※この作品はR-18です。

ようこそ有栖と清隆の教室へ   作:愛奴

10 / 99
櫛田とお買い物をして、週末を清隆と過ごす予定の有栖。
その清隆の部屋に行くちょっと前の出来事。

真澄ちゃんです。


10. 悪魔に捕らわれた女 神室真澄

6時になりそうなので櫛田と別れ、荷物もあったので一度寮に帰った。ワンピースに着替え、食事に出る。途中、コンビニに立ち寄ると、女子生徒が飲み物コーナーにいるのに気が付いた。少し挙動がおかしい。私は彼女の死角に入り、様子を見守る。端末のカメラを立ち上げ撮影する。「あ、バッグに入れた」その子はそのままコンビニを出た。速足で歩いて、少し離れたところで止まっていた。私は何食わぬ顔でその子の後ろに立ち

 

「いい物、見せていただきました」その子はびくっとして振り向いた。

「ひぃっ。な、何を見たっていうのよ。」すごく焦っているのが分かる。

「何を見られたのか、一番心当たりがあるのは貴方では?」と笑顔でいう。

「うるさい。」逃げようとするので、彼女の腕をつかんだ。

「ちょっと、離しなさいよ。」つかまれた腕を振りはらおうとするが、私の鍛えられた手を振り払うことはできない。抵抗するのを諦めたようだ。

「で、どうしたいの?」ふてくされ、開き直ったように聞いてきた。

 

「まず、いま問題となっているものを私によこしなさい。そして私についてきてください。」

 

きつくいうと、バッグから缶を取り出して渡してきた。缶ビールだ。私はそれを受け取り、自分のバッグにしまう。

 

「では行きましょうか。」

「店に戻るの?それとも警察・・。あぁ、くっそ。終わった。」その子はやけになっている。

「そんなつまらないことはしません。あそこに見えるレストランに行きます。夕食を付き合ってください。あ、奢りますよ。」といいながら、耳元で「ね、万引き娘さん。」と囁いた。

 

「私は1年Dクラスの綾瀬有栖と言います。あなたの名前を教えてください。」

「1年Aクラス神室真澄。」ぶっきらぼうに答える。

「神室真澄さん。では、これから真澄さんと呼びますね。」

レストランで席に着き、メニュー表を見ながら

「真澄さん、好きなものを注文してください。私は、この後もありますので、このA5サーロインステーキ250gにします。」今晩はいっぱい清隆に抱いてもらおう。

「食欲ない。」

「そうですか。でもお店に悪いので、同じものを2つ頼みましょう。」

店員を呼んで、同じものを2つ注文した。

 

「で、何がしたいの。」

 

「何がしたいの?そうですね。私を手伝ってください。あ、あなたに断る権利はありせん。この先あなたは私の手足となるのです。」

 

さっき撮影した動画と缶ビールをちらつかせる。ここで、ステーキが運ばれて来た。肉の焼かれるいい匂いがする。

「食欲がないのなら、そのままにしても構いませんよ。」

「いただきます。」小さな声で答えて、ナイフで肉を切り始めた。

「食べながらでいいので、正直に答えてください。」

「なぜ、あんなことを?」

「言いたくない。」

「真澄さん?」といって、睨み付ける。この目は便利だ、集中すれば相手を威嚇できる。

「断る権利はないと言いましたが。」神室がびくっとする。

「は、はい。ごめんなさい。毎日がつまらなくて。」

「お酒、飲まれるのですか?」私はステーキをパクパク食べているが、神室は進まない。

「飲まないよ。なんでもいいんだよ。」

「よくなさるのですか?」

「中3のころから、週一くらいでやってきた。」

「ああいうことをすると、気持ちがいいんですか?」いたずらっぽく聞く。

「あの一瞬だけ、気持ちがいいっていうか、気分がすっとする。」

「一瞬ですか。具体的に答えてください。どのあたりから気持ちよくなりますか?」

「うーん。どれにするか決めたあたり、かな。」

「どこまでですか?」

「店から見えなくなるまで来られたとき。まで、かな」

 

「せいぜい2分ですか。その2分の快楽は、一生を棒に振るほどの価値がありますか?」

 

「一生っておおげさでしょ。」

 

「あら、そうでしょうか。このバッグに入っているものと、あの動画、ここでの会話を警察に持っていくとどうなりますか。あなたには窃盗という前科が付きます。あ、未成年ですから前科はつきませんね。高校はまず退学でしょう、少年院送りということにはならないかもしれませんが、習慣性もあるようですので、保護観察はつきますね。あなたは「高校生のときに窃盗という犯罪を起こした女」というレッテルを背中に貼って生きていくことになります。そのくらい私は非情になれますよ。」

 

それを聞くと、事の重大さに気づいたのか彼女はガタガタと震え出した。私は何食わぬ顔でステーキを食べる。

 

「お判りいただけましたか?私は真澄さんを助けたのです。」

「あ、ありがとう、ございます。」

 

「でも、先ほどお話しした内容については、私はいつでも実行可能ということです。」神室が青ざめる。安心させてから突き落とす。落ちどころは同じでも、精神的には全く違う。

 

「真澄さんと私の関係についてはお判りいただけましたか?」

「わ、わかった。わかりました。」神室は震えながら涙を流している。

「早く食べないと覚めますよ。私はデザートを頼みます。」

店員を呼び、「紅茶とスフレのセット」を注文した。食べない神室をみて

「真澄さん。私は食べなさいといいました。」神室がびくっとして、のろのろと食べ始めた。私もデザートを食べ終え

 

「私は何をすれば?」恐る恐る聞いてくる神室に

「いまは何もしなくてもいいです。」即座に返事をする。

「なにも、ですか?」

「はい、ただ、必要時にはメールで指示します。それは何があってもこなしてください。」

「何があっても。ですか?」

「心配しないでください。死ねとか、殺せとか、到底出来そうにないことは指示しません。」

「綾瀬さんは何をしたいのですか?」

「私?私は楽しく学校生活を送れればいいのです。真澄さんも3年間楽しく過ごせることを保証しますよ。」

「あ、当然謝礼はお払いします。月2万ポイント。そして依頼毎にポイントを設定します。あ、それと綾瀬ではなく有栖です。」

「わかりました。有栖、さん。」

「では契約成立。あ、対等ではないので脅迫ですね」といって笑いかける。

「どうでもいい。」

 

「最後に質問です。お付き合いしている男性はいますか。」

「いない。」

「好きな人はいますか?」

「いない」

「処女ですか?」

「。。。」

「処女ですか?」

「はい。」小さく答えた。別に恥ずかしいことではないのに。

 

「では連絡先を交換して、今日は終わりましょう。支払いは私がしておきます。」二人で端末を操作し、連絡先を交換した。私の名前を「支配人」と登録させた。

 

さぁ、清隆の部屋に急ごう。金曜日の夜から日曜日の夜まで清隆と過ごそう。

―――――――――――――――――

 

神室Side

私はいま、コンビニにいる。中学の頃、毎日が退屈でつまらなかった。ある日、ほんの出来心で、スナック菓子をバッグに滑り落とし、そのまま店を出た。店にいる頃から心臓はバクバクし、それはある程度遠くまで離れるまで続いた。気分がすっとした。それからは、むしゃくしゃすると万引きをした。その時だけでもそのむしゃくしゃが収まる。

 

高校に進学して、Aクラスになった。周りは仲間を作り、輪を広げている。私もその中に入ってはいたが、作り笑顔でうわべだけ参加しているような感じだ。3日目にして、むしゃくしゃが私の気持ちを支配した。近くのコンビニに入り、監視カメラの位置を確認する。周りを見ても誰もいない。飲み物売り場で体を壁にして、ビールを手にかけ、素早くバッグに滑り落とした。心臓がバクバクする。このスリルがたまらない。

そのまま、コンビニが見なくなるところまで、足早に歩いた。その時だ。

 

「いい物、見せていただきました。」

 

後ろから声をかけられた。心臓が縮みあがった。見られた。振り向くと、シルバーグレーの髪の毛のとてもかわいい女の子が笑っている。逃げようとすると素早く腕をつかまれた。振りほどこうとしても、びくともしない。まるで石のようだ。もう、開き直るしかない。

 

「で、どうしたいの?」と聞くと、万引きしたものを渡して、私についてこいという。私は終わったと思った。このまま、さっきのコンビニか警察に連れていかれるのだと。だが、その子は

「あそこに見えるレストランに行きます。夕食を付き合ってください。」と言いながら耳元で「ね、万引き娘さん」と囁いてきた。私は観念し、その子の後についていった。

 

その子はDクラスの綾瀬有栖と名乗った。席に座ると綾瀬さんはステーキを私の分も注文した。身体に似合わず大きなものを注文することに少し驚いた。「この後もありますから」と少し気になったが聞き流した。綾瀬さんに何をしたいのか、聞いてみると

 

「手伝ってほしい。私の手足となってほしい。」

 

意味不明なことを言ってくる。食事が運ばれてきたが、こんな針のむしろに座っているような状態では、喉を通らない。

 

綾瀬さんはナイフとフォークをきれいに使い、ステーキを美味しそうに口に運ぶ。食べながら、根掘り葉掘り聞いてきた。最初に綾瀬さんに睨まれた。その目は私の心臓をつかむような感じで、かつてないほどの恐怖を感じた。私は正直に話すしかなかった。そして私は「最悪の女、綾瀬さんに地獄に追い落とされるほどの弱みを握られた」ことを理解せざるを得なかった。

 

最後に「処女か」と聞かれ驚いた。友達の中には中学生の内から経験した子もいたが、私はそのような機会がなかったし、興味はあったがまだ早いと思っていた。口ごもる私に、同じ質問が来る。私は正直に「はい」と小さな声で返事した。綾瀬さんは天使のような笑顔でうなずいている。

 

この先、何が起きるのか、綾瀬さんは「私も楽しませる」と言っていた。最後の質問の意味も分からないが、今はあの最悪の女から解放され、不安と安堵の混じる中、寮に帰った。

 




あ~ぁ。この子は有栖から逃れられない。

いよいよ清隆と有栖の最初の週末が始まります。

金曜日の夜から日曜日の夜まで、何して過ごすのやら。。。

感想、投稿は励みになります。よろしくお願いいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。