そんな彼女に変化が生まれます。
102.櫛田と須藤
10月初頭、インターハイ前の練習試合が都内強豪校と組まれ、ここ高育で行われた。須藤からのお願いで、応援?観戦するために体育館に行った。バスケットボールの試合なんてほとんど興味がなかったけど、必死に頼み込まれては、頷くほかなかった。
驚いた
すごく激しい。攻守の切り替え、速攻やフォーメーションプレーが決まる時はすごく綺麗だった。何よりも須藤の動きだ。周りの人とは違う。多分3年生が指示塔になっている。その指示塔からのサインを即座に確認し、自分やるべきことをきちんと遂行する。当然、すべてがうまくいくはずはない。でも、いらだつような表情を浮かべず、逆に次のプレーで取り返せるなんてことをチームメンバーに声掛けしている。第4クォーターになると、ばててきて動きが悪くなる選手が多い中、須藤だけは、動きが衰えなった。ユニフォームからは汗が滴るほどになっている。後半はずっと須藤を目で追いかけていた。
すごい
私は須藤の動きから目が離せなかった。流れるようなパス。相手を翻弄するピボットからのドリブル。目が覚めるようなダンクシュート。見ているだけでドキドキが止まらない。
(な、なにっ?この感じ)
第4クォーター残り5分。いくばくかあったリードが失われ、逆転された。
「がんばれ・・」
思わず、小さな声が出た
残り3分。両者譲らない。でも87-86で負けている。
「がんばれ・・健」
その声は少し大きくなった。
残り1分。相手側にボールが渡った。89-88で負けている。
「がんばれ・・健」
また大きくなった。けど、みんなの声援に消されている。
残り20秒。須藤が相手のパスをカット。ボールは味方の手に。92-90、2点差で負けている。多分、これがラストプレーだ。
「健・・いけぇ」
皆の声に負けないくらいの声になった。
残り5秒。走り込む須藤にパスが渡り、ドリブルをして相手陣地に切り込む。
残り2秒。須藤が3ポイントエリアに入った。
「健。おねがい。いれてぇー。」
その場で立ち上がり絶叫に近い声を上げた。たぶん、私の声は須藤に届いたはずだ。
須藤は大きなループを描くシュートを放った。
「はいって」
声は出なかった。両手を握って祈った。
そのボールはゆっくりと、まるでスロー再生の様にゴールに向かう。その途中で試合終了のホイッスルがなった。ボールはゆっくりとゴールに吸い込まれていった。同時に体育館を揺るがす観客の声が充満した。
ふと見ると、もみくちゃにされながら、須藤が私を見つけガッツポーズをしている。
かっこいい・・・
たかが練習試合に熱くなるなんて・・しかも、この試合に勝ったら、デートして欲しいと頼まれている。
その夜は興奮して寝付けなかった。
須藤は勉強のために、週3でこの部屋にやってくる。はっきり言って、勉強はできない。でも集中力はすごいと思っていた。苦手なことも何度も何度も繰り返して、克服してきた。おかげで、今ではクラスの平均よりも上になっている。
私は須藤の言葉を軽く聞き流していた。「NBAに行きたい?子供かよ」という感じだ。でも、今日の試合を見てわかった。
本気なんだ
随分と前に勉強の合間に聞いたことがあった。
「須藤君は土日とかは何してるの?」
「あ~。だいたい起きたら、走って、公園でシュート練習。飯食ったら、ウェイトトレーニング。少し休んで、昼飯。午後に勉強して、夕方、軽くジョギング。ご飯食ったら風呂に入って、ストレッチして寝る。感じかな。」
「え、それって毎週?遊びに行かないの?」
「あ~。雨が降らないと、ほぼ毎週だな。」
「そんなに頑張ってもAクラスに上がれないと・・」
「それは関係ない。今、できることをやるしかない。特権がなくても行けるくらいうまくなればいい。」
そんな会話をした。その時は「私の前で、単にかっこつけている」だけだと思っていた。でも本当だったんだ。でなきゃ、試合で最後まで走り切れない。
「夢かぁ」
独り言を言ってしまった。
私は何になりたい?
みんなから称賛されたい。みんなからもてはやされたい。
みんな?それって誰?
今の今までみんなからの称賛を集めることが私の生きがいだった。でも、なにかすっきりしない。頭にその姿を思い浮かべてもこれまでの様な陶酔感に浸れなくなった自分に驚いた。
どうしちゃったんだろう
今までのことをいろいろ思い出すと、いかに須藤が私の近くにいて助けてくれていたかよくわかる。無人島、クラス預金、体育祭、私が厳しい立場になると、すぐに救いの手を差し伸べてくれていた。須藤のことを考えると、鼓動が激しくなり胸が締め付けられる。
なんなんだろ。これ。
どうやら私は須藤に惚れ込んでしまったようだ。それほどイケメンでもない。頭もよくない。口も達者と言うわけではない、というかどちらかといえばがさつだ。だいたいこの私に、あの須藤では吊り合わないとさえ思っていた。
そんな男にこの櫛田桔梗が惚れてしまった。
――――――――――――――――
いつもと変わらず、勉強のために健は部屋にやってきた。これまで緊張したことはなった。男と意識もしたことはない。多分、あまり人としても見ていなかったと思う。ただ懐いてくるし、結果も出してくれることは私の成果として嬉しかった。
う、すごくドキドキする
健の手や、シャツの首元から見える胸を凝視している自分がいる。一生懸命、問題に取り組んでいる姿をじっと見つめている自分がいる。そんな、いつもと少し違う勉強会を5日ほど過ごした。そして今日、勉強会が終わった後、真剣な顔で「付き合って下さい。」と言われた。
とてもうれしかった
でも世の中の男、特に若い人たちは処女にこだわる人が多いとよく耳にした。相談を受けていても、「やっぱり前の男が気になるみたい」「処女じゃないけど、最初に演技すればいいだけ」と処女性にまつわる相談話は多い。あとで嫌な思いはしたくないし、させたくない。
「わ、私、処女じゃない。それでもいいの?」
「いい」って言って欲しい。でないと私は、健と付き合えない。健には嘘はつきたくない、演技もしたくない。私を受け入れて欲しい。今になってもっと優しくすればよかった。厳しく叱かりつけなきゃよかったと後悔する。
「別に構わない。俺は今の桔梗が好きだ。」
あぁ、健が私を受け入れてくれた。
―――――――――――――――――
私たちは、皆には公表せず付き合いを始めた。ただ、ご主人様には報告した。
「あいつはいい男だ。今まで通り支えてやれ。」
そんなことはわかっている。何しろ健が思うより私の方が健のことを好いている。というより、今や私は健にぞっこんである。でも、休日にデートはしても、手は繋がない。公表していないから繋げない。
「桔梗は須藤の家庭教師」
「あの桔梗と須藤はレベチ。くっつくわけがない」
「須藤は永遠の片思い」
と周りからよく噂されている。嘲笑されてもいい。二人の仲を揶揄されてもいい。この関係が守れるなら何を失ってもいいとさえ思うようになった。ただ、本心は周りの健を蔑むような言葉は許せなかった。
健はお人よしだし、とても優しい。私みたいに裏表のある人間じゃない。レベチというなら私が圧倒的に下だ。
「あぁ、まぁ、みんなそう思うだろうな。」
「あいつら頭にくる。消えて欲しい。」
「桔梗はそうだよな。でも、俺は別に構わない。相手にする時間すらもったいない。」
私は健の前では仮面をつけない。
「桔梗、無理してないか?」
「べ、別に」
「そうか、もし、疲れるならやめてくれ。」
「なんでそう思うの?」
「ん?たまに見せるだろ。あれ、俺は人間っぽくて好きだな。」
以前そんな会話をした。そのあと、私は健の前では仮面をはずした。
嫌われたらどうしよう
最初は少しためらった。そんな私に健も少し戸惑った。でも、それはすぐに解消され、健と部屋で過ごす時間がすごく穏やかになった。
健のバスケにかける熱量はハンパない。本当にアメリカに渡り、NBAに入団するつもりでいる。
「そうなるといいね」
最初は夢物語だと馬鹿にしていた私も、今はその夢を叶えさせたいと本気で思っている。毎週の個人授業は学校での教科とは別に、英語も集中的にやっている。英会話の時間を設けて、その間、日本語は禁止というのも取り入れている。最初は恥ずかしいのか会話できなかったけど、バスケの話題を振ると人が変わったように話し始めた。アメリカのバスケ番組をネットで視聴すると、食い入るようにモニターを見、耳を傾ける。最初はその言葉の速さに全くついていけなかったが、今はバスケ関連の話題なら問題なく聞き取れている。相変わらずの集中力とバスケという餌は効果てきめんだ。
ただ、デートする時間がなかなか取れない。生活パターンが筋力と持久力のトレーニング、バスケの練習を中心として、勉強に時間を割くとほとんど残らない。最初のころに聞いた通りストイックに取り組んでいる。それを邪魔することはできない。
でも、
手を繋いでイチャイチャしたい。
スキンシップもしたいし・・・
セックスしたい。
勉強時間に部屋でくつろいでいるとき、ソファの健のすぐ横に座る。勉強会の最初のころは何かとどぎまぎしていたが、最近は余裕である。首を健の肩に預けると、ふっと横を向いて、キスしてくれる。唇に振れるだけの軽いキスだ。
健との付き合いはゆっくりと関係を作りあげていく感じで進んでいる。いまだ舌を絡ませるディープキスはしていない。先週ようやく唇を吸いあうところまでは進んだ。
勉強会を終え健が帰るとき、必ずハグしてキスをしてくれる。だいたいがその互いに吸いあうやつだ。でもそれ以上前に進まない。
健、抱いてよ
毎回、その言葉を飲み込んで扉を閉める。
健が帰るといつも私はベッドに転がりオナニーする。もう何度目かわからない。身体が収まらないのだ。ご主人様に開発された身体は一度欲情すると簡単には収まらない。ご主人様にお願いしてもいいが、それだとほぼ毎日になってしまう。
蒸れたパンティを脱ぐと乾燥した空気がまんこに当たる。それだけでもすっきりする。
脚を広げ無毛の恥丘を撫でたりつまんだりする。そう、ご主人様が好きな行為だ。愛液が垂れて出てきたのがわかる。割れ目の頂点をゆっくりと触る。
「はぁぁぁ」
ツンツンと軽くつつけばクリトリスが勃起し始める。つばをつけ、皮の上から揉み込むと身体が小刻みに震えだす。まんこからにじみ出た愛液を指ですくい、クリトリスに塗り込む。
「はぁん・・きもちいい・・たまらない。」
愛液を付けた指で弄る頃になると私のクリトリスは頭もたげる。先端は皮がむけ、小指の第一関節から先くらいの大きさになる。聞いたことはないが、人よりひときわ大きいと思う。多分横から見ると恥丘から小さなちんこが生えているように見えるだろう。この勃起したクリトリスを有栖に扱かれ漏らすほどに攻められた。
指に愛液をまとわせ、右手の親指と人差し指で鞘の部分をつまむようにし、扱いたり前後左右に振ったりする。左手の中指と人差し指を合わせた谷のところに先っちょを当てているから、右手の動きに合わせて、とんでもない快感が身体を走り、腰が抜けそうになる。
防音が聞いているとはいえ、オナニーの声を聴かれるのは恥ずかしい。いつもタオルの端を噛んで声を我慢する。
「うぅ・・けん・・ぐぅぅ・・うぅっ・・う・・ううっ」
背中がのけ反り、頭で上半身を支え、快感に耐える。まんこから愛液が垂れ、お尻の穴を通過したのを感じる。両手をせわしなく動かすと、のけ反りから、さらに腰が浮き上ったりする。
「けん・・いい・・いく・いく・いく・・」
使っている両手の指でクリトリスを押しつぶすようにすると、絶頂できる。頭の中でスパークが飛びあい、腰が大きく上下する。全身がぐぐっと硬直したあと、弛緩する。
「はぁ、はぁ、はぁ」
少しすっきりした。たまにこのまま第二ラウンドとして指入れして貪ることもあるが、今日はいいか。
健、抱いてよ
―――――――――――――――――――
11月の終わり。協会幹部の不祥事とやらで、遅れていたインターハイがようやく開催され、わが高育男子バスケ部が初優勝を飾った。これで、クラスポイントとして100が来月に加算されてくる。レギュラーメンバーには50万プライベートポイントが報奨として振り込まれるらしい。
バスケ部の凱旋で優勝旗を健が高々と上げて行進した。健の描く将来構想には、インターハイ3連覇が必須だった。Aクラスで卒業できなくても、可能な限りの努力はする。3連覇し、強豪大学からのスカウトをうけ、大学リーグで4連覇。そしてNBAのドラフト名簿に入り込む。その前に日本代表の話があれば受けるが、やはり本命はNBAだと言っていた。
その日は祝勝会が体育館で行われた。立食できるように学食が食べ物、飲み物を準備したたらしい。
壇上では3年生の主将からのあいさつだ。
「毎年惜しいところでインターハイにも出られなかったが、今年は優勝までして帰ってこられた。これひとえにスーパールーキーの頑張りのおかげだ」
「われらがスーパールーキーにして、スーパーヒーロー。一年Cクラス。須藤健。」
「みんな、盛大な拍手を」
会場が拍手で埋め尽くされる。健が壇上で深くお辞儀をした。選手が一言ずつ話し、最後はたった一人1年生でベンチ入りしレギュラー登録された健だ。
「みんなありがとう。将来、俺はNBAに行く。応援してくれ。」
あちこちで声援も起きるが、NBAと聞いて笑う者もいる。
「あの子。浮かれちゃって、お花畑ね。」
「ホント。NBAだって。」
「たかがインターハイで。笑っちゃう。」
私の後ろからも聞こえた。振り返ると2年生だ。その3人を私は仮面を取ってにらみつける。
「顔、覚えたよ。」
一言そういって前を向きなおすと
「ひぃ・・き、桔梗。ご、ごめんなさい」
と聞こえ、足早に会場からでていったみたいだ。
立食中、健は男子に囲まれている。とりわけご主人様と仲良く話している。よくは知らないが、シュート練習に付き合ったり、各トレーニングのプログラムもご主人様が提供したりしているらしい。そういえば、私が個人的に勉強会をするようになったのも彼からのアドバイスとか言っていた。仲がいいというより、強力なサポーターっていう感じか。
全生徒が集められる機会は少なく、私も構築したネットワークの強化に忙しく動いた。どこでも笑顔を振りまき、困っていそうな人には声をかけ、親身になって話に付き合う。みんなの中に「桔梗なら何とかしてくれる」という「気の種」を植え続ける。
一段落し、軽井沢や小野寺と話しているとやっと健が私のところにやってきた。
「あ、健、おめでとう。よかったね。」
「桔梗、ありがとうな。」
名前呼びは付き合う前から、体育祭の後からはじめているから、違和感はないはずだ。
「須藤君、すごかったって先輩が言っていたよ。」
運動部つながりで小野寺も健の活躍を聞いたらしい。
「お、ありがとな。小野寺も頑張っていたな。」
顔つきは強面で敬遠されがちだが、分け隔てなく、屈託なく話す健はみんなと仲がいい。
「ははん。そうなんだ。」
「恵、どうかした?」
隣でニタ付く恵に聞いてみると
「桔梗、ここ最近調子悪かったのに、今日はすごく調子よさそうだなって」
「え、何のことかな?」
「そっかぁ。桔梗、須藤君の帰りを待ってたんだ。」
私の耳元で小さな声でささやかれた。
う、うそ。なんでわかったの?仮面は取ってない。表情もしぐさも完璧だったはず。
「うん、うん。そっか、そっかぁ。いいねぇ。」
と言いながら去っていった。
「桔梗、あいつはどうしたんだ?」
手を振りながら去っていく軽井沢を見ながら健が不思議そうな顔つきで聞いてくる
「さぁ、何か納得したみたいだけど、わからないや。」
小野寺もいるので誤魔化すので精いっぱいだ。
しばらくのおしゃべりの去り際
「桔梗、明日の晩、部屋に行っていいか?」
「うん。いいよ。」
「え、須藤君、どうして桔梗の部屋に?」
「お、お礼だよ。いつもの。それに、お、お土産も買ってきたし。」
「あ、そっか。家庭教師だからね。」
恥ずかしそうに下を向く健の姿に小野寺も納得したようだ。
「明日の晩」いつもの健はそんな言葉は使わない。単に「あした、行くから。」というだけだ。来るのは練習が終わってからの夕方。最近では日が落ちるのも早くなり、暗くなってからのこともある。明日の晩・・か、私はある期待をした。
――――――――――――――――――――
次の日は一日中落ち着かなかった。午後遅くから身支度を始めた。
シャワーを浴び、ボディーソープで入念に洗った。髪の毛も、この前いい匂いだと言われたトリートメントを使う。なんだかドキドキする。
下着は白地に薄ピンクのレースで花柄が装飾されたセットを選んだ。この日のために以前に買いそろえたものだ。パンティを履こうとしたが、少し愛液がにじみだしているから、ナプキンを当てた。
多分、今晩、私は健に抱かれる
そんな予感がしている。
夕食は一緒に食べるだろうと朝からクリームシチューを準備した。時間を合わせてご飯も炊いておこう。あと・・そうだ、ベッドもきれいにしておこう。他になにか準備は・・・コンドームは?あと3日で生理か。大丈夫、安全日だ。
あぁ、人を好きになるってこういうことなんだ。
他人からの相談に乗っていると、恋愛相談が圧倒的に多い。話しているうちに赤裸々に説明してくる女子も多く、知らないうちに私は恋愛マスターとも呼ばれるようになっていた。
本当の恋愛なんてしたことがないのに。
今、あの女子たちが何に悩んでいたのか、何が不安だったのかようやく理解できた。
スペアキーとなるカードは作って渡してある。「勉強会をしている」という理由で作ったものだ。でも、健は必ず来る前には連絡を入れてくれるし、居ないときにそれを使って入るようなことは決してなかった。この前も30分も玄関の前で私の帰りを待っていた。「留守に入られるのっていやだろ。不安にさせたくない。」という理由だった。基本、紳士なのだ。女子の部屋の前で待つことに抵抗はあったと思うが、健と私の関係つまり、出来の悪い生徒と厳しい先生という関係は知れ渡っており、好奇の目で見られることもなかったらしい。
メールが入った。もうすぐ来る。私はパンティからナプキンを剥がし、もう一度身なりを整えた。意識していない風を演じるため、いつもの部屋着を着ている。
落ち着こう。いつもの私でいい。
玄関のベルが鳴った。急いでドアを開けると、いつもの格好で健が立っていた。
「お、おう。」
「さ、入って。待ってたよ。」
そう、いつものように招き入れた。
「健、優勝おめでとう。一つ近づいたね。」
私は健に抱き着いた。
「あぁ、ありがとう。遅れたので不安だったけど、開催されたぜ。」
と抱き締めてくれる。そしてお互い見つめあってキスした。
そう、いつものようにキスをした。
けど、いつもより少し長いキスで、お互いに吸いあった。
「桔梗」
「な、なに?どした。赤い顔して、興奮した?」
そう、いつものようにおどけて見せた。
いつも、このあと、お茶を飲んで、おしゃべり。近況を話して、少したってから夕食だ。
「だめだ。桔梗。俺」
「ん?なに?」
「我慢できない。」
そのまま強く抱きしめられ、もう一度キスしてきた。
いつもとは違った・・・
互いに口を開け、吸いあう。健が恐る恐る舌を出してきた。私もその舌に合わせ、舌先で遊ぶように健の舌をつつく。だんだん舌同士の接触面積が増えていく。
「ふが、んぐ、はぁ、はぁ」
健の鼻息が荒くなっている。当然私も欲情してくる。舌を突き出しうねるように絡ませる。健の舌を吸い上げる。お返しとばかりに私の突き出した舌を吸い上げてくれる。上手いとは言えない稚拙な動きだ。でもとても気持ちがいい。口の端からよだれが垂れ落ちた。
「桔梗、俺、もう、もう我慢できない。」
と言ってしゃがみこんだ次の瞬間、ふわっという感覚とともに私の身体が抱き上げられた。そのまま、ベッドまで優しく運ばれ、静かに降ろされた。
いつもとは違った・・
今日、私は健に抱かれる
確信した。やっとだ、やっと抱いてくれるんだ。処女じゃないといったあの時から、ずっと気にしていた。「いつになったら抱いてくれるのか」「やはり他人の手の付いた身体ではだめなのか」いつも不安だった。アプローチをかけてもそっけなく避けられ、とても寂しい思いをしていた。
――――――――――――――――
須藤Side
インターハイでは優勝できた。これで一つ近づいた。優勝旗を持って凱旋し、その日に祝勝パーティーが行われた。
キャプテンが俺をスーパールーキーとして全員の前で紹介されたときはうれしく思った。選手一人一人が一言ずつ感想を言う流れで、俺が最後になった。
「みんなありがとう。そして俺はNBAに行く。応援してくれ。」
クラスの中や部活の中ではよく宣言していたが、全校生徒の前で言うのは初めてだった。どよめきと共に笑う声が聞こえる。
でも、そんなことはどうでもいい。気にもならない。決めた自分の道を進むだけだ。
立食パーティーでは清隆と長く話した。何しろ練習も付き合ってもらっていたし、トレーニングのメニューも作ってもらった。それを坦々とこなすうちに筋力も持久力も伸びていくのがわかった。
ようやく、桔梗のところに行けるタイミングとなった。桔梗もあちこちの女子に声をかけて忙しそうにしているのを横目で見ていたが、ひとしきり終わったようで、軽井沢、小野寺と話している。
桔梗には5月くらいから個人的に勉強会をしてもらっている。入学早々に俺の態度を真正面から諫めてくれて目を覚めさせてくれた。わからないところを何度も聞いた。たまにきつく叱られた。特に俺が宿題を忘れたとき、つまり約束を破ったときはひどかった。
テストのたびに成績は伸びていって、赤点の心配もなくなった。だからバスケにも集中できた。
2学期に入ると名前呼びを許してもらえた。最初は恥ずかしかったが、1か月もしないうちに慣れて心地よくなった。今では人前でも健と呼ばれ、桔梗と呼べるようになった。
10月最初の頃だっけか、インターハイの調整試合に来てもらった。バスケに興味のない桔梗を何度も説き伏せて、ようやく見に来てもらえるようになった。試合は一進一退のまま終盤にもつれ込んだ。さすがインターハイ常連高校だ。試合終了まで残り5秒、俺にパスが回ってきた。ラストプレーになるだろう。ドリブルで相手をかわし、何百本も練習してきたポイントまで進んだ。3ポイント。入れば逆転勝利だ。その時
「健。おねがい。いれてぇー。」
ひときわ大きな声援が俺の耳に届いた。
桔梗だ
そのまま、シュート体制を作り、ボールを放つ。放物線を描いたボールは終了ブザーが鳴っている中、ゴールに吸い込まれた。
大歓声が起きた。
みんなが駆け寄ってきた。俺は最後に聞こえた声の方を探した。
いた。桔梗が胸の前で手を組んでお祈りポーズのまま笑っていた。
――――――――――――――――――――
入学当初に諫められた時から、俺は桔梗に惚れている。勉強を頑張れたのは夢もあったが桔梗に認めてほしかったのも大きい。常に桔梗が困らないように、楽しめるように気を配っていた。ただ、桔梗は俺をそんな対象としてみてくれていないことはわかっていた。バスケの話をしても聞き流されていた。でも、どのくらい本気でやっているのかを見て欲しかったから、練習試合には頼み込んできてもらった。
そのあとから、桔梗の態度が変わった気がした。何がどうというわけではない。その時はただそう感じただけだった。
2週間ほど後の勉強会のあと、出されたお茶を飲みながら告白した。
「桔梗。お、俺と正式に付き合ってください。」
初めて、俺は告白というステップを踏んだ。よく友達とバカ話をしたものだが、こんなに緊張するとは思っていなかった。いろいろとセリフを考え練習もしたが、結局、簡単な言葉しか出せなかった。
桔梗が下を向いている。すぐに快諾してくれると思っていた俺はその様子に戸惑った。
「わ、わたし、処女じゃない。それでもいいの?」
ようやく口を開いて出てきた言葉。覚悟はしていた。こんなかわいい子、それに成長している子が経験していてもおかしくない。男子でも中学生のころから彼女とやったと自慢している奴もいた。それに過去のことだ。人には誰も過去がある。俺もやんちゃな中学生だったし、犯罪に近いような(犯罪かも)悪いこともいっぱいしてきた。そんなことに捉われても仕方ない。
「別に構わない。俺は今の桔梗が好きだ」
その瞬間、桔梗が俺に飛び込んできた。
「私も健がいい。」
―――――――――――――――――
とりあえず、公表せずに付き合いを始めた。付き合い始めて変わったことはいっぱいある。
手を繋いだ。
抱きしめた。
キスした。
どれも、最初はドキドキしたが、慣れるとどれもとても気持ちいいことだった。ただ困るのは桔梗がやたら身体をくっつけてくることが多いことだ。座っていると隣に密着するように座って、肩に頭をのせてきたりする。自分の部屋に戻るときはハグしてキスをすることにしているが、柔らかい胸を押し当ててくる。そっけなくすると、なぜかさみしそうに表情が曇る。あと、たまに見せるエロい表情だ。どのタイミングで出るのかわからないけど、まさにそそる表情をすることがある。
押し倒したい
セックスしたい
何度そう思ったか。でも、インターハイも近い。うつつを抜かしていると集中力が切れそうで怖い。今の俺は桔梗にはまったら抜け出す自信が全くない。いわゆる「沼落ち」状態になることが分かり切っている。だから自制を聞かせる意味でそっけなくしてやり過ごしていた。
「桔梗、明日の晩、部屋に行っていいか?」
立食パーティーの終わりころ、そう伝えると、一瞬、表情が変わったが、すぐにいつもの“公的な笑顔”に変わった。誰も俺たちが付き合っていることに気が付いていなかった。
インターハイの決勝で、ブザーが鳴った時、優勝もうれしかったが、最初に思ったのは
桔梗を抱きたい
いつも使わない言葉で言ったが、伝わっただろうか。一瞬だけ見せた表情はどっちなんだろう。とにかく、明日の夕方、桔梗の部屋に行って流れを作りたい。
試合の疲れがあるはずだったのに、目が冴えて寝付けなかった。結局起きたのは昼前だった。シャワーを浴び、これからの動きを考える。
――――――――――――――
桔梗の部屋に行くだろ、入ったらいつものようにハグしてキスだよなぁ。そのあと、リビングでお茶を飲むよなぁ。普通ならそこから勉強会だけど、付き合い始めてからは勉強した後、食事したり、テレビ見たりするよな。
うっ、どのタイミング、どう切り出せばいいんだ?
おう、桔梗、セックスしようぜ~って言ってみるか? いや、はずくて言えない。
いきなり押し倒すか? どこで?なんだかレイプ魔みたいだし、いやだよなぁ。
ソファに座ると必ず押し付けてくるから、そこから始めるか・・
―――――――――――――――
いろいろ考えても、初めてで知らないことをシミュレーションするのは無理だった。考えをまとめきれないまま、夕方を迎えたので、いつも通りのジャージに着替えて桔梗の部屋に向かった。
まだ早いか
しばらく桔梗の部屋の前で時間をつぶす。こうしていても、それ自体はよくある風景で誰も気にも留めない。頭の中であほな考えが起きては消えていく。そろそろいい時間となったので、メールをいれ、さらに5分待ってベルをならした。
「さ、はいって。待ってたよ」
ドアが開けられるといつもの部屋着で、いつもの表情で桔梗が迎えてくれる。扉を閉めたらハグした。
そう、いつもと同じように
そして、ついばむキスから互いに首を逆に傾げ唇を開けて吸いあうようなキス
そう、いつもと同じように
(だめだぁ・・我慢できねぇ・・勃ってきた。)
「桔梗」
「な、なに?どした。赤い顔して、興奮した?」
そう、いつものように桔梗はおどけた。
「だめだ。桔梗。俺」
「ん?なに?」
「我慢できない。」
そのまま強く抱きしめ、もう一度キスした。
いつもとは違った・・・
初めて舌を出してみた。すると桔梗が合わせるように、舌先で俺の舌をつついてくれた。だんだん舌同士の接触面積が増えていく。
「ふが、んぐ、はぁ、はぁ」
(すげぇ。桔梗のベロ、すげえ。)
桔梗も欲情しているのか息が荒くなっている。舌を突き出すとうねるように絡ませてくる。そして吸い上げられると、脳みそを吸われるような感じがした。お返しとばかりに桔梗の舌を吸い上げて嘗め回した。口の端からよだれが垂れ落ちた。
(だめだ、痛いくらいちんぼが勃ってる。我慢できない。)
「桔梗、俺、もう、もう我慢できない。」
しゃがみこみ桔梗を抱き上げた。そのまま、ベッドに静かに降ろした。
今日、俺は桔梗を抱く。
お、なんかいい感じです。