※この作品はR-18です。

カルマとイーロン   作:訶神稀有

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ラストピリオド1部の時間軸。
カルマ、ウーシア共にサンドリヨン化済み。


カルマ

「君は、あの男に利用されてる自覚があるか?」

眼鏡をかけ直しながらウーシアさんは言った。

照明の反射のせいで目元が見えなくなる。

「彼の君に対する行為はグルーミングだ。承認欲求をくすぐり、支配下に置くやり方だよ」

彼女がレンズの向こうに隠した感情は何だろう?

そもそも、この言葉も忠告ではなさそうだ。

「君の研究はノイズの組織拡大に多大な貢献をした。いや、戦略の方向を変えたと言ってもいい」

彼女が軽く腕組みしてこちらを伺う。

何だか、苛立っているようにも感じる。

「もちろん横の連携は大切なことだ。彼はスタンドプレーに走るきらいがあるからね」

「わかります」

そう相槌を打った瞬間、ウーシアさんから表情が消えた。

すぐにまたいつもの余裕のある微笑を浮かべたけれど、今の対応が彼女の気に障ったのは間違いない。

「あの男は危険だ。君も薄々は気付いてるだろう?彼はノイズを自分の野望の実現に利用しているだけで、祖神への忠誠心など持ってはいまい」

(はい、知ってます)

先生に直接打ち明けられましたから。

「祖神が器を手に入れた今、我々ノイズ構成員も次のステージに進むことになる」

「はい」

「その新たな世界にあの男は選ばれないだろう。祖神はそれほど鷹揚な方ではないからね」

脚を組み直しながらウーシアさんは断言した。

その言葉は、不敬ではないですか?

貴女も先生のことを悪く言えないと思いますよ。

「君も彼と少し距離を置くといい。これまでの功績を無駄にしたくはないだろう?」

冷めた紅茶を飲み干して、ウーシアさんが薄く笑う。

その目は笑っていなかったけれど。

 

 

 

 

「ウーシアがそんなことを言ったのか」

やれやれといった感じで先生は頭を振った。

「最近抱いてやってないからお前に妬いてるんだろう。気にするな」

「はい、先生」

私を見てるようで、どこか遠くを見ている瞳。

きっとウーシアさんにも、他の誰かにも、同じことを囁いてるんだろう。

「カルマ、私にはお前が必要だ」

先生の、耳元をくすぐる低い声。

背中に回した腕に力がこもる。

(先生はズルい)

私がこの言葉を欲しがっているのを知っている。

知っているのに他の人との関係を隠さない。

それでも私はこの人から離れられない。

「祖神が世界を創ったのなら、その創造の根本にも機序があるはずだ」

ゆっくり動きながら先生が語る。

まるで授業でもするような口調で。

「はい、先生……」

歯を食いしばって意識を保つ。

先生の言葉をひとつも聞き漏らさないように。

「絶望の輪廻の向こう側、世界が始まるさらに前、神の失った禁断の知識が」

「……はい、先生……」

「レベルⅥクラスの力では足りないかもしれん。やはり祖神が器に6体のレベルⅥを集めた時が狙い目か」

「……せん、せい……」

先生の動きが早くなる。

「生命と魂の意味、時間と空間のメカニズム。世界の全ての真理が……!」

「あっ!」

下腹部が熱を受けとめる。

心地よい痺れが広がっていく。

「サンドリヨンが人との間に子供を宿したら、それはサンドリヨンになるんだろうか?」

身体を起こしながら先生が呟く。

「魂が輪廻するように、肉体も男女の営みから新しく産まれ落ちてくる。そこにも何か目的があるはずだ」

「はい……先生……」

「お前かウーシア、どちらが先に私にその意味を教えてくれるだろうな」

それは私で実験するということですか?

先生が望むなら、私は構いません。

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