

 ゆっくりと畳の上に腰を下ろすと、軽く伸びをする。

 今日は朝も早かったためか、身体が少し重かった。

 そのまま畳の上に寝転がると、不知火は静かに目を閉じた。

「……う……ん……」

 

 微かに揺れる感覚で目が覚めた。どうやら少し眠ってしまったようだ。

 

(いけない……うっかりしてたわね)

 

 気怠さは抜けていないものの、このまま眠るのは良くないと思い身体を起こす。外はすでに暗くなっており、部屋の中には行灯の仄かな灯りだけが満ちていた。

 

「目が覚めたかい、不知火」

 

 声に振り返ると、そこには夫の姿があった。

 旅館に不釣り合いの対魔忍スーツに身を包んだ夫は、不知火の寝ころぶ隣に腰を下ろす。

 

「あら、あなた……」

 

 夫の姿を前にした不知火は、思わず頬を緩める。

 まだ少し気だるさは残っていたが、愛する夫が傍にいるというだけで心は安らぎ、幸福感が胸を満たす。

 

(ああ……やっぱり私はこの人のことが大好きなんだ)

 

 改めて自覚すると共に、自然と身体が動いていた。

 不知火は夫の身体にしな垂れかかると、その胸に顔を埋めた。

 

「ん……ふふ……♪」

 

 甘えるように鼻を鳴らすと、不知火は上目使いに夫を見上げた。

 いつもの欲望に根差した幻ではない。在りし日の優しい夫の姿がそこにあった。

 

「ねぇ……あなた」

 

 不知火は夫に身体を擦りつけながら、その耳元に囁いた。

 

「……抱いて……」

 

 夫の幻の口元が、微かに歪んだ。

 

 

 

「ん……ちゅっ……れろぉ……♡」

 

 布団の上に横になった夫に、裸体を晒した不知火は覆いかぶさると、その唇を奪うように口づけた。舌を差し入れ、口内を舐り回すと唾液を送り込む。夫はそれを受け入れると、逆にこちらの舌を絡めとり吸い上げてきた。

 

「んっ♡ちゅぅ♡じゅるるるっ♡ああ、あなたぁ♡」

 

 不知火は夢中で舌を絡ませながら、その胸元を撫でた。かつて不知火を安心させてくれた分厚い胸板。その感触を楽しみながら、夫のシャツのボタンを外し、胸板を露出させる。

 

「ちゅ……れろぉ……♡はぁ……ん♡」

 

 不知火は夫と舌を絡ませあいながら、その胸板に両手を這わせた。鍛えられた筋肉の感触を楽しむように撫で回し、時折指先で乳首を転がすように愛撫する。

 

(あぁ……なんて逞しいの♡)

 

 不知火はその逞しく雄々しい身体に夢中になった。まるで盛りのついた雌犬のように身体をくねらせ、股間を押し付ける。

 紺色の下忍用対魔忍スーツにねっとりと粘り気のある汁が染み込み、少し腰を浮かせば秘裂との間に糸が引く。

 不知火は夫の上で淫らに踊り、その逸物を味わうように股間を擦り付けた。

 

「あはぁ♡あなた……っ♡」

 

 幻の肉棒は、伸縮性のあるスーツを内側から押し上げるように屹立し、不知火の秘裂にぴたりと沿う。生地越しの熱がいやらしく伝わり、敏感な花弁を、ゆっくり、確実に擦り上げていく。

 

「っ……あぁっ……♡」

 

 不知火は堪らず腰を揺らした。快感を逃がすまいと、無意識に肉を求めるように擦り寄る。

 

「あっ♡んぁっ♡だめ……そんな……あぁんっ♡」

 

 男の上で恥ずかしげもなく腰を振り擦り、淫らに舞う不知火。

 そんな妻の姿を前に、幻は笑みを浮かべた。

 

「どうした不知火……そんなに腰をくねらせて……」

「だってぇ♡あなたがぁ♡あぁんっ♡」

 

 不知火の瞳には既にハートマークが浮かび上がり、その表情はすっかり蕩けていた。彼女の理性はすでに快楽に屈していた。

 

(ああっ……♡やっぱり夫の前だと何も我慢できないっ♡)

 

 夫とのセックスに溺れる自分をどこか冷静に自覚しながらも、その欲望を止めることはできなかった。

 

「あはぁっ♡あなたっ♡好きぃ♡大好きぃ♡」

 

 不知火は夫に抱きつき、その首筋に顔を埋める。

 

「ん……ちゅっ♡れろぉ……♡」

 

 舌を這わせ、肌をねぶるたび、幻の夫の首筋は不知火の唾液に濡れ、熱を帯びていくかのようだった。

 

「ふふ、くすぐったいよ……不知火。そんなに夢中になって……」

「だって……んんっ♡あなたの味、好きなんだもん……♡」

 

 潤んだ瞳で見上げる不知火の頬に、夫は苦笑を浮かべながら手を添える。

 

「……ねぇ、不知火。挿入()れてほしいのかい?」

「っ……そんなの、聞かないで……♡ほしいに決まってる……♡奥まで、いっぱい、ちょうだい……♡」

 

 震える声で懇願する不知火に、夫は微笑を深めると、身体を起こし、不知火に両手を着いて待つように告げる。

 夫の言う通り、薄い布団に両手と膝をつき四つん這いとなった不知火。その背後へとゆっくりと回り込んだ。

 四つん這いの姿勢をとった不知火の腰、丸みを帯びた尻を包むようにそっと手を添える。

 濡れそぼった秘裂がヒクヒクと蠢き、そこへ幻の肉棒が静かに押し当てられた。

 

「じゃあ、ゆっくり……いくよ」

「うん……♡お願い……あなた……♡」

 

 ぬぷっ、と肉が肉を割る音が響く。

 幻影のはずなのに、確かな質量と熱をもって、不知火の中へとゆっくりと挿入されていく。

 

「ふあっ♡あっ♡んぅぅ……♡は、挿入(はい)って……♡きてるぅ……♡」

 

 後背位で繋がれた不知火は、快感の波に震えながら、声を漏らした。

 突き上げられるたびに、腰が跳ね、乳房が揺れる。

 幻の夫の律動は、現実以上に濃密で、深く、甘く、脳を痺れさせるようだった。

 濡れた音が、静かな部屋にいやらしく響く。

 不知火の秘裂が、幻の夫の熱棒をぎゅうっと締め上げるたび、肉と肉が絡み合う水音が艶めかしく弾けた。

 

「んっ♡んんっ♡あっ♡あなた……っ、気持ちいい、のぉ……♡」

「不知火……やっぱり君の中、素晴らしいよ」

「そ、そんな……っ♡んあぁっ♡言わないで……♡恥ずかしい……♡でも……うれし……っ♡」

 

 夫の腰がゆっくりと、しかし確かなリズムで突き上げるたび、不知火の身体は甘やかに揺れた。

 髪をかき上げられ、うなじに唇が落ちると、ぞくりとした痺れが背骨を這い、そこから下腹部へと快楽の奔流がなだれ込んでくる。

 

「んっ♡んんんっ♡あっ、深いっ♡そこ……すごい、きてるぅっ♡」

「もっと気持ちよくしてあげるよ、俺の不知火……」

「んっ♡ふふ……♡もう、いじわる……」

 

 その声に応えるように、夫の手が後ろから不知火の丸い尻をぱしんっと叩く。

 

「ひあっ♡いまの……♡もっと、して……♡」

「こうか?」

「んっ♡んああっ♡そうっ♡そういうのも……っ、好き……♡あなたの好きにしてぇ♡」

 

 叩かれた瞬間の痛みが、甘い火花となって快感へと変わる。

 頬が火照り、腰が勝手に揺れる。不知火の全身が、まるで「もっと」とせがむかのように、夫の動きに絡みついていく。

 

「ふぁっ♡あっ♡んあぁ♡いくっ、またイクゥッ♡」

 

 高鳴る心音、揺れる乳房、溶けたような表情。

 不知火のすべてが、愛する者に抱かれる悦びに染まっていた。

 

 腰を振るたびに、びしょ濡れの蜜壺が夫の熱に絡みつく。

 腰をぐっと押し出す。

 

「もう……ダメ……っ♡」

 

 不知火の吐息が熱を帯び、背中から伝わる夫の体温に溶けていく。後ろから深く突き上げられるたび、濡れた蜜壺がぴくんと跳ね、快楽の波が腰から背へと駆け上がる。

 

 身体の奥で、火照った肉がすり合わさる感覚。何度も達したはずなのに、夫の熱が触れるたび、また新たな快感が生まれてしまう。

 

「くふっ……♡もっ……奥っ……♡んんんっ♡」

 

 ひときわ強い一突きが、不知火の奥底を抉る。

 その瞬間――

 

「イク……っ♡もう、イッちゃうのぉっ♡♡」

 

 絶頂の叫びとともに、全身が跳ねた。膣がきゅうっと締まり上げ、そこへと重なるように、夫の腰が一際深く沈み――。

 

「ああ……俺も……っ、イクぞ……っ」

 

 次の瞬間、溶けるような熱が、不知火の奥へとどぷりと注ぎ込まれる。

 熱く、濃く、愛おしさに満ちた奔流。それが奥の奥へと届くたび、不知火の身体は小さく震えながら、夫の愛をその身に刻んでいった。

 

 

 

 

 

「ん♡ちゅぶ…ちゅば♡じゅるぅ♡ん……♡ ちゅっ、んふ……んん……♡」

 

 湯舟に浸かる夫の股座に顔を沈め、不知火は一心不乱にその肉棒をしゃぶっていた。

 湯に入る前に流して落そうとしたが夫は受け入れず、なし崩し的に不知火が舐め清めることとなった。

 

 自身が分泌した汁と中で出された白濁が混ざり、生臭い塩気のあるミックスジュースが口内を満たす。

 

「ちゅ……ん、はぁ♡れろぉ……♡」

 

 熱い湯の中に沈んでいるのに、不思議と息苦しさは感じない。口内の肉棒の脈動は、熱でぼんやりとしてきた頭には心地よく、うっとりとした表情で舐め上げていく。

 

「ふふ、上手だよ不知火」

 

 夫の大きな手が優しく頭を撫でる。不知火は嬉しくなって目を細めると、口内の肉棒に丹念に舌を這わせた。

 裏筋を舐め上げ、亀頭をしゃぶりあげながらカリ首を舌先で擽る。そうして幹から根元までを丁寧に愛撫し終える頃には、夫は再び股間を屹立させていた。

 

「あはぁ……♡元気ですね♡あなた♡」

 

 妖艶な笑みを浮かべながら見上げると、夫も笑みを浮かべて見つめ返してくる。その笑みに応じるように、湯舟に手をつき臀部を突き出すようにして再び後背位を受け入れる態勢を取る。

 不知火の誘いに満足げに頷いな夫は、にやりと笑みを浮かべると静かに目を閉じた。

 

「あなた?どうされましたか?」

「……不知火」

「え?」

 

 呼ばれた声に顔を向ければ、そこには全裸の夫がいた。その股間には先ほどまで肉穴を抉り、欲望を吐き出した肉棒が雄々しく立ち上がっている。

 慌てたように後ろを見やれば、同じように肉棒を勃たせた夫が意地の悪い笑みを浮かべて不知火を見ている。

 

「っ!!」

 

 咄嗟に不知火は構えを取った。それは長年鍛え抜かれた対魔忍としての反射的な行動であり、夫もそれを予期していたのだろう。

 

「ダメじゃないか不知火。今はセックスに集中しないと」

 

 優しい声音でそう言うと、夫の幻は不知火の胸を揉みしだいた。

 途端に不知火の肉体から力が抜けていく。まるで長年連れ添った夫婦のように、自然と身体が夫を受け入れてしまうのだ。

 

(……ああ♡)

 

 膣内いっぱいに感じた肉棒の熱さを思い出し、不知火は甘い吐息を漏らす。

 

「ん……♡もう……あなたったら♡」

「ほら、続きをしよう。前と後ろから突き刺してあげるよ。ドMな不知火はそれが大好き…だろ?」

「…っ♡」

 

 夫の手がふと離れる。

 愛撫の余韻が乳房に残る中、不知火はそっと夫から距離を取ると、腰を屈めて突き出し、くぱりと濡れた秘裂を開くと、自らの指でくちゅくちゅと弄り始めた。

 

「はいっ♡……っ♡不知火を…この淫らな雌豚を可愛がっ(いじめ)てくださぁいっ♡」

 

 懇願とともに腰をくねらせる不知火に、夫の幻は満足げな笑みを浮かべると肉棒を見せつけるようにしてゆっくりと近寄る。そしてそのまま一気に突き入れた。

 

「お゛ほぉっ♡きたぁッ♡♡」

 

 待ち焦がれた夫の感触に、不知火は歓喜の声を上げた。膣内を満たす熱量が子宮口を押し上げるたびに、甘い快感が全身へと広がっていく。

 不知火の腰を掴むと、その身体を揺さぶるように動かし始めた。膣壁を擦る肉棒の感触に遠慮は感じられず、蕩けた肉穴は子宮を支えられなくなったのか、子宮口が下りてくるのを感じる。

 

「あ゛っ♡お゛っ♡お゛っ♡ん゛ぉおっ♡」

 

 ばちん、ばちんという音と共に不知火の身体が跳ね上がる。夫の動きに合わせて揺れる乳房が湯を波立たせた。

 

「ふふ、良いよ不知火……もっと乱れて……」

「んお゛っ⁉♡お゛ぉっ♡ぐぶっ…じゅぷ♡」

 

 成り行きを見守っていたもう一人の夫が、不知火の頭を掴むと、その口に剛直を突き入れた。突然のことに目を白黒させるも、不知火は素直にそれを受け入れる。夫の匂いを鼻いっぱいに吸い込むと同時に、喉奥まで犯される快感に身を震わせた。

 

「お゛ぇ……っ♡んぶぅ♡」

 

 強烈な吐き気に襲われるも、身体は正直に反応してしまう。夫への奉仕に舌が動き出し、口の端からはだらしなく涎が流れ落ちた。

 その様子を見て気を良くしたのか、夫はさらに深く肉棒を押し込んでくる。

 喉が肉棒の形に内側から膨れ上がるほどの圧迫感。そして息苦しさ。しかしそれすらも今の不知火にとっては心地よい刺激にしかならない。

 

「お゛ぉっ♡お゛ぉ♡」

 

 膣と喉を同時に擦り上げられ、酸欠となった脳は機能を停止し、不知火の意識は飛びそうになる。徐々に上向いていく瞳、無様に流れ出る鼻水に涙。

 その美貌をぐしょぐしょに汚し、不知火は白目を向いて身体を強張らせる。

 

「んぶぅ♡おごっ♡……あ゛っ♡」

 

 ぷしゅっ

 

 喉奥を鋭く突かれたと同時に、不知火の股間からも勢いよく潮が噴き出す。それは波立湯舟に落ち、湯船の湯をに溶けて消える。

 

「ふふ、不知火ったら……そんなに気持ち良かったかい?」

「ん゛っ♡んんっ♡じゅぼっ♡」

 

 夫の幻が優しく頭を撫でると、不知火は必死になってそれに答えた。もはや意識も定かではないのだろう。それでも健気に夫を満足させようと舌を動かし続けるその姿には愛おしさすら感じさせるものがあった。

 不知火の膣内で肉棒が震え、その大きさを増していく。射精が近いことを悟った不知火はさらに喉奥深く、そして腹部に力を込めて締め付けていく。

 

射精()すよ……不知火。しっかり受け止めてくれ」

「んっ♡んん゛っ♡♡」

 

 夫はそう言うと、不知火の頭を強く押さえ込んだ。それと同時に口内の肉棒が爆ぜる。大量の白濁液が喉へと直接流し込まれた。その勢いと量に窒息しそうになるものの、それでも懸命に飲み干していく。

 膣穴を使っていた夫もまた自ら腰を突き出し、不知火の頭を押し付けるようにして離さない。

 どびゅるるるるるっと白濁の液が膣内に注がれ、子宮口に流れ込んでいく。

 

 「んぶっ♡お゛ぉ♡……んくっ、ごくっ♡」

 

 喉を鳴らして飲み干していくが、それでもなお射精は止まらない。不知火の腹部は徐々に膨れ上がり、やがて限界を迎えると逆流し始めた。

 

「お゛ぇ……っ♡げほっ!ごぼっ!」

 

 肉棒を引き抜かれた途端、不知火はその場に蹲り嘔吐する。びちゃびちゃと音を立てて胃の中のものをぶちまけるも、それでもまだ収まらないのか何度もえずくように身体を震わせる。

 

「はぁ…はぁ…はぁ♡」

 

 荒い息を吐いて呼吸を整える不知火。その顔は真っ赤に染まり、瞳は潤んでいる。

そんな彼女の前に夫は白濁に濡れた肉棒を突き出すと、もう一度それを口へと押し込んだ。

 

「んっ♡ちゅぱっ♡……んむっ♡」

 

 先ほどとは違う優しい奉仕。夫への労わりと愛情を込めて丁寧に舌を這わせていく。亀頭から根元まで唾液で濡らした後は、唇で吸い付きながらゆっくりと上下運動を繰り返す。時折舌を出して裏筋を舐め上げれば、その大きさがまた一回り大きくなったように感じた。

 

(ああ……♡)

 

 不知火の心にここ数か月の間、影を落としていたものが消えていく。かわりに暖かなものが注ぎ込まれ満たされていく。

 

 「ん……っ♡ちゅぷ……れろぉ♡」

 

 不知火は夫への奉仕を続けながらも、自分の股間に手を伸ばし自慰を始めた。

 秘裂からは止めどなく注がれた白濁液が流れ出し、湯舟を汚していく。その淫靡な光景に、夫の幻もまた興奮を覚えていく。

 

「んっ♡じゅるっ♡じゅぷっ♡」

 

 やがて口内の肉棒が限界を迎え始めると、夫は不知火の頭を掴み激しく最奥まで突き込むとそのまま一切の遠慮もなく果てた。

 

 どびゅるるるるるっびゅっびゅるる

 

 再び注ぎ込まれた白濁を今度は零すことなくごくりごくりと飲み干し、胃の中に収めていく。

 そうしてようやく夫への奉仕が終わった頃には、不知火の全身は汗と湯に濡れ、肌を艶めかしく輝かせていた。

 

「ぷはぁ…ぐぇぇぇぇぇぇっぷ」

 

 心なしか縮んだ肉棒から口を離した刹那、不知火の口から汚いげっぷが漏れる。

 生臭い吐息を吐き出す不知火。しかしその表情は満ち足りており、瞳はトロンと蕩けている。

 

「不知火」

 

 夫の声に顔を向けた不知火は小さく目を見張る。そこには同じように肉棒をいきり立たせた同じ顔の男が4人、不知火へと暖かな笑顔を向けながら立っていた。

 

「さぁ、みんなで可愛がってあげよう」

「……はいっ♡」

 

 同じ人間が複数人いる異常事態に、しかし不知火は嬉しそうに微笑むと、夫たちに向かって大きく脚を開いた。

 

 そもそも夫はすでに亡くなっているのだ。ならばこれは夢の中なのだろう。夢ならば、夫に抱かれたって良いはずだ。

 

「ん……っ♡あっ♡ああっ♡」

 

 夫の一人が不知火の秘所へと剛直を突き入れれば、それだけで甘い嬌声が上がる。膣内を満たすその大きさと熱さの心地よさに、再び不知火は甘い吐息を吐き出した。

 

 

「んぶ…♡ん、ぢゅっ♡ちゅぱっ♡」

 

 それは肉の沼だった。

 露天風呂の中を触手が埋め尽くし、両手足を触手で大の字に拘束された不知火に何十何百の肉触手が群がり蠢き、不知火の全身を舐め回しながらくまなく愛撫していた。

 膣穴では触手が暴れ回り子宮を殴りつけ、尻穴では何本もの触手が入り込み腸壁を掻き毟る。その衝撃は強烈だが痛みはない。すべて快楽に変換され、脳髄へと送り込まれてくるのだ。

 

「んっ♡ちゅぼっ♡んぶっ♡」

 

 口内も例外ではない。口腔はもちろん喉奥まで触手に犯されながら不知火は必死に舌を動かしている。

 うつろな笑みを浮かべ、ぼんやりと肉沼の中で快楽に溶けていく不知火。その姿を、露天風呂の外――ひとりの女が見下ろしていた。

 

 旅館のスタッフ――黒羽。飾り気のない制服に身を包み、物静かな目元にだけ妖しさを宿す女。その瞳が、湯船の中で触手に穢される不知火を、冷たい瞳で射抜いていた。

 唇に小さく笑みを浮かべる黒羽。そのすぐ背後に、ふっと空気が歪む。

 

 現れたのは、金髪をオールバックに撫でつけた男だった。

 濡れ羽色のスーツに身を包み、シャツの第一ボタンすら留めず、胸元からは薄っすらと刺青の一部が覗いている。口元には馴れ馴れしい笑みを浮かべ、手にはコンビニ袋――中にはエナジードリンクと安物のローション。

 

 全身から発せられる淫気が、風をよどませる。――あの日、不知火に滅されたはずの淫魔、リョウスケが立っていた。

 肉沼で悶えくぐもった喘ぎを漏らす不知火をニタニタと覗き込む。

 

「おいおい、やってんじゃん。不知火ちゃん、えっろ」

「ええ、あなたの仕掛けた淫紋が上手く作用してたみたいね。ここに来た時点でほとんど堕ちてたわ」

 

 黒羽が見つめる先、不知火の下腹部にピンク色の光を放つハート型の紋章が煌々と輝いていた。まるで刻まれた刺青のようなそれは脈動し、たびたび不知火の腰を無意識に跳ねさせていた。

 

 ここ数か月の間、不知火を悩ませていた疲労感。そして異常な性欲の正体は、先の任務で刻まれた淫紋が原因だった。

 

 如何なる方法で逃れたのかリョウスケは不知火の手から逃れており、術者が生きていた結果、淫紋は残り続け、不知火の精神を蝕んでいた。

 

「ん゛お゛お゛お゛っ♡」

 

 ぷしゅぷしゅうぅぅう

 

 勢いよく噴出した潮が肉沼に注がれ、触手たちは歓喜に蠢く。

 

「うひょ、マジ軽イキしまくりじゃん……かわい~♡」

 

 リョウスケは、顔を覗き込むように前のめりになり、にやにや笑う。

 

「このピンクのとことか、ヤッてる間ずっとぴかぴか光ってた? やば、チカチカえっちすぎ」

 

 不知火のぼやけた視線はすでに焦点を失い、ただ肉沼に身をゆだねるばかり。男の軽口にも、何の反応も示さない。

 

「快楽に順応する素質は高かった。あとは“きっかけ”さえ与えれば、ね」

 

 黒羽は細く笑いながら、ポケットから一枚の紙を取り出した。淫紋の発動記録――彼女の絶頂回数、体位、声量までもが記された“管理表”。

 

「さて、第二段階に移行してもいいかしら?」

「おう、いんじゃない? 不知火ちゃんが俺らの戦力になってくれれば、ちょっとやそっとのことじゃ危ない目には遭わねぇし」

 

 男は肩をすくめ、ポケットから取り出した電子タバコをくわえながら、不知火の体を指でなぞるように指し示した。

 

「てかさぁ、ほんと俺ら運がいいわ…この雌豚、幻影の対魔忍なんだってさ…初手で俺に犯されてアンアン喘いでいたくせにさ」

 

 そう言ってくつくつと笑いながら、リョウスケは視線を不知火の顔に落とす。うつろな瞳、軽く開いた唇、湯気に濡れた頬――まるで夢見心地のまま微睡んでいるかのような姿。

 

「術中にハメたとか言って切り伏せられたくせによく言うわ」

 

 黒羽は、片手で髪を耳にかける仕草をしながら続ける。

 

「戦力としても“釣り餌”としても上等よ。こいつを使ってほかの対魔忍どもを釣り上げる。懸念としては連中が気が付いている可能性だけど…」

「ま、気づいてももう遅いっしょ。仕込みは済んでるし」

 

 リョウスケはそう言うとうっとりと目を細めて不知火を見やり嗤った。

 

「なぁ不知火ちゃん、またオレがたっぷり可愛がってやるからな?」

 

 ピンクの淫紋が、ぴくりと瞬いた。





次はラグナロクの続きを書けれたらうれしいなぁ
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