あちらこちらに動揺が走る中、3人は変わらずのまったりモード。
日常のお話しになります。
昨日、Sシステムの全容が説明された。今日は土曜日で、朝から由佳が部屋に来ている。二人で住んでいるだけでも狭い部屋に、もう一人来ると、かなり窮屈である。適当に床やベッドに位置取り、くつろいでいる。
3人で、お茶を飲んでいると、
「昨日から学食が格段に美味しくなったと、みんなが言っているが・・」
清隆がふとつぶやくように言った。
「そうですね。少し前にパスタの味付けが変わって、5月からほぼ全部メニューがおいしくなったらしいです。学食前の看板に大々的に書かれていました。」
私も何気なくお茶をすすりながら話した。
「あ、それ、私がやっています。」
前に座っている由佳がポツリという。私もだが、清隆も唖然としている。
「由佳さん、あなたがってどういうこと?」
「私が、考えたレシピに変更してもらいました。」
当然のような口ぶりだ。それを聞いて、私は思い出した。
「・・ひょっとして、由佳さんって、料亭 立川の娘さんなの?」
「あ、はい。そうです。」
「あぁ。どこかで食べた味付けのバランスだし、あなたもどこかで見た気がしていた。ようやく思い出した。どおりで所作全部がきれいなはずだわ。」
納得した。これまでの違和感というか、不思議に思っていたことが、すべてきれいに解決された。
「どういうことだ?」
会話からおいて行かれている清隆が聞いてくる。
「小さかったころ、たぶん小学生3年くらいの時、父に連れられて、料亭立川に行ったことがあります。その時の味付けのバランスが、この前食べたパスタと似ていました。その時、特徴的な涙ぼくろのある娘さんを見かけましたが、今思うと、由佳さんだったんです。」
「あ、やっぱりそうでしたか。この前の出汁巻き卵。再現されたと言ってましたが、あれ、立川の味です。」
「あぁ、だから、あの時、似てるって。」
「そうです。あまりに似ているので、立川の出汁巻きを再現しようとしていると感じました。ご贔屓にしていただき、ありがとうございました。」
由佳が丁寧なお辞儀する。
「それはそうと、レシピを変更してって、由佳さんは何をしているの?」
「3年間、美味しい昼食を摂りたいだけです。当然、見返りはもらう契約です。」
特別なことではないという口ぶりだ。
「見返りとは?」と清隆が興味ありそうに聞く
「増加した利益の50%をプライベートポイントとしていただく契約です。」
「50%ですか。破格ですね。」
「おそらく、それほど利益が上がるとは思っていないのでしょう。私に対するお小遣い程度、たぶん2、3万と予想したのではないでしょうか。」
「実際、どのくらいになりそうなの?」
「少なくとも、月に20万ポイントにはなるかと。」
清隆と目が合う。(一つ目はクリアだ)。と送ってきた。そう、プライベートポイントの件だ。クラスポイントがどうであろうと、由佳は自分で稼いでいるから関係ない。
「いつも由佳さんには驚かされる。ここで商売ですか。」
「商売というか、ママの、いや女将から、能力を使うなら相当する見返りを要求しなさい。と言われています。」
「能力・・?絶対味覚のこと?」
「はい。そうです。お姉さまもお持ちの絶対味覚です。」
世の中には面白い人間がいる。特にこの高校には、いろいろな才能が集まってきているのだろう。
「ところで立川、Aクラスの特権は欲しいか?」
清隆が真剣顔で聞く。
「志望進路への。という特権ですか?私の生家は料亭です。跡継ぎは私ですので、進路は決まっています。この高校に来たのも、両親の策略です。もう綾小路君にも会えたことですし、あとは、3年間をどう楽しむかです。」
私は清隆と目を合わせた。(二つ目もクリアだ)。と清隆が送ってきた。二つ目の条件は、Aクラス特権にこだわらないことだ。
「ちゃんと、将来のことまで考えているのね。」
「はい。料亭の後を継いで、綾小路君との子供を大切に育てます。」
私は、飲んでいたお茶を噴き出した。
「ご、ごめんなさい。あまりに突拍子のないことでしたので。」ふきんを持ってきて、テーブルを拭く。
「清隆との子供って、由佳さん、き、清隆と結婚するつもりなの?」思わず、声が震えてしまった。
「いいえ、私は、たぶん愛人とか、妾と呼ばれる位置でしかないでしょうね。それでもいいんです。」
由佳がすがすがしい笑顔で答えた。
由佳をどのような立場にするか、清隆と話したように進めてみよう。由佳に、清隆と私の目標を説明した。ただ、高校生活を楽しく過ごしたい。そのため、Sシステムを利用し、クラス闘争をコントロール下に治める。プライベートポイントの重要性も話した。
「由佳さんはどうしますか。私たちに迎合するか、関与せずか?」
これに対する答えは重要だ。後者の時はそれなりの監視が必要になる。
「考えるまでもありません。私も一緒に楽しませてください。」
笑顔で即答してきた。この子はいつも即答してくる。“決めている自分の意思”に素直に従えるんだ。
「実は昨日、Sシステムの説明の後、Aクラスを目指そうなんて言いながら、クラスの雰囲気が変わってしまいました。私自身、クラス闘争とやらには興味がないので残念でした。」
「わかったわ。じゃ、これから清隆と私と由佳の3人でチームとなりましょう。ただ、決して私と清隆の過去について詮索しないでくださいね。」
「いいぞ」
清隆も賛同した。由佳も了解と頷いた。
私は由佳に別アカウントにあるプライベートポイントを見せる。
「すごい。何をしたのか分かりませんが、別アカウントで管理できるんですね。」
その中のポイント数ではなく、別アカウントで管理している方に興味がありそうだ。何やらぶつぶつとつぶやいている。
「どうかしたか?」と清隆が聞くと、
「私のポイントもそこで管理できないかと。実は、収入が膨れ上がるとどう管理しようかと迷っていました。」
「あぁ月々の見返りのことね。」
「はい。目論見ですが、秋ぐらいには月50万ほどになります。私は学校から振り込まれる分で十分ですし。特に使う宛てもありませんので。」
「立川。うちのクラスに来る気はないか。」
清隆が聞くと、由佳が破顔した。
「え、そんなことできるんですか?・・それ、うれしい。うれしいです。ぜひ呼んでください。」
と涙を流している(こういうのが可愛いんだよ。この子)。
「由佳さん、清隆が言ったように、近いうちにうちのクラスに呼びます。その前に、Bクラスをコントロールできる方法を確立してください。2,000万は何とかします。」
「2,000万って?」
「クラス移動のポイントだ。いつでもどこへでも移動できるようになる。」
「そんなにするんですね。」
とてつもないポイント数に当然驚く。
「ところで、コントロールというと?」
「そうですね、私達のこのチームが右を向けと指示したら、ほぼ全員が右を向く。という感じです。」
説明すると、由佳が少し天井をみてつぶやいた後に、
「わかりました。そのように仕立てますので、よろしくお願いいたします。」とお辞儀した。
「他のクラスはどのようにコントロールする計画なのでしょうか?」
由佳が真剣顔で聞く。
「じゃ、まずDクラスは櫛田桔梗をリーダーとして、直接管理します。」
「あぁ、巨乳2号ですね。彼女、大丈夫ですか。」巨乳2号で吹き出しそうになる。
「大丈夫かとは?」清隆が聞くと
「彼女、最近少し変わりましたが、裏表がありますよ。あの天使のような可愛い笑顔は創り込まれた仮面かなと、」
私は清隆と目を合わせた。本当に驚かされる。
「由佳さんには何が見えているの?」私の声が震える。
「あ、私、料亭の跡継ぎです。人の顔色を伺うのも仕事です。ママに仕込まれました。ちなみに経理や経営のこともほとんど叩き込まれました」(なるほど、跡継ぎに対する女版帝王学ね。セックスへの興味も帝王なみだし。ふふ)。
「普通、あぁいう人は考えていることが分からないので、コントロールしにくいと思うんですが・・」
「あぁ・・それは、まぁ」
清隆が目をそらし、私が言いよどんでいると、由佳も察したのか
「や、やっちゃったんですか、快楽漬けにしたんですか?・・う~いいなぁ。」
少し蕩け顔になっている。小さく咳払いして続ける。
「Cクラスは椎名ひよりです。クラスコントロールは無理そうです。が、Cクラスの情報はすべて入ります。状況的にコントロールするより、一度つぶして、立て直そうかと考えています。」
「椎名さん・・。あの汚女子ですね。最近まともに生活しているようですし。お姉さまのいうことなら聞きますね。とても強い意志を持っている方です。」
「Bクラスは、あなた、由佳さんにリーダーコントロールをしてもらおうと思っていました。」
「今のリーダーは巨乳1号、あ、一之瀬帆波さんです。彼女が右を向けと言えば、全員右を向きますよ。ただ、私は彼女は向いていないと思っています。」
「それほどまでに皆をまとめる力があるのに?」
「うーん。何といえばいいか。彼女は善人であろうと無理しているみたいで、いつか破綻するような気がします。皆が委員長と持ち上げるから、仕方なく頑張っている感じです。本来はリーダーをしっかりと支えるサブの方があっているじゃないかと思っています。」
「Aクラスは神室真澄を使って、直接私がコントロールします。リーダーとするか、参謀とするか決めかねています」
「神室さん・・あぁ、最近Aクラスで目立ち始めた人ですね。葛城君とドンパチしているっていうのは、お姉さまからなんですね。」
由佳には本当に驚かされる。一種の天才だろう。学力はもとより、商才にたけ、人を見る力も櫛田より高い。コミュニケーション能力も高いし、情報収集能力とその処理能力も申し分ない。
「清隆、大したものね。」感心したように清隆に問いかけると、
「ああ。とてもいい。有能だな。」
何かを考えるように目を閉じた。おそらく今後の由佳の使い方を想像、模索しているのだろう。
「あの、実は明後日、5月4日は私の誕生日です。」
由佳がいきなり切り出してきた。
「あら、おめでとう。」
「誕生日か。有栖、誕生日だと何かあるのか?」
そっか、清隆は経験したことがないんだ。由佳も不思議そうな顔をしている。
「そうね、清隆の家はそういうの全くないって言ってましたよね・・。誕生日はここまで無事に成長してくれたことを祝います。一般にはその子の希望を叶えてあげたり、プレゼントを送ったりしますよ。」由佳の目をごまかしながらも清隆に説明した。
「希望、プレゼント。なるほどな。」
「由佳さん。誕生祝いに何か希望ありますか?」優しく問いかけると
「あの、お願いがあります。」
「言ってごらんなさい。」
珍しく言いよどむ由佳に私が急かすように言った。
「できれば、私を由佳って呼んでください。あと、私も、き、清隆君と呼ばせて下さい。」(この子、可愛すぎる。まだ、呼び捨ては出来ないんだ。まずい、何かうずく)。
耳まで赤くしている。想い人に告白する時くらいに緊張しているのだろう。私が清隆と目を合わすと清隆が頷いた。
「いいわよ、由佳。」
「いいぞ、由佳。これでいいか?」
由佳が、これが“心からの笑顔か”というくらい可愛い笑顔で
「はい。嬉しいです」と返事した。
「それぐらいじゃな・・あ、立川、じゃない、由佳。その日学校を午後から休もう。早引きだ。」
清隆が何かを考えるように由佳にいうと
「はい。大丈夫だと思います。で、何を?」
私は笑い出しそうになっている。
「あ、昼過ぎから由佳の一番好きなことを、めいっぱいしようと思ってな。」
無表情で言うから、由佳も真意が掴めない。
「好きなことですか・・はぁ。」
きょとんとして生返事をした。私は耐えられず由佳の耳元で
「由佳の好きなことって・・・セックスでしょ。」
耳元で囁くと、何を言っているのか理解した様で、私の目を見つめ、清隆の方を向き、真っ赤な顔で
「はい」と返事した。
由佳の出自が明らかになりました。
これでようやく、有栖、清隆、オリキャラ由佳の3人がタッグを組める形になりました。
当然、最初のターゲットは中間テストになります。どのように蹂躙するのか楽しみにしていてください。
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