「フーッ ……寒くなってきたな」
気温は低くなりつつあり、街に出ると冷たい風が肌を撫でる。
鬱陶しいほど草木が生い茂っていた道端も、寂しげに緑が残る。
冬が近づいていた。
街の様子は何時もと変わらないように見えるが、どこか皆が世話しなく動いているようだ。
それもそのはずで冬になれば必ず雪が降り積もる。
毎年この時期は街が雪で覆われるため、それに備えて皆が慌ただしく行動する。
当然それは冒険者も同じことで、雪が降れば身動きがとれなくなる。
魔の森に行くなんてもっての他で、行けば遭難して凍え死ぬだけだろう。
ほとんどの冒険者は街での活動に専念される、しかし街での仕事がそう多くあるだろうか?
分かりきった答えである。
よって皆が雪が降るまでに冬を越せるくらいの蓄えをするため、ギルドの中でも皆が世話しない。
同じ冒険者であるマンハットもそうであるかと思われたが、何故かギルドの食堂で自堕落に過ごしている。
「マンハットは稼ぎに行かなくていいのかい?」
疑問を抱いたマーシャルッタは、ストレートに聞いた。
たまたまギルドで会った二人はどちらが言うわけでもなく、同じ席について安酒を飲んでいた。
「そんなに貯金あるわけでもないんだろう? こんなところで油売ってる場合じゃないんじゃないのかな?」
「そうなんだが、……やる気が出ねぇんだ…」
周りが忙しそうに働いているほど、やる気が無くなって行く。
真面目な冒険者は一生懸命働いているが、俺と同じく酒を飲んでいる奴らもちらほらいる。
自分と同じような、いやそれ以上にどうしようもない連中が、一緒になって自堕落に過ごしている。
アイツらよりはマシだな、と思いながら自分を慰め酒にまた手を伸ばす。
本当に追い詰められてからじゃないと動けない男なのだ。
「なぁ、なんか演奏してくれよ、何でもいいからよ」
「うーん、ボクもやる気でないなぁ」
マンハットの気だるさが移ったのか、マーシャルッタもいまいち声に覇気がない。
「そういや、いつ街を出るんだ?」
「そうだねぇ、特に決めてないけど、雪が降る前には移動するつもりだよ」
となるとあと数日か。
マーシャルッタは一つの地域に長居しないと公言しており、また何処かに移動すると言っていたので、言葉通りならとっくに別の街に出掛けているところのはずだ。
短い間だったけど、コイツとは色々あったな。
会えばそれなりに会話もしたが、結局夜を過ごしたのはあの一度きりだった。
お互い盛りのついた思春期でもないし大人になればそんなもんだが。
「…ん?なに、なんか顔についてる?」
マーシャルッタは視線を隠すように手で顔を覆った。
もしかしたら二度と会うこともなくなるかもしれない。
もう一度くらい抱いておきたいな。
「なぁ、今日これから暇か?」
「暇だねぇ、やることないもん」
「じゃあよぅ、これから俺と一緒に…」
「「いた!」」
突如として会話を遮るように後ろから声をかけてきた二人の女。
振り向けば瓜二つの顔と銀と金の色が目に映る。
「メルメルちゃん達じゃない、久しぶり」
「変な呼び方しないで、……てかアンタまだ居たのね」
「ひどい」
「…冬になる前に街から出るって言ってなかった?」
「うん、そろそろ行くよ、…君たちもまた一緒に旅する?」
「…行かない」
「そ、残念」
「なんでアンタこのオッサンと一緒にいるのよ、知り合いなの?」
「んー、それはねー…」
「まてまて、俺を置いて話進めるなっ」
メルメアとメルメイ。
鏡写ししたようなそっくりな顔立ち、長い金髪に青い瞳のメルメアとショートヘアに銀髪で赤い瞳のメルメイ。
双子の冒険者でありこのギルドでも数少ないAランクの冒険者達だ。
マンハットと違い真面目で信頼厚い見目麗しい冒険者が何故この時間からギルドの食堂に現れたのか。
「あーもしかしてだけど、俺に用事?」
違うよね、そんなわけないよね。
そう言ったニュアンスを含んだ言葉をおそるおそる口にする。
「そうよ、ちょっとお願いしたいことあんのよねー」
「…大丈夫難しいことじゃない」
願いは通じず、無情にも嫌な予感しか感じさせないセリフが出てくる。
コイツらとはそれなりに長い付き合いで。幼少の頃から時折こうしてお願い事をしてくる。
最初はお小遣いを頂戴くらいだったのが年々大人になるにつれ面倒ごとが多くなってくる。俺も最初の頃は孤児院育ちは何かと大変だろうと思って優しくしていたが、今でも都合のいい時に頼ってくるのは勘弁してほしい。
「わるいが、今日はこれから予定があってな…」
チラっとマーシャルッタを横目に見る。
服の下に隠れていて見えない魅惑の身体を思い描く。
先日抱いたばかりでハッキリと細部まで思い出せた。意外にも大きいムネ、細いクビレ、ハリのあるお尻。可愛らしく喘ぐ表情すらも。
ここを逃せば二度と拝むことはないかもしれない。
マーシャルッタと視線が絡み付く。
ニコリと微笑んで誘うように舌先が唇を僅かに濡らす。短い間柄だが一夜を共にした仲だ、俺の言いたいことを読み取ってくれている。
今日は二人でベッドの上で一緒に過ごすのだ。
「マンハットは今日暇だってさ」
……あ、あれ? ま、マーシャさん?
「よかった、別にアンタじゃなきゃダメって訳じゃないんだけどさ」
「…マンハットならスムーズに話が通ると思って」
「え、ええ? …うそだろ」
ここに来てお預けかよ……そう言うプレイはちょっとお望みではないのだが。
心が通じたと思ったのは一方的な思い込みだったようだ、女はよくわからんは…。
「……それで、何の用件だよ?」
下半身に名残惜しさを感じながら気を取り直して聞く。これでしょうもないことだったら許さんぞ。
「カディルって分かる? ウチの子なんだけど」
ウチの子というのは孤児院の子供という意味で言っている。
二人とも孤児院育ち、今でも孤児院にはよく遊びに行っている。恩返しでもあるのだろう、多額な支援もしているし子供達とよく遊んでいるのを見かける。彼女らにとって大切な身内なのだ。
確か5.6人くらい居たはずだが、正直顔と名前が一致しない。
「悪いちょっとどの子か分からん…」
「…一番頭がいい子、ずっと勉強していた」
「あー……はいはい、わかるわかるあの子かぁ」
そう言われるとわかるな、年齢の割に大人びていて利発そうな子供がいた、あの子のことだろう。
「それで、そのカディルくんがどうしたの?」
「聞いて驚きなさい! 王都の輝色学校に入学することになったのよ!」
「へー! それは凄い!」
それは本当に凄いぞ、大体の名門校何て幼少期から勉強出来た貴族くらいしかいないのに、平民のそれも孤児院出身から王都の学校に受かるのは類を見ないことだ。頭がいい子だなぁと思っていたが想像以上に良かったらしい。
メルメアが得意気な顔をするのも頷ける、自分のこと以上に嬉しいだろう。
「昔からカディルは頭がよくて難しい書物ばかり読んでいたのよ! 教会にあるものだけじゃ物足りなくなって私たちが王都で取り寄せたりして勉強熱心なの! 最近は神父様達でも答えるのが難しい質問ばかりでここだとカディルの為にならないからって王都の学校に通わせようってなっていて、そしたらまさかあの輝色学校の試験に合格して通えることになって!本当にカディルは凄いわ!よく頑張った! …ちょっと貴族が多い学校だからそこが心配だけど、カディルはキチンと神父様達から礼儀作法教わってるし大丈夫よね? …あっ、流石のアンタでも輝石学校くらいは知ってるわよね?」
「あー知ってる知ってる...」
想像以上に自慢気だ、よっぽど嬉しかったんだろうな。
まぁそらそうだよな自分達が育った施設から名門校に入学する子が出てきたら、その苦労も分かる分感動もひとしおだろう。
なおもカディルについての自慢話を続けようとするメルメアを制して本題に戻す。
「待て待て、わかったよつまりあれだな、王都の学校に入学するから、その王都まで護衛して行ってほしいってことだろ?」
当たり前だがここから通えるほど王都まで近くはない、カディルは王都に住むことになるだろう、おそらくは寮とかあるんじゃないか?
そして移動するなら雪が降る前に行動しなくてはならない。もうあまり時間はないな。
「は? 全然違うわよ」
違ったらしい。
「じゃあなんだよ」
「…カディルのお別れ会をしたい、せっかくだから盛大に」
「いつもいつも孤児院でするのも味気ないでしょ? どこか場所を貸しきって使いたいのよ!」
「おーいいんじゃね? で、それが俺と何の関係性があるんだよ?」
何が言いたいのかさっぱりだ。
ギルドの食堂を借りたいならギルド長に言うべきだし、俺は他に場所を用意出来るようなツテ何て持ってないぞ。
「…銀の盃亭、借りれない?」
あー、なるほど、リィロのところか。
「でもあそこ酒場だぞ、子供が行くようなとこじゃない」
「…場所さえ貸してくれればいい、後はこっちで準備する」
「……んー店主に聞かないと分からねぇけどよ、それって近日中だろ? いきなりはキツいんじゃねぇか?」
流石に突然店を貸してくれと言って了承してくれるとは思えん。
出来れば一月前から言ってくれてたら根回し出来たのに。
「だからアンタにお願いしてるんじゃない! 私たちが突然押し掛けてダメかもだけど、アンタからも口添えしてくれれば多少はどうにかなるんじゃない?」
「なるんじゃない…って言われてもなぁ」
実際どうなんだ? 今まで誰かに貸し出していたことなんてあったか?
貸すとなると一日営業出来ない日が出てくる訳だ、飲食店としていくら払えば採算つくのか、そもそもこういうのって金の問題ではないだろうし、うーんこればかりはどうにもならない気がする。
「…お願いマンハット、聞くだけ聞いてみて」
「まぁ……そうだな、聞くだけはタダだ」
たぶんダメそうだと思いながら一旦頷く。
普通の男だったら美人姉妹にお願いされてコロッと頷いちまう可能性があるが、リィロはちとな趣味嗜好が変態の領域にいるからな、感情ではなく合理で突き動かさないと許可はしないだろう。
まぁダメだったとしてもそれは俺の責任ではない。
「ねぇ、それボクもついていっていい?」
おずおずと手を上げて主張するマーシャルッタ。
本当に暇なんだろうなコイツ。
「暇なの?アンタ」
「いいじゃないか、邪魔はしないよ」
「メルメア、マーシャも連れて行こう、口が回るから戦力になる」
それにマーシャは一度酒場で演奏をしたことがあるのだ、リィロの知らないやつではないし、一角を借りただけではあるが実績はある、ある意味これが本職だ。
それに偶然にも酒場に行くのだ、これはチャンスが巡って来たんじゃないか?
めんどくさいことを頼まれたと思ったが最終的に女を抱ければそれで良しだ。
「…マーシャ? 二人はどんな関係なの?」
「細かいことは気にするな、行こう!」
マーシャとの関係を深堀されると面倒だ、下手に追及されても答えづらいので話を遮って食堂から出ようとすると。
「ちょっと待って、もう一つ伝えなきゃいけないことがあるんだけど」
「おう、なんだよ」
「グレイモンド神父のことなんだけど……」
◆◆◆◇◇◇
「ああ、いいぞ場所くらい貸してやろう」
四人で早速銀の盃亭に向かいリィロに交渉したところあっさりとOKが出た。
拍子抜けもいいところだ、まだ場所を使って何をするのかも言っていないのに。
「やったぁ!! ありがとうございます!」
「…本当に助かります」
無邪気に喜ぶ姉妹を尻目に、胡乱な目をリィロに向ける。
まさか美人姉妹にやられたか? コイツの趣味に二人は適してないと思ったんだがな。
「…でも本当に明日で大丈夫です? 私達は助かりますが…」
「ああ、こちらも今日か明日が都合いいんだ、気にせず使ってくれ」
「ありがとうございます、あとは……場所代については幾らほどを考えてます?」
「タダでいいぞ」
「「タダ!?」」
「もちろん酒を消費するのであればその分の料金は払ってもらうが、場所だけを使用するだけなのだろう?ならタダでいい」
俺を含めメルメアたちは結構な値段を請求されると思っていたため、交渉などなにも無く終わったことに拍子抜けした。
お金がかからないのは滅茶苦茶嬉しいが、謎に気前が良すぎて素直に喜んでいいのか困っている顔をしている姉妹たち。
俺もこれは少々解せない。
「俺から聞いといてなんだがいいのかよ、そんな簡単によ…しかもタダって…」
「ん? 使うのは昼間だけだろ? 夜の営業に差し支えないなら問題ない、それにこの子らグレイモンドのとこの子だろ、なら構わんさ」
どうやらこの姉妹のためと言うよりグレイモンドの爺さんの恩義に報いるためみたいだ。リィロも昔からよく世話になっていたからな、爺さんの身内同然の二人に無償で店を貸し出すくらいはするか。
その後も簡単な注意事項をリィロは伝え、トントン拍子に話が進んでいき、カディル君のお別れ会は明日の昼に決まった。
偶然にも一階の酒場は今日お休みにするらしく、明日の昼間までなら使ってもいいとのこと。
「聞いてないぞ休みなんて」
「なぜお前にいちいち言わねばならん?」
長い間寝泊まりしている客だと言うのに一向に身内扱いする気はないらしい。いつもヤっていることがアレなので仕方ないことではあるが、他人行儀は寂しいぞ。
明日の送別会のため姉妹は今から準備に取りかかった。
と言ってもやることは簡単な飾りつけや、椅子、机の配置を変えることくらいなものだ。
流石に店の内装に手を加えることまではしないし、料理なんかも用意したものを運んで来るつもりのようで、ここでの準備はあまりないようだ。
姉妹の姿を見て顎に手を当てて何かを考えるリィロは、一つ頷くと外装を羽織り出入り口へと向かう。
「予定より少しばかり早いが、お前たちがいれば大丈夫だな……おいマンハット今から店を空けるから留守を頼んだぞ」
「……は? 今から!?店に知らん奴らを残して出かけるのか!?」
「知らん奴らではないだろ、お前と教会の子達だろ、万が一もないと思ったから任せるんだ。心配せんでも夜になる前には従業員がくるからそれまで居てくれればいい、酒場は休みだから客も来んしな。 …おおい!お嬢ちゃん達! 悪いが出かけてくる!この後従業員が来るからそれまで留守番しててくれ、好きに見てってくれて構わないが変なイタズラはなしだぞ!」
「あっ、はーい! 任せてください!」
「…ちゃんと見張ってます」
リィロはマンハットと双子達にそう声をかけると本当にそのまま出ていってしまった。
信用されていると喜ぶべきか、面倒なことを押し付けられたと思うべきか。
「ふふ、信頼されているね」
「ああ、マーシャすまん、せっかく着いてきてもらって悪いが、特に見所もなく終わっちまった。店主もいねぇから俺が代わりに歓迎するよ、何か飲みたいものがあったら言ってくれ、店主には後で俺が言って金払っとけば大丈夫だから」
「うん、お気遣いありがとう、でもボクが言い出して勝手に着いてきただけだから気にしないで」
暇だからと着いてきてくれたマーシャルッタではあるが、これでは暇潰しにもなりはしない。
あそこのガキ二人はどうでもいいが、彼女は最大限歓迎したい。
ガキ共が帰った後でスムーズに部屋に連れ込めるように今のうちに好感度を高めておくのだ。
「…なんか私達と態度違くない?」
「ね、あの二人いつの間に仲よくなったのよ」
横から文句が聞こえてくる。
ガキ共には分からん大人の関係があるのだよ。
「マンハットはメルメルちゃん達とはどういう関係なんだい?」
「変な呼び方しないで」
「関係も何も、……知り合いの娘?教え子の友達? かな?」
こうして問われるとコイツらとの関係ってなんだろうな、特に仲良い訳でもないし、仕事仲間とか友達の友達とか、近所に住んでるガキとか、そんな微妙な言葉になっちまうな。
「ただの知り合いってだけでしょ、何アンタ変なコト勘ぐってないでしょうね!」
「んー別に? 同業者にしては仲いいなぁと思っただけだよ」
「だからそれはこっちのセリフ! おかしいでしょアンタたち!」
「…ねぇマンハット、何でマーシャルッタと仲いいの?」
「あー、ほら、セラスのことで話する機会あったからな、それでだよ」
「それにしたってデレデレし過ぎじゃない?」
すごい怪しまれてるな。
めんどくさい奴らだが、だからと言って馬鹿正直に言うわけにも、……いや言ってもいいか、別に内緒にする必要もないが……。
マーシャルッタの表情を横目で確認する。
目が合ってニコリとほほ笑んでくれた。
うん、何考えてるかよくわからんわ。
「…マーシャルッタ、このおじさんは止めといたほうがいい」
「そうよ! 少なくともアンタの詩の題材にはならないわ!ちょっとのことで挫けて夢追うの諦めちゃったロクデナシなんだから!」
「辛辣すぎないか?」
二人して酷い言い分だ、間違ったことを言っていないことを含めてタチが悪い。
でも大人になったと言ってほしいね、変に頑張って無駄な努力をするのを辞めただけなんだから。
「こっちはいいから、お前たちはさっさと自分たちの作業を進めてろよ、準備に明日までかける気か?」
「…それもそう」
「チッ…そうね」
しぶしぶと引き下がっていく二人。
根は真面目だからな、正論を言えば文句を言いつつも言うことを聞く。
「面白いね君たち」
「楽しんでくれたようで何よりだよ、ちなみにあいつ等が題材の詩はどうなんだ? あー見えて強いぞ、見た目もいいしよ」
「うーん教会関係者はちょっと、絶対許可降りないだろうし作るのは怖いかな」
コイツらはそっちの問題があったか。
冒険者でもあり教会の戦士でもある双子達は微妙な立ち位置だ、下手なことすると教会を敵に回す恐れあるな。
「教会はそういうとこめんどくさいからなぁ、……それでどうする何飲みたい? まだ夜には早いし酒精弱いものにするか?」
「うーん、……あの夜にさ、飲んだお酒はまだあるのかい?」
あの夜と言うのはあの日一夜を共にした日に違いない。となるとその酒はひとつしかない。
「あのってあれだよな、そりゃあまだあるが」
「ちょっと頂戴よ」
「今から? あれを飲むには早くないか…」
そう言いつつもボトルを取り出しグラスに注ぐ。
これってつまりOKってことか? また手を出していいよ、と誘ってると判断していいよな。
「何それ! どこのお酒?」
「…見たことない」
またしてもメルメアとメルメイが近寄って覗き込んでくる。
何にでも興味示すガキかコイツらは。
「うーん、だいぶ減ったなぁ」
ボトルの中身はかなり減少していた。
最近は結構色々な女たちに飲ませてたから減りが早い、どうにかして補充したいとこだが輸入物でそうそう見かけない酒だ。
この酒のためだけに隣国に行くのは旅費や入国費、関税だけで大赤字になってしまう。
どうしたもんか。
「美味しいのそれ?」
「…マーシャルッタだけずるくない?」
「お前らの分はねぇぞ、ガキが飲むには早い」
コイツらに出したらそれだけで空になっちまう。
残りはよく考えて使わんとな。
「うんうん、やっぱりこれだよ」
マーシャルッタは少量口に含み転がしよく味わってから飲み込み何か納得したように頷いた。
「このお酒、流れの商人が同じの持っていたよ」
「…………マジ!?」
慌てて聞き返すと、間違いないとマーシャルッタは断言した。
もう無くなりそうになったところで救世主のごとき救いの糸。一瞬罠かと思うくらいのタイミングのよさ。
こんな嘘をつく必要なんてないから本当なのだろうが、それにしても運がいい。
悪いことにしか使ってないのに神様は味方してくれているのか、いやこの場合悪魔か。
「たぶんまだこの街に居るはずだよ」
「……そうか……よし、出かけてくるぜ」
一瞬今の状況を考え躊躇うが、すぐに判断を下す。
思いがけない事態だが、これを見逃さずにはいられない。
流れの商人なんて何時いなくなってもおかしくないのだ、それどころか商品が売れ切れていることだってあるだろうし。
今すぐに動かなければ手に入らないかもしれない。
「アンタまで出かけるわけ?」
「…私達だけ残して?」
「……平気だろお前らなら。その酒は飲むなよ、補充するからって言っても貴重なものには変わりないからな」
リィロの言葉を借りるわけじゃないがコイツらならバカな真似はせんだろう。
客はいないし、そもそも店は閉まっているから留守番できれば誰でもいい。
変なマネはするなと再度釘を刺し店を出る。
人通りの多いところに向かって駆け出した。
商人のいるところ何て大体見当がつく、何点か見回っていれば見つかるだろ。
「本当に出ていっちゃたわよアイツ」
「…そんなに美味しいの、それ?」
「私は好きだよこのお酒」
「ふーん」
「飲んでみる?」
「いらないわよ」
「…一口頂戴」
「ちょっとメルメイ」
「…マーシャルッタが好きだと言ったの気になる」
「この街ではまず見かけない珍しい酒なんだよ、見た目も味も良いし結構ハマる人は多いと思う」
「そこまで言われると気になるわね」
「ただ酒精が…あっ」
「…んっ……美味しいこれ」
「マジ?……ちょっと私にも飲ませてよ」
「あー……まぁ…いいかぁ」
すぐに探していた商人は見つかった。
マーシャルッタから特徴を聞いて、どこか見覚えがあると思ったところ最近ここいらで露天商している女商人がいて記憶に残っていたため、あっさりと見つけ出すことが出来た。
目的の品も確保出来て、ホクホク顔で帰宅した。
これでまた女ひっかけて俺の性欲発散ライフが継続できる。
「今戻ったぞー、すまないな少し時間くったわ!」
スムーズに酒を買うことが出来たとは言え、商人を探したりして多少の時間はかかった。
メルメアたちの準備ももうとっくに終わっているころだろう。さっさとガキを帰らせてマーシャルッタとくんずほぐれつをしよう。
あの時の夜をもう一度だ。
そう邪な考えを持って扉を開け声をかけるも、返事の一つない。
シーンと静かな空間がそこにあり、人影もなかった。
「は? え? ……帰った?」
何かしら返事があるものと思って声をかけたのにまさかの無音のお出迎え。
留守番頼んでいたのに無断で帰ったのか?
恐る恐る店内を見回すと。
不安とは裏腹にメルメアとメルメイの二人は店内にまだいた。
ただし地面に横たわった状態で。
「お、おい! 大丈夫か!?」
慌てて駆けつけるが、ふとテーブルの上にあるものが目に入る。
マーシャルッタに出していた例の酒だった。しかも中身は空っぽ。
「ぁう……ぅあー…しかいゆれるー」
「…ん……めるめあ?……あれ?……しんぷさまー?」
「…………」
酔っているだけだった。
心配して損した。
倒れているのを見たときは正直血の気が引いたのに。
襲撃にでもあったのかと勘繰ったのに、ただ酔っただけかよ。
そう言えば、マーシャルッタはどこに。
空っぽの酒瓶の下に紙切れが挟まっているのが見えた。
広げてみるとマーシャルッタから宛てられた手紙だった。
『所用が出来たので帰ります。
お酒、双子ちゃんたちが飲みたそうにしていたのであげました。
酔っぱらっちゃったみたいだけど、たぶん大丈夫。
介抱よろしく。』
「…………え?」
何度見てもたったそれのみしか書いていなかった。
自由過ぎる。
酔い潰れた女二人残してどっか行っちまうなんて、すぐに帰るとは言ったがその間に強盗に入られたらどうするんだ。
「…んー、まんはっと、……かえってきた」
「おう、何してんだよメルメイ、飲むなっつったろ」
酔い潰れた双子。目的だったマーシャルッタは不在。
酷い状況だ。
「しっかりしろ、立てるか?」
「…むりー」
メルメイを立たせようと起こすも、上体を起こすだけで精一杯の様子だ。
フラフラと落ち着き無く首が座っていない。
垂れかかるように胸に飛び込んでくるのを優しく受け止める。
……あれ?
ふわりと甘い蜜のような香りがくすぐるように脳髄に駆け巡った。
ほんのり上気して汗ばんだ熱い体温が伝わり、性的興奮を刺激される。思わず支えた手に力が入る。
「…はぁ…はぁ…まんはっと?」
荒い呼吸、甘えるような上目遣い。
改めて一人の女として見てみると、コイツらめちゃくちゃ可愛いな。
近所にいるクソ生意気なガキ共だったのに、いつの間にか大人の女性になっている。
近すぎて気がつかなかったがエッチな身体つきをしているんだな。
…………目的の女と違うが、もうこいつらでいいな。
「二階に行こうぜ二人とも、たっぷり可愛がってやるよ」
本作の「ガールズドランク」をゲームにしたものをFANZAに配信しています。
まだ体験版ですが三話まで遊べます、よろしければ。
詳しくは概要欄に掲載します。よろしくお願いします。
FANZAリンク_https://www.dmm.co.jp/dc/doujin/-/detail/=/cid=d_514629/