龍園翔 「王の失墜」
堀北学 「面白い奴ら」
須藤健 「すべては夢のために」
こちらもストーリーに合わせこんであります。
龍園翔 「王の失墜」
俺はこの高度育成高校の正門をくぐった時から違和感を覚えた。監視カメラが異常に多い。どこに行ってもすべて行動を監視するように配置されている。
荒くれもの達が目立つCクラスに配属された。アルベルトは強敵になりそうだ。石崎なんかも腕が立ちそうだし、伊吹は女だてらに武道の覚えがありそうだ。体幹が鍛え上げられている。
担任から端末を渡され、「10万円分入っている」「ポイントは毎月1日に振り込まれる」と、学校の仕組みについて簡単な説明があった。
「なぜ、毎月10万振り込まれると明言を避けた?」
3日目の金曜日、授業で、生徒に何かあると先生がメモを取っていることに気が付いた。俺は皆に忠告した。
「おい、授業はまじめに受けろ。あと、高校生らしくきちんと生活しろ。」
「龍園君、発言する時は手を挙げてからするように。」
注意されたが気にしない。そのあともおれが目を光らせて、授業中の私語や端末いじりなんかを撃滅させた。
裏ではクラスの腕っぷしのよさそうなやつを呼び出し、暴力で自分の下に組み敷いていった。これはクラス内の噂になり、学年で知らないものがいないほどのことになっているらしい。アルベルトには手を焼いた。4回ほどぼこぼこにされたが2週間で下に付けた。最後に何か言ったが、わからなかった。
「You are crazy!!」
5月になって、クラスポイントの存在とAクラス特権が明らかになった。俺の予想通りだ。Cクラスは健闘した。Bクラスの尻が見えている。
「おい。おまえら。今日からおれがこのクラスの王だ。Aクラスまで連れていく。ついてこい。」
反論する者はいなかった。
次の中間テストでBクラスに上がる。そんな目標を立てて、参謀と打ち合わせた。金田、石崎、伊吹が参謀メンバーだ。椎名という女子もいるが、扱いにくくて困っている。椎名の学力はずば抜けている。ただ、協力しようとしない。脅してもおだてても無駄だった。協力を迫ると、死んだ魚のような目で見てくる。でも、どういう風の吹き回しか、たまに話し合いに参加する時もある。その時の頭のキレと洞察力には感心するほかなく、何とか参謀として固定したいと常に考えている。
先生の口ぶりから中間テストには裏技があるとわかった。ただそれが何かわからない。ある日、食堂で昼ご飯を食べているとDクラスの櫛田が、クラスの男子?目立たない茶髪の男子を連れて、山菜定食を食べている上級生に何かお願いしているのを見かけた。櫛田は学年のアイドルと評されているが、おれはあいつに影を感じている。いつかその影を暴いてやろうと思っている。
その晩、おれはその昼間の現場が気になって仕方なかった。何をあんなに必死に、“おんなの武器”まで使って交渉した?要求はなんだ?上級生・・。山菜定食・・・
「過去問か。」
おれは次の日参謀に話し、過去問を手に入れるよう指示した。しかし、どれだけ探しても、何人上級生にあたっても、譲ってくれる人はいなかった。噂では「今年は禁じられている」「ひとりは入手したらしい」「譲ったりしたら退学にされる」と聞かされた。昨日の様子では、櫛田は入手できたはずだ。昨日までよかった。今日からダメになった。昨日の今日で何かが変わったのか。
焦った。クラスにはとにかく勉強して基礎力を上げて、テスト範囲を網羅しろという指示しかできなかった。さらに追い打ちをかけるように、テストまで10日を切ったところで、全教科のテスト範囲が変更された。復習が間に合わない。裏技もない状態でBクラスは中間テストに臨んだ。
惨敗した。
トップはBクラス。ほぼ全員が満点。次はDクラス。半分以上が満点で多くが高得点。次いでAクラス。半分程度が100点。そしてCクラス。満点は金田と椎名。ほかは幅広く分布している。この結果からも、Dクラスは過去問を入手したことが分かる。
上級生は「今年は一人だけ入手できただけ」と言っていた。この“一人“が櫛田だと仮定すると、櫛田がBクラスとAクラスに共有した。なぜCクラスには共有しなかった?A、Bとは何らかの交渉があったはず。Dは何を得た?なぜCクラスに交渉に来ない?なぜ自分のDクラスから退学者を出した?
予想できるのは「何らかの思惑があって、一人を退学させ、Cクラスをのけ者にした。」
一体だれが音頭をとっている?操っているのは誰だ?そいつの最終目的はなんだ?まず黒幕をあぶり出してから仕留めてやる。
それにしても、なんたる失策。Bクラスの王と宣言したはいいが、最初の中間テストでコケにされた。皆に申し訳ないし、皆がおれを見る目が畏怖から悲哀に変わっている。俺はしばらく眠れない夜を過ごした。
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堀北学 「面白い奴ら」
俺には2つ下の可愛い妹がいる。いつも俺の後をつけていた。いつの日か、ロングがいいなと言ったら、肩までだった髪の毛を腰まで伸ばしてしまった。セミロングがとても似合っていたのに残念だった。
俺は家を出て、高度育成高校に入った。ここでは社会で必要される実力が試される。自分の能力を最大限発揮し、また、周りにも協力してもらってAクラスを維持できた。生徒会長にもなって、よりSシステムを深く理解した。
そして今年の4月、妹、鈴音がこの高校に入ってきた。確認するとDクラス配属だった。
鈴音の学力は俺と大きな差はない。昔、俺は鈴音にいいところを見せようと、何でも一人でなすことができる。と見栄を張った。これが間違いだった。鈴音はそれを追いかけて、周りと協調することを忘れてしまったのだろう。おおかた、俺が見栄のために言った「孤高」を目指しているのだろうが、今の鈴音は単に「孤独」だ。
妹にこの熾烈なクラス闘争をさせたくない。もっと自由に、かわいい鈴音らしく、のびのびと高校生活を楽しんでもらいたかった。ちょうど小テストの結果が発表されてSシステムが詳しく説明された5月1日、俺は鈴音にこの高校から去るように説得するつもりで、人の来ない自販機裏に呼び出した。
可愛い鈴音を前にするとダメになる俺は、優しくしたいのに、きつい口調で言ってしまった。
「Aクラスに上がりたい?そんなものは無駄だ。お前にはできない。早くここから去れ。」
これでは説得ではなく、鈴音を否定し、単に退学を強制しているようにしか取れない。鈴音もむきになっている。仕方ないので殺気をまとわせ、鈴音の腕をつかんだ。その時だった、物陰から一人の小柄な女子が俺の腕をつかんだ。
「そこまでです。」
つかまれた腕が動かせない。名を聞くとDクラスの綾瀬有栖と名乗った。
鈴音を掴んでいた腕をそのまま綾瀬に向かわせた。躱された。蹴りを入れようとしても躱された。(まじか)。どれほどのものか興味がわき、しっかりと構え、間合いを測る。正拳突きを放った次の瞬間、胸元で掌を裏返しているのが見えた。(まずい。よけられない)。覚悟したが予想した衝撃が来ない。
「有栖、そこまでだ。」
ともう一人が綾瀬の裏拳を止めていた。Dクラスの綾小路清隆と名乗った。二人揃って
「普通の高校生」と言ったが、普通の高校生にはあんな動きはできない。鈴音のクラスにこいつらがいるなら、ひょっとしてと期待した。だが、鈴音が拒絶していたらしく、友達ではないと言い切った。鈴音の表情が暗い。
立ち去ろうとした時、さっきまでの流れを動画に撮っていたらしく、口留めに50万ポイントで口止めした。(こいつら、面白い。こいつらなら)。週明けに生徒会室に来るように伝え、場を後にした。
二人のことを調べると、ますます面白いことが分かった。入試を綾小路は50点、綾瀬は30点に全教科そろえていた。担任に小テストの結果を聞くと、同じ点数だったらしい。しかも最後の超難問の3問を解き伏せての点数だと。担任の話では
「あいつらは天才。Sシステムを入学の日に看破した。」
時間通りに二人が生徒会室にやってきた。世間話的に調査結果を説明したが意に介さない。
「じゃあ本題に入ろう。お前たち、生徒会にはいれ。」
こいつらが生徒会に入れば、今の状況、南雲の台頭による伝統の破壊、が抑えられる。しかし、間髪を入れずに
「断る」「いやです」
高校生活を楽しみたいと。まぁ、いい。南雲にもコントロールされそうにない。ただこいつらの仲間でもいいから、生徒会に組み入れたい。
「お前たちなりに楽しむ、か。。。わかった。いつでも席は準備する。その気になったら連絡をくれ。あと、お前たちの推薦なら、一人ぐらいは生徒会に入れるようにしておく。」
そう伝え、面談を終わろうとしたとき
「あの、次の中間試験の過去問をいただけませんか?」
何気なく綾瀬が聞いてきた。隣の橘が狼狽えたのを見られた。おそらく、単に傾向を見るためだけだったんだろう。でも、橘の狼狽から、こいつらは理解した「過去問がカギになる」と。俺も覚悟を決め話に乗り、ある契約をした。こいつらがその過去問をどのように使うのか楽しみだった。
過去問の譲渡を禁止する旨を生徒会会長権限で2年生、3年生全員に連絡した。しばらくして綾小路から、
「手に入った。ペナルティとして200万」
メールが入った。やられた。話を聞くと、櫛田の「おんな」攻撃に負けてしまったと。すぐさま、「過去問を譲ったものはまともに卒業できると思うな」という内容の連絡を入れた。
Dクラスが突出した結果になると予想していたが、中間テストの結果は訳が分からないものだった。過去問は確かに使われた。少なくともA、B、Dクラスは使ったはずだ。しかも1人は点数購入という荒業で助けたらしいが、自分のDクラスから1名の退学者を出ている。何をしている。何がしたい。二人の言葉を思い出した。
「そうか、単にSシステムを利用して楽しもうとしているのか。」
「退学になった生徒は、狙い撃ちされたのか。」
寒気がした。あいつらは危険だ。放ってはおけない。なんとか一人でもあいつらと近い人間をそばに置いて、監視しないと。
それはそうと、感謝しなければならない面もある。綾瀬の「自分の気持ちを妹に」という言葉だ。あの後、しばらくして、妹の鈴音と話す機会を設けた。鈴音の前でもちゃんと思っていることが話せるように何度も練習した。
「兄さん、何ですか?」
「鈴音、この前はひどいことを言った。お前を傷つけた。」
頭を下げた。多分、鈴音に頭を下げるのは初めてだ。
「に、兄さん」
しっかりと目を見て、練習してきたとおりに話そう。
「鈴音。俺はお前、鈴音を大切に思っている。可愛い妹だ。」
「俺の後を追いかけるような真似はしなくていい。十分に認めている。」
「鈴音本来の姿で、自分の道を進んでほしい。その方が似合っている。」
鈴音の目から涙がこぼれる。(う。なんで泣く)。
「あと、俺も何事も一人で成せたわけではない。周りの人がサポートしてくれたからできたことの方が多い。信頼できる仲間と一緒にやってみろ。互いに成長するんだ。」
何とか言いたいこと、伝えたいことは言えた。
「兄さん。ありがとう。ありがとう。」
泣きながら、しがみ付いてきた。こんな時、どう対応すればいいかわからない。でも、身体が鈴音を抱きしめ、きれいな黒髪を撫でていた。
「私、頑張ってみる。自分のやり方で頑張ってみる。」
最後に、別れるとき、鈴音が笑った。昔のころの可愛い鈴音を久しぶりに見た。
あいつらには感謝だ。こういう機会を作ってくれた。あいつらが友達になってくれたら、鈴音は大きく飛躍するだろう。リーダーの素質はある。その翼を広げられるかは、あいつらにかかっているのかもしれない。
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須藤健 「すべては夢のために」
志望進路への保証という言葉につられ、この高校に入った。入試はあまり出来なかったが合格した。入学してすぐのころ、学食で櫛田にいろいろ言われ、目の前が真っ暗になった。たしかに英語が理解できなきゃNBAで活躍なんてできない。短気なのも注意された。
俺には夢がある。世界最高峰のバスケットボールリーグ、NBAに行くことだ。あそこで自分の力を試したい。そのためならなんだってする。だからバスケに集中した。でも、あの日、勉強も重要だと気付かされた。手遅れかもしれない。でも、挽回するんだ。夢のために。
皆がうるさく授業を受けるなか、先生の書き記したことをノートに写すが、ただ写しているだけで、何もわからない。何とかしなきゃとは思うものの、どうすればいいかもわからない。綾小路と1on1で汗を流した後、それとなく聞いてみると、「櫛田にお願いすれば勉強見てくれるだろう」「ただし、みんなのいるところでな」とアドバイスされた。
はっきり言って、俺は女の子と話したことがない。櫛田はとても可愛いい。そんな子に「勉強を教えてくれ」って言えるのか、しかも、みんなのいる前で言えるのか、が問題だった。
ある日のお昼休み一大決心とばかり、櫛田に頭を下げてお願いすると、なんとOKが出た。週3回、2時間、部活が終わった後、櫛田の部屋で見てくれることになった。
5月になるとポイントは振り込まれず、志望進路へのというのはAクラスのみだと聞かされた。部活と勉強で遊ぶ暇がなかった俺はプライベートポイントには余裕がある。ただこれが続くとバッシュの一つも買えない。ハードな動きですぐに傷んでしまう。
みなが騒いでいるが、とにかく俺は勉強することにした。部活後の勉強は眠くなることもあったが、コーヒーを入れてくれたり、冷たいタオルを準備してくれたりと櫛田も応援してくれている。
中間テストに向けて、櫛田が勉強会の先生役をすることなった。俺の個別勉強会はしばらく中断され、櫛田が先生役をするグループで勉強することになった。まじめに取り組もうとしているのに、うるさくして皆の邪魔をするやつがいる。櫛田が困っているようなので、俺が黙らせた。日頃のお礼とばかり、常に櫛田が困らないように立ち回った。テスト勉強中に疑似問題に取り組んだ。なんだか多くの問題が解ける。65点だった。約1か月間、櫛田に見てもらいながら、中学で習うようなことから一つ一つ丁寧に教えてくれた櫛田に感謝だ。テストそのものは3日前に配れた過去問を覚えた。これも櫛田が手に入れ、皆に配ってくれた。そのテストでは自分でも驚くほどの点数がとれた。でも、池と山内が赤点を取ってしまった。まじめに勉強会に出ていれば、問題なかったのに、自業自得だ。どういう仕組みなのかわからなかったが、池は櫛田が救った。山内はそのまま退学した。
櫛田がDクラスのリーダーと皆が認めた。俺もなんだか嬉しい。すごい女だと思う。皆からの相談に乗ったり、沈んでいる生徒には声をかけ、みんなと一緒に喜ぶ。近くにいるだけで元気をもらえる存在だ。
多くの時間を櫛田と過ごしてきた。今はやっと普通に話せるようになった。勉強を見てもらっていても、櫛田のいい匂いや、シャツの隙間から見える胸の谷間にどぎまぎすることがある。
でも、たまに櫛田の表情が変わる。いつもの天使のような顔つきが、全く別人のようになることがある。学校で嫌なことがあったときに多いことまではわかった。そんなときなんて声をかけていいのかわからない。でも、多分、櫛田の本来の顔なんだろうと思う。ひょっとして、いつもは無理しているのか?もしそうならそんな状況から救い出してあげたい。
とにかく、こんなよくできて可愛い子が俺の彼女になって、バスケの応援に来てくれたら最高だ。と思ってはいるが、そんなことは夢のまた夢。でも、いつか櫛田にはきちんとお礼がしたい。
やっと龍園君が登場しました。
この先、ちょいちょい出番があります。原作よりもだいぶ「抜けて」います。
次話から6月に入ります。話の構成上、アニメにあったイベントを書いていきます。
お楽しみに
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