夜の九時。スターリーでのバイトも終わり、あとはウチで簡単なご飯をつくって、あとは眠るだけ。ほんとうだったら、そうして一日がまた過ぎ去っていくはずだった。
少し歩いて、人気のない夜の公園にたどり着く。さすがに、ブランコに乗るのはやめておいた。塗装の半分はげたベンチに、虹夏はひとり腰かける。
眺めていたスマホの画面。特に興味のないゴシップや、めんどくさい政治の話が嫌でも目に入る。スクロール。また、流れるようにスクロールしていく。
あたしが欲しいのは、そんなのじゃない。まだかな。連絡、まだなのかな。もどかしい時間が続く。ふっと顔をあげて、夜空の星を見上げる。握ったスマホが、ジジッとふるえた。
通知が目に入る。あの人からのメッセージだった。
「いつもの場所で、待ち合わせだね」
歩き出しながら、ささっと指を動かしロスなく返信。
明日は学校も休みだし、今夜はのんびり羽根を伸ばしちゃおっかな。お気に入りのスタンプも一緒に送信すると、ちょっとお堅めの文章で、それでもいいよと返ってくる。
誰にも言えない、内緒の遊び。最初は、たぶんそういうはじまり方だった。
「おっ、いたいた」
右手を軽く差し上げて、虹夏は小走りになった。
普段当たり前に使うコンビニが、非日常への入り口に変身するんだ。ぼんやり佇んでいたあの人が、自分の姿を見つけてほほ笑んでいる。
「お疲れさま。これ、虹夏ちゃんの分」
「わっ、ありがと。えへへっ、さっそくいただいちゃおっかな」
低くて落ち着きのある声で名前を呼ばれる。大好きなおじさんの声。おおらかで優しくて、なんでも話せてしまう年上の男の人。
小さめのペットボトルに入った紅茶を手渡された。ほんのり感じる甘みが、バイトあがりの身体に沁みる。残しておいても仕方ないと思い、一気に飲み干した。
「おじさんも、お仕事お疲れさま。ご褒美に、今日は腕組んじゃおう」
「はははっ。なんだよ、それ」
目的の場所は、よく知っている。
タバコの匂いの染み込んだおじさんのスーツ。近くにいると、どうしてこんなに気分が安らぐんだろう。離れないように、しっかり腕を組んで歩いた。怪しいネオンの光の中へ、二人で消えていく。
使い慣れたホテルだった。おじさんのあとについて、部屋に入る。内装は控えめで、あまり派手さのないところが気に入っている。ぽふっ、と手入れのされたベッドにお尻から着地。おじさんは、静かに上着をハンガーにかけている。
「ねー、ちょっと聞いてよー。今日のバイト中に、お姉ちゃんがさぁ」
おじさんと二人きりでいると、つい気持ちが緩んでしまう。なんでもない愚痴が今夜の挨拶代わりだ。こんな話、聞いていて面白いはずがないのに、おじさんはいつでもちゃんと付き合ってくれるから好き。
これぞ、大人の余裕。よく分からないタイミングで叱ってくる姉にも、是非とも見習っていただきたいものだ。
会話のついでに、お風呂にお湯を溜めに行く。お代は全部おじさん持ちなんだから、このくらいの雑用はこなさないと。
「おいで、虹夏ちゃん」
お風呂場から顔を出す。おじさんはベッドに腰かけて財布を開いていた。
この瞬間だけは、毎回気分がちょっとだけ暗くなる。元々は、お金のためにはじめたこと。なのに、今は。
「あははっ……。ごめんなさい、いつもありがと」
「いいの。それに、オレみたいなクズが持っているより、虹夏ちゃんにあげた方が世の中のためにもなる。うん、これだけは間違いない」
差し出されたお札を、二枚受け取る。あまり見ている気になれなくて、すぐに自分の財布にしまった。
「もう。前からやだって言ってるじゃん、その言い方。それよりもさ、おじさんは今週どうしてたの? ねっ、聞かせてよー」
ちょっと雰囲気を変えたくなって、再びベッドにダイブ。空いた膝の上に寝転ぶと、おじさんが身体にふれてきた。
髪。額。首筋。お腹のあたりをさわられると、さすがにくすぐったい。
「普通に朝起きて、仕事行って。それで昼メシ食って、また仕事して。なんの変哲もない、フツーの一日。それを、週末まで繰り返しただけ」
「ぷっ、あははっ。けど、あたしもそんな感じかなぁ」
「でも、だからこそ、特別なイベントが欲しくなるんだと思う。オレにとっては、虹夏ちゃんとの時間がまさにそれ」
パパ活中の男と女。それが、おじさんと私との関係。
だけど、お金なんてもうどうでもよかった。私のその気持ちを理解した上で、おじさんは言い訳づくりをさせてくれる。
「あーもう、恥ずかしいこといきなり言うのはナシだって! えへへっ……。でも、嬉しい。おじさんの特別になれてるんだね、あたし」
「虹夏ちゃん。ンッ……」
起き上がっての軽いキス。胸の奥がじんと熱くなる。これでも、ちょっとは上手くできるようになったのかな。
おじさんがゆっくりと頭を撫でてくる。気持ちいい。ちゅっと互いに吸いあってから、唇を離す。気恥ずかしくなって、シーツの端を掴んでシワにしてしまう。
「あっ……。先、お風呂行こっか。せっかく、準備したんだし」
「いいよ。洗ってあげようか、虹夏ちゃん?」
お湯を出しっぱなしでいたことを思い出した。
少々溢れていても、ここはホテルだし気にしない。むしろ、ちょっとしたアトラクション感があって、たぷたぷの湯船に浸かるのが楽しかったりもする。
お風呂に行く前に仲良く脱衣開始。手早く下着姿になり、おじさんのベルトを外してあげることにする。
呟くように、かわいいって褒められた。新作、買っておいてよかったな。
「もう、子供扱いは禁止なんだからね? 私だってその……、ちゃんとエッチなことできるんだし」
「知ってる。だから、ほら」
「あはは、だよねぇ……。おちんちん、もうこんなにしてくれてるんだ。ねっ、脱がせてもいい?」
「お願い、虹夏ちゃん」
下着をずらすと、大きくなったおちんちんが勢いよく飛び出した。先端の部分、亀頭っていうらしいんだけど、半分ほど皮を被っているのがかわいらしい。おじさんは嫌がるから、絶対口には出さないけど。
「よぉし。気持ちいいでしょ、あわあわするの」
お風呂場に入り、後ろから抱きついた。
ボディーソープを泡立てて、おちんちんをガッチリとホールド。ジムで鍛えているらしく、贅肉は少なめだ。おじさんの大きな背中に密着していると、お湯のあたたかさ以上のぬくもりを貰える気がしていた。
「すごくいいよ、虹夏ちゃん。手、うまく使えるようになったね」
「えへへー、でしょー? 料理してる途中に、野菜で練習したりしてさ。あっ! お口の方の成果も、あとで見せてあげよっか」
「ははっ。楽しみだね、そっちも」
にちゅっ、にちゅり、ぬちゅちゅちゅ。
お仕事の疲れと、汚れをしっかり抜き取れるように、根本から先に向けて手でしっかりとコキコキ。亀頭の部分をいじくっていると、ぬるっとした感触が手のひらに拡がる。おじさんが私で感じてくれている証拠。泡なんかよりも、遥かにエッチな潤滑剤。
くぼみから先を搾るように刺激する。おちんちんの熱とふるえが、ずっと強くなった。イキタイときの反応。張り詰めた玉を揉みほぐしてあげると、嬉しそうにおじさんが声を洩らした。
「あっ、ふふっ。もう、んあっ……♡ 手でしてあげただけなのに、出しすぎだってば」
暴発に近い射精だった。
とろとろの濃い液体。おじさんの、一週間分の疲れが流れていく。
もっと。もっと気持ちよく射精して♡私の手で、満足いくまで出しきって♡
丁寧な擦り方は変えずに、力加減でグラデーションをつけていく。熱いお湯に浸かった時みたいに、おじさんがおじさんくさい声を出す。これがいいんだ。しつこいくらいに繰り返すと、ゼリーみたいなプルプルの精液が、とろっと先端からこぼれ落ちた。
「どぼん、しちゃおっか。身体あたためてから、続きしよ?」
「だね。くっついて入ろう、虹夏ちゃん」
おじさんに抱っこされるような格好で、ラブホテル特有の広い湯船に身体を浸す。子供扱いされるのは嫌だけど、これだけは別腹。足を思いっきり伸ばして、つかの間の自由を満喫する。
お尻でおちんちんにイタズラをすると、おじさんが子供っぽい仕返しをする。
「おじさん。キス、してくれる?」
「それなら、いくらでも」
「やっ、んあっ、んっ……♡ もう、おっぱいさわっちゃ、あうっ……♡」
お姉ちゃんごめんなさい。虹夏は、すっかりワルイコになりました。
二回戦に向けた補給時間。ディープキスで唾液の交換をすると、お腹の奥がきゅっと熱くなった。