卒業後、それぞれがどうなっているのか
5年たったころの話です。
最終話: それぞれの5年後
高度育成高校を卒業して5年になる。私は清隆と籍を入れ、男の子と女の子の双子を授かり、あと3か月もすると2歳になる。とあるマンションの最上階に住み、子育てと仕事に日々忙殺されている。
清隆はこのマンションの1階で幼稚園を経営している。あの天才がなぜ幼稚園をと思うかもしれないが、どうやら、人の成長を見るのが好きになったらしく、人が一番成長する時期である幼稚園を経営し始めた。
ホワイトルームは清隆の在学中、嫌がらせのように5期生、6期生と後輩を刺客として送り込んできたが、私たち3人で懐柔し、その後、楽しむためのメンバーとして動いてくれた。ホワイトルームそのものは、在学時の約束通り、卒業後に高円寺がコンツェルンの力を使って叩き潰してくれた。今でも私と高円寺六輔は経済界の会合で顔を合わせることもある。
結局、私たちは高校生活を十分楽しめた。最終的には神崎クラスと櫛田クラスを同点のAクラスとし、椎名と神室をクラス移動させ、清隆メンバー関係者全員をAクラスで卒業させた。
由佳は料亭立川の若女将として女将修業を続けている。2歳の男の子と1歳になったばかりの女の子の二人の子持ちとなった。長男は清隆の血を引く2番目の子であり、その妹は立川の血であることを証明するかのように、左目の目じりに涙ほくろがある。当然、下の子も清隆の子で認知されている。結婚はせず、清隆の情婦であると公言し、それが周りにも認められている。母である女将は早く隠居したいと、若女将を徹底的に鍛えているらしい。私も本妻?として挨拶に行った。
「由佳に気を使ってくれたのね。あの子、すごく幸せそうにしている。ありがとう。とても感謝してるわ。」ゆっくりとした口調だった。着物姿でとても綺麗な物腰でお辞儀をされ、この母にして娘、由佳あり。と女として感心するほどの女性だった。
「ただいま。」
由佳が上の男の子を連れて帰ってきた。そう、由佳もこの部屋に住んでいる。昼間は上の子を清隆の幼稚園に預け、下の子は私がお世話している。若女将とはいえ、二人の母親なので女将が19時には帰るようにしてくれている。本妻と愛人が同居し、本妻が愛人の子供の面倒を見ているわけだが、高校時代からの仲なので、本人たちは何も気にしていない。由佳の両親も孫の顔を見に、よく訪問してくるが、愛人というのは料亭を経営していれば、その客筋にはよくあることらしく、何ら不自然な感じはない。
「もうすぐ、清隆も帰ってきます。」
毎日のことだが、由佳は嬉しそうな顔をする。
「清隆君、今日もお疲れかも。」
由佳のけじめなのだろう、いつのころからか、ベッドの上で盛っているときは「清隆」と呼んでいるが、“平常時は”いまでも「清隆君」と呼んでいる。
寝室には特注サイズのベッドが置かれている。周りには子供たち用のベッドが4台並べてある。いまも、3人で寝て、夜は3人で楽しんでいる。当然、私と由佳の仲も変わらない。たまに私が由佳を抱いている。二人とも、子を産んだとはいえ、まだ、23歳だ。スキンケアや健康に人一倍気を使い、体形維持も怠りない。由佳は相変わらずの童顔で、高校生と言ってもだれも疑わない。二人でベビーカーを押しながら子供を連れて買い物に出かける姿も地元では有名になっている。ただ、遠巻きに見ているというわけではなく、ご近所様にはよく話しかけられる。
清隆が帰ってきたので、夕食を摂る。テレビがNBAの情報を流している。
「今日は23歳にして、NBAのシーズンMVPに選ばれた、須藤選手のロサンゼルス郊外のご自宅に伺ってインタビューです。」
「お、須藤だ。」清隆が懐かしそうに画面を見た。そう、須藤は3年間真摯にバスケに取り組み、インターハイを3連覇した。そしてAクラス特権を使って、高校卒業後、すぐにNBAのとあるチームに入団した(正確には最初はマイナー契約だった)。3シーズン目から2年連続でリーグ得点王になった。昨年、トレードで名門チームに引き抜かれたが、その時の契約年棒が日本円で年棒45億円の5年契約、成績連動で上乗せされる。日本人でここまでNBAで称賛される選手は初めてのことで、日本中が大騒ぎした。それが今度はMVPだ。
「須藤君。活躍してます。この前、協会のお偉方がうちの料亭で会合していたようですが、どうしても日本代表としてオリンピックに出て欲しいと息巻いていたらしいです。」
「日本代表か、興味ないな。本人が入りたいなら、いいんじゃないか。」
「年棒、すごくなりそうですね。」と私が少し暗い顔でつぶやく。
「あぁ、たぶん3桁は硬いだろう。税金対策は頼んだ。」
「はい。」
清隆は数人をマネージメントする会社も持っていて、こちらが本業だ。須藤もその一人で、マネージメント契約は年棒の20%である。かなり高いが、これは本人同意のもとだ。5%でいいと交渉していたが、須藤から、高校の時に世話になったということで20%を押し付けてきた。
「今年、どのくらいになりそうですか?」由佳が聞くと
「年棒分だけで10億くらい、あとスポンサー企業から15億程度、ほかにもあった気がする。あいつのスポンサーは太いのが多い。」と興味なさそうに返事する。
「また増えるとなると、税金対策が追いつきませんが、仕方ありませんね。」
テレビでは引き続き、その邸宅の紹介をしている。
「あ、桔梗だ。元気そうで何より。」由佳が画面に映った櫛田を見つけた。
櫛田は2年生になる少し前から生徒会長を務めた。3年生になると副会長に一之瀬がつき、渉外に愛里がついて、盤石の態勢で卒業まで高育をわが物の様に扱った。櫛田は全生徒から尊敬され、愛される生徒会長として名を遺した。これらはすべて私たちの書いたシナリオだった。
その櫛田は大学には進学せず、NBAに行った須藤を追いかけた。1年生の秋から、男と女の関係になって、愛をはぐくんでいた。親は反対したらしい。でも、この人しか私を幸せにできない。と、駆け落ち同然で渡米したのだ。Aクラス特権とか須藤がNBAで活躍できるかどうかなんて関係なく、ただ一人の女として一人の男を追いかけた。
「子供も大きくなりましたね。」桔梗の脇で女の子が元気に駆け回っている。遺伝子的には清隆の子で、最初の子となった。渡米してすぐに結婚して、1年くらいで、須藤が無精子症だとわかった。どうしても子供が欲しかった須藤は精子バンクを利用したいと妻の櫛田に相談した。櫛田は表では了承したが、誰の子だかわからない人の子を愛する自信がない。と一人で清隆を訪ねて来た。
「ご主人様、最後のお願いです。子を孕ませてください。」
泣きながら土下座する櫛田を清隆がやさしく抱きしめ、初めて優しく、思い労わるセックスをした。妊娠がわかるまで、櫛田はこのマンションの空部屋で生活していた。1か月ほどで、予定していた時期に生理がこず、調べたら妊娠していた。泣きながらお礼を言って、帰っていったのが3年前だ。ちょうどその後すぐに由佳が妊娠した。
「幸せそうですね。」由佳がしみじみいう。
「近いうちに、日本に一時帰国するらしいぞ。」
「それなら、あの部屋をきれいにしておきます。」
あの時、櫛田が使っていた部屋は今でも須藤ファミリーの一時帰国用住居として、確保されている。
「楽しみですね。」私が清隆の顔を見ると
「ああ」と笑顔で答えてくれた。
ファミリーではないが、池はプログラミングのスキルから、いろんなところをハッキングして遊んでいた。特に何をするわけでもない。ただ頑丈に張られたセキュリティーを潜り抜けることが楽しかったらしい。清隆には「それ、犯罪だぞ」と忠告されていたが、聞く耳を持たなかった。最後は米国の国防総省いわゆるペンタゴンの中枢システムをハッキングしたあと、CIAに連行された。「言わんこっちゃない。」と3人で夕食を食べながら話した。池の命運も尽きたように思われたが、CIAが池のスキルに目を付けた。いまや諜報部員としてハッキングをメインの活動として、アメリカで生活しているらしい。「らしい」というのは誰にも本当のことは分らないからだ。連行されたあと、一度だけ清隆に「CIAにスキルが認められた」とメールが入った。それ以降、全く連絡が途絶えているから、おそらく諜報部員にでもなったのだろうと思っている。須藤の出る試合にたまに顔を出すらしいことは知らされている。
お茶を飲んでいると玄関のベルが鳴った。扉を開けると椎名が来ていた。
「こんばんは。お久しぶりです。」
大きなスーツケースを玄関に置いて、3人のいる居間に上がってきた。
「ひよりちゃん、帰ってきたんですね。」
「はい。でも2か月後にはロンドンです。これは半年くらいかかりそうです。」
「映画の撮影立ち合いですか?」
「はい。執筆しながらですが、各シーンのニュアンスが原作とあっているか、監督から確認依頼が来ていまして、仕方なくです。」
椎名も大学進学はしなかった。Aクラス特権は不要だと。それは聞いていたが、皆でそろってAクラスで卒業にこだわった私が無理やり最後に移動させた。
いま、椎名は売れっ子推理小説家だ。卒業後、しばらくしてからペンネーム「綾瀬由佳」で推理小説も執筆し始めた。その年、芥川賞を取り、次の年には直木賞を取り、推理小説家としても賞を取った。そして、その次の小説が、ハリウッドの有名映画作成会社の目に留まった。
これを契機として、Yuka-Ayaseの名が世界に知れ渡るようになる。一人の女の子が、魔法学校に入学し、一人の男の子と、もう一人の女の子と知り合い。その3人で、その学園で起きるいろいろな事件を解決しながら成長するという、ファンタジー推理小説だ。世界20数か国で翻訳版が出版された。また、その映画は昨年末、世界中で上演され、世界興行収益2000億円以上となっている。ロンドン行きはその2作目だろう。何しろ、年間の半分は海外にいる。
「お姉さまと一緒に見ましたが、ある時はほのぼの、ある時はハラハラで楽しい映画でした。次が楽しみです。」
「由佳ちゃん、ありがとう。お子さんたちも元気そうですね。」
ベッドで寝ているわが子たちを見てきたらしい。
「清隆君。また迷惑かけそうです。先にごめんなさいしておきます。」
そう、椎名のマネージメントも清隆の会社で見ている。ほとんど私が見ているようなものだが。
「あと、有栖にはいつものお願い。」
いつものというのは生活リズムのスケジュールだ。椎名は未だにこれがないと執筆に夢中になりすぎて、生活が破綻する。マネージメントの重要ポイントだ。
「わかりました。向こうでの仕事スケジュールがわかったら、すぐに策案してメールするわ。」
「ありがとう。」いつものほっとした表情である。
「どのくらいになりそうだ。」
「今回は多分10億は軽く越えてくるかと。」
映画化の契約金だ。それでなくても年間20億くらいは印税や著作権絡みで入ってくる。椎名はお金には無頓着で、清隆の会社でマネージメントしている。とはいえ、実は一社員だ。印税等の稼ぎはすべて清隆の会社の売り上げとなり、小説家としては、現在年棒5千万の給料が支払われている。海外で生活しているとはいえ、家賃、光熱費は清隆の会社の経費扱いである。実際にかかるのは食費、衣服費、趣味代(本)くらいで、給料は余りまくっているらしく、当然、貯金は億単位だ。
「10億以上の追加かぁ。」
あきれた感じで私は上を向いてつぶやいた。須藤といい、椎名といい、桁が違いすぎる。
「時に本業の執筆はどうなんですか?」由佳が興味深げに質問する。
「あっちの方はなかなかうまくいきません。やはり映画とか、翻訳というレベルはカテゴリー的に無理ですから。」
「そうだよな。」清隆も納得顔だ。
「ただ、きよぽんの方は来年あたりにアニメ化されますよ。」
実は椎名の本業は卒業と同時にペンネーム「アリス-タチカワ」で始めたエロ小説家だ。ほかに「きよぽん」でライトノベルも執筆している。二つともその業界内では話題になっており、電子書籍はもとより新刊が出ると重版されるほどのマニアの間では人気作家だ。特にライトノベルは百合族御用達と言われるほどで、どんなアニメになるのか楽しみである。エロ小説の方は、その描写がすごくエロく、読者の心情を揺さぶるものとなっているらしい。すべて在学中、というか3人と出会ってからの経験がベースになっている。3人のセックスを見て、自分でも経験し、それをすべて記憶し、脚色を加えて描写し、それにストーリーをつけている。そのため、椎名にはかなり注文を付けられた。「目隠しプレー」「3人レズ」なんてものは生易しいレベルだ。そのエロ小説の合間に息抜きとして別のペンネームで書き始めたのが推理小説で、例のファンタジー推理もその一作だ。
「疲れているので、今晩は部屋に帰ります。2か月は国内ですのでよろしくね。」と私に優しく、意味ありげな声をかけて、スーツケースを引きずって帰っていった。と、いっても、椎名の家は二つ下の階だ。
「あいつも元気だな。」
「2か月間、きっと毎日、要求してきますね。」由佳が嬉しそうに私に微笑みかける。
「そうね、どんな要求をしてくるのか。恐怖さえ覚えます。」常に新しいことを見つけてきては、私たちに試させ、自分も試していく。相変わらずの探求心である。
結局、一之瀬以外の主要メンバーは誰も大学に行かず、自分の道に進んだ。私たち3人も、最終学歴は高卒だ。清隆はアメリカの超有名大学に受かっていたが、つまらなさそうの一言で入学を取りやめにした。多分私達を置いていくのに気が引けたんだろう。ただ、3人とも子供たちのことを考えて、現在、通信制の大学に入っている。単に大卒という学歴を手に入れるためだけだ。
帆波は大学3年生の中頃から司法試験の予備試験を受け、3年生の終わりには合格した。そして、4年生の夏になる前に司法試験に合格した。予備試験の方が難しかったと言っていた。もともとは司法大学院に行くつもりだったらしいが、「最短で行けるだろ」という清隆の一言で予定を変更。在学中に司法試験を受けるために3年生で予備試験を受けることになったのだ。いま、司法修習の期間で、来年の3月の最終試験を経て弁護士として登録される。
一之瀬も才女である。高校3年生の時の定期試験では、高円寺、一之瀬、椎名、立川、葛城が常にTop5に並んでいた。私は10位狙いで、清隆は常に全科目80点しかとっていない。だから、帆波が大学生のうちに司法試験に受かることは不思議ではなかった。
弁護士資格取得後は事務所を構え、私たちの会社の顧問弁護士となる。特に清隆のマネージメントする人たちの訴訟に対応してもらうためだ。当然、このマンションに住まいがある。
テレビがバラエティー番組になった。
「愛里もまだまだアイドルでいけているな。」感慨深げに清隆が言う。
「売れっ子です。見ない日はないくらい露出しています。」由佳が言う。
愛里は卒業後すぐにグラビアアイドル雫として復帰した。3年間のブランクを感じさせないはつらつとした復帰会見だった。変わったことと言えば、左目の目じりの下にエメラルド色の小さなストーンを貼り付けるようになったことくらいだ。これは私と由佳の3人で、フルメークして遊ぶ時、由佳のトレードマークの涙ほくろと同じ位置に、ストーンを貼っていた名残だ。
ちなみに、そのストーンを1シートに10個つけ、「雫」ブランドで販売したところ、中高生の話題になり、すぐに売り上げが億の単位を超えた。
愛里のマネージメントも当然、清隆の会社だ。コマーシャル出演は企業体によって差はあるが、1本8000万くらいだ。
愛里は清隆のマネージメントを受けながら、自分は芸能プロダクションを立ち上げ、アイドルを育てている。そこに在籍するのは雫を慕って、自分も雫のようになりたいと、夢を持った子たちだ。雫はその子たちを親身になって成長させ、ユニットを作ったり、ソロだったり、歌手、モデル、グラビアといろいろなカテゴリーに送り込んでいる。いまや、業界ではひっぱりだこのプロダクションになっている。このプロダクションでは、恋愛は自由だが、必ず報告することを義務付けていたり、枕営業的なことは接待といえども禁止したりしている。それでも業界は愛里のプロダクションを丁重に扱っている。
現在、愛里のマネージメントからの収入は年間2億程度であるが、愛里のプロダクションを立ち上げるとき、私の会社が最初の投資先としてバックアップした。その回収分、それには愛里個人に対する、またプロダクションに対する企業スポンサーを含むが、年間数億になっている。
そんな愛里だが、よく清隆に抱かれに来る。芸能界での活動で疲れがたまったとき、特に男関係のことが多い。この前は危うく恋愛スキャンダルに巻き込まれるぎりぎりのところだった。清隆に抱かれながら、相談に乗ってもらい、ピロートークをしていると、すべきことが定まるらしい。
ある日、いつもの様に3人で夕食を食べているとき、
「この先、愛里はどうするんだ。」
清隆は愛里のことを常々気にかけており、将来が気になっているらしい。
「きっと、清隆の子と一緒に幸せに暮らすことになるでしょうね。」
「まて、オレが愛里を妊娠させてしまうのか?それはないぞ。」
清隆が驚いて、私の顔をみた。
「さぁ。どうでしょう。きっと決めたらお願いに来ますよ。」
「そうですね。愛里ちゃんは強い子ですからね。」
由佳も私の予想に賛成している。
「なんといっても、愛里ちゃんは清隆君にぞっこんです。」
「そうね。愛しているわ。」
軽井沢は美容の道に進んだ。高育を卒業後、勉強は嫌いと言って大学へは進学しなかった。すぐに高円寺コンツェルン傘下の美容形成院に相談し、3回の皮膚移植で例の入れ墨は全く見えなくなった。当然、手術の費用は私が貸し付けた。若干、移植用の皮膚を剥がしたところに跡は残ったが、知らない人には気付かれない程度のものだ。軽井沢はそれを機に、一気に美容に引き込まれた。
もともと化粧はうまく、センスもよかった。高育の頃から愛里の良さを最大限発揮させるための化粧をずっと研究してきて、愛里の復帰と共に、愛里の専属メイクとなり、それを完成させた。
その傍ら、動画配信も始めていた。「シミの隠し方」「やけど跡の隠し方」「ほくろ、気になるところへ」「少し印象を明るく」といった、ほんの小さな話題だった。でも気にしている人にとっては地獄に垂らされたクモの糸だったのだろう、一つ一つに群がるように視聴者が集まり話題を博した。動画で使用した各国のコスメを輸入し販売し始めると瞬くうちにメイクの世界でインフルエンサーと呼ばれるようになった。清隆が手を貸して会社を設立したりといろいろと世話を焼いていた。先日、動画の登録者数が1000万の大台に乗ったとメールが入った。
現在は愛里のメイクのほか、愛里のプロダクションの子たちにも化粧の仕方を、これは無償で教えている。その容貌とプロポーションから愛里がグラビアをやらないかと誘ったらしいが、「私がしたいのは愛里のメイク。それだけ」の一言が迷いなく返ってきたと聞いた。実際、うわさを聞き付けた他の芸能人から専属メイクのオファーも来るらしいが軽くあしらわれている。
収入は愛里との契約、動画の配信、コスメの輸入販売がメインで、設立した会社を清隆の会社で管理している。年収としては3千万ちょっとで、それほど多いわけではない。ただ、それ以外にも男からの貢ぎ物が多く、お金には全く困っていない。
男関係については、椎名と軽井沢は清隆以外の男とセックスをしている。椎名は探求心でしかないが、軽井沢は天性のセックス好きでセックスなしでは日々の生活が成り立たない。軽井沢も美人なため相手に困ることはない。とはいっても清隆ファミリーなので、我々の庇護の下である。誰と付き合っているのか報告することを義務付けている。清隆が将来のあらゆるリスクに対応できるように、人を使って付き合っている人間を調べ上げる。一之瀬が専属弁護士になれば、そのような業務も任せらえる。
入れ墨が消えたのは卒業して2年半後。それからいままでの2年半に付き合った男は5人。弁護士、政治家秘書、起業家、レーサーで、現在は格闘家だ。少し付き合うと軽井沢の奔放な性格(セックス)に耐えられなくなって、男から離れていく。軽井沢自身も付き合っている相手に好意がある。ただそれは恋とか愛というレベルのものではなく「おきに」程度だ。純粋にセックスをする相手、そう、単なるセフレいう意味合いが強い。ただ同時に複数は必要ない。男は軽井沢とのお付き合いを堪能し、軽井沢はその男を味わい尽くす。当然、会えば必ずセックスだ。レストランでディナーを奢ってもらって、そのままホテルに入る。ドライブしながらホテルに入る。キャンプをしながらテントに入る。軽井沢の容貌のため、どこにいてもすごく目立つ。連れている男は鼻の下を伸ばし自慢げにエスコートする。隔離された瞬間から軽井沢がメスになる。最初はその変化に驚き、軽井沢とのセックスを楽しんでいられるが、軽井沢は絶倫だ。お風呂場で、ベッドで、時間さえあれば男のおちんぽを口とおまんこでもてあそぶ。お泊りなんてしようものなら、精液が枯渇するまで吸い取られる。
軽井沢を一発で完全に満足させられるのは清隆だけだ。それがわかっているのか、軽井沢はたまにしか、不満がたまり切って、どうしようもなくなった時にしか清隆に抱かれに来ない。軽井沢に対する清隆の意識は保護者だ。「この先、お前を守ってやる」約束を守っている。軽井沢も清隆のことを単なるセックス相手ではなく、信頼している。形は異なるがこれも一つの「愛」かもしれない。
同じところに住まないかと誘ったが、都内のマンションで自由奔放に暮らしている。最近ではエステティシャンの資格を取ったらしく、エステサロンを開業するために奔走中だ。これもすべて愛里をいつまでも輝かせるためだとか。私の会社からそのエステサロン開業に投資することは私の秘書兼社員を通して伝えてある。おそらく口コミだけでも予約が殺到するだろう。経理関係については清隆の会社で受け取るだろう。
かくいう私は卒業後、すぐに投資に手を出した。世の中の情勢を読み、流れを把握し、投資で得たお金を運用した。1年経つと、利益が30億を超えた。税制の知識でもって節税をしたが、かなり税金に取られた。海外に拠点を移すことも考えたが、清隆にお金は暮らせるだけでいいといわれ、それもそうだと納得した。
その利益で、料亭立川のほど近くに10階建てマンションを1棟建て、そこに住んでいる。須藤ファミリーにも、愛里達にも使ってもらえるように、上3階は販売せずに確保したものだ。最上階は綾小路家と立川家(同居)。一つ下の階に愛里と須藤家。もう一つ下に一之瀬、椎名と私の秘書の住まいとなる。それぞれ十分な広さが確保されている。8階以上に上がる専用エレベーターも設置してあり、これは住民にしか操作できないから、セキュリティーも万全だ。
現在は投資運用の専門会社とその下にスタートアップ企業への投資を行う会社をつけている。親会社で出た利益を子会社がスタートアップに投資していく。愛里がプロダクションを立ち上げるときに、資金を提供したのも、軽井沢のエステサロン開業の資金を提供するのも私の子会社だ。いま、親会社の方は年間で50億ほどの利益が出る。
すでにスタートアップとして12社ほどをサポートしているが、そのうち7社は業績も安定し、回収の域に達している。経済界の会合で高円寺と会うことがあるのはそのためだ。
住んでいるこの家には仕事場であるトレーディングルームも作ってある。最新の株価や投資目標の企業の情報がオンタイムで入ってきて、そこからの情報をもとに、社員兼秘書に指示を出して、行動に移してもらっている。
「有栖さん。今日は上がります。」と社員兼秘書がトレーディングルームから出てきた。
「あ、真澄、お疲れ様でした。出来はいかがですか?」
神室は私の秘書として雇い入れた。頭の回転が良く、スケジュール管理から株の取引きまで、ほぼすべてを任せている。重要なところは私が指示するが、きちんと処理してくれる。在学中、リーダーとしての資質を磨いた。どこに行っても一線級で働き、成果が出せるだけの実力はついていた。
Aクラスで卒業させ、志望進路はと聞かれたとき「楽しい人生を送れそうだから有栖さんについて行きます」と先生に言ったらしい。志望進路100%保証だから、引き受けざるを得なかった。
私達のグループの中で、唯一、清隆に抱かれていない。いまだに処女のはずだ。タイミングはあった。でも私が手を出さないように仕向けた。あくまで、神室は私のコマ、と、線を引いていたのかもしれない。最初の出会いはコンビニで万引きをしてところだ。それをもとに脅迫じみたことをして手下としたが、2年に上がるころには目の前でその証拠を消した。それでも、変わらずに私の思うように動いてくれた。なんだかんだで、もう8年の付き合いだ。おとこを紹介したこともあるが、「有栖さんを見ているとどんな男も物足りない。このままでいいよ。ほんとに好きな人が出来たら応援してほしい。」と言われた。今はこのままでいい。でも男に抱かれる喜びも知ってほしいのが本心だ。
神室にはスタートアップの育成も任せている。一旦投資先を私が決めると、そのスタートアップ企業に出向き、企業としての動き方を解説し、しばらくその職場で同じ仕事をして、仕事の流れを作るのが神室の役割だ。たまにリーダーシップを発揮しすぎ、その企業を乗っ取りそうになることもあるが、私がうまく取り計らうように収めたりもした。給与は基本が年間2,000万。それに出来高分が乗せられる。年々出来高分が大きくなって、昨年は合わせて1億3千万ほどだったはずだ。
「予想通り、株が落ちる前に売りに出した。あと、もう一つの方は買い支えた。損は出ていません。」
「わかりました。食べていきますか。それともお弁当にしますか?」
「家で食べます。お弁当で。」私は神室用のお弁当を包み手渡した。
「あすは大手町で、スタートアップ懇親会です。10時には出ますので準備しておいてください。」と明日のスケジュールだ。
「ドレスコードは?」
「ビジネススーツで。あ、見えるガーターは禁止です。」
「は~い」と可愛く首をかしげると、神室は照れる。
「じゃ、おやすみ。」と扉を閉めて出て行った。神室の家は2つ下の階だ。
「お姉さまも忙しいですね。」
「ほんと。もう少しゆっくりしたいものです。」とため息をつく。
「皆さん、すごいです。」さみし気に由佳がつぶやく。ここが由佳の感じる劣等感で、今でもたまにこの状態になるが、なかなか払拭できない。
「由佳、お前はオレのたった一人の愛人だ。由佳にしかできない。」
清隆が由佳を抱き寄せ、やさしい笑顔で由佳の頭を撫でる。由佳は下を向き、小さな声で
「はい。ありがとうございます。」
(う、このしぐさ。可愛すぎ。相変わらずムラっとさせる。今夜は押し倒そう)。
子供たちの様子を見に行った清隆が戻ってきて言った。
「さて、一緒にお風呂に入ろうか。」
みな、一線級です。
このあと、外伝として数話予定しております。
最後まで応援よろしくお願いします