※この作品はR-18です。

ようこそ有栖と清隆の教室へ   作:愛奴

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ようやく4月末日。そう、あの小テストです。

有栖と清隆はどう挑み、どんな結果になるのか。

そしてSシステムの全容が説明されます。


34. 小テストとSシステムの全容

入学してほぼひと月たった。今日で4月も終わりだ。授業中にもかかわらず、相変わらず騒がしい。4時限目は日本史の授業だ。教科担当であり、担任の茶柱先生が入ってきた。

「いきなりで悪いが、今日は小テストを受けてもらう。」

皆が騒ぎ始める。

「心配するな、このテストは成績には反映されない。皆のレベルを確認するためのものと思ってもらっていい。ただし、カンニングは厳禁だ。発見次第退学してもらう。いいな」

説明しながら、持ってきたプリントを配った。

「テストは一時間。せいぜい頑張ってくれ。では、はじめ」

皆がプリントを裏返し、回答を始めた。

 

ざっと見渡すと、5教科の問題がばらばらに配列されている。一問一問に配点も書かれている。10点の問題が最後の3問。5点の問題が14問の全部で17問。中学生で習うものから少し高いレベルの問題まである。ただし、10点の3問はかなりハイレベルだ。大学入試レベルあるいはそれ以上であり、とても高校入学1か月の高校生に解ける代物ではないことが分かる。

 

「こほん」後ろの清隆の咳ばらいが聞こえた。すると(らしくな)と伝えてくる。私は肩の上あたりで後ろの清隆に見えるようにシャーペンを回した。

 

さて、狙いは30点。難問3問を正答して終わりだ。確かにハイレベルだが、私にとってはたやすい問題だ。すらすらと記述していく。茶柱先生が見回っているが、私のところで立ち止まった。しばらくすると、また、清隆のところで立ち止まった。(清隆もやってるな)。

 

20分後、後ろからペンを置く音が聞こえた。その5分後に私も回答を見直しペンを置いた。

 

「やめ」一時間たった。答案用紙が回収されていく。口々に「終わったぁ」「時間足らない」「最後の問題、ちょうむず」「えー、わたし、そこまでいかなかった」と試験の感想を言い合っている。

 

私は清隆の方に振りむき。

「清隆君、どうでした。」と聞くと

「まあ、いつも通りだな。有栖は」

「そうですね、私らしく、いつも通りです。」

笑顔で答えた。隣人堀北がフッとあきれたように笑った。

――――――――――――――――――

 

堀北Side

いきなり小テストを行うと先生が言って、問題用紙が配られた。成績に反映されないとはいえ、自分の実力を確認するためにも、いい点を取ろうと集中する。

 

試験問題を見ると、5教科混合で、簡単な問題から少し難しい問題まで、計17問。うまく混合されている。一時間もあれば、解ききれる内容に見える。第1問から解いていく。少し引っかかるところもあったが順調に回答できている。見回っている先生が、綾瀬さんのところで止まった。綾瀬さんはすごいスピードでペンを動かしているのが見えた。しばらくすると、私の隣でも止まった。体の向きから、隣の綾小路君を見ている。

 

20分過ぎたあたりで、綾小路君がペンを置いた。「うそ、もう終わったの」少し驚いた。私はまだ、10問目を解いていた。「あきらめたのか」と思い、回答を書き続けた。すると、その5分後には綾瀬さんもペンを置いた。「見た目ほどできる子ではないのね」私はほくそ笑んだ。

 

残り20分。15問めに入ったところで、私のペンが止まった。明らかにレベルが違う。よく見ると残された3問はとても高レベルで、高校生が解ける内容でないことは明らか。その3問中、16問めは何とかなりそうな気がする。私はその16問めに集中した。いろいろな方向から考え、何度も消しゴムで消して書き直し、残りの20分をすべて使い切り終了間際で何とか回答し終えた。ケアレスミスもないだろうから80点かな。

 

答案用紙が回収されるとき、綾瀬さんの答案用紙がちらっと見え、驚いた。すべての問題に回答が書き込まれている。「うそ、あんな短時間で解ききれるはずがない。きっと適当なことを書いたに違いない」と思った。

 

綾瀬さんが振り向き、綾小路君とテストの出来について話している。「いつも通り」一体何のことなんだろう。普通なら出来た、出来なかったというところ、二人とも「いつも」といった。ま、二人とも30分経った頃にはあきらめていたようだし、解ける問題だけ解いてあきらめた、ということなんだろうと思うと、つい口元が緩んだ。

―――――――――――――――――――

 

 

5月1日の朝は、櫛田から早朝に届いた一本のメールから始まった。

「有栖、ポイント振り込まれてる?」私はそのメールをベッドで清隆と確認した。二人とも昨夜と残ポイントが変わっていない。

「おはよう。私の方にも振り込まれていません。」と返信し、すぐさま、Aクラスの神室、Bクラスの由佳、Cクラスの椎名にメールで確認する。すぐに返信が来た。

「返信が来ました。Aクラスは92,000。Bクラスは78,000、Cクラスが75,000ポイントでした。」

「予想通りだな。クラス順位とおりだ。今日は荒れそうだな。」

「そうですね。」

私は返事をしながら神室に月謝の2万ポイントを振り込んだ。

 

朝食をとり、着替えてから別々に登校した。

教室に入ると、「何で振り込まれていない」「もうポイントの残りが少ない」「俺は使い果たしている」「他のクラスは振り込まれたらしい」とポイントが振り込まれていないことに対して騒いでいる。担任の茶柱先生が教室に入ってきた。

「お前ら、静かにしろ。ホームルームを始める。質問があれば受け付ける。」

「先生、毎月1日にポイントが振り込まれると言ってたけど、まだ振り込まれていませーん。」

山内がおどけて言う。

「何を言っている、ポイントは確かに全生徒に振り込まれた。確認済みだ」

「先生、クラスの誰にも振り込まれていません。」

にやりと笑いながら言った先生に平田が反論した。

「は、は、は。面白い謎解きだ。ティーチャー、要するに0ポイント振り込まれた。ということだな。」高円寺が声高に言った。それを聞いた先生は、また、にやりとして説明した。

 

「本当にお前たちは愚かだな。高円寺の言った通りだ。お前たちには今月0ポイントが振り込まれた。」

 

「毎月10万ポイントと言ってたじゃないですか。」と誰かがいうが、すぐさま

 

「誰もそんなことは言っていない。毎月1日にポイントが振り込まれると言っただけだ。ただの高校生に本気で毎月10万も振り込まれると思ったのか、常識的にあり得ないだろう。なぜ疑問を疑問のままに放置しておく。」と反論された。

 

「入学式の日に説明した。この学校は生徒を実力で評価する。と。つまり、お前たちの今月の評価はゼロということだ。1か月で最初の10万ポイントを使い切ったのは、この高校始まって以来のことだ。つまり、お前たちは、この高校始まって以来の”くず”ということだ。」

 

「納得できません。どうしてゼロになるんですか?」

平田が食い下がる。

「いいか、お前たち。」

と前置きし、4月中の遅刻、無断欠席、授業中の私語、端末操作、居眠りの数を事細かに説明した。

「それなら注意してくれれば。」

 

「なに?おかしいな。お前たちは小学校、中学校の時に、習わなかったのか。遅刻はするな。授業はまじめに受けろ。とか。お前たちはもう高校生だ。そんなこと言われなくてもできて当然だ。あと、平田が何度も注意したが、誰も真剣に考えなかったことは残念だ。」

 

多くの生徒が平田の方を見て、顔を伏せた。もう、誰も文句は言わない。

 

先生が一枚のプリントを黒板に貼った。そこには

 Aクラス 920

 Bクラス 780

 Cクラス 750

 Dクラス  0

と書かれている。

「Aクラスから順番になっている。」と誰かがつぶやいた。

 

「そうだ。この高校では実力のある順にAクラスからDクラスとなる。入学前の査定で優秀なAクラスからくずのDクラスに振り分けられている。あと、志望進路への100%保証はAクラスのみに与えられる権利で、それ以下のクラスには適用されない。」

 

この説明に対して、多くの生徒が「詐欺だ」「だまされた」と騒ぎ立てる。この説明を聞いて隣人堀北は呆然としている。騒ぎが収まったところで、

 

「もう一度Sシステムについて説明する。」といって、その詳細が説明された。

 

 ・クラスごとに実力が評価され、クラスポイントとして付与される。

 ・基本、減算されていくが、増加するイベントもある。

 ・クラスポイントを100倍したものがプライベートポイントとして振り込まれる。

 ・クラスポイントはそのクラスの実力であり、大きい方が上のクラスとなる。

 ・志望進路への100%保証という権利はAクラスのみに与えられる。

 

「一ついいことを教えよう。今後、お前たちがどのような悪い態度をとっても、これ以上ポイントは減ることはない。せいぜい高校生活をエンジョイしてくれ。」

皆が苦虫を噛んだような顔つきになる。

「先生、ポイントを増やすイベントって何ですか。」櫛田が質問をする。

「あぁ、そうだな。例えば3週間後の中間テストだ。成績が良ければ最大で100ポイントが加算される。」

「たった100かよ。」という声や「ないよりまし。」という声が上がる。

 

 

「続けざまに、ショックなことをもう一つ説明する」

茶柱先生がもってきた紙を広げなら黒板に貼りだした。

「これは昨日行った小テストの結果だ」

その紙には、成績の良い順にその点数と生徒の名前が書いてある。皆がざわめき始めた。そして先生は赤い線を一本、横切るように入れた。

 

「この高校では、定期考課において、赤点を取ると、その場で退学だ。例えば、今回が定期考課なら、赤点ラインは31点、この線より下の4人は退学となる。」

 

その線は「綾瀬有栖 30点」の上にひかれ、その下には4人の名前があった。

「ええー、そんな殺生な。」

赤点の池が騒ぐ。そんな中、皆の目は赤線直下の名前をみて、次いで私の方に顔を向ける。

「綾瀬ぇ、お前もオレたちの仲間だ。」

山内が騒ぐ。隣人堀北も「やっぱりね」とつぶやく。

 

成績を見ると、トップは高円寺90点。あの問題を2問解き伏せたのか。やはり要注意だ。そして隣人堀北と、平田が80点。それ以外にあの問題を解いた生徒はいなさそうだ。清隆は50点。いつも通りだな。須藤は45点、頑張っている。平均は62点か。なるほど、その半分が赤点ラインか。

 

私は皆の目が集まったところで、顔を伏せ、窓側に向けた。肩が震える。みんなが驚いている。

「綾瀬、気にするな。」

「次に頑張ろう。大丈夫だよ。」と励ましの声が起きる。

「有栖、一緒に勉強しよう。」桔梗の声も混じる。

 

励ましてくれている皆には悪いと思うが、いま、私は必死に笑いをこらえている。清隆から(やったな。耐えろ)と伝わりそれが増幅される。思ったような結果だ。他の生徒のレベルもわかった。ようやく収まったので、皆の方に向き直り

 

「お騒がせしました。ありがとうございます。」

軽くお辞儀をして礼を言った。

 

「お前たち、ポイントが欲しければ、まずは中間テストを頑張るんだな。今回の小テストのような形式だが、必ず全員が赤点を回避できると信じている。」

 

茶柱先生が語気強く言った。「必ず全員が」という部分が妙に引っかかった。

 

「今日の放課後、綾瀬と綾小路は職員室に来い。」と言い残して教室を出て行った。

 

私は清隆の方を向き

「だいたい合っていました。」

「クラスポイント。呼び方くらいか。」

その会話に隣人堀北が聞き耳を立てていた。

 

 

ホームルームが終わり、先生が出ていくと、教室内は0ポイントでどう生活するか、誰が悪い、というような内容で皆が話している。清隆が櫛田にメールを打った。それを確認し

 

「みんな。ちょっと落ち着こうよ。このままじゃ、3年間、0ポイントだよ。今後、どうして行くか、放課後、みんなで話し合いたいんだけど、どうかな。都合の悪い人は仕方ないけど」

 

教室中にいきわたる声で発言した。

「そうだね、今はこれからのことを考えるべきだ。可能な限り参加して欲しい」

櫛田の提案に平田が賛同した。

 

 

放課後、その話し合いには参加せず、清隆と一緒に職員室に行った。清隆によると、櫛田に「放課後話し合い。勉強会」とだけメールを打ったらしい。その内容だけで、みんなを引き込むような話ができる櫛田の能力を認めざるを得ない。

 

「失礼します。茶柱先生に呼ばれました。1年Dクラスの綾瀬です。」

「綾小路です。」

挨拶すると、他の教師たちが驚いてこちらを見る。Bクラス担任の星之宮先生が

「何かしたの~。佐江ちゃん、今いないから私が聞こうか?また、何かポイントに絡むのかな~?」

相変わらず語尾を伸ばして話しかけてくる。

「いいえ、何の話か聞いていませんが、放課後来るように言われています。」

「そっかぁ。気になるなぁ、私も同席していいかしら?」

「星之宮、うちの生徒に手を出すな。」

茶柱先生が戻ってきて制止してくれた。(この先生、苦手だ)。

「二人とも、生徒指導室に行く。ついてこい。」

私たちは言われた通りに彼女について行った。部屋に入ると、

 

「お前たちは、この準備室にいろ。いいというまで物音を立てるな。立てたら退学だぞ。」

「何でもかんでも退学になるんだな。」

清隆がつぶやく。茶柱先生がキッとにらんで、出て行った。

 

しばらくすると、誰か生徒指導室に入ってきた。

 

「堀北か。どうした。」注意して話し声に耳を傾けると、どうやら、堀北はDクラスに配属されたことに文句をつけている。査定が間違っているから見直せと。先生が入試は9割以上正答で、トップ5に入っていると、ただ、査定が学力だけではなく、堀北はその面でDクラス配属になっており、間違いなくDクラスだ。と言い切られている。清隆が(ま。そうだよな)と伝えてきたので、頷いた。堀北は納得しておらず、私の実力を証明する。このDクラスを率いてAクラスに上がって見せると息巻いた。「ああ、期待しているぞ」と先生が言ったところで、

 

「いいぞ、二人とも出てこい」

こちらに声をかけた。二人で出ていくと、堀北は驚いて

「聞いていたの?」怒った口調で聞いてくる。

「いや、Dクラスは納得できないという話しか聞こえなかった。」清隆が無表情で答える。

「くっ、それだけしてないわ。」ますます怒っていることが分かる。

「堀北、落ち着け。お前はDクラスをAクラスにあげると宣言したが、私はこいつらの協力が必要だと思うから、呼んだんだ。」

「必要ないわ。」と言い切る。

「まぁ、しばらくそこにいろ。」と清隆の方を見て

 

「綾小路。おまえは面白いなぁ。」

「変な名字の先生に言われたくありません。」とちゃかす。

「お前は今、全国の茶柱姓の人たちを敵に回したぞ。」と返された。

「綾小路清隆、入試では、全教科50点。配点も書かれていないのに50点。昨日の小テストも50点。最後の3問のほかに物理、化学、数学、英語の問題4問を正答。」

「うそ。50点。短時間であの難問も・・」聞いている堀北がとつぶやいている。

「そうなんですか。偶然ですね。そんなことやろうと思ってできることではないでしょう。」

「昨日のテストも、分かるところしか解けませんでした。」とうそぶいたように話す。

「そうか、偶然か。偶然も重なると必然になるぞ。」

「そうなんですか。」

 

「まぁ、いい。次は綾瀬。お前はもっと面白い。」

「変な名字の先生に言われ『それはもういい』」

最後まで言わせてくれない。ムスッとする表情を作る。

「綾瀬有栖。入試では全教科30点。今回の小テストも30点」

「綾瀬さんも・・」堀北がとつぶやく。

「ちなみに今回の小テスト。最後の3問を解いて、それ以外の問題は一つ下の問題の回答欄にずらして書いたな?」

「もし、正しい欄に書いていたら、学年で唯一の満点だった。わざとだな?」

「満点・・しかもあの短時間で満点・・」

また堀北がつぶやいている。もう焦点が定まっていない。

 

「入試は偶然の結果です。今回の小テスト、どうりで赤点なわけです。偶然、ずれた回答欄に書いたようです。残念です。」

こともなげに笑って答えた。

 

「どいつもこいつも偶然、偶然、一体何を考えているのか。」

「おまえたち、天才なのか」

 

『普通の高校生です。』不思議と二人の声が重なった。

 

「もういい。今日は帰れ。」

「はい。それでは失礼します。」

丁寧にお辞儀して生徒指導室から退室した。

 




5月の成績
Aクラス 920
Bクラス 780
Cクラス 750
Dクラス  0

有栖清隆共同アカウント 1810万

次回から5月、勉強会が始まります。

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