※この作品はR-18です。

Re;サノバウィッチの世界へ転生して、青春を謳歌したい   作:ミュウにゃん

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Chapter1
Episode01 いつからだろう・・・


 

 

 

《Dhuan Side》 

 

――――――いつからだろう?

 

――――自分が、日常がこんなにもズレを感じるようになったのは?

 

―――――――いつの日だろう?

 

―――――オレが「転生者」と自覚し始めたのは?

 

・・・・いつから。

 

・・・・・そんなもの決まっている。

 

昔のオレなら、戦って闘って・・・そして、味方だったヤツと敵対して殺される。

 

・・・それでも、味方であり続けるなら・・・自ら命を捨てた。オレの命は、仲間の為に使うと決めていたからだ・・・・。

 

 

そう・・・今の俺は・・・

 

 

〈Another View〉

 

    女子「あの……保科君、ちょっといいかな?」

それは昼休み、トイレから教室に戻る途中だった。

 

秋の訪れを告げる冷えた風に乗って、背後から可愛らしい声がオレを呼び止める。

 

オレはその声の主に振り返って・・・

 

    保科「うん?どうかした?」

申し訳無さそうな顔でオレを見つめてくる女の子は、オレのクラスメイトの一人。

男子からもそれなりに人気のある、可愛らしい女の子だ。

 

新しい学年になって約半年。夏休みも開けた9月ともなれば、クラスメイトとも打ち解けている。

 

だから、こうして可愛い女の子がオレを呼び止めた理由は・・・・・・

 

 

    女子「あたしね、図書委員で、今日中に終わらせなきゃいけない仕事があるんだけど、どうしても外せない大切な用事があるの……だから、ホントーにゴメンなんだけどー、あたしの仕事、代わってくれないかな?」

 

ふっ・・・そうだよな。告白なんてあるわけないよな。可愛い子は色々忙しいのだ。

 

    保科「それって、家の用事とか?」

    女子「家というか……あたしの将来に関わる問題、かな?」

    保科「そっか、それは大変そうだ」

    女子「そうなの、大変なんだよー……だから、本当にゴメンなんだけど……代わってくれないかな?お願い、ね?」

 

最後の『ね』で小首を傾げて若干上目遣い、しかも舌をペロッと出してきた。

 

これがいわゆる計算で"可愛さは作れる"ということなのはちゃんと分かっている。

 

・・・分かってはいるんだけど・・・それでも可愛いと思えてしまうから困る

 

     保科「けどオレ、図書委員の仕事なんて知らないよ?」

     女子「あ、それはヘーキ。図書室に新しい本が入ったんだけど、その本を検索できるようにパソコンに打ち込むだけだから」

 

     保科「蔵庫の検索システムに登録か……打ち込むだけなら、確かに難しくはなさそうだ」

 

     女子「うん!ということで、あの……代わってもらえない?お願い!このとーり!」

 

     保科「……分かった。いいよ、それぐらいなら」

     女子「ホント!?わー、ありがとー!やっぱり保科君って頼りになるねー!」

 

     保科「大したことじゃないから」

     女子「じゃあ、放課後よろしくね!図書室に行けば、教えてくれる人がいるから」

 

その子は嬉しそうに、小走りで教室に戻っていった。

 

・・・やっぱ、いいように使われているの、かな?

 

そんな気はしているものの『他の子の頼みはきいてたよね?』という無言のプレッシャーが・・・

 

あの子、女子のまとめ役みたいなところもあるから、断ったら女子の反感を買いそうでちょっと怖い。

 

     保科「やっぱ、最初の頃に安請け合いし過ぎたかな」

      男「なに?お前、また、誰かの仕事を引き受けたの?」

     男1「何やってんだか……」

     保科「図書委員のな。今日は抜けられない大切な用事があるんだってさ」

 

      男「図書委員って確か……」

     男1「秋田さんだな」

      男「それ多分、騙されてるぞ。秋田って合コン女王(クイーン)じゃん。用事って絶対合コンだぞ?教室でセッティングの話もしてたからな」

 

     男1「うわぁ……生贄(スケープ・ゴート)じゃん」

     保科「ああ、合コンね……なるほどなぁー。将来に関わる可能性は確かにあるな」

 

うん、納得だ

 

      男「もしかして、気づいていたのか?」

     保科「なんとなくは。具体的な内容は知らなかったけど、言うほど大切じゃないかも……とは思ってた」

 

まあ、あそこまであからさまに可愛さを作る辺りから考えても、本気で隠すつもりがあったのかも怪しいんだがな。

 

それに"妙にクスリ"っぽい、ウソ臭い味(・)がしたしな・・・

 

      男「わかってるなら、ちゃんと断れって」

     男1「そうだぞ……」

     保科「まあ、そうなんだけど……用事があるなら仕方ないかな、って」

 

      男「柊史……お前なぁ……」

     男1「この自己犠牲のお人好しめ」

そう言って、呆れてるのは海道秀明(かいどうひであき)。

そして、もう一人は、デュアン。本名は「デュアン・オルディナ・フィア・レグトール」。学校では「デュアン」で通してるらしい。服装も、どこかの制服を着ている。彼曰く「改造制服」だそうだ。確かに、デュアンに学ランとか似合わないよな

 

よく話をするクラスメイトであり、この二人は友人と言える関係だ。それに・・・デュアンはオレの能力を知る、数少ない友達だ

  

     海道「いや、柊史も、お前にだけは言われたくねぇよ……って言うぞ」

 

そう。デュアンも時々、オレみたいな事をする。

 

    デュアン「……」

    海道「とにかく……その流されまくる癖、何とかしたほうがいいぞ、本当に」

 

   デュアン「はははっ……多分無理だと思うぞ?」

怪訝な表情を浮かべる海道に、オレの中で強い酸味が広がる。思わず顔をしかめてしまいそうになるぐらい強い酸味なのだが、苦笑いを浮かべてなんとか誤魔化す。

 

デュアンのは、何故か・・・ほんのり甘く、暖かく優しい味がするのに、徐々にどんどん甘くなってきて、病みつきになりそうな味がする。依存したくなる甘さだ・・・なのに、纏わりつくような嫌な気配もする。

 

    保科「自分でもそう思ってはいるんだけどな……」

    海道「俺が言ってやろうか?」

    保科「いや別にいいって。その気持はありがたいけど子供じゃあるまいし、本気で嫌なときは自分で言えるからさ」

 

   デュアン「はいは~い!そう言って断ってる所……オレ見たこと無いけど……海道はどう思う?」

 

    海道「……オレも柊史が断ってる姿を見たことがないぞ」

    保科「放課後は結構暇だしな。毎回毎回頼まれてるわけじゃなし」

 

    海道「だからって、遊びに行くヤツの為に、お前が仕事をする必要はないだろ……って……このやり取りも何度したことか。もう言い飽きたよ、オレ」

 

    保科「悪いな……ってか、お人好しというわけじゃないぞ」

  デュアン「そうなのか?」

    

けど、オレには癖がある。本心よりも場の空気を重視して人の頼みを断れない、という癖だ

 

    海道「そこまで頑なに断らないのって、もしかして何か理由があるのか?」

 

    保科「別に……理由というほどのものはないんだけど……まあ、女の子にいい顔をしておいた方が、何かと得なのではないかと」

 

    海道「そんなこっちゃ、キャトルミューティレーションられるぞ、エウリアンに」

 

   デュアン「お前、またそんな……古いネタを……」

     保科「いや……流石のオレも、金銭関係まで緩いわけじゃないよ。ただ……断った時にがっかりされる雰囲気というか空気が苦手で。用事があったら別だけど、暇だったら別にいいかな……と」

 

   デュアン「……お前マジで将来詐欺にあって大変な目にあうぞ、柊史」

 

    女の子「簡単に想像できるな、そういう姿。それは確かに怖いね」

 

     海道「だろ?和奏ちゃんもそう思うだろ?」

    女の子「うん。保科が他人(ひと)の頼みを断らないのって……普通じゃないと思う。もしかしてなにか秘密があるんじゃない?」

 

     保科「――――」

オレと海道とデュアンの間に割って入ってきた少女――――数少ない、異性の友人である"仮屋和奏(かりやわかな)の言葉に、オレの心臓が大きく跳ねた。

 

    デュアン「はははっ……まあ、ある日突然能力に目覚めちゃったり……性別が変わっちゃう病気もあるからね……何があっても不思議じゃあ無いね」

 

デュアンめ・・・。確かにオレには秘密がある。友人である海道や仮屋にも言っていない・・・友人だからこそ言いたくない秘密がある。

 

まあ、デュアンもTS病を患ってるからな。デュアン曰く「小学校から発症した」のこと。

 

というか、デュアンの雰囲気から、まだまだ秘密を抱えてるように見える

 

 

 

    海道「うわぁ……怖い事言うなよ。秘密……それってどういうことだよ、和奏ちゃん?」

    

     仮屋「もしかしたらアレなんじゃない?保科って……ドMなんじゃない?」

 

    保科「発想が極端すぎる……」

    海道「ドMだと!?なるほど。学内で興奮するために、他人の仕事を引き受けていたのか……まさか柊史がMだったなんて……なんだ同志じゃないですかー」

 

   デュアン「ふぁ!?」

 

【挿絵表示】

 

 

    仮屋「えぇ?!」

    保科「さらりと自分の性癖を暴露するのはやめろ!ビックリしちゃうだろ!」

 

    仮屋「あれ?人にこき使われて、興奮をしてしまう特殊な性的趣好を持ってるんじゃないの?」

 

    保科「違う!」

  デュアン「……海道、マジでドMなの?」

    仮屋「まあ、ひでk……海道のことはひとまず置いといて……人にこき使われて、興奮をしてしまう特殊な性的嗜好を持ってるんじゃないの?」

 

    保科「オレにそんな被虐的な趣味はねぇよ!なにそんなキョトンとした顔で言われてるの?オレ、傷つくわ」

 

  デュアン「そもそも、真っ昼間から女の子が変な話題を振るのってどうなんだ?」

 

    仮屋「おっ、男女差別?女の子だって性的な話ぐらいするさ」

    保科「にしても、その相手は同性か、恋人の前に話すもんだろう、普通」

 

  デュアン「時と場所を選べ、仮屋」

    仮屋「別にいいじゃん……」

    海道「和奏ちゃん?もしかして……そういうのがお望みだったり?」

 

    仮屋「……違うし」

  デュアン「(あっ……これは、そういうのを望んでる感じだな)」

    保科「そういや、海道と仮屋って付き合ってたな」

    海道「まあな……」

  デュアン「話を戻そう……」

    保科「そうだな」

  デュアン「……女子って、男を勘違いさせるようなことをサラリと口にすることってあるよな」

 

おや?珍しいな、デュアンが異性のことに関して話をするなんて。デュアンって大抵、話す時って「そうだな」とか「ああ」とか「ふむ」とかの相槌をして、話題を作らないのに・・・

 

    仮屋「意識してないからこそサラリとしてるってこと。ただの話題提供でしかないよ。深読みしすぎじゃない?」

 

  デュアン「そういうものなのかね……うーん、男って悲しい生き物だ」

 

    海道「半分は女のお前に言われても……」

    仮屋「確かに……ってか、デュアンが異性の話題をするなんて……明日は雪でも降るんじゃないかな?」

 

  デュアン「今、10月だぞ」

    保科「とにかく、人にこき使われても嬉しくもなんともないよ、オレは」

 

    海道「嘘吐け。こき使われまくりじゃないか」

    保科「それは…………アレだよ。こうして女の子の頼みを断らないオレ、モテそうじゃない?」

 

    仮屋「わははははー!全然。むしろバカじゃない?」

    保科「真顔で言われると傷つくわー、まじ傷つくわー」

バッサリ言い捨てる姿は、照れ隠しの要素は全く無い。

 

できれば―――――

 

  妄想の仮屋『べ、別に……格好いいなんて思ってないもん。いい人だとは……思ってるけど』

 

―――――みたいなことを、可愛らしく言ってくれないかな?

 

   デュアン「しかしまあ、柊史よ」

     仮屋「甘い顔ばっかり見せると、ひ……海道とデュアンの言う通りよくないよ?今以上に、こき使われるだけ」

 

     海道「柊史はさ、たまにはちゃんと断るべきなんだよ。甘い顔を見せたら付け込まれるタイプなんだから」

 

     保科「付け込まれるって……そんな大げさな」

     仮屋「いやいや。性質(たち)の悪い女の子だと、本当にいいように使われて骨までしゃぶられるよ?」

 

     保科「まさかー。それはさすがに考えすぎでしょ?」

     仮屋「チッチッ、甘い。甘いよ。女の子ってのは保科が考えてる以上に、悪賢い計算ずくの生き物なんだよ?」

 

指を横に振った仮屋は、厳しい目でそう言った。

 

   デュアン「そうだぞ、保科。あっという間に昼ドラ見たいな、ドロドロとした身を滅ぼしかねない展開もあり得るからな」

 

     海道「そうそう、和奏ちゃんの言う通りだ。こっちがチラッと甘い顔をみせればつけ上がるんだ!メシはもちろん、相手が見たい映画、財布なんかの小物、その他諸々を奢らせた挙げ句、何の進展もなしに『いい暇潰しができたよありがとうバイバイ♪』とかと言うくせに、終電を逃したから迎えに来てとか……ふざけんなっ!小悪魔じゃねぇよ!悪魔なんだよ、アイツらは!!」

 

     仮屋「わ、私……そこまで酷くないよ!酷くないよね?」

     海道「和奏ちゃんは別だよ……、……す、すまん、昔溜まっていた鬱憤が、つい……」

 

     保科「お前、なんかすごいトラウマ抱えてそうだな」

   デュアン「オレが報復制裁しようか?」

デュアンのとびっきりの笑顔が怖い。強いて言うなら、とてつもなく甘く、辛く、そして熱い。なんて感情をしてんだ、コイツ

 

     海道「うーん、デュアンが報復すると……逆に相手が可哀想になりそうだから……遠慮しとく。とはいえ、過去は過去……水に流すことにするよ」

 

     仮屋「ち、ちなみに……デュアン。どんな報復をするの?」

   デュアン「まずは、住所を特定……事実90%嘘10%の情報を混ぜて、SNS上に晒す。そいつのアカウントを2ch掲示板やSNSにばら撒く……、かな?一応、マイルドなやり方」

 

     保科「これで、マイルド!?」

     仮屋「容赦ないのは?」

   デュアン「う~ん……文字を完璧に模倣(トレース)して、捺印と共に、闇金に渡す?」

 

     海道「怖っ、マジ怖っ……ってか、普通に犯罪だぞ」

   デュアン「大丈夫大丈夫、そのお金はその子に渡すから……」

     保科「悪意のあるやり方だ……怖っ」

   デュアン「まあ、復讐方法なんて幾らでも用意できるからな」

     保科「お前、なんでそんな恐ろしいことをヘラヘラしながら言えるんだよ」

 

なんて感情をしているんだ・・・甘く、苦いチョコレートみたいなドロドロとして、そして苦い後に仄かな甘みと甘い果実のような感覚だ。しかもあまりにも美味しく依存してしまいそうな、そんな感情だ

 

     仮屋「悪魔だ……ここに悪魔がいる」

   デュアン「まあ、オレがキレなきゃいい話だし……この方法も穏便な方だ」

 

     保科「お前が思う……穏便じゃない方法は?」

   デュアン「拉致って、治安の悪い国の場所に放置?大丈夫、家族団らんで送るから」

 

     海道「お前……発想がサイコパスすぎる」

   デュアン「サイコパス?それは違うよ……「オレは悪くない」……「悪いのは、その子」だから」

 

     仮屋「デュアンを敵に回さないようにしよう」

   デュアン「オレを敵に回せる人が居るなら、いいけどな」

     保科「デュアンを……そこまでして、敵に回す方法って?」

   デュアン「オレの親友や恋人を傷つけた時だな……物理的にも精神的にも……いや、理不尽を振りまくヤツには、それ相応の制裁が待っている」

 

デュアンが悪い顔でニヤリを笑っている。なんだろう、深淵を覗いた気分になりそう。

 

     保科「まぁ……とにかく。今後はもっと気をつけるよ」

   デュアン「どっち?」

     保科「頼み事」

   デュアン「そうか」

     保科「はい、質問」

     仮屋「なにかね、保科クン」

     保科「甘い顔を見せても付け込まれないのって、どんなタイプ?」

 

     仮屋「甘い顔を見せることは前提なの?」

     保科「今から突然態度を変えると、女子から反感を買いそうだ。それはそれでちょっと怖い」

 

     仮屋「まあ、そういう可能性が絶対にないとは……言えないね」

 

   デュアン「女子の噂ネットワークは怖いぞ……ある意味、一生恋愛できないとだけ思え」

 

     海道「青春時代に恋愛できないとか……怖っ。そうだな……甘い顔っていうか、優しくても人に使われるタイプじゃないってなると……例えば――――」

 

     仮屋「綾地さんとか、デュアンかな?」

     海道「なるほど。綾地さんとデュアンね……確かに」

   女の子「はい?呼びました?」

     海道「うぉ!?あ、綾地さん!?」

     綾地「驚かせたならごめんなさい。通りかかったときにちょうど名前が聞こえてきたので……私になにか用ですか?」

 

     仮屋「話してたってほどじゃないから、気にしないで」

     海道「噂話をしてた程度だからさ」

   デュアン「……」

     綾地「いえ、少し気になっただけですから、別に怒ってるわけじゃないです。気にしないでください……それより仮屋さん、例の件ですが――――」

 

     仮屋「あっ、うん、バッチリ!いいところを紹介してもらったよ!おかげさまで何とかなりそう。ありがとう!」

 

綾地「喜んでもらえたならなによりです」

     仮屋「本当、感謝してるからね」

     綾地「また何かあったら、いつでも部室へ来て下さい」

仮屋「ありがと、心強いなー!」

 

『あ、綾地さーん!ノートありがとう。助かったよー。しかも凄く綺麗なノートだった。流石は綾地さんだね」

 

     綾地「大したことじゃないので。それより体調の方はもういいんですか?」

   『うん。もうすっかりよくなった』 

     綾地「それは良かったです。他に困ったことはありますか?」

   『ううん。今のところは」

    綾地「何かあったらいつでも話して下さい。学院のことじゃなくて、私事に関することでも何でも」

 

    『ありがとー。何かあったら頼らせてもらうね』

     

    綾地「はい、いつでもどうぞ」

ニッコリと笑う綾地さん。その笑顔に、思わず俺は息を呑んでしまう。

―――――綾地寧々。

彼女が街を歩けば、男女問わず大抵の人は振り返っってしまうんじゃないだろうか?デュアンは、なんか興味なさそう顔をしているが・・・

端正な顔立ち、流れるような美しい髪に、華麗な佇まい。

視線を引き寄せられるほどの圧倒的存在感。彼女がいるだけでその場の空気は甘酸っぱい物に変化する。

 

姫松学院の中でも、指折りの美少女だ。

 

デュアンと綾地さんは対になっているような気がする・・・

 

 

・・・ちなみに、さきほど図書委員秋田さんの人気が"それなり"なのは、綾地さん、デュアンという"別格"が存在するから。

 

綾地「保科君も」

   保科「え?えっと……なにが?」

綾地「もし何か困ったことがあれば、力になりますから」

   保科「……ふむ。ありがと。そう言ってもらえるのは嬉しいけど、今は特になにもないからさ」

 

  デュアン「…………」

    綾地「そうですか?私にはなにか悩み事があるように見えたりしましたけど……」

  

   保科「……う、うん……?」

綾地さんはその綺麗な瞳で、俺を見透かすように見つめてくる。

 

・・・・今の言葉・・・それにこの視線。もしかして、彼女は何か・・・・気づいている?

いや、俺の秘密をするのは「デュアン」と「竹内」のみだ。

 

あの二人がバラすとは考えにくい・・・

 

   綾地「――なんて、言ってみただけですから、深い意味はありませんよ」

 

保科「そう、なのか……?」

ちなみに綾地さんと俺は、別段仲が良いわけじゃない。仲が良いといえば、デュアンだろう。

 

ただ、入学したときからクラスが一緒なのと、綾地さんが皆に分け隔てなく話してくれる人というわけだ。

 

  仮屋「ね、もしかして占いで何か出てた、とか?」

   綾地「いえ、そういうわけじゃなくって……ただ何となく。そんな気がしただけですから」

 

仮屋「色んな人の相談を解決してきた綾地さんが言うなら、それなりの意味があると思うんだけどなー」

 

  デュアン「(いや、柊史のは魔女の子供だから……)」

    保科「それってどういう意味?色んな人の相談を解決って」

 

   仮屋「あーっと……そっか……ゴメン、綾地さん、デュアン君……男子には言わないようにしてるんだっけ?」

 

   綾地「あ、いえ、絶対に秘密というわけじゃないので来にしないで下さい……好奇心だけで来られると困るので、本当に悩んでる人以外には、広めないようにお願いしているだけです」

 

そりゃそうだわな・・・・

 

   海道「???聞いちゃマズい事があったか?」

   綾地「そんな仰々しい話じゃなく……私とデュアン君は、オカ研に所属してるんです」

 

海道「オカ研?」

   保科「て……いわゆる、オカルト研究部?」

   綾地「はい。そのオカ研です」

   保科「ウチにオカルト研究部があるの?初めて知ったんだけど……」

 

海道「俺も。それって同好会じゃなくて、ちゃんとした"部"なの?」

 

   綾地「そうですよ。実は私達が入学する前からあった部活なんです。所属してるのは私とデュアン君以外は居ないですね……なので最近は学生会の方から突かれてて……活動も発表などを意欲的にしているわけじゃありませんからね」

 

デュアンが部活?綾地さんと?羨ましいな

 

    海道「オカ研ってことは……幽霊の研究をしてるってこと?それとも、エイリアンの方?」

 

 

   綾地「いえ、私は占いを。オカルトと言っても幅は広いので。それに部にはデュアン君と私しかいませんから、結構好きにできるんです」

 

   海道「占いって言うと、指で印を切ったりして『こんなん出ましたけど!』とか言うアレ?」

 

   保科「よくそんな古いネタが出てくるな、絶対に通じないと思うぞ、ソレ」

 

   仮屋「即座にツッコミ入れてる保科もなかなかだと思うけど……アタシそのネタわからないし。マニアック過ぎだよね、綾地さん」

 

   綾地「さすがに白蛇占いはできませんよ……デュアン君は?」

 

  デュアン「俺か?うーん……無理だな」

    仮屋「そのネタ……分かるんだっ!?」

    綾地「一応。知ってはいますけど、私に出来るのはタロットぐらいです。あくまで趣味程度ですから」

 

    仮屋「で、オカ研では人生相談にも乗ってくれるわけ」

    綾地「あくまで占いの延長線上のものですから。人生相談なんて言うほど大層な物じゃありません。でも……もし保科君も嫌いでなければ、いつでも部室に来て下さい」

 

    保科「あ、うん。ありがとう」

  デュアン「……綾地さん。もしかして、柊史の欠片の予兆か?」

 

俺はひっそりと綾地さんに言うと・・・

 

    綾地「いえ……ですけど、何か感じるんです」

  デュアン「……そうか」

 

    

    女子学生A「綾地さーん!古文の宿題で教えて欲しいことがあるんだけど――っ」

 

     綾地「あ、はい。すぐに行きます。それじゃあ私はこれで」

クラスメイトの女子に呼ばれ、綾地さんは教室に戻って行った。

 

     仮屋「……本当に、綾地さんは凄いな。頭も良くて、可愛くて、偉ぶることもなくて」

 

   デュアン「オマケにクールで、まるで高嶺の花だな」

     海道「あんな完璧な子が、現実にいるのも本当に驚きだよな……しかし、綾地さんが相談に乗ってくれるのか……もっと噂になってもおかしくないと思うんだが」

 

   デュアン「男子に知られると騒ぎになるし、本当に相談したい人が相談できなくて困るから……内緒にしてるんだ」

 

     海道「そうだったのか……俺も一度行ってみようかな、そしたら…………デュフ」

 

     保科「今お前『もしかしたらお近づきになれるかも』って考えたろ?」

 

     海道「え!?ちょっ!?こんなところにオカルトな能力を持つ人がいるよ!?」

 

    仮屋「いやいや、丸見えだったよ?ピンク色の魂胆がスケスケだったよ?それに……浮気したら許さないからね」

 

    海道「ち、ちげぇーよ!仲良くして、友だちになりたいなーと思っただけだから」

 

    保科「……(嘘は吐いてないんだが……本当のことは言っていないような気がする)」

 

  デュアン「それにお前みたいなヤツが多そうだから、男子には広められない噂なんだよ」

 

    仮屋「そういうことだから、2人も広めたりしないようにね」

 

    海道「おう、分かった!」

    保科「そういえば、仮屋も相談に乗ってもらったのか?さっき『ありがとう』って言ってたけど」

 

    仮屋「うん。ちょっと欲しい物があるけど、お金がなくて悩んでる時にね」

 

    保科「欲しい物って?」

   デュアン「総理大臣の命?それとも核爆弾の使用保持?」

    保科「マジ?!」

    仮屋「違う違う……実は……ギターが欲しいんだよね」

    海道「ギター?それはまた意外な答えだな」

    保科「仮屋、弾けるの?いや、弾けるから買うんだろうけど……俺はベースか、吹奏楽器ぐらいしかできんぞ」

 

俺はじっくり叩き込んだからな・・・

 

    仮屋「まあ、多少はね」

    海道「それより、俺は柊史……吹奏楽器やベースできることに驚いてるんだが……」

    

    保科「デュアンのお陰で……ね」

    仮屋「あー納得」

呆れた表情で、仮屋はしっかりと答えた。

 

    仮屋「もともとはお義父さんがバンドをやってたらしいんだけど、使わなくなったギターを見つけてさ。それ以来教えてもらってるんだ」

 

   デュアン「ふむ」

     仮屋「もう数年になるし、前から自分のギターが欲しくってさ」

 

     保科「仮屋はやっりすげぇよ。クールで格好良くて、それに弦楽器ができるなんて……仮屋が頑張ってるのなら、俺も頑張らないとな」

 

     海道「俺は柊史より弾けると思うぞ。一時期、音楽に凝った時期があったから。その時にギターもかじったから」

 

     仮屋「そうなの?それこそ意外だよ……海道って……打楽器しか見てなかったからさ」

 

 海道「昔の話だよ。それで?バイトして買うなら、いいやつ?」

 

     仮屋「まあ、それなりにはね。正直、楽器ってピンキリだから」

 

まあ、高くて30万弱?弦楽器は下手すれば2億とかするしな

 

     保科「確かに。ヴィンテージ物なんて、信じられない金額だもんな」

 

     仮屋「お父さんは自分で買えって言うんだよ。少しぐらい援助してくれてもいいのにさ」

 

     保科「けどそれ、解決ってどうやったんだ?」

     仮屋「アルバイト先を紹介してもらった……で、今度のお給料でようやく目標金額に達するから、近いうちに買いに行くんだ~♪ うひひ」

 

     海道「バイトか……いいな、そういうの。俺にも紹介してくれないかなぁ?」

 

   デュアン「海道、欲しいものとかあるのか?」

     仮屋「甘いよ、デュアン……海道は『そしたらお近づきになれるかも。』って考えたろ?」

 

      海道「俺の周りにはオカルト能力者だらけ!?ふ、不幸だ」

 

   デュアン「お前の考えてることなんて、まるっとお見通しなんだよ」

 

     保科「ほら、誰だって分かるだろ?それだけ考えてることが単純ってことだ」

 

     海道「確かに、綾地さんが可愛いことは認めるけど……俺等には高嶺の花……今ある幸せでお腹いっぱいだよ」

 

海道はそう言って、仮屋に抱きつく

 

     仮屋「まあ一理ある……かな」

 デュアン「はぁー……くだらないことで、オカ研に来るんじゃねぇぞ?」

 

     保科「他の連中も虎視眈々と親密になる機会を狙ってるだろうしな」

 

その証拠に――――

 

男子学生1「……今、あいつ等綾地さんと話をしてたよな?」

男子学生2「何を話していたんだ?き、気になる……というか羨ましいな、アイツら」

 

  男子学生3「くっそ……俺も綾地さんと喋りてぇー」

   デュアン「ッフ……バカじゃねぇのか」

デュアンは鼻で笑う。

 

     保科「……」

周囲から嫉妬の視線が集中し、チクチクと刺さって背中が大変痛い。

廊下で話しただけでこれだ。やっぱり綾地さんとデュアンってすごく人気があるよな・・・

 

    仮屋「……保科???顔を歪めたりして、どうしたの?」

    保科「いや……大丈夫問題ない」

    海道「何を他人事みたいに。お前だって、綾地さんと仲良くなりたいだろ?というか、占ってもらえれば?せっかく誘われたわけだしよ」

 

    保科「そうだなー……気になることができたら、扉を叩いてみるよ」

 

俺の悩みはそう簡単に打ち明けられない事情がある。

 

海道「もったいないのう」

   仮屋「そんな面白半分で行ったら、逆に嫌われる気もするけどね」

 

    海道「俺は、和奏ちゃんに嫌われなければ問題ない」

流石は学年バカップル。

   

    仮屋「秀明のバカ」ボソッ

   デュアン「でも、あんまり他の子に目移りしちゃったら……仮屋さんに嫌われるぞ?」

 

    海道「え!?マジ……?気をつけよう」

    仮屋「下心見え見えだったら、誰だって警戒するですよ?」

 

そりゃそうだ。常に紳士の心を持たないと。

 

    海道「※ただしイケメンは除く」キリッ

海道はドヤッとした顔で「決まったな」と思ってるのだろう。

 

    仮屋「そうだね、イケメンだったらね」

    海道「笑顔で即答はひどいっ!」

  デュアン「イケメンはイケメンだな……」

    保科「ただし、残念系イケメンだがな」

    海道「お前らの方がもっと酷いっ!」

    仮屋「綾地さんみたいな人ってさ、そう単純じゃないと思うんだよね。だからやっぱり内面からイケメンでないと」

 

    海道「なるほど」

    仮屋「で、内面がイケメンの人は、そんな下心で近づくような人じゃないってこと」

 

    海道「ぬぅ……ぐうの音も出ないってこういう時に使うんだな」

 

   デュアン「そもそも……綾地さんに浮ついた話はやめといたほうが良いぞ」

 

    保科「そうだな……俺も、自ら綾地さんと仲良くする為に近づいたりはしないかな?俺等がどうこうしたら、他の男子に睨まれる可能性もあるし……」

 

    海道「確かに……」

   デュアン「っと……3人とも、そろそろ午後の授業が始まるぞ……早く教室へ行かないと……久島先生に怒られるぞ」

 

    仮屋「おっとそうだね」

 

~~~~~~~~

 

 

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