学食に乗り込んだ後、どんな行動を起こしていくのか?
「学食の料理はどうですか、って聞くまでないか」順平が質問してくる。
「はい、とても上手に調理されています。料理長が順平だとわかって、納得です。ただ、味付けが残念だったので今日押し掛けたわけです。」
「はぁ、足を運ばせてしまいましたか。」
「私は3年間、この学食を利用します。ですので、3年間、満足できる食事をとりたいのです。」
「わかります。」
「順平の腕はたいしたものです。すべて高いレベルで調理されています。あとは味です。で、ビジネスの話です。」
「どういうことでしょうか」
「わたしがコンサルタントとして学食の料理の面倒を見ます。素材から味付けまで調整します。順平は私のレシピをその腕で最高の皿に仕上げてください。」
「それはいいが、ビジネスとは?」
「この学校ではプライベートポイントが重要と思っています。で、コンサルタント料として増加した利益のいくばくかをいただきたいと思っています。」
「なるほど。理解しました。考えさせてください。契約となると教師の立ち合いが必要と聞いていますので、担任に話をしてください。」
「わかりました。では近いうちに。」
「そうそう、明日、先ほどのレシピのパスタを出してみてください。仕込みは少し多めに。」
にこりと笑って伝えた。
「やってみます。お嬢、よろしくお願いします。」一礼する順平にあいさつして寮に帰った。
翌日、学食で問題が起きた。今日のパスタがうまいと評判が評判を呼び、瞬く間に5割増しで仕込んだ材料が底をついた。多くの生徒が「食べたい」「倍出すから食べさせろ」と押しかけている。「明日も出します」と調理場から皆に説明しているが、騒ぎは収まらず、一時パニックになった。調理場の料理人は
「あの子は魔法使いか。」と唖然としている。順平のみこうなることを予想できていた。
そんな喧騒をかいくぐり、今日は一人で、天丼を買ってあいている席を見つけ、座った。ひとつ離れた席に、櫛田桔梗さん(巨乳2号だ。1号は帆波ちゃん)が座っている。その前にはシルバーグレーの小顔の女生徒、昨日見かけた“銀髪お姉さま”が座っている。私も食べ始めると、櫛田の声が聞こえる。
「今日、パスタがおいしいって聞いて、急いで来てよかった。」
「そうですね。もう売り切れたみたいですよ。」二人がパスタを口にする。
「ほんとだ。今日のパスタ、ものすごくおいしい。」巨乳2号の言葉に
「味付けを変えたようです。とても美味しくなりました。」とお姉さまが応えた。
「有栖、前も言ってたよね、もっとおいしくできるって。で、これってなにを変えたのかな。」
「そうですね。これまでの調味料の量を増やしたり、減らしたり。そして隠し味にみそ、信州みそを入れていますね。」
私は驚いた。以前に食べたパスタの味を覚えていて、今日のパスタと比較し、私のレシピの内容を見切っている。何者なんだ、銀髪お姉さま。絶対味覚もちか。
食事を終えて、私はお姉さまの元に走り
「お、お姉さま。私、1年Bクラスの立川由佳と言います。昨日は声をかけてくれて、ありがとうございました。よろしければ連絡先を教えてください。」と自己紹介をした。
「あ、立川さん。こんにちは。」巨乳2号が、いつもの貼り付けたような笑顔で挨拶してくる。
「昨日の。あぁ立川さんというんですね。大丈夫でしたか。」昨日、廊下でうずくまってしまったことに気を配ってくれている。
「はい、おかげさまで。」
「なぜ、お姉さまと呼ばれているのか、よくわかりませんが。」怪訝そうな顔つきだ。
「すみません。ただ、なんとなくお姉さまと呼ばなきゃと思ってしまって。」と涙目で訴えると
「ま、いいです。私はDクラスの綾瀬有栖です。よろしくお願いますね。」連絡先を交換してもらえた。いい機会だ。聞いておこう。
「あのう、一緒にいた方はなんというお方でしょうか?」
「ああ、清隆君のことですか。彼は綾小路さんです。私の後ろ席ですよ。」
よし、Dクラスの綾小路清隆君か。大きな進展だ。
次の日、職員に行って、担任の星の宮先生に事情を説明して、学食の調理人室まで来てもらった。
「料理長。担任の先生を連れてきました。」
「星之宮と言います。この度は私の生徒が無理を言っているようで、申し訳ありません。」
珍しく丁寧に挨拶した。順平ともう一人の料理人。そして私と先生が準備されたテーブルに着いた。
「事情は立川さんから聞いていますので始めましょうか。」
「はい。では、収支計算書を見せてください。」先生は驚いたようだが、あらかじめ、私のすることに口を出さないで欲しいと言ってあったので、何も言わない。
「料理長。これです。」順平に手渡されたものを私に見せてくれた。それを確認する。
「なるほど、一日約300食。売り上げが日当たり18万ポイント。月に360万ポイント。平均すると、一食600ポイント。粗利が40%で、月利益が145万ポイント。ですか。利益率が低いようですが。」
「まぁ、学食で利益を下げて提供するのが使命だから、それくらいが妥当かと。」
「日当たり300食ですが、生徒全員で360人、教師、スタッフが50人とすると、利用者が少ないように思いますが。」
「あ、立川さん、全生徒数はいまは350人です。10人ほど、ここを去ったよ。」
「ということは計400人ということですね。」
「お弁当を持ってくる生徒もいますし、外に出る人もいますので、300食は妥当かと思いますが。」と同席者が説明する。
「わかりました。では、契約内容についてですが、私のコンサルタントにより、増加した利益の何%をいただけますか。」順平の顔を見る。
「利益が少しでも増えれば給料を上げられる。40%でどうですか。ただし、学食なので、あまり手のかかるような調理は受け付けられません。」
十分だ。それでかなりのポイントが手に入る。
「大丈夫です。そこは抜かりありません。期間は私の在学中の3年間。年に6品の新メニューの提案とシーズンごとの特別メニューの提案も入れて50%でいかがでしょうか。」
「さすが、お嬢だ。やり手ですね。わかりました。契約しましょう。5月からコンサルタントの内容で開始しましょう。」
星之宮先生が契約書を準備し、順平と私、立会人と先生がサインした。契約締結だ。
「では、早速ですが、メニューの価格をすべて10%上げます。その準備をしておいてください。」
「いきなり10%ですか。それだと、生徒が離れ、文句が出ますよ。」同席者がいうが、順平が私の顔をみて
「今日の昼の騒動をみただろう。魔法がかけられるんだ。高くても誰も文句は言わない。それどころか飛ぶようにはけるぞ。」
私は愛想よく笑った。たったこれだけで、利益が36万ポイント上がる。手取りは18万。月に振り込まれるプライベートポイントに比べると破格だ。
「あと、素材のリストと、各メニューのレシピをください。明日の放課後からちょいちょい顔を出すようにします。メインの後はデザートにも手を付けます。」
私は、必要な情報を受け取り、寮に帰り、レシピを確認した。メインは15種あって、すでに半分は食べてある。レシピだけでも事足りるが、食感や匂いも味覚の重要な要素だ。レシピだけでは片手落ちになる。残り半分は学食で食べるか、特別にあつらえてもらうかしよう。これまで食べたメニューに対して、レシピを書き直す。当然素材にも気を配り、必要に応じて、品種や産地を変更してもらう。5月からのスタート前に出来るだけ準備をぬかりなくしておこう。
次の日、完成したレシピを渡し、残りのメインメニューについて相談した。お昼に一皿学食で食べるとして、毎日放課後に、献立の後ろの方から作ってくれることになった。何とかお願いして、土曜日に最後の一皿を準備してくれる。これで、来週月曜日には新レシピが全メインメニューで出来上がる。4月の残り一週で調理の最終調整が出来るし、5月から「学食 立川」が始められそうだ。
今日はこれから綾小路君の部屋に呼ばれている。子宮がキュンとうごめいた。
学食のコンサルになりました。これで、プライベートポイントには困りません。
かなり数字に強く、商売に精通している感じです。
ようやくオリキャラのキャラを設定できました。この子があの二人と絡んでいきます。
次話では、清隆の部屋での出来事になります。お楽しみに。
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